「黒と蒼の大騒動」
〜遅刻までのカウントダウン〜

 

「・・・あれ?」

そう言って目を覚ましたのはスペキュラー。
辺りには何だかおなかが鳴りそうないい匂い。

「またシャドーの方が早く起きた・・・
ふああ!」

そう言ってあくびをする。
スペキュラーはリーゼやレイヴンほど朝は苦手ではない。

 

「あっ、おはようスペキュラー。」

「おはようシャドー・・・」

やっぱり今朝もスペキュラーは2番起き。

「いつも通りよろしくね。」

「うん。」

そう言われると、スペキュラーも朝の仕事を。
家事のほとんど(いや、全部かも・・・)は彼らがやっている。

 

さて、そんなことも一段落した頃・・・

「そろそろ起こして来なきゃね。」

「うん。
今日こそは何とかして起こさなきゃ!」

スペキュラーの言葉に、なぜかいつも以上に張り切るシャドー。
さてその理由は・・少し時間をさかのぼらせてもらいましょう。
それはある日の登校中・・・

 

「ねぇ、スペキュラーはどうやってリーゼを起こしているの?」

そう言って憂鬱そうに話を切り出すシャドー。
これは彼が朝の一番の悩みとしている事で、無理もないが。

「確かにレイヴン、なに言っても起きないもんね。」

そのセリフにスペキュラーは苦笑する。

「ホントに全然起きないんだもん。」

「だったら、レイヴンはレギュラーなんだから、その事でなんか言えば?
デス先輩も結構いい線行っているんでしょ?」

「う〜ん。確かに最近、みんなレベルが上がってきてるみたい。
レイヴンだって、負けてはいないけど。」

さらに沈むシャドー。
毎日毎日これなのだから、しょうがないが。

「仕方ないわね。
じゃあとっておきのを教えてあげる!」

「えっ?
とっておき?」

シャドーはその言葉に敏感に反応した。

「そう。
一番嫌ってることを言えばいいのよ。」

「一番嫌ってる…?」

シャドーは首を傾げた。

「たとえば、キース先生やシュバルツ先生、ゲイル先生に撮られた
あの写真やビデオを公開されるぞ、とか。」

「うん・・・」

さてさて、まだまだ続く。

「あとは、プロイツェンが玄関にきてる、とか。
ヒルツがリーゼをさらいに来た、とか。」

「それは確かに起きるね。
でも、」

はぁ、とシャドーは溜め息を吐いた。

「現実じゃないと分かったら、また寝ちゃうよ。」

「大丈夫・・・」

スペキュラーの目が怪しく光った。

「アンビエントに頼んで、
朝練に遅れたらヒルツに来てもらうようにしてあるの。」

「・・・・・・(汗)」

いつになく怖いスペキュラーであった。
今までリーゼも朝寝坊をしていたのだが、
最近になってちゃんと起きるようになった理由はこれらしい。

「でも、確かに使えるね。
最近はみんな腕を上げてるし。
レイヴンにはレギュラーをやっていて欲しいから、試してみようかな。」

「そうね。
本当にみんな腕を上げてて・・・
レイヴンもうかうかしてられないわね。」

「そうだよね。
う〜ん、でも本当に起きるかな?」

心配性なシャドーであった。

「じゃあ、保険掛けとく?」

「保険?」

「そうよ。」

またまたちょっぴり怪しいスペキュラー。

「いくらあのレイヴンだって、リーゼを使えば起こすことは容易だわ。」

「えっ!?」

「つまり、・・・耳貸して(ごにょごにょ)」

シャドーの耳元で何か囁くスペキュラー。

「確かに、それだと絶対に起きるね。」

それに呆れるシャドー。

 

・・・とまあそんなことがあったのだった。
さて、ところでスペキュラーはいかにしてリーゼを起こしているのか。
ちょっと覗いてみよう。

「やっぱり、まだ寝てる。」

さてさて、レイヴンのことはシャドーに任せて
スペキュラーはリーゼの元へ来ていた。

「リーゼ、起きなさい!
今日も朝練があるでしょう!?」

そう言って容赦なく揺り動かす。

「う〜・・・・」

が、これくらいで起きる彼女ではない。
布団にすっぽりと潜ってしまった。

「しょうがないわね。
やっぱり今日もあの手を使うしか・・・」

スペキュラーの目が光った。
と、リーゼの耳元で何か囁く。

がばっ!!

「やっぱりきくわね。」

ものすごい顔で起きあがったリーゼを見てスペキュラーはそう呟く。

「えっ、えっ、どこどこどこ!!!?
・・・あ、なんだぁ。夢かぁ。
良かっ」

「夢が現実になるかもしれないわよ!」

ここでトドメの一発。
こうでもしなきゃ、また寝てしまう。

「夢が現実にならないように、さっさと起きて!
朝練に遅れるわよ!!」

どんなことを言ったのかは、先の登校中の会話で分かるであろう・・・
少し乱雑なところもあるスペキュラーだった。

 

さてさて、制服に着替えてリビングに戻ったスペキュラー。

「あっ、シャドー・・・
え?もしかして上手くいかなかったの?」

そこには、憂鬱そうな顔をしたシャドーがいた。

「うん。
また寝ちゃった・・・」

思わず溜め息が漏れる。

「おはようスペキュラー、シャドー・・・」

「おはようリーゼ。」

「おはようございます。」

そんなことを喋っていると、リーゼも起きてきた。
シャドーはここでまた溜め息を吐いた。

「どうやったらレイヴンは起きてくれるんだろ?」

「仕方がないわね。
やっぱり保険を使うしか・・・」

こうしてみると、シャドーよりも数段強いスペキュラー・・・・

「リーゼ、ちょっと!」

「え!???」

スペキュラーによってレイヴンの部屋に引きずられていくリーゼ。

「なんであんなにたくましいんだろ?」

そんな光景を見て、さらに落ち込むシャドーであった。
彼が一番苦労している時間は、この“朝”だ。

 

「痛い、痛い、痛い!もう、何するんだよスペキュラー!!」

その頃リーゼは、レイヴンの部屋の前まで引きずられてきていた。

「リーゼ、ちょっと頼み事があるの。」

「へ?」

まったくここに連れてこられた趣旨が分からないリーゼ。
ちょっと疎いかも・・・朝のせいもあるかもしれないが。

「レイヴンはレギュラーだけど、
朝練に一つも遅れてることは知ってるわよね?」

「うん・・」

「最近、あのデス先輩を始め、
みんな腕を上げているのも知っているわよね?」

「うん・・・?」

「だから、レイヴンがレギュラー落ちになる可能性が出てきたの。
そこで、どうしても朝練に出て欲しいんだけど、シャドーじゃ起こせないから、
というわけでお願いね♪」

「えええぇ〜〜〜〜っっ!!」

スペキュラーはそう言うと、リーゼをレイヴンの部屋に放り込んだ。

「お願いだから、ちゃんと起こしてね♪」

どっちが本当の蒼い悪魔だか・・・

 

さてさて起こすのはリーゼに任せて、リビングに戻ってきたスペキュラー。

「どう?
上手くいった??」

「大丈夫。
上手くいくわよ。」

そう笑って言うスペキュラーに、
一抹の不安をシャドーは覚えたとか覚えないとか・・・

 

しばらくすると、レイヴンもリーゼもリビングにやってきた。
二人とも、顔を真っ赤にしてたとか。

「早く朝食を食べて行きましょ。
朝練に遅れるわ。」

そう言うスペキュラーに、3人は終始無言だったらしい。

 

さてさて、朝食も済み・・・

「リーゼ、早く行くわよ!!」

「ちょっと待ってよ!!」

どこかの部屋からそんな声が聞こえてくる。
因みに彼女、朝食はパジャマで食べた。

「レイヴン、早く!!」

「待て!
まだ終わってない!!」

こっちもどこかの部屋からそんな声が聞こえてくる。
そう、彼も朝食はパジャマで食べた。

「先行ってていいよ!
すぐ追いつくからっ!!」

「ちゃんと来てよ!!」

これはリーゼとスペキュラーの会話。

「先に行くよ、レイヴン!
ちゃんと追いついてね!!」

「分かった!!」

こっちはシャドーとレイヴンの会話。
というわけで、彼らは遅れるわけには行かないので先に出た。

 

シャドーとスペキュラーは大抵いつも一緒に登校している。
他愛もない世間話をしながら、学園に行くのが日課だ。
と、気が付くともう学園の前に着いていた。

「あれ?
結局レイヴンもリーゼも追いつかなかったね。」

「まぁ、まだちょっと時間があるからだいじょうぶでしょ。」

「そうだね。」

さて、そろそろ分かれ道だ。

「じゃあね、シャドー。
朝練頑張ってね。」

「うん。
スペキュラーも頑張ってね。」

こうしてスペキュラーはシャドーと別れた。

 

さて、ちょうどスペキュラーが着替え終えた頃・・・

バタンッ!

「セえぇーーーーーフっっ!!」

急に扉が開いたこと思うと、リーゼが現れた。
体中、汗だらけだ。

「おはようリーゼ。」

「おはよ〜、先輩。」

「おはよう。
なんとか間に合ったみたいね。」

さて、挨拶をした面々は・・・
上からフィーネ、サンダー、スペキュラーだ。

「早く着替えた方がいいわよ。
もうすぐミーティングが始まるから。」

「それじゃ、お先に失礼しま〜す!」

「先に行ってるね、リーゼ。」

「あぁ!ねぇちょっと待ってよ!!」

と、これは最近の恒例の会話。
リーゼはギリギリミーティングには間に合った。

「はぁ、はぁ…ギリギリセーフだね。」

「なんとか間に合ったわね。」

そろそろミーティングが始まる。
だが、この時間になっても来てない人もいるが。

「今日も全員そろわないわね。」

「まぁ、リーゼが来るようになっただけマシよね・・・」

どこからかそんな会話が聞こえてきたとか。

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*アトガキモドキ*
あうぅ…レイリーって、これが限界です(汗)
というか、レイリーになっていない(大爆発)
こんな物ですが、よろしくお願いします。


シヴナさんから頂きました。
本当、スペキュラーは強いですね・・・。
青い悪魔の本体かも・・・。(爆)
何気に従っているシャドーも可愛く、
レイリーに至っては・・・、いったいどんな起こし方をしたんだか・・・?
次はラウト達も見てみたいですね。

 

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