「泣けない身体」

 

コッペリアの棺
人は踊り疲れた人形
祭壇の羊

機械仕掛けの夢は何処に向かっていく?

 

泣かなかった。
もう知っていたから。

彼女はこの世界から去ってしまう事を。
悔しい事だ。
分かっていながら何もしなかった自分が。
たった三日間ほどで彼女が去ってしまう事。
知っていながら何も出来なかった。
彼女はどうして行ってしまったんだろう・・・。
泣かなかった。
あふれ出てくるのは悔しさと疲労。
一筋でも良い。
一滴でも良い。
彼女の為に泣きたい・・・。

 

彼女が死んだ。
信じたくはなかった。
でも知っていた。
彼女が告げたのだから。
何故逝ってしまったのだろう。
ただ襲ってくるのが後悔と悲しさ。

泣けない。
どうしても泣けない。
何故泣けないのだろう?
こんなにも悔しいのに。
こんなにも悲しいのに。
一瞬でも良い。
一回でも良い。
彼女の為に泣きたい・・・。

 

「私はもうすぐ死ぬわ。」

唐突な言葉。
私は貴女のことを知っている。
貴女も私のことを知っている。
でも、貴女のその言葉だけが分からなかった。
なぜ?

「予感がするの。
たぶん、一年以内に私はこの世界から消える。」

酷い冗談。
でもそれ以上惨酷な真実。
そのあと残される人はそれ以上不安な感情に苦しまされる。
酷く、惨酷で、不安な感情を持たされる。

 

どうしてそんな事を言うのですか?

「何故だろうね?
私もわからない。
でも・・・。」

その時、私は貴女の知らない部分を知ってしまった。
見つめてはいけない貴女。

それでも、貴女は私の半身。
だからそれは私の知らなかった半身。
今になって気づくという事で私は後悔する。
私には貴女の為に泣けない。
この作り物の体では貴女という人の為に泣けない。
願い事が叶うなら。

私はそれ以外何も望まない。
それだけで良い。

今この時間だけで良い。

 

貴女の為に泣きたい。
それだけで良いから・・・。
叶えたい。

 

 

あの人が消えて何年が経っただろう?
あの時の願い事は叶わなかった。
もうやりなおしなど出来ない。
でも。 今はそれでも良い。
新しい私の半身。
新しい私の支える人。
私の新しい支える人。

あの人の残した貴女。
それがいま私の大切な人。
貴女が悲しかったら私も悲しい。
でもそれ以上悲しい事は・・・。

貴女が私から去って行ってしまうこと。
私から貴女が去って行ってしまうこと。

それが一番悲しい事。
だからお願い。
その時。

私から貴女が去ってしまったとき。
この声で海に叫びたい。

この翼で空を飛びたい。
この足で大地を走りたい。
この腕で森の木の実を掴みたい。
この世界で貴女といた場所に行きたい。
そしてこの眼から・・・。

涙を流したい。
大粒の涙を。

あの人に出来なかった事は一つ。

涙。

この動作が出来なかった。
貴女の為に出来なかった動作。
人には出来る動作。
でも私には出来ない。
私と同じ体をもつ物たちも同じ。
私たちは『泣く』という動作が出来ない。

それが悲しい。
たった一つの動作が出来なかった事が悲しい。
たったそれだけが悲しい。

それが悲しい。

だからあの時のお願い。
この体が砕けて腐敗したって構わない。
この心が壊れて消えたって構わない。

たった一筋の涙を。
たった一瞬の涙を。
たった一滴の涙を。

たった一回の涙を。

それで構わない。
そんな願いでこの心と体が朽ち果てようが失われようが構わない。

だから貴女の消えてしまう時。
あの人と同じではなく。

あの人に出来なかった動作で。
この瞳に落ちる涙で。

貴女を迎えたい。

貴女が消えてしまう時。
私も共に行きましょう。
この瞳に涙を流して。
あの人も待っているから。

 

でも、もしその動作が出来なかったら?

 

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はい、この詩はダークネスのダ・カーポの事ですな。
オーガノイドって機械の体だから便利というわけではありませんよね。

この詩に書いた『動作』で『泣く』ということが出来ないことに悔しいと想う様に書いてみました。
でも、大切な人が遠くに行ってしまった時に泣けないという事は悲しいと思いますな。

それが一番悲しいと私は考えています。

葉月さんに失礼ですが最後の行は赤い文字でコピーしてもらえないでしょうか?
やっぱ最後の言葉は印象しないといけないと思うので。

それでは頑張ってくださ〜イ。
私はこの詩を書いたときが期末テスト前日でした。(ダメだろそれ!!)


桜神さんから頂きました。
赤文字、コピーしましたよ。
オーガノイドもゾイドの一種、金属生命体ですからね。
“泣く”ということは出来ません。
でも、悲しむことは出来る。
心があるから・・・。
金属の身体を持つ生き物、ゾイド。
その中でも特別知能が発達した存在、オーガノイド。
でも、いつか彼等が本当の意味で泣ける日が来るかも知れません。
その事を夢見る限り・・・。
桜神さん、ありがとうございました。

 

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