「小さな魔法使い」

 

 トトは珍しく朝の早いうちに起きた。
昨日の瑠璃の騒動で買い物が出来ず、
野菜料理しか食べられなかったので、
空腹で起きてしまったのだ。

「きょうこそ肉料理を食べてやる〜!」

その叫び声も力が入っていない。
クスリと笑っているサボテンを横目で睨んで、トトはドミナの町へ行く準備を始める。

「一応、剣は持っていこう。」

色々迷いながらも、何とか準備を終えたトトはドアを開ける。
すると、

「あれっ、アマレットちゃん。」

そこには郵便袋を持ったペリカンが立っていた。
アマレットとは郵便ペリカンの名前で、
ファディールの住人の手紙をどこにでも届けてくれるありがたい存在なのだ。
ただ気まぐれな性格なので、時々届くまで何日もかかることがある。
トトの家にはポストが気に入っているらしく、よく遊びに来る。
それもそのはず、トトのポストは家の周り一体のアーティファクトなのだから。
アーティファクトはマナの力が宿っているためか、人を惹きつける様な効果がある。
トトが声をかけると、アマレットは慌ただしい口調で話し始めた。

「トトさん、大変なのよ。
ドミナの町の外れにカボチャが大量発生しているのよ。
きっと悪い魔法使いが住民を皆殺しにする気なのよ。
私が安心して配達できないじゃない。
だ・か・ら早く何とかして。」

一方的に用事を言うと、さっさと飛び立ってしまう。
本当に気まぐれな性格である。
トトは頭をかきながら、彼女を見送る。

「ドミナには用事もあるし、とにかく行ってみるか。」

そう呟いて家を後にした。

 

 ドミナの町について、トトは町の人から詳しい話を聞いた。
どうやらカボチャが出来ているのは本当らしく、
町の人も困っているみたいなので、
トトは原因を調査することに。

「現場に行くしかないか。
ったく、何でこんな面倒なことに。
・・・んっ、あいつは・・・。」

ふと気がつくと、トトの前に見慣れた人物が歩いているのが見えた。
腰まで伸びた金色の髪に棒状の変な髪飾り、
手に持っているのはトトの剣より長い槍、間違いなかった。

「おいっ、ティアラ!何やってんだ、こんなところで?」

「あっ、トト!久しぶり〜!
何やってんのって、たぶんあなたと同じ理由だと思うけど。」

声をかけるとその女の子の方に駈け寄った。
ティアラはトトの幼なじみで、よく家に遊びに来ていた事もある。
槍の使い手でもあってトトと冒険に行くこともしばしば。
そして何よりトトのドミナの町に来たい理由というのが彼女である。。
実はトトは彼女の事が好きなのだ。

「てことは、お前もカボチャの始末か。」

「まあね、外であんだけ騒がれちゃかなわないから。」

「それもそうだな。
とりあえず、一緒に行くか。」

「ええ、いいわよ。」

話がまとまりティアラはトトと一緒に行動する事に。
ティアラと一緒に行くのは嬉しいのだが、トトには一つ気になっていることがあった。
それは、郵便ペリカンが言っていた「魔法使い」という言葉。
魔法使いはマナの力を使った魔法で攻撃してくるので、モンスターよりも少々厄介なのだ。

(早く片付けばいいけど。)

トトはそんな不安を胸にしまって先を急ぐ。
ティアラも後に続く。

 

 2人が町のはずれに到着すると、カボチャが嫌っていうほど生えていた。

「これじゃ、町の人も不安になるだろうな。」

トトがそう呟くと、カボチャの中に人影があるのを見つけた。

「ケケケケケケケケケケッ!」

「バド、そう言う笑い方止めて。」

「コロナ、お前も笑え。支配者スマイルだ。ケケケッ。」

「カボチャで世界を支配するの?バッカみたい。」

トトとティアラは近くの草むらでその二人の会話を聞いている。

「カボチャで世界を支配か。
確かにバカらしいぜ。
けど・・・。」

「あの二人って・・・。」

ひそひそ話をしていた二人は目を合わした。

『子供じゃん。』

2人揃ってそう言う。
そう、カボチャを作っていた犯人は子供なのだ。
年は7歳ぐらいで、背は二人ともトトの半分ほどしかない。
それぞれバドという男の子の方はフライパンを、コロナという女の子はほうきを振り回している。

『誰だっ!』

2人の声が聞こえたようで、子供達にが見つかってしまった。

「あちゃ〜、見つかっちった。」

「しょうがないわね、行きましょう。」

「O.K.」

見つかってはしょうがないと、トト達は勢いよく飛び出す。

「コロナっ!追い返すぞ。」

「カボチャにやらせればいいじゃん。」

「そういうのはこれからの課題だ。」

「ふぅ〜、頭冷やさなきゃダメね。」

しばらく言い合った後、バドはトトに、コロナはティアラに向かって突っ込む。
だが、ただの体当たりを避けるのは簡単なことだ。
案の定、2人は攻撃を楽に避ける。

「まったく、子供の相手かよ〜。
面倒臭せ〜なぁ。」

「本当ね。
まっ、少しお仕置きしないと。」

「それもそうか。」

2人は顔を見合わせて頷くと、それぞれの武器に手をかける。
バドとコロナは再び突っ込んできたがまたもや簡単に避けられ、
しかも今度は足をかけられたので、2人してそのまま顔から転んだ。

「いってぇ〜!よくもやったな!」

バドはそう叫ぶと、カボチャをトト達に投げつけた。
トト達はとりあえず避けたが、

ドカーン

カボチャが地面に着いた瞬間、突然カボチャが爆発、
トトは爆発の瞬間に前方に飛んで助かったが、
ティアラが爆風に吹き飛ばされてしまう。

「きゃあっ!!」

「大丈夫か、ティアラ!!」

「ほらほら、よそ見しない。」

今度はコロナがフルートを吹き出す。
すると、炎が二人めがけて飛んできた。
魔楽器を使って、炎の魔法を使ったのだ。
トトはとっさにティアラを抱えて避ける。

「ティアラ、大丈夫か。」

「ええ、何とか。
しかし、ちょっと厄介ね。」

「爆弾に魔法とはなぁ。
子供だからといってちょっと甘く見てたぜ。
しょうがない、一気にケリを付けるぞ。
いいか・・・。」

ティアラに耳打ちをする。
もちろん、子供達にばれないように。

「O.K.分かったわ。」

2人は立ち上がるとバド達に向かって、武器を構え直した。

「いくぜっ、地すり青眼!!」

トトは一直線に突っ込む。
バド達は慌てて避けようとしたが、彼は2人を通り越してしまう。
実は彼が狙ったのは二人の後ろにあるカボチャだったのだ。
トトはカボチャの茎を切って宙に放り投げた。

「ティアラ、今だ!」

「トト、伏せてて。
スターダストスロー!!」

ティアラはジャンプをすると、宙に浮いたカボチャに向けて槍を投げつけた。
槍はカボチャを貫通する。
当然カボチャは爆発、閃光に目がくらみ、バドとコロナは手で目を覆った。
その隙に、トトが二人の武器を取り上げる。

「チェックメイトだ。」

トトがそう言うと、二人は怖くなったのか逃げようとした。
だが、後ろには落ちてきた槍を拾ってきたティアラが。

「あなた達、観念しなさい。」

二人に睨まれて、バド達はようやく諦めたようで大人しくなった。
すると、バドが突拍子もないことを言い始める。

「すげぇっ!!俺を弟子にしてください。」

その言葉にトトは一瞬呆気にとられてしまった。
そんな彼をフォローするように、コロナが後を続ける。

「ごめんなさい、私たち双子の姉弟なんです。
私はコロナで、あっちはバド。
弟がいたずら好きでこんな事を。
それに私たち住むところもなくて・・・。」

反省をしているのか、それとも自分達の素性を話したせいなのか、
2人はしゅんとなってしまう。
トトはしばらく考え込んだ。
そして、

「まっ、いいか。」

と、あっさり了承。

「本当にいいんですか?」

「ああ、俺ってしょっちゅう冒険とかで長い間家を空けるから、
留守番に丁度良いしな。」

「あわわわ、心の広いというか何というか・・・。」

「じゃあ決まりね。
ねぇ、とりあえずこのカボチャを消してくれない。」

ティアラの言葉にコロナは頷くと、トトから返してもらったほうきを一振り。
するとカボチャがみるみる消えていって、そこはただの空き地になった。

「じゃあ、町に戻りましょう。」

ティアラがそう言うと、みんなは町に戻ることに
すると、

「ちょっと待ってくれ。」

トトが三人を呼び止めた。
そして、何かを抱えてティアラ達の元へ近付く。

「モンスターのヒナですね。」

「ああ、カボチャのつるに絡まってたみたいなんだ。」

見るとそれは丸い卵みたいな形をしていた。
トトの腕の中でブルブル震えている。
モンスターのヒナは敵から身を守るために、卵みたいな格好をしている。
そして、ある程度成長すると親と同じ姿になるのだ。

「悪いことしちゃったなぁ〜。」

「とりあえず私の家に行きましょう。
ここから近いし、十分な手当てができると思うから。」

「そうだな、・・・じゃあ、お前ら先に行っててくれ。
俺はちょっと買い物に行かなきゃな。
昨日もいってなかったし、それに新しい家族も増えたからな。」

そう言って双子達の頭を軽くなでる。

「じゃあ、先に行ってますね。」

「師匠、早めに戻ってきてね。」

トトはティアラにヒナを任せると、
双子達の声に笑顔で答えて市場へ向かった。

 

 しばらくして三人はティアラの家に着いた。
ティアラの家は宿屋と酒場、そして装備屋の近くにある一軒家だ。

「私はこの子の手当をするから、のんびりしてて。」

「は〜い。」

ティアラの言葉に返事をすると、さっそくその中を見て回る。
すると、双子達はあるものを見つけた。
それは積み木で作られた町。
棚の上に普通では気付かない程ひっそりと置いてあるのだが、
彼等は何かひかれるものを感じていた。
ティアラはそんな2人には気付かずに、ヒナの看病に没頭している。

 

 しばらくしてトトも家に到着。
もちろん買ってきた食材を両手に持って。
そして、双子の様子に気付いた。

「バド、コロナ、何やってんだ?」

「あっ、師匠。ちょっとこれが気になって。」

そう言ってバドは積み木の町を指さす。

「ああ、それはこのドミナの町のアーティファクトだよ。」

『ええ〜!!』

ドミナの町中に聞こえそうな大声で二人は叫んだ。
その声に驚いてティアラも出てくる。

「師匠達ってもしかしてあの伝説のアーティファクトマスター!」

「ああ、伝説ってほどじゃないけど・・・。」

「まあ、アーティファクトマスターっていうのは、本当ね。」

若干照れている2人の答えに、双子達は顔を見合わせた。

「すごい人に弟子入りしちゃったな。」

「うん。」

まぁ、2人が驚くのも無理はない。
今では、アーティファクトマスターと呼べる人達は希少なのだから。
トトがふぅ〜と息をつくと、ティアラが声をあげた。

「あっ、そうだ。
ヒナのことだけど、何とか元気になったわ。」

「そうか、じゃあ俺の家につれて帰るか。
ここじゃ住民のみんなに迷惑がかかるしな。」

「うん、そうして。」

にっこりと微笑むティアラの顔を見てトトの顔が真っ赤になる。
それをあの双子達が見落とすはずがなく、

「師匠、真っ赤になってる。」

「本当、顔も耳も真っ赤ですよ。」

「うるせ〜。」

こうしてカボチャ騒動は一件落着。
トトの家ににぎやかな家族が増えたのであった。。

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サボテン君日記

わるいまほうつかいがかぼちゃでせかいをせいふくしようとしたらしい。
かぼちゃだったらおいしいんじゃないかな。
でも、まずかったらどうしよう。ん〜。

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トト(?)の一言

いいわねあんたは気楽で      byティアラ

何でお前が?      byトト


これも結構長くなっちゃったなぁ。
でも、1ページに収まったからいいか。

 

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