Everywhere I go
「じゃあ。元気でね、レイヴン。」
「ああ・・・。お前もな。」
デスザウラーを倒した直後、そう言って僕達は別れた。
もともとレイヴンのシャドーを取り戻す為に同行していた僕らは、
共にいるすべての理由がなくなったら別れるのは当然の事だった。
それでも、僕はほんの少し名残惜しさを感じていた・・・。
それは。どうしてだったのだろう・・・。
その理由を何も考えずに、僕は彼の前から姿を消した。
一年後・・・。
僕は自由気侭に暮らしていた。
皮肉な事に、ヒルツといた頃に身につけた能力が今も役に立っている。
ゾイド乗り。なんて・・・らしくないけど。僕はゾイドの操縦が得意だし、
その腕だけでも食べていくのには十分だった。
ある時は賞金稼ぎ、ある時は運び屋。
そんなふうに、色々な所をふらつきながら暮らす日々。
何にも縛られない自由。この生活はとても好きだ。
「きゅい。」
「なんだい、スペキュラー?」
「きゅい、きゅい。」
「え、明日はどこへ行くのかって?
そーだな・・・。帝国領はほとんど回っちゃったし、
今度は共和国の方にでもいってみようか?」
帝国領にある、小さな村の宿屋でスペキュラーと僕はそんな事を話していた時だった。
なんとなく、見上げた窓の外に思わず僕は見入ってしまった。
「・・・・・・。」
「きゅい?」
「・・・スペキュラー、見なよ、星だ。」
窓枠にもたれ掛かって、見上げた夜空は満点の星空だった。
ふと誰かを思い出すような星空・・・。
「・・・スペキュラー・・・。」
「きゅいー?」
「いや、・・・なんでもない。」
不思議そうに、こちらを見て首をかしげるスペキュラー。
僕は危うく言いかけた言葉を飲み込んだ。
思わずこう言いそうになった。
「レイヴンは、どうしてるだろう。」
と。
もう、一年以上も会っていないのに。どうして今更思い出すんだろう。
ふと星空を見上げると、なんとなく彼を思い出す。
(・・・君も、この星空を見ているのかい?)
レイヴンもどこかで僕と同じ星空を見ているのだろうか?
そう思うと、少しだけ嬉しかった。
何でなんだろう、なんとなく嬉しかったりして。
「・・・スペキュラー、目的地を変えてもいいかい?」
「きゅい。」
スペキュラーは僕には消して「だめ」とは言わない。
勿論答えを分かっていて確認を取った。
僕は久しぶりに彼に会いたくなった。
人里離れた荒野に、ひっそりとあるかつてのオーガノイド研究所。
一年ぶりに僕はそこを訪れた、その外装はあの頃とあまり変わっていなくて。
僕はドアをノックした。
突然来たけど、レイヴンは驚くだろうか。
いや、・・・きっと驚かないだろうな彼の事だし。
ドンドン。
「・・・・・・・・・・。」
ドンドン。
「・・・おーい。」
がちゃ。
4回ほどノックしたが、誰もでなかったので、僕は無断で家に侵入する事にした。
「あれ・・・。」
ドアを開けた瞬間、そこに人の気配と言うものが全く無い事に気がついた。
留守と言う訳じゃないらしい・・・。
もうずっとこの家には人がいない。
生活観のない部屋がそれを物語っていた。
「・・・ここに、帰っていると思ってたんだけどな・・・。」
根拠無しにそう思っていた。
考えてみればこんな廃屋に帰ってくる方が珍しいかもしれない、
それにこの家には彼にとって悲しすぎる思いでもある。
でも、僕はレイヴンはこの家に戻るとなんとなく確信していた部分があって。
「きゅい・・・。」
スペキュラーが僕を心配している。
スペキュラーの方が僕よりも先に気がついた、僕が泣いてと言う事に。
「スペキュラー・・・僕は、ここにくれば絶対にレイヴンに会えるって・・・。
そう想っていたんだ・・・。」
俯いた時瞼から零れた涙は、そのまま地面に吸い込まれて。消えた。
僕の中には消えない、不思議な気持ちだけが残った。
どうして、こんなに悲しいのか。
それは、いつでもまた逢えると、当然のように想っていた人に会えなかったからで。
もしかしたら、もうレイヴンに逢えないんじゃないかと。
そう想ったら・・・、涙が零れてきた。
僕は・・・レイヴンに逢いたかったんだと。
そもそも離れたくなかったんだ・・・。
そう、確信させられた。
「・・・レイヴン。」
一年前の彼の気配を探して、僕は彼の名を呼んでみた。
もちろん返事はない。
誰もいない部屋の壁に寄りかかって、
呆然とする僕をスペキュラーは何も言わずに見守っていてくれていた。
もういちど、あの時間に帰りたい。
デスザウラーを倒した直後。僕とレイヴンが別れる前。
押しかけててでも一緒にいれば良かった。
そうすれば。こんな想いをしなくてすんだんだろうね・・・・。
一日中そこで色々な事を想った、半分は後悔だ。
そして、日が暮れるといつしか深い眠りに就いてたようだ。
夢を見た・・・
君の夢を・・・・・・。
君がそのドアを開けて僕を見つけてくれる夢・・・。
カーテンもない窓から差し込む朝日が眩しくて、眉をひそめた。
まだ、眠たいのに・・・。
まどろみのなか、朝日をうざったく思っていると。突然影が降りてきて太陽を遮断した。
ああ、これで眠れる・・・。
「・・・って。」
どうして影が・・・。かえって僕は飛び起きてしまった。
窓の外に巨大な何かかが・・・いや、はっきり言おう。
巨大なゾイドが止まっている。
真紅の・・・いかにも邪悪そうな機体。
ジェノブレイカー。
僕は、外に出ようとドアに駆け寄った。
僕が開けるより早く、ドアが開いた。
そこには、待ち望んだ人の姿。
「・・・・・・・・・。」
思わず言葉を失ってしまった。
吃驚したように、僕を見詰める目をじっと同じように見返す。
「リーゼ・・・。」
あの声が僕の名を呼ぶ、涙が込み上げてきて零れ落ちた。
レイヴン・・・レイヴン・・・。
名前を言いたくてもなかなか声が出なくて・・・。
「レイヴン・・・。」
やっと、そう発したらなんだか自分を押さえられなくなって、
僕はレイヴンに抱き着いた。
「・・・逢いたかった・・・。もう、ずっと前から。」
涙を流しながら、そう言った僕を彼はどう思うだろうか。
レイヴンはそっと僕を抱き返してくれた。
「・・・お前こそ、どこにいたんだ・・・俺だって、ずっとお前を探していたんだ・・・。」
耳元で彼の声はそう言った。
僕達を優しく包む朝日がこれが夢でない事を、教えてくれる。
もう二度と離れないように、祝福してくれている。
・・・なんとなく、そう思った。
「くぅ〜、2人の愛にメガロマックスーーー!!!」
と、思わずトーマが言いそうないい話でした。
これは「ローレライの海」のさゆきさんから7000HIT記念で頂いた物です。
壁紙選びに結構時間がかかってしまいましたが、
「朝日に包まれる」というイメージでこういう風にしてみました。
右側の方が読みにくかったらごめんなさい。(荷電粒子砲)
「ローレライの海」では飾らないそうなので、感想はこちらで受け付けています。
さゆきさん、素敵なレイリーをどうもありがとうございました。