「二つの出会い」
〜ジェノブレイカーとジュジュ〜

 

〜二つ目の出会い、ジュジュ・フォレスト〜

 ケインがジェノブレイカーと出会ってから一ヵ月後に、
彼の店に忍び込んでリッドのしかけたトラップに捕まった侵入者の名前は、
ジュジュ・フォレストと言う名の女だった。
彼女はただ、ジェノブレイカーを見たかったのだという。
そのためだけにわざわざこっちの身元まで調べて、
夜中に店の倉庫に忍び込むなんて事をしでかす・・・。
普通じゃない、というか常識がない、というか・・・何と言うか・・・。
・・・おかしな女、というのが第一印象だった。
いまだ身動きがとれない彼女は、
自分の事を全て話すからジェノブレイカーを見せてくれ、とケインに懇願。
そんな状態でもどこかどこか落ち着いてるというか、
楽しんでいるように見えるジュジュは、彼の質問にテンポよくはきはきと答えていった。

(・・・捕まってるって自覚、あるんだろーか?)

「お前、何者だ?」

「見た目はこーいう者よ。
年は貴方より一つ上。
好きなものはゾイドと甘いもの。
職業はカメラマン。
ウルトラシティにあるニューセンチュリー社に勤めてるの。
“Z−TIME”って雑誌知ってる?」

ウルトラシティ・・ゾイドバトル連盟本部、ウルトラザウルスが中心にある大都市。
ニューセンチュリー社というとゾイド関連の本を多く出している大手の出版会社である。
マスコミ関係者なら、自分達の事も調べられるだろうな、とケインは思った。
何しろ彼はあの時、ジュジュに顔を見られているのだから。
ジュジュが言った雑誌名は、
ゾイドに関わる者、興味ある者なら老若男女問わず幅広い年齢の者達が読む、
大人気のゾイド関係週刊誌だった。
ちなみにケイン達も読んでいる。

「私、その雑誌でゾイドバトルの部を担当してるの。
先週の一押しバトル、『チーム・ブリッツVSチーム・フリューゲル』の写真撮ったの私よ。
名前載ってるから後で見てね。」

途中でBD団の邪魔が入り、結果として無効試合になったその試合の記事の写真は、
ブリッツのゾイド、ライガーゼロ・シュナイダーと、
フリューゲルのメンバー、レオン・トロスの紅いブレードライガーの2体が、
BD団率いる30体以上のレブラプターの大群を瞬く間に撃退する瞬間が話題になった。
ダークバトルの場面を発表した写真の載った雑誌は、他にないからである。

「・・・あれ、撮ったのお前か・・・。結構なスクープだったな。
しかし・・・、よくもまあ、逃げずにいられるもんだ。」

下手にBD団に関わる事は、それだけ危険も多いかもしれないのに。

「ウォリアー達は闘ってる。
私はそれを追ってるのよ。
彼らは逃げない。
だから、私も逃げない。」

「一緒に闘ってるつもりか?」

「BD団みたいな連中が、私は大嫌いなの。
ルール無用でゾイドバトルを荒らしまわって、ゾイドを傷めつけて奪って・・・、
自分達の都合のいいように変えてしまうわ。
ゾイドの気持ちなんて全然考えてない自分勝手な連中が、私は大嫌いなの。」

過去に仕事の最中、
奴らのダークバトルに敗れ、自分のゾイドを失った人達を見てきたから。
と気分悪そうに顔を歪める彼女。

「私は、奴らと直接闘える程の腕はないけれど・・・、
情報を集めて、少しでも被害が防げたらって思ってるの。
それくらいしか、できないけれどね。」

ジェノブレイカーの事は、とある筋の噂から聞いたのだという。
“裏でBD団に関わっていると思われる工場に、
数日前とある遺跡から発掘された古のゾイドが運び込まれたらしい”と。
事の真偽を確かめるべく工場の作業員に変装して忍び込んだ彼女は、途中でケインとぶつかった。
彼が去ってからしばらくして基地中に轟音が響き渡り、
倉庫に辿り着いたらケインがジェノブレイカーで正に逃走しようとしてる最中に出くわし、
彼女もどさくさにまぎれて脱出、
隠しておいた彼女のゾイドで途中まで追いかけたが見失ってしまったのだという。

「この子は奴らの手から逃げられたけど、貴方の事がわからなかったし。
この子をどうするつもりなのかしらって思ったら気になって気になって仕方ないから、
努力と根性と気合と少々のお金と長い時間をかけて、
よう〜やく!貴方に辿り着いたのよ!!」

拳をふるふる震わせていつしか力説しだしたジュジュに、
ケインはどう反応していいのかしばし困ったが。

「・・・ちょっと待て。
じゃあ最近俺が感じてた視線は・・・、お前か?!」

「はい。
・・・夜中の特訓も見てました。
・・・色々、ごめんなさい。」

ぺこり、と頭を下げるジュジュ。

(・・・誰もいない事を確認してたのだが。
一体どうやって??)

「私の相棒は、ヘルキャットなの。
名前は“ヘル”って言うんだけど。
ヘルの光学迷彩と暗視カメラと望遠レンズ使って・・・。
ごめんなさい、悪いとは思ったんだけれど。
・・・でも、おかげで充分わかったわ。
ケイン・アーサー、・・・貴方なら、ジェノは安心だって。
幸せだって。」

「・・・そこまで言われると・・・、照れるな・・何か・・。」

花嫁を頼む、と親に言われた婿のような気分、というのだろうか。とケインはそんな事を思った。

「・・・だから、私はこのまま何も知らないふりして去ろうって思ったんだけど・・・。
最後に一目、この子を近くで見ておこうって思って。
で、忍び込んだらこうなっちゃった・・・。
はは、最後の最後でどじったなあ。」

格好悪いよねえ、と困った笑いをする彼女に、
ふとケインは疑問に思った事を尋ねてみた。

「お前、記者なんだろ?
・・・なのに、このこと発表しようとは思わなかったのか?
今まで。」

彼の質問に、ジュジュはうーん、としばし考えた後、こう言った。

「・・・確かに、私は記者だけど・・・、スクープとかそういう考えはないわ。
・・・最初に言った通り、ここにはジェノを見たくって来ただけ。
本当に、それだけだったの・・・。」

信じてくれるかしら?と言いたげに彼女がケインを見たので、彼は話を聞く姿勢をとり続けた。

「この仕事だって、色んなゾイドの色んな表情やしぐさとか・・・、
とにかく、ずっともっとゾイドを見たくって、選んだのよね・・。
人とゾイドの絆、それが生み出す最強の力、最高の瞬間、無限の可能性・・・。
私はそれを、もっと多くの人に知って欲しい。
“ゾイドは最高だ”って、教えたいの。」

「・・・お前って、変わってるけど・・・、ゾイド、好きなんだな。」

ケインがもらした呟きにジュジュはぱっと顔を輝かせて言った。

「ええ、大好き!
・・・だから、彼らの気持ちは、大切にしたい。
貴方も、好きな人の気持ちは、大切にしたいでしょ?」

ケインには恋人とか、好きな人はいないが。
自分の弟妹、その友達。“相棒”の気持ち。
・・・自分にとって大切な仲間の気持ちは。

「・・・そうだな。大切にしたいな。」

そう言って、微笑んだ。

「貴方には聞こえないかしら?
きっとわかると思うんだけど。
・・・“正々堂々闘いたい”って思ってる、ゾイドの気持ち。
・・・だから、あの日この子を連れて行ったんじゃないの?
・・・貴方はあの日、この子に出会って、何を感じたの?ケイン?」

ジュジュがケインを見て尋ねた。

(・・・俺は・・あの時・・。
こいつに乗りたいって思った。
一緒にいたい、と。)

「・・・俺は・・“運命”を感じたんだ。
こいつに。・・俺の最高の“相棒”だってな。
そしたら、いてもたってもいられなくなった。」

“俺と・・来ないか?お前。”
ジェノブレイカーは応え、コクピットは開いた。

「わかってるじゃない。
・・だってこの子、とっても嬉しいって。
貴方と一緒で。
だから、私は強い絆で結ばれた彼らを引き裂くような事は致しません。
BD団の元や連盟の記念博物館のケースの中にいるジェノなんて、見たくないもの。」

ゾイドは運命の相棒と共に自由に大地を駆ける姿が、最も最高で幸せな姿なのよ、と彼女は言った。
ジュジュの言葉に、ケインはこっちまで嬉しくなるような感じがした。

「・・ケイン。一つ聞いていいかしら。」

「何だよ、ジュジュ。」

初めてこいつの名前を呼んだな、とケインは思った。
それ以前にこいつはさっきから自分の名前を何回も呼んでいるが。
きっとそういう性格なのだろう。
出会ったばかりの他人に親しく話し掛けたりと、彼女は人見知りしないのだ。
向こうが心を開いているから、自然とこちらも心を開いてしまうのだ。
・・・人もゾイドも。
おかしな女だが、こんな風に考える自分も変だ、とケインは思った。

「貴方は、ゾイドバトルには参加しないの?
この子と一緒に。」

これだけ魅力的なゾイドは、BD団でなくても世の中が放っておかない。
いずれ明らかになる時が来る。

「今は・・・、ちょっと時期がなあ。
でも、いつか出るつもりだ。“相棒”と仲間と一緒に、な。」

(そう、俺もジェノも、色んな奴に出会いたい、闘ってみたい。
そう思っているから。)

「お前の目覚め、世界中に教えてやんなきゃな!ジェノ!」

目の前の“相棒”に力強く語りかける。
ケインのその姿を見て、じゃあお願いがあるんだけど、とジュジュは言った。

「貴方達がゾイドバトル界に出てきたら・・・、一番最初の取材は、私にさせてね。
ジェノの姿を青空の下で撮りたいの。」

「ああ、いいぜ。最高の瞬間を撮らせてやるさ。」

「嘘ついたら針千本、げんこつ一万回ね。約束よ。
・・・あと、もう一つお願いがあるんだけど。
・・・これ、いい加減取ってはくれないのかしら??」

彼女は未だに投網が体中に巻きつき、ぐるぐる巻きの雪だるま状態だったのだ。

「あ・・・わりい。でも、平気で話してるから平気かと思ってた。」

平然と言うケインに、ジュジュは泣きそうになりながら大声で叫んだ。

「そんなわけないでしょ〜!!
ジェノの近くにいかせて〜!
触らせて〜!!
お願い〜!!」

 

 そして翌日の昼頃。

「ふあ〜あ・・。」

店のカウンターで、大きなあくびをするケインの姿があった。
それを見たシエラが顔をしかめる。

「もう、ケインお兄ちゃんてばしまりないなあ。
そんな顔じゃ店の品性が疑われるわ。」

「ふあ〜い、わかってるって・・。
でも俺、寝てないしさあ・・。」

あの後、ケインはジュジュの投網をはずしてやって、
自由になった彼女は早速ジェノブレイカーに駆け寄っていって、
ちょこまかちょこまかジェノの周りをあっちこっち見てまわったのだ。
時々指を指しては、
“ねえケインこれはなんていうパーツなの?”とか、
“なんていう武器なの?”とかケインに聞くわ、
“ジェノってどんな性格だと思う?”とか、
“ずっと昔にジェノに乗ってた人はどんな人だったと思う?”とか尋ねてくるわ、
窓を見れば夜明け前になってて、
ケインは段々眠くなってくるのに反比例して、
ジュジュはますます生き生きとしてくるようであった。
彼女は窓の夜明けと自分の腕時計を見ると、ジェノの尻尾の上で途端に青ざめた。

「私、今日は朝からバトルの取材があるのよ〜!!
お願い、逃がして!!取材できなかったら編集長に怒られる〜!!
アリスにも先輩の顔が立たない〜!!」

ジュジュの様子がただ事ではなかったので、ケインは逃がしてやる事にした。
すると彼女は“ありがとう!!”と彼の手をがっし!と握ってこう言った。

「私、誰にも言わないから!!
約束するわ!!
・・・時々また来てもいい?
今度はちゃんと玄関から来るから。」

と彼女が懇願するので、まあこいつなら平気だろうな、というわけのわからない確信と眠さも加わり、
ケインは了承したのだった。
彼女は外に出ると、
近くに隠しておいた灰色のヘルキャットーおそらくこのゾイドが“ヘル”だろうーに乗って、
全速力で日の出の方向に向かって突っ走っていった・・・。
記者の仕事ってのも、大変なんだな・・とケインは思ったとか思わなかったとか。
そしてようやく眠れる、と思ったのもつかの間、
すぐにリッド達が起きてきて自分達が去った後の事を聞いてきた。
ケインが逃がしてやった、と言うと驚いたが、説明すると一応は理解してくれたようであった。

「ケインお兄ちゃん、
まさか泥棒さんが女の人だったから逃がしてやったとか、そういうんじゃないよね?」
とシエラは手厳しい突込みを入れたが。
「確かに変わってはいるがな。
ゾイドの気持ちがわかる、なかなか面白い奴だったよ。」
という兄の一言にそれ以上は何も言わなかった。
そしてそれから彼は眠る時間がなかった。というわけである。

 

「とにかく、お客さんが来たらビッとしてよね!
・・・あ、ほら誰か来たわ。」

店に近づいてくる一つの人影。
ドアが開き入ってきた人物を見た時、ケインはがたたん!!と大きな音を立てて椅子から転げ落ちた。
シエラが驚き、奥にいたリッドとレイスもその音の大きさに何事かと覗きにやってきた。

「ど、どうしたのケインお兄ちゃん?!」

「・・・何だ?今のすごい音は。」

「おーい、ケインどうしたー?」

一方、当の本人は力が抜けそうになりながらも必死にカウンタに這い上がり、
目の前の客を指差して叫んだ。

(な・・・なんでこいつが・・・。)

「な・・・、なんでお前が来るんだ?!!
ジュジュ!!」

そう、店に入ってきたのは昨日の泥棒さん、ジュジュであったのだ。
一方、当の本人はけろっとした表情で答えた。

「だって、また来てもいいって言ったじゃない。
それに昨日は貴方のご家族の方にも迷惑かけちゃったの、
きちんと謝ってないから朝の取材が終わってすぐに戻ってきたの。」

そうしてこちらを見ているシエラ、リッド、レイスに向かってぺこり、と頭を下げて彼女は言った。

「ケインさんのご家族の方ですよね?
名前は・・・、シエラ・アーサーさん、リッド・アーサーさん、レイス・クリスナーさん・・・ですよね。
お兄さんからお話は伺ってると思うんですが、昨日ここに忍び込んだのは、私です。
ご迷惑かけて本当にごめんなさい・・・。
私、ただジェノブレイカーを間近で見たかっただけだったんです。
皆さんの事は決して言いませんから、安心してください。
皆さんがゾイドバトル界にデビューしたら、ぜひインタビューさせて下さいね!
頑張って下さいね。」

と、次々に語るジュジュに、もはや四人は何も反論できなかった。
どう反応していいかわからない、と言ったほうが正しいかもしれない。
お詫びの品、とケーキの箱をシエラに差し出した後、
“では、次の取材の時間があるので、失礼します”と彼女が礼をして店を立ち去った後も、
しばらく彼らは固まっていたが、やがてシエラがポツリと呟いた。

「・・・ケインお兄ちゃんが変わってるって言った理由・・・わかったよ・・・。」

「・・・だろ・・・?」

妹の言葉に、いまだ立ち上がる気力のない彼はただうなずいた。
一方、リッドは結構冷静なもので。

「銀髪か・・・、お前と同じだな、レイス・・・。
おい、レイス??」

親友の返事がない事に横を向くと・・・レイスは硬直していた。
それを見てリッドは思い出した。
彼が女性・・・特に美人に弱い、と言う事に。

「・・・美人だしな。
仕方ないか・・・。」

そう言ってリッドは一つ、大きなため息をついた。

 

 そうして、まあ色々とあったわけだが。
ケインがジェノブレイカーと出会ってから半年後に行われたロイヤルカップの最中、
BD団による大掛かりなバトルジャック・・・、ロイヤルバトルジャックが起こった。
これを機に一気にゾイドバトル界を牛耳ろうとする彼らの企みは、
しかし、ある一つのチームの優勝によって防がれ、
結果、自らの所在を知らせる事となったBD団は二ヵ月後には壊滅し、団員もほとんどが逮捕された。
BD団を壊滅に導いたチームの名は、チーム・ブリッツという。
ロイヤルカップで優勝しSクラス入りしたこのチームと優勝者であるメンバー、ビット・クラウド。
彼がジュジュ・フォレストのいとこで弟分である事を、蛇足ながらここに記載しておく。
そして、ロイヤルカップから半年後、
ケイン達は「チーム・バスターズ」という名でゾイドバトル界チーム戦に登場、
伝説の紅い魔装竜の登場に、誰もが衝撃を受け、バトルフィールドに新たな旋風を巻き起こした。
ちなみに彼らの初バトルを最も大きく取り上げ、独占取材までしたその号の「Z−TIME」は大人気を博した。
もちろん、あの時のケインとジュジュの約束があったからだということは、本人以外知るよしはない。
彼らは全戦全勝し、わずか半年の間にAクラストップにまで登りつめ、
ゾイドバトル連盟が復活させる事を決定した、
太古のバトル、ゾイドバトルロイヤル戦のデモンストレーションへの参加資格が与えられた。
チーム・ブリッツをはじめチーム・フリュ−ゲル、チーム・ライトニング、チーム・チャンプ、
そして元BD団員で構成されたチーム・アウトローズという名高い実力者が揃ったこのバトルロイヤル戦で、
彼らのチームは善戦しリーダー、ケインとジェノブレイカーは最終決戦でビットとライガーゼロと激戦を展開、
結果は敗北したものの、
Sクラスに最も近いウォリアーと言われているだけの実力を他のチームに存分に刻み付けたのである。
そしてジュジュは先月、ゾイドウォリアーとしてたくましく成長した弟に約4年ぶりに会いに行き、
再会を果たしたという。
どうして今まで弟の近くにいながら会いに行かなかったのか、とケインはいつか聞いてみた事がある。
彼女はこう答えた。

「だって約束だもの。一人前のゾイド乗り、一人前のカメラマン。
お互いの夢が叶うまで会わないの。」

そういう血筋なのだと。
うちの家は結構、自由奔放な割りに頑固な所もあるから、と言って、こうつけ加えた。

「一度こう、と決めたら周りがどうであれそれを貫き通すの。
そうしないと気がすまないの。
・・・周りから見れば、はた迷惑な事もあるかもね。
でも、そういう性格なんだってわかってもらうしかないわ。
そういう自分なんだって。」

それか、出会ったのが運のツキ、と思ってあきらめてもらうしかないわ、と笑った。

「出会ったのが、運のツキ・・・ね。」

そうかもしれないな、と彼は思った。
・・・そして今も、ジュジュとはこんな風に、交友関係が続いている、というわけだ。
ゾイドが結びつけた奇妙な縁。
・・・変わっているが、面白い。

 

「面白いよなあ・・・。」

「何が?」

突如聞こえてきた声に、彼の意識が瞬時にばっ!!と覚醒した。
目を開くと、そこにはこちらをじーっと見ているジュジュがいた。
慌てて起き上がった彼は、ジュジュとの距離を考えていなかった。

“がいん!!”

・・・二つの頭がぶつかって、とても鈍く低い音が草原に響き渡った。

「・・・・つ〜・・。」

「・・あたた・・。」

両者ともしばらく頭を抱えてうずくまっていたが、先に立ち上がったのはケインであった。
何でこんなにぶつかるんだこいつとは??と思いつつ。

「・・・お、起きたのかよ・・・お前・・・。」

とジュジュに語りかける。
彼女はまだそこにうずくまっていたが、ケインの方をゆっくりと見て答えた。

「・・・う、うん・・・、ついさっき・・・。」

起きたらジェノブレイカーとケインがいて驚いた、とジュジュは言った。
・・・彼女はやっぱり半分以上、寝てたのである。

「ケイン、何でここにいるの?」

「何でって・・・。
・・・俺も昼寝したかったんだよ。」

そっぽを向いて答えた彼に、
ジュジュは「ふ〜ん?奇遇だねえ。」とお気楽な表情で返した。

「・・・夢を見た。
ジェノに初めて会った頃の夢。
お前も出てきたぜ。
投網でぐるぐる巻きだった。」

とケインが言うと、ジュジュは困った顔で笑った。
あの日、店に忍び込んでトラップに捕まった事は、
今では彼女の中で相当恥ずかしい思い出になっているようであった。

「ジェノブレイカーと私って、同期だよね。
ケインに出会った時と場所、一緒だし。」

「・・・まあ、そういうことになるか?」

「だからかなー。
なーんか親近感沸くんだよねえ。
他人・・・他ゾイドとは思えないって言うか。」

「・・・何じゃそりゃ。」

ジェノブレイカーが紅いから、赤の他人ならぬ赤の他ゾイド、なんて言うんじゃないだろうな、とふと浮かんだり。
そんな考えが浮かぶ自分にも情けなくなるが・・・。

「あれから一年半か・・・。
長いねえ。」

ジェノに出会って、こいつに出会って。
一年半というのがケインにとって長いのか短いのかわからなかったが、色々とあった気がするな、と思った。

「ケインは・・・、これからもジェノと一緒に頂点を目指すのよね?」

ずっとまっすぐ前を見て。

「当たり前だろ。
次こそはビットに負けない。
・・・お前には悪いけど、遠慮しないからな。」

「あら、私は別にビットだけを応援してるわけじゃないわ。
バトルは常に真剣勝負。
相手が誰であろうと結果がどうであろうと、
お互いのゾイドがベストを尽くしてくれれば、それだけで満足よ。
・・・でも正直言うとね、ビットとケインだと、どっちを応援しようか迷うのよね。
だってどっちも選べないもの。
好きなゾイドなんだもの。
だから、“どっちも頑張れ−”に、なっちゃうなあ。」

「・・・ふーん。」

「・・・次のロイヤルカップで、優勝できるといいね。
ビットでも優勝できたんだもん。
ケインならもっと簡単に行くんじゃない?
“Sクラスに一番近いウォリアー”って言われてるの、知ってるでしょ?」

「どうかな。
強いチームはたくさんあるし、ロイヤルカップまでまだ2年半もある。
その間に新しく出てくる奴らもいるし。」

ゾイドバトルは、奥が深い。
一つめの頂点を極めたビットは、さらなる高みを目指して戻ってきた。
一際大きな存在になって。

「そうね・・・。
でも、負ける気はないんでしょ?」

「当然だろ。」

「それに、ライバルは多ければ多いほど、楽しいんでしょ?」

「まあな。」

「ジェノは最高に最強の相棒なんだぜー!
強い絆の強い力で結ばれてるんだぜー!
誰にも負けないぜー!って思ってるでしょ??!」

「・・・おい、ジュジュ。
お前、1人で盛り上がりすぎ。」

「・・・はい。」

こいつは、世話のかかる奴だと思う。
一人だったらどこまでも果てしなく突っ走ってしまいそうだな、と容易に想像できる。
まるで子供だ。
こんなにもあっけらかんとしているのに、時々鋭い所とかも。

「・・・ま、見てろって。
俺は誰にも負けないからな。」

俺の望み、ジェノの望み、お前の期待、全てに応えてやる。

「でも、無理は禁物、だからね・・・。
資本は健康な体と精神だからね!
休養も時には必要よ!」

「その言葉、そっくりお前に返す。
たまには仕事休め。
ビットが何気に心配してたぞ。」

「私は好きでやってるからいーの。
自分の体の事は自分でよーくわかってるわ。」

「俺だってわかってるよ。」

「・・・じゃあテストするわ。
ケイン、貴方の身長は一年半前と比べていくつ伸びたでしょう?」

唐突にジュジュが言い出した事に、ケインはしばしあっけに取られた。

(・・・何、言ってるんだ?ジュジュは。)

「・・・はあ?
何でそんなもの・・・。」

「ぶーっ!時間切れでーす。
答えは2cm。
一年半前、貴方は168cmでした。
以上!」

(・・・そうなのか?
いや、何でジュジュがそんな事知ってるんだ??)

「あのね、付き合い長いんだから、見てればわかるわ。
ねえジェノ?貴方も気づいてたわよねー。」

後ろのジェノブレイカーに話し掛けるジュジュ。
“知らないのは本人だけよねー”と付け加えた。

「そんな風にね、毎日世界は変わってきてるのよ、少しづつ。
でも確かに、ゾイドバトルだって毎日毎日変化してるわ。
どこで何が起きるかわからないもの。
一瞬たりとも見逃したくないの。
忙しいけど好きよ、この仕事。」

「・・ま、体壊さん程度に、な。」

「は〜い。
・・・ケインもね。
体壊してリーダーが出られないなんてしまらないからね。」

そんな姿は、“相棒”が嘆くわよ。とジュジュはジェノを見て言った。

「へいへい。
・・・しかし、2cmね。
というと170か・・・。ふ〜ん。」

ケインはジュジュをじ〜っと見下ろした。

「・・・??
何よ?ケイン。」

「どうりで、最近ジュジュがチビに見えるなーと思った。
お前が縮んだんじゃなかったんだな。」

ジュジュの身長は162cmである。
ちなみに一年半前も変わってない。
意地悪く笑うケインにジュジュはひどい!と何か反論しようとしたが。
途端に彼女のお腹が“ぐ〜きゅるる・・・”と大きな音を立てた。
・・・両者、しばしの沈黙。

「・・・お腹・・・空いた。」

そんな事はわかる、と言った後にケインが時間を見ると3時になろうとしていた。

「どっかで軽く食べてくか?
俺も腹減ったな・・。」

「そうね、そうしよそうしよ!
私ケーキ食べたい!」

「お前・・・甘いもの好きだよな本当・・・。」

しかも食べる量が半端じゃない。
どこにそんなに入るんだ?と思うと謎であった。
一番近い街まではゾイドで3分くらいよ、とジュジュが言って行く場所は決まった。
そうして数分後、草原にいたジェノブレイカーとヘルキャットが近くの街目指して走り去っていった。

 

その日の夕方。
ジュジュと別れて店に帰ってきたケインにリッドが話し掛けてきた。

「遅かったな兄さん。
どこまで行ったかと思った。」

「ああ、ちょっとジュジュと会ってな。」

「あの根性あるカメラ姉さんか。
・・・レイスが凍る美人。」

後ろでレイスが“おい!”と突っ込みを入れるがリッドは気にしないでおいた。

「それで?
彼女と何してたんだ?」

「昼寝してケーキ食ったけど?
・・・リッド、それがどうかしたか?」

「・・・いや、別に。」

弟はそれ以上何も言わなかった。
・・・まあ、恋愛は本人同士の自由だしな、と心の中で呟いていた事を兄は知らない。
恋愛て段階でもないであろう。
・・・自覚無さ過ぎである。

 

一年半前、二つの出会いをしたケイン。
彼の今後に、両者はこれからも深く関わっていくであろう事は間違いないであろう。
今後どのような成長、変化があるのであろうか。
ジェノブレイカーと、ジュジュと、
・・・それはまだ、誰にもわからない話。

END

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あとがき

HAZUKI様こんにちわ!
で、できました〜(達成の涙)\(T▽T)/
後半部分できましたので送ります!
人間同士だとどうしても会話多くなるなあ・・・。
えーと、この前のチャットの会話で出てきたケイン達の設定(身長など)を使わせていただきました。
HAZUKI様、お知らせしておきます。
私はほんの些細な事でもネタにしてしまうので(おいおい)。
ふふふ。リッドの出番が増えたな・・・。
何気にケインとリッドの会話はこんな感じでいいのかな、と思ってます。
ジュジュとだとケインはつっこみですが、リッドだとボケになったりもしちゃいますね。
ケインとジュジュ、何気に書くたびに新密度増してるような・・・。
(ああもう、知らぬは本人ばかりってか)
こういうのもいいですか?HAZUKI様。
何かありましたら言って下さいね。
何よりもHAZUKI様に気に入って頂かなければ(><)。
とっても楽しかったです。書かせて頂いてありがとうございました。
しかし長編には私、向かないな・・・。
(――)一話完結体質みたいです・・・。
そう思いました。
では、失礼します。


初心者さんから頂きました。
いやぁ、面白く読ませていただきました。
やっぱりこの2人・・・、恋人同士にはほど遠い・・・。
リッドもいい味だしてましたね。
ケインとジュジュの行く末を見守っている彼にも期待。
ただ・・・、冷めてるんですよね・・・、彼の性格・・・。
レイスはレイスで固まってるし・・・。
やっぱり一番のまとめ役はシエラだったりします・・・。
どうもゾイドは女性が強いですね・・・。
まぁ、この方が面白いですけど。
初心者さん、ありがとうございました。

 

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