「闇の面影」

 

あなた以外を主人にするなんて思ってもいなかった。
あなた以外を守りたいと思うようになるなんて考えもしなかった。
僕の昔のご主人は、古代ゾイド人。
ご主人は優しいけれど・・・・いつも瞳に哀しい光を湛えている人だった。
僕はご主人が大好きだったんだ。
ある日、ご主人は僕を側に呼んでいつもより更に哀しげな眼で僕にこういったんだ。

『○○○○。よく聞いてくれ。』

なになに?ご主人?

『古代ゾイド人はもうすぐ滅びる。』

え?滅びる・・・・?

『デスザウラーは知っているね?
あいつを討伐するためにシースティンガーとグランドスティンガーが派遣されることになったんだ。
ハッ、愚かなことさ。
そんなことをしても、ますます滅びを早めるだけに過ぎないのに。』

ご主人・・・・・・・・

『俺以外にもそれに気づいた連中もいるようだ。
既に王とイヴの巫女がカプセルで眠りに就いたそうだよ。
でも情けない話さ、幼い巫女はともかく民を守る義務のある王が逃げ出すなんて。』

ご主人、なんだか辛そう・・・・

『デスザウラーを生み出してしまったのは古代ゾイド人共同の責任。
責任は取らなくちゃいけない。
だけどおまえ達オーガノイドには何の罪もない、おまえ達まで一緒に滅んでしまう必要はない!!』

やだよご主人なんでそんな事言うの?
オーガノイドは主の側にいられることが最大の喜びなのに。

『本当は他のオーガノイドも助けてあげたいけれど、あいにく俺の手元にカプセルは一つしかない。
だから○○○○、おまえがこの中に入って生き延びるんだ。
いいね?』

やだ!そんなの絶対にやだ!
僕は必死で抵抗したけれど結局カプセルに押し込まれてしまった。
嫌だ・・・・・ご主人、置いていかないで・・・・・
僕を一人にしないで・・・・嫌だ・・・・・・・

 

目を覚ました時、僕の回りには知らない人がたくさんいた。
僕はただ混乱して・・・・すぐにその場から逃げ去った。
どのくらい眠っていたのか見当も付かない。
ただ一つだけ、はっきりしている事がある。
もう、ご主人はどこにもいない・・・・・・・・・

 

それから僕は野良ゾイドになってあっちこっちを放浪していた。
ご主人がいった通り、古代ゾイド人は滅んでしまい、
代わって新たな人類が帝国、共和国と別れて世界を支配しているらしい。
そしてある日大勢の人間が僕の寝倉へやってくるといきなり僕を捕まえたんだ。
連れてこられたのはものすごく大きな建物だった。
後で知ったけれど、ここは帝国元帥、プロィツェンの屋敷なんだって。
そして僕は一つの暗い部屋に放り込まれたんだ。
そこには二つの人影があった。僕はただ恐くて恐くて・・・・・そのうちの一つに攻撃を仕掛けた。
ところがそいつは僕の攻撃を食らって倒れるどころか、ヒョイとよけて僕を押さえつけたんだ・・・
僕は暴れたよもちろん。でも、そいつの眼を見て僕ははっとしたんだ。
・・・・・・・似てる・・・・・・ご主人に・・・・・・・・・・
硬直しておとなしくなった僕からその人は首輪を外すともう一人いた人影に向かってこう言ったんだ。

『ぼくは・・・ゾイドが嫌いだ・・・・・』

と・・・・
その人はレイヴンというそうだ。
もう一人があの屋敷の主、プロイツェンなんだって。
レイヴンは「天才ゾイド乗り」と帝国軍からは言われているそうだ。
僕も彼のセイバータイガーと合体してみて心底そう思った。
でも本当にご主人によく似ている。
ううん、顔が似てるってわけじゃない。
性格もぜんぜん違う。
眼だ。
瞳に浮かべた悲しみの光が同じだったんだ。

『ゆくぞ。シャドー。』

『グルルル・・・・・』

あれから随分時間が経った。
今、僕に与えられた仕事はレイヴンの側にいて帝国のサポートをする事。
今、帝国は共和国と戦争をしているんだって。
そう、まるであの頃のように・・・・・
レイヴンはことあるごとにゾイドが嫌いって言ってる。
僕なんて大嫌いって言われちゃった。
でも、それでもいいよ?
僕は君の瞳に隠された光の意味がわかるから。
寂しくてさびしくてしょうがない眼だ。
寂しさを戦う戦う事で紛らわそうとしている眼だ。
僕と同じ・・・・・・・
だから・・・・君が新しい僕の主だ。

『この辺りはザコばかりだ。
もっとましなやつを探しに行こう。』

『グルル』

レイヴンの回りはいつも敵だらけだ。
でも、たとえ世界中の人間が君の敵になったとしても僕は君を守るから。

 

ねぇ、天国なんてあるのかどうかわからないけれどご主人、聞こえてますか?
今、僕はシャドーという名で頑張っています。
自分でもなんだか信じられないや。
あなた以外を主にするなんて。
あなた以外を守りたいと思うようになるなんて。
でも、もう決めた事だから。
見てて下さいね。


KUROKUさんからいただきました。
長い間ほったらかしにしてしまってすみません・・・。
そういえばシャドーの対の話、全然考えてなかったわけで・・・。
それどころか古代の話も考えて無いですね。
というより、人任せな部分が多かったり・・・。
いろいろと巡らせてはいるのですが、なかなか形にならないのが殆どです。
やっぱり矛盾をなくすのって大変ですね。
シャドーとその対、そしてレイヴン、と心情がよく書けて、直に伝わってきました。
KUROKUさん、どうもありがとうございました。

 

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