「月夜の下で」

 

  フィーネ達の件から数日経ったある夜、ここはバン達一行が滞在している帝国領のとある基地。
その夜は ちょうど満月だった。
基地から少しばかり離れた草原に、ガトリングパーツが特徴のセイバータイガーが一体止まっている。
そのそばに金髪の男性が一人佇んでいる。
もう、お分かりだと思うが、ガイロス帝国軍甲師団団長、カール・リヒテン・シュバルツ大佐である。       

 彼はさっきから夜空の星や月を眺めている。時々吹く夜風が彼の金髪をなびかせる。
すると、彼のものとは違うセイバータイガーの起動音がして、どこからか軍靴の音が聞こえてくる。

(どうやら、こっちに近づいてくるみたいだな。誰だろう。)

「誰だ!」

そう言い放って、彼は身構えた。

「私です、シュバルツ大佐。
ごめんなさい 驚かせて。」

「君か、ハーティリー中佐。」

彼はそう言って、構えを解いた。

「あの、指輪のことと私達のこと、フィーネとリーゼは知っているんです。
でも、大丈夫です。
彼女達はこのことは言いませんから。」

「・・・・・・そうか。今は階級は関係ないからカールでいい。」

「そうですね。立って話すのもなんですから、座りませんか?」

「そうするか。」

そう話した後、二人はシュバルツのセイバータイガーの足元に腰を下ろした。

「カールさんってこうやって夜空を見上げるのが好きなんですか?」

「ああ、士官学校にいた時はよくこうしていた。
特に嫌な事があったり、物思いに耽ったりしたときはな。」

「へぇ〜、そうだったんですか。
それにしても、今夜の夜空は特に綺麗ですね。」

「ああ、そうだな。」

「こんなに穏やかな時間っていいですね。
でも、まだゾイドを使って悪事を働いている存在がこの世界にある。
だから、この穏やかな時間は長くは続かない。」

レックスはそう言った後、不意に顔を曇らせた。

「・・・・・・・少しずつ、奴らの目的が分かり始めている。
それに、今まで 奴らの計画をいくらか阻止してきた。
指をくわえて見てた訳じゃない。」

「あなたは強いんですね。
それに対して私は・・・・・・。
ごめんなさい、私 弱音をはいてしまったみたいです。」

 そう言った瞬間、シュバルツのとった行動にレックスは驚いた。
不意にシュバルツがレックスを抱き寄せたからだ。
レックスの耳元で囁く。

「俺は今の状況の中でいつでも強いわけじゃない。
誰かに支えてもらうこともある。
それに・・・・・・・。」

「それに?」とレックスが言った後、彼はレックスを離すと彼女にキスをした。
キスの後、シュバルツは彼女に「何でもない。」と言って、自分のセイバータイガーのもとに戻っていった。
レックスはその後 数分間、動けずにいた。

これは余談だが、
二人が別々に基地に戻ってきた時、シュバルツの方は別段問題は無かったのだが、
レックスは頬が赤くなっていたので、事情を知らない人たちに不思議がられたという。
フィーネとリーゼはすぐに何があったのか察しがついたらしいが。

 


レックスの生みの親、Yukiさんから頂きました。
とうとうキスしましたね、2人。
やっぱりレックスはうぶですね。
カールは相変わらずですが。(笑)
それにしても、第3部でキスしたのって、2人が始めてでは。
レイヴン達は(キースのせいで)未遂に終わったし・・・。
まぁ、いっか。
ちなみにタイトルは、及ばずながら私が付けさせていただきました。
(前のもそうです。)
Yukiさん、本当にありがとうございました。

 

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