「星に願いを」

 

 ギラギラと太陽が照っている中、4つの影がどこかへと歩いている。

「暑い〜。
まったく、なんだってこんな事に〜。」

トトは額の汗を腕で拭いながら、愚痴を言っている。
いつも何かの愚痴を言いながら物事を進めるのがトトなのだが。

「もう、さっきから同じ事ばっかり言ってますよ!」

「さっさと見つけないと、とんでもないことになったって知らないわよ!」

コロナとティアラに言われ、
トトは渋々、果てしなく広がる砂の大地を再び歩き出す。
すると、

「おい、バドは?」

バドがいないことに気付いたトト。
太陽の光を手で遮りながら辺りを見渡すと、

「あっ、あんなところで倒れてる。」

ティアラが駆け寄ると、バドはグッタリしていた。
息も荒々しい。

「大変、日射病みたい。」

「ティアラ、水の魔法は?」

トトが魔法を使うように言うが、

「ここにはウンディーネがいないから、ちょっと無理・・・。」

「弱ったなぁ。」

魔法を使うにはその魔法の属性の精霊がいるところでなければならない。
そうでなくても魔法を使うことは出来るが、威力が格段に下がってしまうのだ。
いやそれ以前に初心者では、そんなところで魔法を使うことは出来ない。
トトやティアラが魔法を使い始めたのはつい最近のこと。
そんな芸当など出来る分けないのだ。
トト達が考え込んでいると、コロナが何かを見つけたらしく、声を上げている。

「トトさ〜ん!
あそこにオアシスが。」

コロナが指さす方向を見てみると、草木が多い茂っている場所が目に付いた。

「とりあえず、あそこで休もう。
俺達もいつ日射病になるか分からないからな。」

「ええ。
じゃあ、トト、バドを背負って。」

「分かってるって。」

トトがバドを背負ってオアシスへと急ぐ。

(ったく、なんでこんな事に)

トトの脳裏にその言葉とある光景が浮かんだ。

 

 今から1時間前。デュマ砂漠を訪れた4人。
この砂漠はメキブの洞窟の入り口がある道からかなり行ったところにある。
一行がここを訪れた理由は魔法の特訓のため。
もっとも、こんな所で特訓と言い出したのは・・・、

「はぁ〜、やっと着いたね、トト。」

「でも、なんだってこんな所で特訓をするんだ、ティアラ。」

そう、トトの家のトラブルメーカー、ティアラである。

「だって、マナの力が安定しているところって他になかったんだもん。」

「だもん、ってお前なぁ、どう見たって・・・。」

「ここ、火と風の精霊ぐらいしかいなさそうだけど・・・。」

バドがトトの言葉の後に続く。

「しかも・・・暑い・・・。
本当にこんな所でやるんですか?」

コロナが汗をハンカチで拭きながらティアラに聞く。
どうやら彼女は暑がりらしく、先程から口数が少ない。

「まあね、ここなら思いっきり汗を流せるし。」

もう十分流してるよ、心の中でそう呟く3人。
そうとは知らずにまだまだ話し続けるティアラ。

「それに、最近運動不足で、ちょっとお腹の辺りに肉が付いちゃって・・・。」

「付いた肉って贅肉じゃなくて筋・・・うぐっ!!」

トトが腹を抱えてうずくまってしまった。
ティアラが槍の尻でトトの腹を衝いたみたいである。
しかも思いっきり。
当のティアラは知らん顔。
双子はその光景を見て、思いっきり顔を引きつらせている。
すると、

「ねえ、バド。
あれって・・・。」

バドがコロナの目線の先を見ると、

「あれは・・・魔法学園の生徒じゃん。
何やってるんだろう、こんな所で。」

一行からかなり離れたところで、
この砂漠では必要ないだろうと思うほどの長めのローブと、
特徴のある帽子をかぶっている、
丁度バドと同じぐらいの背の子供が、数人うろついていた。
トトも起き上がって様子を見る。

「大変だ!」/「一大事だ!」

学生がそれぞれそんなことを言いながら、そこら辺をうろついている。
何が大変なんだかさっぱり訳が分からない。
トトがそんなことを考えていると、隣にいたティアラがいないことに気付いた。

「ねえねえ、君達どうしたの?」

案の定、トラブルメーカー・ティアラが早速事情を聞きに行っていた。

「また、余計な事に首を突っ込む・・・。」

トトは半分呆れていた。
そして、諦めていた。
もう、ああなったらティアラは止まらない。
無理に止めればまた腹を衝かれるに決まっている。
そんなことが体に覚え込まされている。
こんな彼女に惚れている自分が情けないと本当に思ったとか。

「俺達も行くぞ・・・。」

『は〜い!』

双子の返事を聞いて、トトも渋々ティアラのところに行く。
すると、ティアラが困っていた。

「どうかしたのか?」

トトが話しかけると、

「この子達、『大変なんです。』とか『一大事なんです。』とか
『困っているのです。』とかばっかり。全然事情が分からないのよ。」

と愚痴をこぼすティアラ。

「じゃあ、誰か話の聞けそうな人に聞くしかないな。」

「あら、いつになく協力的なのね。」

「またさっきの喰らったらたまらないからな。」

と腹をさすりながらトトはボソリと言った。
どうやらまだズキズキするらしい。
彼らが辺りを見回すと、

「バド、あの人!」

コロナが岩に座っている人物を見つけると、そこに向かって走りだした。
バドもそれに続く。
トト達も何がなんだか解らずに後を追った。

『カシンジャ先生!』

「おや、お前達かい。久しぶりだねぇ。」

その獣人の女性−カシンジャ−は双子達を見ると、嬉しそうにして挨拶した。
彼女はどうやら魔法学園の教師のようだ。
トト達もバドとコロナが魔法学園に通っていたという話を、
以前に聞いた事がある。

「ところでどうしたんですか?」

コロナがカシンジャに尋ねた時、丁度トトとティアラが駆けつけた。

「実は、お前達もメフィヤーンスは知っているね。」

バド達がコクリと頷くと彼女はそのまま話を続けた。
ちなみにトトがバドにメフィヤーンスについて聞くと、魔法学園の校長の名前だという。

「図書館から何かの魔導書を持ち出して、この砂漠に隠れちまったんだ。
あいつは魔法の事になると、周りが何も見えなくなってしまう。
だから何かしでかさないか心配なんだ。
どうしたものか・・・。」

すると、

「先生、私たちも手伝いますよ。」

コロナが声を上げた。

「トトさん、いいですよね?」

「ああ。」

クルッと後ろを向き、トトに同意を求める。
トトも頷いた。

「そうだね、全員で手分けすりゃ何とかなるってもんよ。
よし、お前達!」

そう一声上げ、そこらをうろついていた生徒達を集める。

『なんですか?親分!』

「誰が親分だ!」

いきなりそう呼ばれたので、カシンジャは生徒達を睨み付けて怒鳴った。
生徒達も脅えてしまった。

「せんせ〜、睨まないで下さい。」

「爆発しちゃうよ〜。」

どうやら彼女はバジリスクの血を引いているらしく、
見つめた者を爆発させたり、石にしたり出来るらしい。

「まったく、根性足りてないね!
私たちもメフィヤーンス達を探すんだ。」

『オー!』

そして、カシンジャはトトに向かってこう言った。

「この子達も協力するけど、
中にはメフィヤーンス組の奴らもいるから注意しておくれ。」

「分かった。」

トトの返事を聞いて、カシンジャ達は砂漠の奥へと走り出した。
結局、トト達もこの広い砂漠での人捜しを手伝う事になった。

 

バッシャーーーン!!

水をかける音がオアシスに響きわたった。
ティアラが水の魔法を使ったのだ。

「バド、大丈夫か?」

「んっ・・・!」

トトの呼びかけに答えるかのように、バドがゆっくり目を開けた。
その瞬間、3人とも安堵のため息をつく。

「心配させるなよ。ったく。」

そう言って軽くバドの頭をなでるトト。

「結構いいお兄さんしてるじゃない。」

ティアラの言葉に彼は少し照れた。
すると、彼女は魔法楽器を再び奏でだした。

「水の精霊ウンディーネよ、津波を起こせ、スプラッシュストーム!」

水の魔法を唱えて全員に水をかける。
ただし、威力を抑えて。
この魔法は水系でもかなり上級のものなので、
まともに使ったらただでは済まない。
ちなみにコロナが火と金、バドが木と土、
ティアラが水と闇、トトが風と光の魔法を使っている。

「う〜、気持ちいい!」

「生き返る〜!」

水を浴びて、それぞれが歓声を上げる。

「よし、こんなもんでいいわね。
じゃあ、さっさと先に進みましょう。」

「そうだな、バドももう良さそうだし。」

4人はオアシスを後にして、どんどん奥へと進んだ。
モンスターを倒したり、
メフィヤーンス組と思われる生徒達をうまく撒いたりしながら、順調に進んでいる。
そして、小高い丘が見えてきた。

「ねえ、トト。あそこに何かあるよ。」

ティアラに言われ、トトが見てみると、
何やら大砲みたいなのがあった。
すると、

「おーい、あんた達!」

後ろから声がしたので彼らが振り向いてみると、

「カシンジャ先生!」

カシンジャがトト達と合流した。

「一つ言い忘れていたけど、メフィヤーンスは2人分の魔力を継承してるんだ。
うかつに近付くと危険だよ。
覚悟はいいかい?」

全員が頷き、カシンジャを先頭に大砲の方へと走っていった。

「メフィヤーンス!!」

彼女が叫ぶと、丘の上の方で指揮を執っている人物がトト達に気が付いた。
その近くの大砲では、生徒達が作業をしている。
頭には2本の角、体格もトトより一回り大きい。
どうやらメフィヤーンスは悪魔族らしい。
悪魔の中の一握りは人間の世界に溶け込んでおり、
住人として暮らしている。
だが、たった1体でも恐るべき力を秘めている。

「何をしようとしているのかは分からないけど、
図書館から持ち出した魔導書は返してもらうよ!」

「ああ、あのボロ本ならいらなくなったから処分してしまった。」

「なんだって!」

重い声で返ってきた答えに、カシンジャは相当驚いていた。
彼女の様子だと相当大事なものらしい。

「全て暗記した。
なかなか有能な事が書いてあったよ。
例えば・・・、星を生み出す術。」

「まさか、その大砲は・・・。」

カシンジャが、今生徒が何か作業をしている大砲を指した。

「それだけではない。
星を思うがままに操る術も試すつもりだ。」

「まさか、星を・・・、星を落とすつもりか。」

「そう、人間達の街を壊す。
それが我ら魔導を与えられた者の権利だ。」

「完全にイッちゃってるみたいだな、あのおっさん。」

トトがポツリと漏らす。
そして、

『させるかーーー!』

と全員が飛びかかったが、

「遅い、遅い。」

そういってメフィヤーンスが手を差し出し、衝撃波を放った。
そのせいでトト達4人は先程カシンジャと合流したところまで、
カシンジャはそれよりももっと遠くへと飛ばされてしまう。

「あのおっさん、ふざけんなよ!」

そう叫んでトトが戻ろうとしたが、突然2羽の鳥が現れた。
しかも大きさがトトぐらいある。

「アックスビークか。
まあ、運動にはなるな。
いつまでも寝てないで、行くぞ。」

気が付くと3人はまだ倒れていたので、トトが捲したてる。

「バドは俺と、ティアラはコロナとペアでいいな。」

「O.K.」

そして、戦闘開始。

「木の精霊ドリアードよ、魔性の花を咲かせ、ローズパニッシュ!」

まずバドが無数のバラの花で相手の動きを止める。
その隙にトトが剣で斬りつける。
一方、

「火の精霊サラマンダーよ、すべてを焼き尽くせ、ノヴァプリズナー!」

「闇の精霊シェイドよ、闇で全てを飲み込め、ダークスフィア!」

ティアラとコロナはそれぞれ火と闇の魔法を放ち、相手にダメージを与えていく。
すると、アックスビーク達が口を開き、ドラゴンさながらのブレス攻撃を仕掛けてきた。

「ちっ、風の精霊ジンよ、竜巻を起こせ、トルネードクロス!」

トトが魔法で相殺させる。
そして間髪入れずに剣で攻撃するも、くちばしで受けられてしまい、
強烈な蹴りを喰らってしまった。
アックスビークは飛べないため、足が異様に発達している。
その為、蹴りも強力なのだ。
こうしている間にも星を生み出す準備が進められている。
もはや一刻の猶予もなかった。
トトはある決意をした。

「ティアラ、時間がない。奴らを一カ所に集めるんだ!」

「O.K.」

ティアラと双子は魔法と自分の武器を駆使して、アックスビークを一カ所に集める。

「後は俺の体が持つかだなぁ。」

剣に精神を集中させる。
そして、敵が一カ所に集まった。

「いっけぇ、乱れ雪月花!!」

トトの必殺奥義がアックスビークを直撃。
敵はその場に崩れ落ちた。

「やった・・・ぜ。」

気が抜けたのかトトもその場に倒れる。
ティアラ達が慌てて駆け寄る。

「トト、大丈夫?」

「まあな、この前よりは負荷も少なくて済んだよ。」

そう言って立ち上がるトト。
彼も結構レベルを着実にあげているのだ。
すると、

「お前達、大丈夫だったかい?」

カシンジャが駆け付けてきた。

「あいつ、あたいを砂漠の外まで飛ばしやがった。
今からでも遅くない。急ごう。」

トト達は再び大砲へと向かった。

「メフィヤーンス!!」

「一足遅かったな。見るがいい。」

生徒達が導火線に火を付ける。

「しまった。」

「ファ・ディール最大のショーの始まりだ。」

導火線の火が大砲の中に入り、星らしき物が空に撃ち上がった。
だが、

「ヒュ〜〜〜、ドカーン!」

「綺麗な花火。」

ティアラが思わずいった一言に、みんな苦笑。
メフィヤーンスは唖然としている。
そう彼は花火を打ち上げてしまったのだ。
しばらく沈黙が流れ、

「まぁ、何事もなかったし、よしとしなきゃな。
これはほんの礼だよ。」

そう言ってカシンジャはトトに、
珊瑚で出来た燭台と壊れている操り人形を手渡した。
これもアーティファクトだということが分かった。

「ここの処理はしておくから、あんた達はもう帰りな。」

「じゃあ、お言葉に甘えて。」

『カシンジャ先生、さようなら。』

そう言って砂漠を後にした4人であった。

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サボテン君日記

さばくでこだいまほうのじっけんをしたらしい。
そのじっけんはぼくもまどからみえた。
きれいなはなびだった。
こだいのひとはすけーるがちがうな。
こころのすけーる。

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LOMキャラの一言

綺麗な花火だったねぇ。   by ティアラ

ホントにのんきな奴・・・。   by トト

同感!   by バド&コロナ


やっと書き上げた。
結構長くなったなぁ。
どうも、戦闘シーンがうまく書けません。
次は、海の話ですね、たしか。
まだ春だって言うのに・・・。
では。

 

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