「砂浜のメモリー」

 

「暑いなぁ。」

トトは自宅の2階でそう漏らした。
季節はもう夏、暑さはかなりのものである。
ラビもなんだか元気がない。
バドとコロナも夏バテ気味。

「流石に何とかしないと・・・、このままじゃ一家全滅だぜ。」

そんな大げさなと思うが、このままだと、
「夏バテで動かない」→「誰もご飯を作らない」→「一家全員餓死」
という方程式が成り立ってしまうのだ。

「でも、考える気力が・・・ない。」

そう言って再び寝転んでしまうトト。

「こういう時、奇跡って起こるモンじゃないのかなぁ。」

彼は殆ど他力本願モードになっている。
その時、耳慣れた声が聞こえてきた。

「トト〜、いるの!?」

奇跡が起きた・・・かも。
そう思ったトトは窓から顔を出した。
すると、思った通りの人が立っていた。
こんな暑さでも平気でいる女の子、ティアラである。
この時、トトには彼女がマナの女神よりも綺麗に見えたという。

「お前は元気だなぁ、こんな気候だっていうのに・・・。」

「まあね。
それで、ちょっと提案があるんだけど・・・。」

「何なんだ?
っても、こんな所でウダウダ話してても仕方がないから、入ってこい。」

「O.K.!」

元気よく返事をすると、ティアラはトトの家へと入る。
トトもそれに伴い、1階へと降りていった

 

コロナがアイスティー3つとアイスコーヒーを1つ持ってきた。
いいかげん冷たい飲み物を飲まないと、話どころではないので、
トトが入れさせたのだ。
殆ど無理矢理だが・・・。

「それで、提案ってのは?」

アイスコーヒーを飲みながらトトが尋ねる。
ちなみに彼はブラックが好みだ。

「簡単よ。
海に行こうかな〜、って思って・・・。」

『海〜〜〜!』

そう言って喜んだのはバドとコロナ。
この様子からだと、さっきまで夏バテしていたとは思えない。

「海・・・か。まあ、いいや。
涼しい所に行かないとやってられないぜ。」

トトは珍しくあっさり了承。
そして、さんざん話し合った結果、翌日の朝に出発となった。
だが、トトを困らせたことが1つだけ・・・。

「トト、今日は泊まってもいい?」

「・・・えっ?」

またかよ、と思いつつ、これもあっさり可決。
彼が彼女のいう事を断れないというのもあったが、
ティアラがちゃっかりと泊まる用意をしていたのが、一番の理由である。

「また、今日も眠れないな・・・。」

喜んでいる3人をよそに、トトがボソリと言った。
そんな彼を見て、ラビがクスクス笑っている。
そんなこんなでその日は終了。

 

 翌日・・・、

「天気、快晴。降水確率ゼロ。」

ティアラが両手で空を仰ぐ。

「お弁当よ〜し。水筒よ〜し。」

コロナがリュックの中身をチェック。
すると、

「バドよ〜し。」

トトがバドの頭をなでながらそう言った。

「俺は荷物じゃないやい!」

実際そうだろ、と3人は思ったが、
流石に可哀想なので、口に出すのは止めたみたいだ。
そして、4人と1匹は出発。
道案内はトト。
実はこの間、バド達の恩師、カシンジャから貰った珊瑚の燭台が、
トト達の目的地、マドラ海岸のアーティファクトだったのだ。
燭台に神経を集中させ、『記憶』を頼りに道を進んでいく。

 

 リュオン街道で雑魚モンスターがわんさか出てきたが、
魔法攻撃を有効に使い、どんどん蹴散らしていく。

「はぁ〜、いつもどこかに出かける度に、これだもんな。」

倒れているモンスターを見ながらトトが呟く。

「なんだか最近、モンスターが凶暴化してる様に感じるんだけど・・・。」

「マナの力が関係しているのかな。
モンスターもある程度マナを持ってるから。」

「1回、調べてみるか。」

そう言って彼らは街道を後にした。

 

『海だーーー!』

「いやっほう!」

広大な海原を目の前にして、思いっきりはしゃぐ一同。
実はバドとコロナは海が初めて、
トトとティアラは幼い頃に来たっきりである。
そんな彼らを祝福しているかのように、潮風がそよいでいた。
すると、

「ねえ、アレ、何かな?」

ティアラが指さす方向を見ると、

「ペンギンが2匹・・・だな。」

「しかも・・・海賊の・・・ですね。」

「でも、船がないよ。」

バドに言われて、トトは不思議顔。
そして、

「ねえ、近くに行ってみない?なんだか面白そう。」

「またそうやって厄介事に首を突っ込む。
いつも迷惑かかっているのはこっちなんだぞ。
だいたい・・・、ぐふっ!」

またもやティアラの槍が炸裂。
トトは腹を抱えて、うずくまってしまった。
さらに追い打ちを掛けるかのごとく、足で蹴りまくる。
その目は完全にキレていた。

「ふぅ〜、やっと大人しくなったわ。じゃあ、行きましょうか。」

『は〜い・・・。』

ティアラの笑顔がよっぽど怖かったのか、
コクコクと頷きながら、苦笑いで返事を返す双子とラビ。
まったく動かなくなったトトを放っておいて(酷い)、ペンギン達に近付いていく。
本当にトトに惚れているのであろうか、彼女は・・・。

「ああ、愛しのヴァレリちゃん。
あっしは悲しいでやんす。」

「デイビッド、私も寂しいわ。
もうお別れなんて。」

2匹のペンギンがそんな事を言っている。
その会話を聞いて、近くのヤシの木から覗いていたティアラ達は、

「ねぇねぇ、アレって別れ話かな。」

「そうは見えませんね。
たぶん、別れを惜しんでるんですよ。」

「海賊って殆どの生活が海だからね。」

といろいろと考察中。

「デイビット、ほら、カニがたくさんいるわよ。キャハ!」

「そうでやんすね、何匹いるカニ・・・何つって。」

一瞬デイビッドの場の空気が凍り付いた後、

「ねぇ、デイビッド。
私ね・・・。」

「どうしたんでやんすか?ヴァレリちゃん。」

何故か恥ずかしそうにいうヴァレリ。
その証拠にモジモジしている。

「ううん、やっぱりいいわ。1人で暖めるから・・・。」

そう言って、洞窟の方へと向かう彼女。

「暖める、って・・・。
もしかして、卵を生んだんでやんすね、ヴァレリ!」

かなり喜んだ様子で、デイビッドは彼女の後を追いかけた。
草むらでそれらを見ていた3人と1匹は、

「面白くなってきたわ。
さあ、後を追いかけるわよ、2人共!」

『は〜い!』

バドとコロナはだんだん乗り気になってきたのか、
さっきとはうって変わり元気よく返事をする。
そして、颯爽とペンギン達の後を追いかけた。

 

 洞窟の中はモンスターでいっぱいであった。
しかも、殆どが水属性を持っているので、
ティアラの水の魔法やコロナの火の魔法が聞きにくい。
仕方がなく、コロナは金属製の魔法を、
ティアラは槍を振り回しながら、奥へと進んでいった。
だが、

「参ったな〜、あの2人見失っちゃった。
おまけに・・・ここ何処〜?」

どうやらモンスターのいない方へ、いない方へと進んでいるうちに、
迷子になってしまったみたいだ。
辺りを見回しても同じ景色が続くばかり。
彼女たちが途方に暮れていると、

「キャアーーー!」

洞窟全体に響くような悲鳴が聞こえてきた。

「あれってさっきのペンギンの声じゃ・・・。」

「あっちだ、行ってみよう!」

バドが示す方向にひたすら走る3人。
すると、大きな広間に出た。
そして、その奥には例の2人と、
とてつもなく大きなカニがいた。
その大きさはあのドゥ・インク並である。

「ヴァレリちゃんには指一本触れさせないでやんす!」

デイビッドは傷だらけになりながらも、彼女を庇っている。
すかさず、ティアラが魔法を唱えた。

「水の精霊ウンディーネよ、津波を起こせ、スプラッシュストーム!」

巨大な水柱がお化けガニを直撃したが、ただ気を逸らすだけしか出来なかった。

「あいつ、水属性を持ってる。」

「炎の精霊サラマンダーよ、全てを焼き尽くせ、ノヴァプリズナー!」

「土の精霊ノームよ、岩を降らせ、ロッククラッシュ!」

炎と地の魔法を放つが、まるで効果がない。
そして、お化けガニがティアラ達に向かってきた。

「闇の精霊シェイドよ、闇で全てを飲み込め、ダークスフィア!」

闇の魔法を放つティアラだったが、これも効果がなかった。
お化けガニは巨大なハサミをティアラ目掛けて振り下ろしたが、
彼女は横に飛んで避ける。

「くらえーーー!」

今度はバドがフライパンで思いっきり叩くが、自分の手が痺れただけ。

「いってぇ、なんて固い奴なんだよ、あのカニ!」

お化けガニは彼の方を向いて、目からビームを放った。
辛うじて避けるバドだが、ビームが当たった床は熱で溶けていた。

「おっかない奴ね。
これでも喰らいなさい、スターダストスロー!」

ティアラがお化けガニの目に向かって槍を投げる。
これが見事にあたり、片目を潰した。

「ヤッター!」

だが、彼女が喜んでいるのも束の間、
お化けガニはものすごい勢いで飛び上がり、
ティアラとバド目掛けて落ちてきた。

「うわっ!」/「キャア!」

下敷きにはならなかったが、衝撃波が彼女たちの体を襲う。

「ティアラさん!バド!」

先程からデイビッドの手当をしていたコロナが思わず声を上げる。

「あっしがもう少し強ければ、こんな事には・・・。」

「デイビッド、そんなに自分を責めないで。」

「2人共、私が引き付けるから、その間に逃げて!」

そう言って駆け出すコロナ。

「金の精霊アウラよ、光の槍を我が手に、プラチナスピア!」

金色に輝く槍が何本も相手に向かって突き刺さるが、
固いからに阻まれてしまう。
お化けガニはコロナ目掛けて泡を吹きかける。
すると、彼女は泡の中にスッポリと入ってしまった。

「何なのよ、この・・・泡・・・は・・・。」

泡が弾くとコロナは眠らされていた。
お化けガニはなおも彼女に迫ろうとする。

「ヴァレリちゃん、あっしが奴を引き付けるでやんす。
その間に、早く・・・。」

「何言ってんの。
そんな体じゃ、あなた、死んじゃうわ!」

ヴァレリが涙ながらに訴えるが、彼の目は本気だった。

「あっしはこれでも海賊の一員。
ここでおいそれと逃げ帰ったら、みんなに笑われるでやんす。
それに・・・、卵を守るのが雄の役目でやんす!」

彼はそう言うと全身の力を振り絞って立ち上がり、
カニに目掛けて突っ込んでいった。
が、くしくも弾かれてしまう。

「いったぁ〜!」

思いっきり床に叩き付けられてしまう彼に向かって、
ビームが放たれようとしていた。

「デイビッド、逃げて!」

ティアラが叫ぶが彼は動けずにいる。
そして、ビームが放たれようとした瞬間、

「風の精霊ジンよ、竜巻を起こせ、トルネードクロス!」

突然広間に竜巻が発生、お化けガニはビームを発射できなかった。

「ふぅ、間に合ったぜ!」

「トト!」/「トトさん!」/「師匠!」

入り口にトトとラビが立っていた。
そう、竜巻を起こした張本人こそ彼だったのだ。
そして、トトを呼びに行ったのがラビであった。

「しかし、よりにもよってフルメタルハガーとは、お前達とんでもない奴を相手にしたもんだな。
まあ、片目を潰しただけでもよしとするか。」

そこまで話すと、トトは剣を抜いて、相手に向かって突っ込んでいった。
それを見てフルメタルハガー(お化けガニ)もハサミを振り下ろすが、

「遅いんだよ、スプラッシュブレード!」

素早く横に回り込んでそのハサミを切り裂いた。
痛みのあまりにのたうち回る。

「あんなに固かったのにどうやって・・・?」

「だいたい、こういう奴は間接がもろいもんさ。」

バドの質問にととは簡単に答えた。
だが、いくら分かっていても、そう簡単には切れない物である。
これはトトだからこそ出来だ芸当なのだ。

「さてと、覚悟して貰おうか!」

相手はトト目掛けてビームを放とうとするが、

「さっきのお返しよ、光槍弾!」

ティアラがすかさず光の槍を投げ、相手のもう一方の目を潰した。

「いっけぇ、乱れ雪月花!」

トトの奥義が炸裂。
フルメタルハガーは全部の間接を切り裂かれて、その場に崩れた。

「やったぜ!」

「もう、美味しいところだけ持って行くんだから。」

 

外はすっかり夕暮れ。
デイビッド達は再び別れの挨拶を交わすことに。

「もう行っちゃうのね、デイビッド。
でも、あなたの格好いい面を見られて嬉しかったなぁ。」

「ヴァレリ、それで、卵は・・・。」

「ああ、あれはただ『もし、卵が生まれたら1人で暖める』っていうことよ。
おかしいでしょう。」

「なんだ、そうだったでやんすか。
それじゃあ、ヴァレリ。達者で暮らすでやんす。
いつか、ペンギン100羽を従えた海賊のキャプテンになって、
帰ってくるでやんす。それまで・・・元気で。」

彼はそう言って船の方へと戻っていった。

「デイビッド・・・。」

「ふふふふ、素直じゃないわね。」

ティアラ達が物陰から出てきた。

「卵、本当は生んでるんでしょう?」

「ええ。でも、
『海賊になって、ヴァレリちゃんが襲われないように、
海の魔物は全部倒すんだ』って、
彼が子供の頃からそう言ってたわ。」

「まぁ、あいつなら出来るだろうよ。
あんだけガッツがあるんだから。」

「はい!」

トトの言葉に嬉しそうに頷くヴァレリ。

「あと、これは助けていただいたお礼です。」

そう言って差し出したのは、さびたイカリと、水が入った器だった。

「こいつは・・・『月読の鏡』だな。
前に本で見たことがある。
確か月読っていう一族が、人の宿命を見るために使ったとか・・・。」

「人の宿命・・・。」

「まあ、宿命なんて自分で決めるもんだけどな。」

トト達はヴァレリと別れて海岸の入り口まで戻ってきた。

「さてと、このまま帰ったら、夜を通り越して朝になっちまうな。
どうする?」

「そうね・・・、確かここはポルポタに近かったわね。
どうせだったらそこに泊まりましょうよ。」

『賛成〜!』

満場一致で港町ポルポタに向かう4人と1匹。
そこで彼らは驚くべき人と再会する。

続く

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サボテン君日記

うみにいったら、ぺんぎんがあいをかたりあっていたんだって。
ぺんぎんがこいをするなんてしらなかった!

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LOMキャラの一言

今日も大活躍!   by トト

目を潰しておいたのは私でしょう!   by ティアラ

僕たちって・・・一体・・・   by バド

次頑張りましょう、次!   by コロナ


どうも、久々のレジェマナです。
トトが良いとこ持っていって、主人公ぶり健在ですね。(笑)
来週は瑠璃が登場。
それに・・・お化け騒ぎも。
んっ、・・・なんか物音が・・・。
不気味なので、これで。

 

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