花とお伽と仮初の永久

 

 ずっと一緒に、永遠に2人で・・・。

どんなに信じていても、運命の廻り方次第で簡単に覆される陳腐な言葉。
時間が止まった日から、捨ててきた言葉。
でも・・・今なら、信じられるかもしれない・・・。

1週間帰らなかっただけで、ここまで雰囲気が変わるなんて思わなかった。
1週間前までどこからか血の臭いでもしてきそうだったこの家の周りには、
白い花が咲き乱れている・・・。
1週間前に芽を出したものだろう。
記憶の隅に留まっていたお伽話に出てくる家を彷彿とさせる光景・・・。
彼女はこれを本当に1週間で育て上げたのだろうか。

「おかえり、レイヴン!」

「!?」

一体どこにいたのだろう・・・、
突然顔を出されて思わず後ずさった。

「・・・いきなり出てくるな、心臓に悪い・・・。」

「ごめん、驚かせちゃったみたいだね。」

悪びれずにそれだけ言うと、彼女・・・リーゼは古ぼけた植木鉢に目をやった。
そこには見事なスズランの花・・・ゾイドイヴにいく途中で貰った種を育てたものらしい。
彼女が育てている植物の中でも気に入っているらしく、暇さえあればいつも眺めている。

「幸せ・・・還ってきたね。」

振り返った彼女は、本当に嬉しそうで・・・、
今の幸せが続くことを心から信じているようで・・・。
幸せなんて、壊れてしまうのに・・・。

「ああ・・・多分な。」

今の彼女には、皮肉に聞こえたかもしれない。

「多分、かなぁ・・・?」

「いつ軍警察が来るか分からないからな。」

一度はバンが見逃してくれたが、次もそうとは限らない。
いつ止まるか分からないのに、幸せな時間が続くことを信じ切っては行けない・・・。
でも・・・。

「いいんだよ、今だけでも。」

「・・・そうかもな・・・。」

スズランの花言葉は《幸福が還る》
今だけでも幸せであることを喜んでいるのは、俺も同じか・・・。
微かに、自嘲する。
そういえば、彼女に渡したい物があった。

「・・・リーゼ。」

「ん?」

「手を出して見ろ。」

「・・・?」

訳が分からないのか、首を傾げつつも言う通りにしてくれた。
小さな白い手に、自分の手をそっと重ねる。

「わぁ・・・・・・・・・・・・。」

重なったままの手を離した後、リーゼが嬉しそうに目を輝かせた。
手の中にあったのは銀色の指輪。

「・・・永遠なんて信じる気はないが・・・形だけでも“永遠”にしたかったから・・・。」

言いながら、左手の薬指に指輪をはめてやる。
不思議な色の目を見開く彼女の額に、そっと口付けた。

《END》


この小説は「エレミアの白い家」の雛菊さんに、キリ番を踏んで頂きました。
本人は「激甘だ」と言ってますが、
甘党の私としてはこのぐらいが丁度いいです。
(うちの小説はLOVE未満の物ばっかり)
どうか彼らには幸せになってもらいたいです。
雛菊さん、素敵なレイリーをありがとうございました。

 

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