「“夜”と“現実”」

 

 猫がたくさんいる空き地にある2匹の猫がいる。
1匹は、黒い毛に銀目で、他の猫と仲良く出来ずにいる感じな子猫。
1匹は、灰色の毛に赤目で、他の猫と仲良くする気がなさそうな(むしろ威嚇。ケンカが多い)猫。
この2匹が、私のお気に入り。
今日は満月の夜。
まんまるお月様が、夜の空き地を優しく照らしています。
そこへ来たのは、ペット屋の袋を右手に下げた、黒髪の女の子、セリエル。

「みんな、飯持ってきたぞ」

そう言うと、猫たちが一斉にセリエルの周りに集まってきました。
セリエルは空き地の真ん中当たりでしゃがみ、袋からガサゴソと猫缶と大きめの器を数枚出しました。
手慣れた手つきで猫缶を開け、器に出すと猫たちがわれ先にとエサを食べ始めます。

「焦らなくても、たくさんあるからケンカするな」

そう言っても聞くはずもなく、猫たちはエサを食べ続けます。
セリエルはふうと溜息をつき、辺りを見渡しました。
なぜかエサを食べずにいる猫が2匹。
この猫たちがセリエルのお目当ての猫です。

「“セル”、“シュダ”」

この2匹の猫には二つの名前があります。
黒い毛に銀目の子猫がセルとナイツ、
灰色の毛に赤目の猫がシュダとリアラ。
セリエルが人前にいるときはナイツとリアラと呼ばれ、セリエルが一人の時はセルとシュダと呼ばれる。
自分と好きな人に似ていたため、この名前を付けたが、照れ屋なセリエルが人前で呼ぶのは無理があった。
だから人前で呼ぶときの名前も付けた。それが、ナイツとリアラ。
二つの銀月が輝く“夜”に、モノクロの“現実”で冷たく燃える炎。
セリエルはナイツを抱き上げると、リアラに近づきナイツをとなりに座らせた。
袋から猫缶と普通の器を取り出すと、2匹の前に開けてやった。
ナイツとリアラは奪い合おうともせず、仲良くエサを食べていた。

「お前達は仲良くて良いな。私なんか仲良くどころか、喋ることすら出来ないよ。
・・・・向こうは名前も知らないかも」

ナイツの頭を軽く撫でながら言った。

「いつか、シュダ先輩となれるかな?
セルとシュダみたいに、仲良く」

手を引いて、満月を仰ぐ。セリエルとナイツの瞳のような、銀色の、月。

「綺麗な満月だな、・・・・宝石みてぇ」

月に手を翳す。

「素直に、馴れたらなぁ。
ホントの私を見て欲しいのに」

翳した手を月を掴み取るように握り、引き寄せる。
ナイツとリアラを見ると、まだはぐはぐとエサを食べていた。
ふと、ここを見つけた時のことを思い出した。

 

 裏道を通るのが好きなセリエルは、適当にブラブラして、いきなり面白い場所へ出たり、
小さくても美味しいお菓子の店や奇妙なものがある骨董品屋を見つけるのが楽しいらしい。
しかも、自分のテリトリー内なので、隠れた名店でも人に教えたりしない。
その日もセリエルは裏道をひたすら歩いていた。
少し迷っていたので焦っていたが、すぐわかるだろうとのんびりとひたすら歩いていた。
その時、猫のケンカする鳴き声が聞こえた。
鳴き声の方に行ってみると空き地があり、猫がケンカしていた。
1匹の猫に、数匹の猫が襲いかかっているようで1匹の方の猫は血まみれだった。
セリエルはそれを見て、もみくしゃになっている猫たちからその猫を抱え上げた。
だが、その拍子にしりもちをついてしまった。
痛みをこらえ腕の中の猫を見ると、綺麗なグレイの毛が茶色に染まっていたが、眼光は鋭かった。
ふと、1匹の黒い子猫が近づいてきて、セリエルの腕にいる猫の傷をなめた。
傷だらけの猫は、その猫を見ると急にぐったりとした。
セリエルはみーみ−と鳴く猫も抱え、さっき見つけた動物病院へ走った。
幸い傷は深くなかったので、すぐ元気になった。
傷が治るまで面倒見ようと思ってたが、傷が治ってもここに通うようになった。
黒い子猫はすぐ懐いたが、灰色の猫はなかなか懐いてくれなかったのも影響していたのだろう。
それ以来、セリエルはここに満月の夜と新月の夜に通っている。

 

 ぼーっと思い出に浸っていたセリエルが、騒がしく鳴く猫たちの鳴き声で現実に戻る。

「ああ、おかわりか?
待ってろ。すぐ開けてやるから・・・・」

どさっ

そう言いかけたとき、後ろから誰かに押し倒された。

−痴漢!?−

そう思い、ダーツを取ろうとするが、腕を頭上で押さえられ、反撃できない。
そこへリアラが痴漢達を鋭い爪で引っ掻く、だが、思い切り蹴り飛ばされてしまった。

「シュダ!」

名前を呼ぶがピクリとも動かない。

−ヤバイ!!−

頭そうで叫んだとき、セリエルの上に乗っていた痴漢が吹っ飛んだ。

「へ?」

思わず間抜けな声を上げていると、セリエルの腕を押さえていた方の痴漢も蹴り飛ばされた。
痴漢達は痛みに唸り、自分たちを吹っ飛ばした奴を見るとさっさと逃げていった。
セリエルが痴漢を撃退した人の顔を見ると、心臓が飛び出るくらい驚いた。

「シュダ先輩!?」

そう、その人はセリエルの好きなシュダ・ウィンディッツだったからだ。
シュダはセリエルの方を見て、言った。

「お前・・・・・誰だ?」

セリエルはガクッとうなだれるが、気を取り直し、

「Zi学園中等部2年で報道部のセリエル・クワイエットです。
ミレス・エージェントのクラスメイトの・・・・・」

と、自己紹介した。

「それより、どうしてこんなところにいるんですか?」

「走ってた」

セリエルが質問すると、即答された。

−走ってたって、こんなところまで?
いったい何km走ってんだ?−

そうセリエルが考えていると、

「お前、俺のこと呼ばなかったか?」

と、聞いてきた。
するとセリエルははっとリアラのことを思い出した。

「リアラ!?」

リアラの方を向くとナイツがリアラのそばでみーみー鳴いていた。
セリエルはリアラとナイツのところへ駆け寄ると2匹を抱えかあげ、シュダを見た。

「シュダ先輩!さっきはありがとうございました!!」

そう言って、あのときの動物病院へ走った。

 

「大丈夫、どこも怪我してないよ。
気絶してるだけだから、連れて帰っても平気だよ」

「ありがとうございました」

セリエルはナイツとリアラを連れて、動物病院を出た。

「よかったな、セル。
シュダが大した事無くて」

セリエルがそう言うと、ナイツはみーと鳴いた。

「あ、空き地に袋置いてきたっけ。
取りに行かなきゃ」

セリエルは空き地に向かって歩き出した。

「あ〜あ、もっとちゃんとお礼言いたかったんだけどな」

月を見ながら呟いた。
そうしているうちにリアラも起きて、空き地に着いた。
そこには、なぜかまだシュダがいた。
シュダはセリエルの方に来ると、セリエルが持ってきた袋を渡した。

「あ、ありがとうございます・・・・。」

セリエルが袋を受け取ると、ナイツとリアラがセリエルの腕から降りて、空き地に戻っていった。
少し、沈黙。
するとシュダが、

「送ってやる」

と、言ってきた。

「え?あ!良いですよ!
ランニングの途中だったんでしょう?
私は大丈夫ですから」

セリエルは遠慮したが心の中では(チャンスだったのに!)と思っていた。

「さっきあんなことあったばっかだろ。
いいから送らせろ」

「は、はい・・・・」

少し強く言われ、セリエルは思わず承諾してしまった。
何も言わずに歩く2人。
セリエルは何か話をしようとしたが、言葉が浮かんでこなかった。
聞きたいことはいっぱいあるのに、話す勇気がなかった。
しばらくして、セリエルの家についた。

「ありがとうございました。
ランニングの途中なのに送ってもらって。
さようなら」

セリエルは深々とお辞儀した。

「じゃあな」

シュダはそう言ってすぐ、走り去った。

「素直な私を、見て欲しかったな・・・・・。
私の、バカ」

満月の夜空を見て、少し泣きたくなった。

END

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アトガキ

ぎゃーー!なんか失敗したーーー!!
すいませんこんなダラダラした駄作を送ってしまって。予定とずいぶん違ってしまった・・・・・。
とりあえず、セリエルと猫の話を書こうと思ったのですが、いきなりシュダを出したくなってしまって・・・・。
こんなので良かったら貰ってください。


千夏さんから頂きました。
シュダとセル、彼女にとっては念願のツーショットですね。
シュダは相変わらず無愛想・・・。
動物好きなので、猫は可愛がるかも。
何気に人を助けますからね。
結構放っておけないタイプなんです。
まぁ、最初はあんなものですよ。
徐々に近付けば・・・。
家のケインは近付きすぎで気付いてないんですけどね。

 

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