「精霊の光」

 

 この出来事はティアラの一言で始まった。

「ねえねえ、トト。ロアに行ってみない?」

「・・・なんでまた。」

いきなり訪ねてきたティアラにそんなこと言われて、トトは完全に呆気にとられる。
まあ、いきなり言われるのは、双子でもう慣れてはいるのだが。

「実は・・・ちょっと用事があって・・・一緒に来て欲しいなぁ、って。」

何故か頬を少し赤らめて、モジモジしながら言うティアラ。
すると、

「トトさん、知らないんですか?」

今まで台所にいたコロナが話しかけてきた。
どうやら洗い物をしながら、トト達の会話を聞いていたようである。

「ロアって言ったら、有名なデー・・・。」

「わあぁーー、それ以上言わないで!」

慌てた様子でティアラが大声でコロナの声をかき消す。
しかも顔を真っ赤にして。
そんなティアラの様子を見て、コロナも驚いている。
その時、トトが口を開いた。

「まあ、ロアには一回言ってみたいとは思ってたから、別にいいけど。」

「本当に!」

トトの言葉を聞いて、目をきらめかせるティアラ。

「じゃあ、ついでに買い物してきてくれます?
ロアでしか売ってない物もありますから。」

そう言ってコロナは紙に何か書き始めた。
大方、買い物のリストだろうとトトは考えてた。

「はい、じゃあこれを買ってきて下さいね。」

「はいはい。」

コロナが紙を差し出す。
トトの思った通り、手渡されたのは買い物リストだ。
そしてティアラに腕を引っ張られて、トトは家を出ていった。

「あれ、師匠は?」

二人が出ていった後、バドが書斎からヒョッコリ顔を出した。

「ティアラさんと一緒にロアに行ったわよ。」

「ふ〜ん。そういえば、ロアって有名なデートスポットだよね。
師匠達、知ってて行ったのかなぁ。」

「う〜ん、ティアラさんは知ってたみたいだよ。」

そんな会話をしているバドとコロナ。
そして、こっそり後をつけようと思ったが、
この間、二人を冷やかして、晩飯抜きになったので止めた。

 

 その頃、トト達はリュオン街道を歩いていた。
ロアや他の都市に行くには、この街道を通るしかないのだ。

「そう言えば、用事って・・・。」

トトはとりあえずロアに行く理由を尋ねた。

「うん、私の知り合いがランプ屋をやっててね、
手作りでランプを作ってるから、結構評判はいいんだけど、
最近売れ行きが良くないんだって。」

「だからランプを買ってやろうって。」

コクリと頷くティアラを見ると、トトは何かに気が付いたらしく、
さっきコロナにもらった紙を取り出した。

「どうかした?」

「やっぱり・・・。コロナの奴、ちゃっかり『ランプ』って書いてあがった。」

「抜け目無いわね〜、コロナちゃん。」

紙にランプと書いてある。
それはすなわちランプを買ってこいという意味である。
さすが家事全般を仕切っていることはあるなぁ、と思いながらも、トト達は先を急いだ。

 

 しばらくして、二人はロアに着いた。
この町は昼でも夜みたいに暗いので、『月夜の町』と呼ばれている。
一説によると、いつも夜なのは、
闇の精霊・シェイドが多く集まるからだと言われている。
実際に町外れに行くと、たまにシェイドがいる事があるという。

「まるで夜だな。アーティファクトで見たとおりだ。」

町の入り口でトトが関心していた。
ちなみにロアのアーティファクトは、真珠姫からもらった『蛍袋のランプ』である。

「さあ、こっちよ。」

ティアラはそう言って再びトトの手を引っ張った。
その顔はどこか嬉しそうだ。
明かりが灯っているロアの町並みをしばらく歩いていると、
ロアの町外れに差し掛かった。

「あそこの階段を上がったところよ。」

ティアラが示した階段を上ると、ひときわ明るい建物があった。
看板にはネオンで『ライムライト』と書かれている。
ティアラを先頭に店の中に入る。
店の中は以外にも狭く、カウンターといくつかランプがあるだけだった。
おそらく後の部分はランプ工房になっているのだろう。
そのカウンターにはセイレーンと呼ばれる種族の女性が座っていた。
もっとも、セイレーンは女性しかいないが。

「は〜い、リュミヌー!」

「あっ、ティアラ!いらっしゃい。」

リュミヌーはかなりトーンの高い声で返事をした。
セイレーンは綺麗なほど歌がうまいとされているので、声も綺麗である。
そして、歌を歌い続けることが掟で、歌を歌わないと羽が枯れてしまうと言う。
しかし、その歌は『魔性の歌』と呼ばれ、海で聞くと船を難破させてしまう。
だから、船を沈めないためにもリュミヌーのように陸に上がってくるセイレーンもいる。
以上がトトが本で学んだ知識。

「そちらの方は?」

リュミヌーがトトのことをティアラに聞く。

「この人はトト。私の・・・。」

「彼氏?」

リュミヌーの突然の言葉に、トトとティアラは顔を真っ赤にしながらも、
首を横に振って否定する。

「ち、ち、違うわよ!た、ただの幼なじみ!」

「ふ〜ん、なかなかお似合いだからてっきり・・・。
でも、幼なじみで恋も芽生えるんじゃないの?」

あんまりにもズバズバ言うので、トトはもう何も言えなかった。

「あ、そうそう。ランプ売れてないんですってねぇ。」

とうとうティアラも否定しきれなくなり、話をすり替えた。

「そうなのよねぇ。後6個ぐらい売れて欲しいんだけど。
もう、店を閉めて海に帰ろうかしら。

ため息混じりで愚痴をこぼすリュミヌー。
すると突然、店の扉が開いた。

「リュミヌー、そんな悲しいこと言わないでくれよ〜。」

入ってきたのは上半身が人間で下半身が馬という、
ケンタウルスという種族の男だった。
ケンタウルスは詞や音楽、花を愛する上品な種族だが、
この男は見るからに軟派な性格みたいである。

「あら、ギルバード。でもこのままじゃ、おまんまの食い上げじゃん。」

「この愛の詩人、ギルバードのことを忘れないでくれよ〜、ハニ〜。
ランプだったら僕が売ってきて上げるよ〜。」

ケンタウルスの特性なのか、ギルバードの個性なのか、この男は歌うように喋る。
一方、トトとティアラは「ハニ〜」という言葉に、

(くっさ〜。)/(キザね〜。)

とそれぞれ心の中で感想を述べていた。

「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな。」

リュミヌーはそう言って、ランプを6つ、ギルバードに手渡す。

「じゃあ、ハニ〜。すぐに売ってきて上げるよ〜。」

ギルバードが店を出ていった後、ティアラは彼のことをリュミヌーに聞いた。

「彼はギルバード、私の幼なじみよ。昔はケンカばっかりしてたけど・・・。」

「今は恋人なの?」

ティアラの言葉にリュミヌーはコクリと頷いた。
どうやら彼女は結構ハキハキとものを言うタイプみたいだ。
そして、ティアラとトトがランプの注文をすると、

「実はさっきギルバードに在庫を全部渡しちゃったのよ。
すぐに作るからしばらく待っててくれない。」

その答えに二人は、

「別に構わないよ。ちょっと他に買い物があるから、この町をぶらついてるさ。」

「そうね、そんなに焦らないでいいから。」

と優しく声をかける。

「じゃあ・・・そうだな、1,2時間したらもう一回来て。」

二人は頷くと店を出ていった。

 

「さてと、買い物をしながら町の見物と行くか。」

「そうだね。」

そう言って2人が歩き出そうとした時だった。

「へ〜い、君達、ちょっと待ってよ〜。」

彼らの後ろから歌うような口調で呼び止められたので、トト達がその声の方に向く。
すると、そこにはランプを売りに行ったはずのギルバードが立っていた。

「君達もリュミヌーの話を聞いていただろう。
だったら手伝っておくれよ〜。
僕はハニ〜の為に自腹を切って半分買い取るから、
君達はもう半分を売ってきておくれよ〜。」

トトは冗談じゃないと思い、ランプを突き返そうとしたが、

「いいわよ、別に。」

「へっ・・・。」

ティアラの呆気ない一言に、喉まで出かかっていた言葉を一気に飲み込んだ。
彼女の首を突っ込みたがる性格がここで発揮されたのだ。

「じゃあ、頼むよ〜。
僕はここで彼女のために歌を作っているから〜。
・・・あっ、そうそう。ランプは一個1000ルクだから〜。」

ギルバードのいちいち語尾を伸ばす言葉も、トトの耳には入らなかった。
それだけ、ガックリしたのだろう。
トトは結局、ティアラのわがままに付き合うことに。

「それで、どうするんだよ。」

店からしばらく歩いた路地で、トトが尋ねた。
さっきから人っ子1人見当たらないのだ。

「だったら、町の中心に行ってみましょう。そこだったら人も多いんじゃない。」

彼女の言葉で、とりあえず中心部らしきところには来た。
だが、

「おい、・・・何処に人がいるんだよ。」

「・・・・・・。」

「アナグマばっかりじゃねーか!」

町の繁華街らしきところにいたのは、アナグマという種族だった。
アナグマはモグラのように穴を掘るのが得意で、
昔は炭坑の発掘によく利用されてきた。
今ではロアに住んでいるか、炭坑に住んでいるかのどっちかである。
ちなみにアナグマは人の言葉が話せない。

「どうするんだよ。」

トトがさっきと同じ質問をすると、

「まあ、何とかなるでしょう。
とりあえず、ちょっと一休みしよう。」

お気楽な一言に力無く頷くトトだった。
とりあえず近くのバーで休むことに。

「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ。」

バーのマスターの言葉に若干安心した2人は、カウンターへと進んだ。

「ねえ、マスター。ランプを買ってくれそうな人、知らない?」

ティアラがマスターに尋ねる。
ちなみにここのマスターはパズル人と呼ばれる魔法生物である。

「そうですね〜、この町にはアナグマしか住んでませんからね〜。」

その言葉にガックリする2人。
すると、

「なんでしたら、私がアナグマの言葉を教えて差し上げましょうか?」

「えっ・・・。」

その時、2人に希望の光が見えたという。

「私もこの店を始めて、ずいぶん立ちますからねぇ。
すっかり、アナグマの言葉を覚えてしまいましたよ。」

『ぜひ教えて下さい!』

 

 数十分が経った頃、2人が店から出てきた。

「よし、これでランプを売りに行けるな。」

「うん、イケる、イケる!」

それは別のゲームだろう、そんなトトのツッコミをよそに、
ティアラは早速、町のあちこちにいるアナグマに声をかけ始めた。
初めはなかなか言葉が伝わらず、苦労したみたいだが、
徐々に慣れてきたみたいで、

「よし、完売〜!」

「やったね!」

なんとか3つとも売れたようだ。
そしてギルバードに報告に行く。

「おお〜、全部売ってきてくれたんだね〜。
君達、すっごく素敵だよ〜。
さあ、リュミヌー。心の扉を開くときだ〜!」

売上金を貰うとギルバードは足早にランプ屋へと入っていった。

「あいつに素敵って言われてもね〜。」

トトがその言葉を言い終えた時、店からリュミヌーを連れたギルバードが出てきた。
そして、店の前で町を見渡しながら、

「リュミヌー、僕たちはこの日のために生まれてきたんだ。」

「ええ、ギルバード、夢を語り合いましょう。」

トト達は目の前で繰り広げられている光景を、ジーッと見ていた。

「そこらの若者に声を掛けてランプを売らせれば、
ランプは手間無く売れる。」

「ランプ作りは楽しくて、ついついのめり込んでしまう。」

「都会から有名なデザイナーを呼んで、素敵なランプを作ろう。」

「その辺のがらくたで奇妙な形のランプを作るの。」

「そうすれば何もしなくても、いつの間にか僕たちは大金持ち。」

「お金はないけど幸せ。これが今の私。」

全然かみ合っていないと思ったのは、トト達だけであろうか。

「リュミヌー!君には夢がないのかい!
そんな君の側にいると、僕はしおれてしまう・・・。」

「ギルバード・・・。」

「リュミヌー、僕は旅に出る。僕には愛が必要なんだ!」

「ええ、それぞれの愛を探しましょう。」

「さよなら、リュミヌー。」

「さよなら、ギルバード。さよなら・・・。」

ギルバードは去ってしまった。
リュミヌーも店に戻る。
後にポツンと残ったトト達は、

「別れちゃったね、あの2人。」

「夢と愛は違うっていうのにな。
とりあえずランプを取りに行こう。とっくに1時間経ってる。」

そう言ってトトは店の中へと入っていった。
ティアラも後に続く。
2人がリュミヌーに話しかけると、

「ギルバードってちょっと変わってるけど、本当はいい人なんだ。
でも、私のランプは小さいけど、彼はもっと大きなランプを求めているの。
でも、ランプの大小なんて関係ないわ。
だってそうでしょう。寝るときには誰だってランプを消すでしょう。
実はちょっとだけ沈んでいます。」

「リュミヌー・・・。」

その時、店の扉が開き、3匹のアナグマが店の中に入ってきた。

「ぐ〜、ぐま〜、ぐまままま!」

「まあ。」

「ぐ〜、ま〜、ぐまままままままま!」

「いえいえ、こちらこそ。」

「ぐま〜、ぐまぐま、ぐまままままままままままま!」

「どうもありがとうございました。」

言うことだけ言ってアナグマは帰っていった。
トト達はただあ然とするばかり。

「何、話していったの?アナグマ達。」

ティアラが聞くと、リュミヌーは嬉しそうに答えた。

「アナグマさん達、私の作ったランプを気に入ってくれたんだって。
これだからこの商売は辞められないのよね。
嬉しいからランプのついでにこれもあげるわ。
あっ、そうそう。ランプの代金はバイト代っていうことで。」

トトはランプを受け取ると同時にある物も貰った。
それは一見、銀のスプーンに見えた。
だが、トトは何かを感じた。
トト達はリュミヌーと別れて、ロアを後にした。

「トト、それもアーティファクトなの?」

リュオン街道でさっき貰った銀さじをずっと見ているトトに、ティアラが話しかけた。

「そうみたいなんだけど・・・、何か変なんだ。」

「何が?」

「持ってみれば分かる。」

そう言ってトトはティアラに銀さじを渡す。すると、

「確かに異様ね、他のアーティファクトよりも力が強い。」

「とんでもない所のアーティファクトかもな。」

そんな会話をしながら、トト達はドミナの町へと向かった。

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サボテン君日記

ろあっていうところで、あなぐまごをおぼえて、
らんぷをあなぐまにうったんだって。
なにやってんだかっておもうけど、
そんなことをじまんげにはなすところがいいかも。

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LOMキャラの一言

買い物終了!!   byトト

あっ、ニンジン忘れてる。   byコロナ


久々のLOM小説です。
結構見てくれている人が多いので、嬉しいです。
最近部活の方も忙しくなっているので、
あまりup出来ていませんが、
もうちょっと頑張ってみるのでよろしくお願いします。
では。

 

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