「ランキング戦2日前」

 

 桜が散り、もうすっかり初夏の気候になり始めた頃、
Zi学園のテニスコートでは部員達が一生懸命練習していた。

「先輩達、かなりやる気だね。」

「しょうがないでしょ。
明後日はランキング戦だから。
レギュラー争いも激化してきてるし。」

ジークとシャドーがボール拾いをしながら話していた。
ランキング戦はレギュラー決めの為の試合と言っても過言ではない。
ルールはまずリーグ戦の各3ブロックで1位〜3位を決める。
そして、1位はそのままレギュラー入り、2〜3位の6人は再びリーグ戦で1人を落とす。
こうしてレギュラー8名を決めるのだ。

「で、トーナメント表の方はどうなったんだ?」

「考えるの面倒だったからくじ引きだ。
レギュラーが3人入ったらその時点で決定しそうだけど・・・。」

「あのなぁ・・・。
2つは絶対にそうなるだろ。」

ここでは部長と副部長の会話。
まぁ、部員が15人なので、どうやってもこうなってしまうのだが・・・。

「んっ、そう言えばシュダは?」

ケインがシュダがいないことに気付き、クルスに尋ねた。

「確か、部室にタオルを取りに行ったみたいだが。」

「なんか、あいつ、いつもいないような気がするけど・・・。」

「殆ど1人だしな。
まぁ、たまにリッドと打ち合ってるから良いんじゃないか?」

「それもそうだな。
よし、俺達もやるか?」

「そうだな。」

2人はラケットを手に取ると、コートの半面に入った。
その隣ではビットとレイスがラリーをやっている。

「ビット、失敗したらトーマの野菜汁一気飲みだからな。」

「げっ、それは勘弁だ。」

トーマの野菜汁、最近パワーアップしたとか・・・。

 

 その頃、部室では。

「・・・・・・。」

「・・・にゃ?」

シュダとどこから入ってきたのか、1匹の灰色の猫が面と向かっていた。
彼は彼で突然の来訪者に驚き、猫の方もビックリした様子でシュダを凝視している。

(なんでこんなところに猫が・・・。)

そんな疑問が頭の大部分を締めていた。
そして、残る部分は・・・、

(ちょっと・・・、遊んでやろうかな・・・?)

シュダは動物が大好き。
しかも、彼自身猫を飼っているので、さすがに無視は出来ない。
彼がキョロキョロと周りを見回した後、何かを手にした。
ふさふさした毛の付いたキーホルダーである。(ビットのもの)
それを猫じゃらしのようにゆらゆら揺らし始めた。

「ほらっ、ほらっ・・・。」

しばらく動かしていると、猫の方も反応してそれを追いかけ回した。

「にゃ、にゃ、にゃあ〜。」

「ほらっ、どうした?ほらっ、ほらっ・・・。」

右にやったり、左にやったり、上や下に動かす。
猫もワンテンポ遅れて同じ動きをするので、彼はいつしか笑い顔に。
しかも、笑い声も漏れ始めてきた。
端から見れば凄く不気味である・・・。
すると、

「ヘル、どこ行ったの?」

「どこ行ったんですか〜?」

呼びかけるような女性の声と共に2人の人影が入ってきた。
そして、その2人は硬直することに・・・。

「・・・!!!」

シュダも突然入ってきた2人にビックリ。
行き追いよく振り返った後、彼も硬直した。
だが、手だけはまだ動いている・・・。
お分かりだと思いますが、入ってきたのはジュジュとアリスの報道部コンビ。
彼女らは目の前の信じがたい光景にどう反応して良いか分からず、
シュダは大変恥ずかしいところを見られたため、どうしようか考えていた。

「・・・・・・。」

すると、沈黙を破ったのは彼の方だった。
突然スッと立ち上がると、タオルを手に取り、キーホルダーをジュジュに手渡して出ていった。
その間わずか3秒。

「・・・なんか、凄いとこ見ちゃったわね・・・。」

「ええ・・・、一応、記事にします?」

「・・・どうしよう・・・。
なんか、後から言われそうよね・・・。」

帰り道、ヘルを抱きながらジュジュ達はこんな事を話していたとか・・・。
そして、シュダはというと、

「ふしゅ〜〜〜・・・。」

「なんか良いことでもあったのかな?
妙に機嫌がいい。」

「分かるのかよ、そんなこと・・・。」

恐るべしはトーマの観察眼・・・。
そんな科白に思わずと突っ込むバンであった。

 

 練習も終盤に差し掛かり、観戦者はお待ちかね、
レギュラーにとっては苦渋のメニューが回ってきた。
キースが早速説明。

「では、特別練習を始めるぞ。
1人がサーブを打った後、俺が返すからボールと同じ色のコーンに当てるんだ。」

「ちなみに失敗した奴には・・・、
このトーマ汁ウルトラゴールデンメガロマックスバージョンを飲んでもらう。」

彼が取り出した飲み物(?)の色に全員突っ込む気力を失った・・・。

「どうやったら、紫色の液体が出来るんだ。」

「というか、飲めるの?あれ・・・。」

「・・・さあね、考えたくもない・・・。」

レイヴン、ビット、リッドの順。
案の定、顔は真っ青だ。

「では、まずシュダから。」

ビクッと反応した後、覚悟を決めたように息を吐いてコートに立った。
・・・その数十秒後、

「グハッ!!」

「うわっ、シュダ先輩がぶっ倒れたぞ!!」

思いっきり吐き出した後、シュダは気絶した。
彼は1年生達によって水道場まで運ばれていった・・・。

「では、次、ビット!」

「・・・あんな球、分かるかーーー!!!」

実は、ボールには黒のマジックで書いた「赤」、「青」、「黄」の三文字。
回転しているボールでそれはきつい・・・。

「悪い、予算不足だ・・・。」

「・・・鬼・・・。」

その後、ビットもぶっ倒れた・・・。
外にはいつのまにかジュジュ達の姿も。

「まったく、情けないわね〜。
帰ったら特訓よ!」

「可哀相な奴・・・。」

ケインがそんなことをもらしたとか・・・。
そんな彼も決して例外ではなく・・・、

「○※×▲◎◇!!!」

読解不明な悲鳴を上げてぶっ倒れた・・・。

 

 1時間後・・・、水道場にて・・・。

「・・・あんなやばいもん飲ませやがって・・・。」

「見せもんじゃねーんだぞ。」

「うぇ・・・、不味い・・・。」

「トーマの奴、後で殺す!」

「ふしゅ〜〜〜・・・。」

ケイン、バン、リッド、レイヴン、シュダの順。
他はまだ倒れている・・・。
この地獄絵のような図は、
他のメンバーにレギュラーのデメリットを知らせるのには十分すぎる程であった。

 

 さらに20分後、

「じゃあ、ランキング戦の抽選を始めるぞ。」

ホワイトボードの前に段ボールで作った抽選箱が置かれ、
次々に部員達の名前が刻まれていった。
この時、誰もがケインと同じブロックになるのを嫌がっていた。
なにせ、先輩でも勝ったことがない強さである。
誰の手にも余る相手だ。
しばらくし、対戦はこのように決まった。

Aブロック
ケイン・アーサー
レイヴン
レイ・バイケルン
トーマ・リヒャルト・シュバルツ
ジーク

Bブロック
クルス・カルマ
リッド・アーサー
バン・フライハイト
デス・チェイサー
シャドー

Cブロック
シュダ・ウィンディッツ
ビット・クラウド
レイス・クリスナー
ハリー・チャンプ
ガース

「明日はランキング戦の準備のため、練習は無しだ。
せっかくの日曜だし、身体を休ませておけよ。」

『はい!』

「以上、解散!」

『お疲れっした!!』

こうして、この日の練習は終了。
対戦表はマネージャーのミナとミリーに任されることに。

「じゃあ、後はよろしく。」

「大変だけど頑張れよ。」

「任せておいて!」

「ちゃんとやっておきますから、ケイン達はゆっくりして。」

ケインとクルスの言葉にそう返事をする2人。
ちなみに1年生も手伝うことになっている。
テニス部のランキング戦は学校全体の注目の的である。
この時ばかりは他の部も活動を休んで見学にやってくる。
特にレギュラー同士の対戦はかなり見応えがあるとか。

「よし、気合い入れて取材するわよ!」

「頑張りましょうね、先輩。」

「俺も出たいな・・・。」

(シュダ先輩、頑張れ〜。)

報道部が一番活気付いてたりする。
果たして、レギュラーに残るのは?
そして、試合の行方は? 


Zi学アナザー、ついにランキング戦に突入!
その前と言うことで、こんなものを書いてみました。
本当はシュダのシーンを書きたかっただけですが・・・。
では、続きをお楽しみに。

 

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