「Dream」
〜夢に出逢った頃の物語〜

 

 夜。俺はメインルームでコーヒーを飲んでいた。
ビットとリノンはチェスゲーム(3話でジェミーとリノンがやっていたもの)をやっている。

「なぁ、バラッド・・・」

「なんだ?」

「それ、前から気になってたんだけど自分で買ったのか?
ずいぶん大事にしてるけど。」

突然ビットが聞いてくる。
「それ」と指差しているのは俺のつけているペンダントだ。

「いや。」

「じゃぁ、もらったの?」

「関係ないだろ。」

「いいじゃん、別に〜。教えてくれたって。」

と、口を尖らす。
どうしてコイツにそんなことを話さなくちゃならないんだ?

「もらったんだよ、昔。」

「誰からもらったの?」

リノンまで口をはさんでくる。

「何でお前が聞く。」

「いいじゃない。別に〜。教えてくれたって。」

こういうところだけはビットとリノンはそっくりだ。
しょっちゅう喧嘩しているのは似たもの同士の我の張り合いなのだろうか。
そのせいでこっちは大迷惑だ。

「子供の頃の知り合いだ。その人がいなくなる時にもらったんだよ。」

「ふ〜ん。」

二人とも声が揃っている。やっぱり似てるな・・・。

「俺はそろそろ寝る。お前らもさっさと部屋に戻れよ。」

これ以上詮索されるのは面倒だ。

「おやすみ、バラッド。」

 

 部屋に戻り、着替えてベットに入ると、チャリという音が静かな部屋に響いた。

「あっ、はずすの忘れてた。」

起き上がってペンダントをはずし、手のひらにのせてしばらく見つめる。

「そういえば・・・」

長い間忘れていた記憶がよみがえる。
あいつらにいろいろ聞かれたせいだろうか。

「あいつも、まだこれ持ってんのかな・・・」

―あいつ・・・いつも俺にかまってきた幼なじみの・・・アスカ・・・それに・・・―

 

―・―・―・―・―・―・―・―・―

 

「やーっと見つけた!バラッド!!」

樹の根もとで昼寝をしていた俺の上にいきなり降りかかってきた声。
人の心を見透かすような勿忘草色の瞳が覗き込んでくる。

「アスカか・・・何か用?」

「何か用?じゃないでしょ。こんな暑い中寝てたら融けちゃうわよっ!」

「別にいいだろ。木陰だから結構涼しいんだぜ、ここ。」

「そうじゃなくて、男の子なんだからもうちょっと元気に遊ぼう!とかって思わないの?」

腰に手を当てて憤慨したように言う。その動きにあわせてダークブルーの髪が揺れる。

「別に思わないよ。こうしてるほうが俺は性に合ってる。」

「ったく・・・、この怠け者!そんなことしてたら、ろくな大人にならないわよ!」

アスカはいつもこんな調子だ。同い年の癖に妙に大人ぶっている。

「んで、そんなことを言う為にわざわざ探しに来たのか?」

「まさか。」

むぅっとしていた顔がにっこりと笑顔になる。

「この近くでゾイドバトルやってるの見たの。
せっかくだからバラッドも誘おうと思って。
見に行くでしょ?」

「俺は別に・・・」

「ほらっ、いこいこ」

無理やり俺を引っ張って立ち上がらせる。

「行くなんて言ってないぞ。」

めんどくさそうに俺の言葉に、アスカがいたずらっ子のような顔して言う。

「でも、行くんでしょ?」

思わずムッとなる。こいつはいつもそうだ。
まるで俺の心の中を透かして見てるように俺の思ってることを言い当てる。
俺自身が自覚していないことまで。

「すぐ近くだからさ。早く行かないと終わっちゃうかもしれないよ。」

俺の手をとり、スタスタ歩き出す。
手をしっかり握られているため、逃げられない。
仕方なくついていくが、内心は嬉しかった。
本物のゾイドバトルを見られるなんて、滅多にないことだ。

 

「ほら、あそこ。」

谷の端までつれてきたアスカは500mほど先を示す。
8体ぐらいのゾイドが戦っているのが見えた。

「ねっ、来てよかったでしょ?」

アスカが俺の顔をおもしろそうに覗き込む。俺は黙ってバトルの様子を見ていた。

「すごいねぇ、やっぱ間近で見ると迫力が違う。」

「あぁ、そうだな。」
そうしている間もバトルは続いていた。
どうやらコマンドウルフ、ガンスナイパー、セイバータイガー2体のチームのほうが優勢な雰囲気だ。
だが、問題はここからだった。
両チームの距離関係のせいか、だんだんとこっちに移動してきたのだ。

「なぁ、移動したほうが良くないか?」

「そうだね。いくらフィールドの外でも流れ弾とかが来たら危ないもんね。」

 

「ねぇ、兄さん。あそこにいるの子供じゃないかな・・・」

ガンスナイパーに搭乗していた少女がコマンドウルフに乗っている青年に話しかける。

「えっ?まさか。そんなことよりもあのディバイソンを・・・」

「ほら、あの崖のところ!見間違いじゃないよ!!」

少女の言葉にその方向を見やると、確かに子供と思しき人影が見えた。

「本当だ・・・フィールド内ならジャッジマンに・・・」

「ううん。フィールド外。
でもあの場所は危ないよ。
もし、流れ弾が当たって崖が崩れたら・・・」

「おい!何ぼさっとしてるんだ。
バトルはまだ終わっちゃいねぇんだぞ!!」

カーゴにいる雇い主の青年が二人に注意を促す。

「A0827の地点に子供がいる。
バトルフィールドの外だが、危険な位置にいるんだ!」

「なんだって!?」

「兄さん、来るよ!!」

相手チームのカノント−タスが青いコマンドウルフに照準を合わせている。

「くそっ!
キルシュ、ブラット、なるべくここから離れるぞ!!」

「了解!」

「怪我人を出すのだけはごめんだからな。」

「ナハトはあの子達を頼む!」

「まかせて!」

少女の乗ったガンスナイパーは子供のいる地点に移動し始める。
セイバータイガー2体とコマンドウルフも少しずつそこから離れようとするが、
敵はなかなかそうさせてくれない。
何しろカノント−タスにディバイソン、ダークホーン2体という火力に長けた対戦相手なのだ。

「くっ、何とかここから離れなければ・・・」

その時だった。子供たちを背にしたセイバータイガーにダークホーンが砲塔を向けた。

「うわっ!!」

何とか回避するが、砲弾は速度を落とさずその先に向かっていく。

「しまった!!」

青年たちの叫び声に気づいた少女はとっさにその弾頭に照準を合わせる。

(お願い・・・当たって!)

 

「ねぇ、あれ・・・」

このままここにいるのは危ないと思い、もう少し離れようとした矢先。
後ろを振り向いたアスカがフィールドを指差す。

「ヤバイッ!逃げるぞ!!」

砲弾がこっちに向かってきたのだ。
足元の崖に当たれば崩れて俺たちは当然下に落ちる。
場合によっては・・・。
慌てて移動しようとするがもう遅かった。

「・・・くっ・・・!!」

思わず二人とも目を閉じる。

「・・・・・・!?・・・」

わずかな振動はあったものの、足元の崖にも、俺たちにも何の異常もなかった。
アスカがホッと息を吐いたのがかすかに聞こえた。

 

「・・・よかったぁ・・・」

ガンスナイパーの少女はホッと胸をなでおろす。
ギリギリで砲弾を狙撃することができたのだ。
これはかなりの腕前と言えるだろう。
他のメンバーも安堵するが、バトルはまだ続いているのだ。
こういうときは早めに決着をつけてしまうに限る。
コマンドウルフとセイバータイガーはそれぞれカノントータスとダークホーンを撃破する。
残ったディバイソンは必死の攻防を試みるが、
ガンスナイパーの正確な射撃によってあっけなく破壊されたのであった。

「バトル・オールオーバー!ウィナー・チームレイヤー!」

ジャッジマンがバトル終了を告げる。

カーゴに残っていたメンバーが歓声を上げる。

 

「君たち!大丈夫?ケガはない?」

先ほどのゾイドのウォリアーと思われる人が二人、俺たちの方に走り寄ってくる。

「あっ、はい。すみません。」

「ごめんなさい。勝手にこんなとこきちゃって。」

慌てて頭を下げると、亜麻色の髪を一つに結んだ女の人が安堵の息を漏らした。

「よかったぁ。怪我でもしてたらどうしようかと思ってた。」

「本当にすいませんでした。」

再度頭を下げると、髪をクシャっとなでられる感触がした。

「いいさ。怪我がなくて本当に良かった。
でも、今度からバトルを見るときはもうちょい離れてな。」

さっきの女の人と同じ髪の色をした男の人が半分からかうような調子で言う。

「はーい、気をつけます。」

と、アスカが素直に返事をする。

「そんなにゾイドバトル、好き?」

女の人が目の前にしゃがみこんで聞く。藍色の瞳が楽しそうに揺らいでいる。

「うん、ダイスキ!戦闘ゾイドってカッコイイもん!!」

弾かれるように顔を上げたアスカが言う。

「キミも?」

と、俺のほうに首を傾げる。
俺は黙って頷いた。アスカのように素直に言葉を口にするのは苦手だ。

「じゃぁ、乗ってみる?私たちのゾイドでよければ。」

「ほんとっ!?」

おもしろそうにいう女の人の言葉にアスカは飛び上がる。
俺も表情が輝くのを止められなかった。

「もちろん。危ない目にあわせちゃったお詫び。いいでしょ?兄さん。」

「あぁ。」

短く答えたのはさっき俺の頭をなでた人だ。
なんとなく似ていると思ったらこの二人は兄妹だったんだ。

「そういえば自己紹介をしてないな。
俺はブラウ・シュテルン。で、こっちが妹の」

「ナハト・シュテルンだよ。よろしくね。」

「わたし、アスカ・ファローネです。こっちは幼なじみのバラッド・ハンター。」

「じゃぁ、こっちに来て。」

 

 谷間まで来た俺たちは目の前にある機体に圧倒されていた。
乗用のグスタフや作業用ゾイドしか見たことのなかった俺たちにとって、
戦闘ゾイドというのは初めて見るものだ。
思わず上を見上げたままで静止してしまう。
アスカも似たような状態だった。

「どう?近くで見た感想は?」

「・・・すごい・・・」

「なんか、言いたいこといっぱいあったのに全部吹き飛んじゃったみたい・・・。」

上を見たままの状態でつぶやく。
そんな俺たちを見てナハトはくすっと笑う。

「じゃぁ、早速乗ってみる?
アスカちゃんはわたしのガンスナイパーでいいよね。」

「うん♪」

アスカは意気揚々とナハトのガンスナイパーに乗り込む。
その嬉しそうな姿を見ている俺にブラウが声をかける。

「バラッド君だっけ、君は俺のほうでいいかい?
それともあっちに乗りたかったのか?」

俺が首を横に振ると、ブラウは満足そうに頷く。

「じゃ、こっちに。」

生まれて初めてのゾイドのコックピットは想像していたよりもずっとシンプルなものだった。

「生憎二人乗りじゃないんでね。」

そう言ってブラウは俺を抱き上げて膝に乗せる。
ブラウが操縦桿を握ると青いコマンドウルフがうなり声を上げ、走り出した。
戦闘時よりは遅いが俺にとってはかなりのスピードだった。
周りの景色が全部吹き飛んでいくみたいだった。

「・・・すっごい・・・」

小一時間ほどの走行を楽しんだ後、俺の住んでいる町の格納庫についた。

 

「すっごく楽しかった!ほんとにアリガトウ!!」

「いえいえ、そう言って貰えるとわたしも嬉しいわ。」

ガンスナイパーから降り立ったアスカは本当に嬉しそうだった。
ナハトも自分のゾイドをほめられるのは嬉しいらしく、クスクスと笑っている。
逆に俺は嬉しさのあまり声が出なかった。

「どうだった?俺のコマンドウルフの乗り心地は。」

無言で頷く。それだけでブラウには通じたようだ。

「それはよかった。」

満足そうに微笑む。
格納庫の床に足をつけるとナハトがアスカに尋ねる。

「家、どの辺り?なんだったら送っていこうか?」

アスカは首を振る。

「アリガトウ。でもすぐ近くだから大丈夫だよ。
ねっ?バラッド。」

「あぁ。」

「じゃっ、気をつけてね。」

「うん。今日はほんとにアリガトウ。」

手を振って走り出すアスカ。
だが俺は途中で立ち止まり、振り返る。

「なぁ、また・・・来てもいいか?」

おずおずと二人に聞く。
すると二人は顔を見合わせてクスリと笑い、

「えぇ、もちろん♪」

「いつでも来てくれ。」

「うん。」

嬉しそうに答えて走っていくバラッドを見ながら、
二人の兄妹は幼い頃の自分たちの姿を思い出していた。

 

 そのあと、何度も二人を訪ねた。
ほとんどの場合アスカと一緒にだった。
行く度に笑顔で迎えてくれる二人を、
一人っ子の俺とアスカは本当の兄姉のように思っていた。

「えっ、ナハトとブラウってチーム・レイヤー所属じゃなかったの!?」

「うん。わたし達は賞金稼ぎだから。
チームに所属してるんじゃなくて、いろんなところに雇われてるの。」

「ふうん。何かカッコイイね。」

アスカとナハトの話を聞きながら、ブラウは青いコマンドウルフの整備をしている。
俺はそれをじっと見ていた。

「なぁ、何で賞金稼ぎになったんだ?」

「さぁ、何でだろうな。」

曖昧に答えるブラウに俺は少しムッとする。

「そんな顔すんなよ。俺にだってわからないんだから。多分ナハトにもな。」

俺が首をかしげると、ブラウは整備の手を止めた。

「そうだな・・・最初はちゃんとチームに属してたんだ。
でもそこの奴ら、『勝てばいい』みたいなこと言っててさ。
俺が思ってたチームとなんか違うんだ。結局居づらくなって飛び出してきた。
ナハトには一応どうするか聞いたんだけど、一緒に行くって言って・・・。
それからは各地を転々としていたんだ。
俺が求める『チーム』というのは・・・、『仲間』というのは何なのかをずっと探していたんだ。」

「・・・『チーム』?『仲間』?」

首をひねっている俺を見るとフッと笑って、

「ハハハ、子どもには難しかったな。
でも、もうすぐ見つかりそうな気がするんだ。」

一瞬だけ確信の笑みを浮かべると、
この話はもうおしまい、といった感じでポンッと俺の頭に手をのせた。

「・・・見つかるといいな・・・」

俺が言うとブラウはきょとんとした顔になる。

「俺、何か変なこと言ったか?」

「いいや。お前にそんなことを言われるとは思っても見なかった。
いつも『他人に興味ない』って顔してたから。」

「悪かったな。無愛想で。」

「あぁ。でも、好きな子にぐらいはいい顔見せろよ。」

「何のことだ?」

「照れるな、照れるな。」

からかうように言ったので、俺は訳がわからずむうっとして横を向いた。
アスカとナハトが談笑しているが見えた。

 

―・―・―・―・―・―・―・―・―

 

 楽しかった日々は突然終わりを告げた。
ブラウとナハトが町から出て行くというのだ。

「どうして行っちゃうの?
せっかく、ゾイドの整備とか手伝えるようになってきたところだたのに。」

アスカが悲しそうな顔でナハトに問う。
俺も気持ちは同じだったが顔には出さなかった。

「しょうがないの。
チーム・レイヤーとの契約期間が切れたんで、別のチームに雇われることになったんだから。」

「それに、ここもレイヤーにいる間だけ借りてるつもりだったしな。」

「でも・・・」

俺は言いよどむアスカの肩に手を置いて首を振る。
ここを出て行くのは二人の自由だ。
俺たちの関わることじゃない。
俺たちは部外者なのだから。
でも、残念でないと言えば嘘になる。

「じゃぁ、お別れする前にこれをあげよう。」

と、言ってナハトは小さな袋から何かを取り出し、目の前に差し出した。
それは皮ひもにビーズ、ペンダントヘッドに羽根のついた赤い石と紫の石のペンダントだった。

「これ、わたしと兄さんで造ったの。
こっちはアスカちゃんにね。」

そういって紫色のほうをアスカの首にかける。
ブラウはもう一つの赤い石のほうを俺の首にかけながら言った。

「大事にしろよ。」

アスカも俺ももらったばかりのそれを手にとって見つめた。

「大切にしてね。
これ、アルカンスィエル≠チて言って持ち主を守ってくれるの。」

「持ち主を守る?」

「この石には特別な力があって、
これを持っている人は禍を振り払うことができるって昔から言われてるの。」

「禍を・・振り払う・・・?」

俺はあらためてその赤い石を見つめた。
その中に虹色の光が散った様な気がした。
アスカはそれをぎゅっと握り締めて、俯いていた顔を上げた。

「アリガトウ、大事にするね。」

「元気でな。バラッド、アスカ。」

ブラウは俺とアスカの頭に手を置く。

「サヨナラ・・・って、言わなくていいよな?」

小声で言った俺の言葉にブラウは頷く。

「・・・・・・また、な。」

今度は俺も笑顔で二人を見送った。
二人が去って行った後もずっとその先を見ていた。
その先に何があるのか、俺は知らなかったけれど。
だが、このあと二人に会うことはなかった。
俺もアスカも別の町に引っ越してしまったから・・・。

 

 思えば、あの時の出来事が俺の賞金稼ぎを目指した理由だったのだろうか。
我ながら単純だな。
けど、そのおかげで今、この『チーム・ブリッツ』にいられるのだ。
ブラウの言っていた『チーム』というのが何なのかはまだわからないが、
俺はとりあえず自分の居場所を見つけた。
アスカは・・・もう、見つけたのだろうか・・・。
そう思いながら俺は眠りについた。

 

―・―・―・―・―・―・―・―・―

 

 次の日の朝。朝食のあと、ジェミーに買い出しを頼まれた。
昨日行った時に買い忘れたものがあったらしい。
そんなに数が多くなかったので一人で行った。
が、買い物が終わる頃には暑さに参りそうだった。
この時期の街中は昼間、かなり気温が上がる。
ビットでもつれてくればもう少し早く終えられただろうか。
少し休憩してからホバーカーゴに戻ろうと噴水の周りのベンチに座った時だった。

「ちょいと、そこの色っぽいお兄さん。
な〜にやってんの?」

聞き覚えのある声に勢いよく振り返る。
いたずらっぽく微笑む少女。
昨夜思い出していた幼なじみ、アスカ・ファローネだった。

「!?っ。
なんだ、アスカか。脅かすなよ。」

「お久しぶりね、バラッド。
隣いい?」

「あぁ。」

俺の隣に腰掛けながら微笑む彼女は少しも変わっていなかった。
人の心を見透かすような勿忘草色の瞳も昔と全く変わっていない。
強いて言えば少し大人っぽくなった気がする。

「久しぶりだな。
今まで何やってたんだ?」

「まぁ、いろいろね。
雇われウォリアーも楽じゃない。
あなたは所属するチーム決まったんでしょ。
チーム・ブリッツだっけ?」

「いや、所属してるわけじゃない。
それに結構疲れるぜ。
うるさいのが3人ほどいるからな。」

「あくまで『賞金稼ぎ』にこだわるのね。
でも、楽しそうね。」

くすくすと口元に手を当てて笑う。

「で、そっちはまだチームとかは決まってないのか?」

「えぇ。けど個人戦も結構おもしろいわよ。
今はAクラス。
強敵は山ほどいるから、やりがいはあるわね。」

そこで会話が途切れた。
噴水の音と街の喧騒だけがあたりに響く。
沈黙を破ったのはアスカだった。
自分のペンダントを手にとって、

「ねぇ、憶えてる?
これをもらった時のこと・・・」

「あぁ。昨日ビットたちにそれのこと聞かれてな。
いろいろ思い出してた。」

「そう、ブラウの言ってたこと・・・まだわからなさそう?」

「あぁ。今回は意外に長く同じチームに居るんだけど、
『チーム』というのが何なのかはまだわからないな。」

「そっ・・・か・・・」

一瞬、勿忘草の瞳が揺らぐが、すぐにいつものアスカに戻った。

「でも、元気そうで良かったわ。
心配事が一つ消えたもの。」

「そりゃ、こっちのセリフだ。」

二人で顔を見合わせ、笑いあう。

「そろそろ・・・行かなくていいの?」

「あぁ、みんな待ってるだろうからな。
あんまり遅いとうるさいし。」

「あらあら。」

可笑しそうに言うアスカ。
俺は荷物を抱えなおして立ち上がる。

「じゃっ、そろそろ行くぜ。
また会おうな。」

「えぇ、近いうちに会うことになるわよ。
あなたにも、あなたのチームメイトにも。
それに・・・」

「それに?」

「あなたを想ってくれている人にも。」

「何だ、それ?」

「さぁ?」

相変わらずだ。この先を仄めかすような口調も。
でも、のんびりしているわけには行かないので、
片手を上げて別れを告げ、ホバーカーゴのあるほうに向かって歩いていった。

 

 今のところ・・・俺の、唯一の居場所に向かって。
かなり騒がしいし、世話がやける奴ばかりだ。
だが、そんなに悪くはないと思っている。
そう・・・今のままでも・・・十分かもしれない・・・。

「バラッド〜、おっそーい!」

「早くしないとおいてっちまうぜー!!」

「バラッドさ〜ん、ごくろーさまでーす。」

 


葉月さくらさんに頂きました。
オリジナルキャラの説明としてもらったのですが、
あんまりにも素晴らしいので飾らせていただきます。
オリキャラのアスカがいいですね。
説明によると、彼女は読瞳術(目を見て人の心を当てる)が得意なようです。
詳しくは/0キャラ表に載せるので、そちらの方を参照して下さい。
さくらさん、キャラのネタと小説をありがとうございました。

 

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