「キースの災難な一日」

 

 俺はキース・クリエード。
Zi学園と言うところで教師をしている。
科目は物理。
男子テニス部の顧問でもある。
歳は・・・、これは伏せておこう。
まぁ、これは俺のある日の記録だ。
思い出すのも嫌な・・・、厄日の・・・。

 

 朝、朝食を取るために居間への扉・・・、つまり、俺の部屋のドアを開いた。
一応、3LDKのマンションで、妹のサウラと従妹のサンダーの3人住まい。
黒一点というのが寂しいところだ。

「お兄ちゃん、おはよう。」

「キース、ご飯冷めちゃうし、出勤時間に遅れるわよ。」

出迎えるのは聞き慣れた声。
サウラは大学で医学を専行している。
時折、高等部の医務室で手伝いをしている。
心配性だが、いい妹だ。
そして、サンダーは・・・、ハッキリ言って生意気。
呼び捨てだし、止めろと言ったら「キース叔父さん」とか言ってきやがる。
だから、仕方が無く、呼び捨てにさせてるが・・・。
サウラにはちゃんと「サウラお姉ちゃん」と言っている・・・。
どういう教育をしたらこうなるんだか・・・。

「へいへい・・・。」

寝癖混じりの髪をポリポリ掻きながら、コーヒーを啜る。
そこで第一の災難が待っていた。

「ゲホッ、ゴホッ、ガハッ!!
おい、これ塩じゃねーか!!」

「あっ、いっけなーい。
間違えちゃった。」

そう言ってきたのはサンダー。
本当にそそっかしい奴・・・。
塩入コーヒーを飲むのはフィーネ達ぐらいのもんだ。
これが美味しいとは・・・、一回検査に行った方がいいんじゃねーか?

「・・・入れ直してくれ。」

今ので目がハッキリと覚めたが、怒る気にはなれなかった・・・。

 

 一足早く家を出た俺は、バイクに飛び乗って学校へと向かった。
その後ろにちゃっかりと乗ってるサンダーがなんかむかつく。
彼女曰く、「部活に遅れそうだから」だそうだ。
サンダーは女子テニス部の一年。
好きな人がテニスをやってるから入ったそうだ。
まぁ、俺には見当がついてるがな・・・。

 

 この後のことは、本当に思い出したくない・・・。
それだけ、いろいろなことがあった。
まぁ、とりあえず、教えておこう・・・。

1.さっき話したとおり、塩入コーヒーを飲んだこと。

2.朝練に行くとき、ワックスかけたての床ですっころんだ。
  尻に痣が出来たかも。

3.その現場をシュバルツに見られた。
  噂話になるんだろうな・・・。

4.朝練の時、バンと手合わせをしてたら、
  あいつのダンクスマッシュが跳ね上がって額に当たった。
  凄い痛かった。

5.またも、朝練の時、トーマとバンが喧嘩。
  しかもバンが投げたボールがシュダに当たり、てんやわいやの大騒動に・・・。
  その時、身体のあちこちを負傷。
  奴等はケインによってグラウンド30周を喰らった。

6.職員室のコーヒーにまたも塩が・・・。
  ディ爺さんのと間違えたらしい。

7.高2−Bの授業中にビットとリノンが喧嘩。
  止まらなかったから銃を乱射、廊下に立たせた。
  その時にリノンが投げた筆箱がすねにヒット。
  めちゃくちゃ痛かった。

8.その時、アスカに「不吉な相が出てる」と言われた。
  その直後、教壇から落ち、柱に側頭部をぶつけた。
  生徒には大笑いされ、これもめちゃくちゃ痛かった。

9.休み時間、ルークとシュダの追いかけっこの巻き添えに・・・。
  スネイク数発が身体のあちこちにヒット。
  シュダとルークにはトイレ掃除1ヶ月の刑を言い渡しておいた。
  俺はもうボロボロだった・・・。

10.高2−Aの教室の戸を開けたら、黒板消しが落っこちてきた。
   粉まみれになると共に、角が頭に当たってもの凄く痛かった。
   仕掛けたリーゼにはハリセンとトランプをかましておいた。

 

「そして、今に至る。」

「大変ですね、教師も・・・。」

「教師だから大変なんですか、これ・・・。」

ここは保健室。
ようやく昼休みになり、昼飯前に怪我の治療を受けていた。
保険医のカーヴァーとサウラが同情と呆れが入り交じった表情で話しかける。
彼等には、とりあえず一部始終を話した。
そして、帰ってきた返事がこれだ・・・。

「でも、なんだかんだ行って、丈夫ですね、キース先生も。
普通だったら、こんな程度じゃ済みませんよ。」

「笑いながら言うな。
余計に腹が立つ・・・。」

こりゃ失礼、というと、彼はコーヒーを差し出した。
笑顔のままで・・・。
カーヴァーはいつもニッコリしてる。
時々不気味に感じるが、怒らしたら大変という噂も聞くので、これでいいのだろう。
とりあえずコーヒーを啜る。

「お兄ちゃん、ついてないね。
厄でも付いてるんじゃないの?」

「アスカにそう言われたよ。
あいつの占い、当たるからな・・・。」

はぁ、と溜息を吐き、コーヒーを飲み干した。
すると、カーヴァーからこんな提案が。

「ゲイル先生に厄除けを頼んだらどうです?
あの方、そう言うの得意でしょ。」

確かにゲイルはそう言うのは得意だ。
自称で霊能教師と言ってる。
だが、

「やめとく。
なんか、ネタにされそうだし・・・。
じゃあ、飯でも食いに行くわ・・・。」

そう言って、俺は医務室を出ていった。
ゲイルは報道部の顧問。
いつも何かしらのネタを探してる。
まぁ、俺は銃の手入れを時々してもらってるので、文句は言わないが・・・。
結構気はいい奴なのだ。

 

 ついでに11番目、食堂が混んでて、
飯にありつく頃には授業開始10分を切っていた・・・。

「本当、ついてないな・・・。」

そう言いながら、ラーメンを啜る俺がいた。
これは保健室で長話をしてたせいだが・・・。

 

 なんだかんだいって、放課後になる。
その間には特に何事もなかった。
強いて上げれば、
12番目として、またコーヒーに塩が入っていた・・・。
ディ爺さん、頼むから間違えないでくれ・・・。

「やれやれ、後は部活だけか・・・。」

そう言いながらジャージに着替える。
しかし、一番恐いのが部活だったりする・・・。
朝練の騒ぎなど日常茶飯事だ。
今日はもっと強烈なことが起こる。
そんな気がさっきからずっとしてるのだ。

「次は13番目か・・・。
黙示録じゃねぇんだぞ。」

独り言が多くなってきたのは、疲れてきたからだろう。
今日だけで1週間分の出来事が起こったような気がした・・・。

 

 部活はいつも通りに始まった。
俺はトーマと共に球出しを行っている。
ここはレベルが高いと思うのはレギュラーの練習の時だ。
その内容はボールをその溝に塗ってある色と同じ色のコーンに当てるというもの。
動体視力とコントロールが要求される練習だ。
しかも、それぞれの足には2sの重りがつけてある。
そして、ミスをすると・・・、

「野菜汁、一丁上がり。」

トーマ(と報道部のアリス)が考案した、野菜汁と呼ばれるものを飲まされる。
これがまずいの、なんのって・・・。
一言で言うなら・・・、身体にはいいが、心と舌に悪い・・・。
青汁よりもまずいのだ。
早速ミスった、レイスとシュダはもの凄いスピードで走っていった・・・。
我慢強い彼でもこれだけはダメのようだ。

「2人とも慌てすぎだ。
次、バンとレイヴン。」

次は2年エースを狙うバンとレイヴン。
どっちが先に落ちるか、楽しみである。

「貴様だけには負けないからな。」

「へっ、そりゃこっちの科白だ。」

ラケットを構え、闘志メラメラの2人に俺達は容赦なくボールを打ち込んだ。
ちなみに俺はレイヴンの方。
バンの相手は今日はよしておいた・・・。
まだ、額が痛い・・・。

 

「こりゃ、2人ともパーフェクトかな?」

ふと、そんなことを口ずさむ。
段々とボールが無くなっていくのにも関わらず、2人は当て続けていた。
すると、バンが向こうでミスった。
早速、野菜汁の餌食に・・・。

「ぐわああぁぁぁ!!!」

「バン、俺の勝ちだ!」

そう言って自信満々にボールを打つ。
だが、彼もミスを犯した。
赤のボールを黄色に当ててしまったのだ。

「グイッと行こう!」

「・・・・・・。」

トーマが嬉しそうに差し出す緑色の液体を、無言で見つめるレイヴン。
ちなみにバンとレイヴン、引き分けに終わった・・・。

「どわああぁぁぁぁ!!!!」

バン以上に取り乱したレイヴンは、そのまま水道場に直行。
ライバル同士、仲良く水を飲んだとか・・・。
ちなみにこの日はケイン以外の全員が飲む羽目となった・・・。
クルス、ビット、レイスは重りに足を取られてバランスを崩し、
シュダはスネイクをかますも色を間違え、リッドはレイスを見てて油断。
そして、言わなきゃ良かった、この一言・・・。

「全く、だらしないな。」

「だったら、やってみろよ、キース!!」

「ああ、手本を見せてやるよ。」

そう、自信満々に言ってしまったのだ。
結果は・・・、分かるだろ、感じから・・・。
飲んだよ、青汁よりまずい野菜汁を・・・。

「どわあああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

何で失敗したかって?
バンがスピードボールを連発したからだよ。
ったく・・・、ジャックナイフなんか使ってきやがって・・・。
これが俺の13番目の嫌なことだった・・・。

 

 部活も終わり、日はドップリと暮れていた。
職員室で書類を整理していると・・・。

「キース、まだいたのか?」

女性の声が横から聞こえてきた。
だいたいの予想をつけてから振り返ると、思った通りの人物がいた。

「今、部活が終わったところだ。
ああ、酷い目にあった・・・。」

「どうかしたのか?」

「・・・話したくない・・・。
それで、何か用か?ミコト・・・。」

彼女、ミコト・ナルシアはこの学校の美術教師。
結構無愛想で、こうして話しかけること自体珍しい。
俺とはこの学校のおれが高等部からの知り合いだ。
サバサバしててマイペースな彼女は、何故かほっとけない・・・。

「ああ、飯でもどうかと思ってな。」

「そうだな・・・、別にいいけど。
その前に・・・、俺の方が先輩なんだからため口は止めろよ・・・。」

「いいじゃないか、別に。」

一応、注意はしてるのだが、こいつの為口は一向に直らない。
呆れながらも、俺は彼女と学校を後にした。
まぁ、ついてないことも、これでチャラだな。
ついでに14番目、この事をゲイルにかぎつけられた。
減俸処分だな。
そして、15番目、帰りが遅くなってサウラに怒られた。
終始ついてない一日だったな・・・。

 


とりあえず書いてみました、キースの一日。
まぁ、こんな日もあるでしょう。
一応、教師の紹介も兼ねたんですが、どうでしょうか?
ちなみに、キースの装備、銃とハリセンとトランプです。
銃を持ってる教師って・・・、恐ろしいものがありますね・・・。
皆さんは真似しないで下さいね。
では、これで。

 

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