「運命の日」
〜チーム・スイフトの災難〜

 

テンプスタウン チーム・スイフトのベース AM 09:53

「お姉さん!早くしないとバトル開始時間におくれるよ!!」

「ちょっと待って、まだ準備が・・・。」

こんなやり取りが町の一角にある格納庫付きの家から聞こえてくる。
近所に住んでいる人々は「ああ、またか。」という顔をした。
どうやら、この辺りでは良くある事らしい。

「だから、バトル前日の夜更かしはやめてっていったのに。」

「ごめん・・・」

お姉さんと呼ばれた女性は少ししゅんとした。
妹である女性は少し肩をすくめると、

「まあ、いいか。
格納庫の扉開けるからグスタフに乗って!!」

と、言うと扉の開閉スイッチを押した。

「わかった!!」

姉はそう言うと、さっきまでしゅんとしていたのが嘘の様に、グスタフに向かって走っていった。
この後の自分たちの運命も知らずに・・・。

 

ここで、彼女たち彼女たちの紹介を少し。
お姉さんと呼ばれた女性の名前はエリー・スイフト、
チーム・スイフトのリーダーである。
ゾイド乗りの腕は確かで、Aクラスウォーリアー。
遠距離戦闘を得意とし、漆黒のシールドライガーDCSを愛機とする。
妹の名はミリー・スイフト、同じくチーム・スイフトのメンバー。
格闘戦を得意とし、純白のセイバータイガー「白虎」を愛機としている。

 

バトルフィールド予定地 AM 10:40

「ぎりぎり間に合った〜。
お姉さんはやく!
後5分だよ!!」

「あたしすぐ行くから先に行ってて。」

「わかった!!」

ミリーはそう言うとキャリアーの白虎に乗り込みバトルフィールド予定地に入った。
エリーもすぐにライガーに乗り込みベルトを締めるとゾイドギアをセットする。
すると、エリーの表情が少し変わった。

「さあ、行くわよ私のライガー。」

そしてフィールド予定地に向かってライガーを走らせた。
どうやら彼女はバトルの準備が整うと、冷静な性格になるらしい。

 

バトルフィールド予定地 AM 10:45

AM 10:45になると同時に上空から白い筒が落下してきた。
ジャッジサテライトから射出されたジャッジカプセルである。
轟音をたててできたクレーターの中心部分からカプセルがせり出してきた。
前面ハッチが開くとジャッジマンが宣言をはじめる。

「これより半径40km以内はゾイドバトルのバトルフィールドとなります。
競技者及びその関係者以外は危険なのでただちに退去してください。
フィールド内スキャン終了、バトルフィールドセットアーップ!!
チーム・スイフトVSチーム・ホーンズ、バトルモード0982。
レディー・・・ファイッ」

それと同時に白虎が相手チームのレッドホーンに向かっていく。

「相手はレッドホーンとダークホーンが各1体づつ。
機動力はこちらが上だけど、甘く見て油断しないように。」

「わかってる!!
お姉さんもしっかりね。」

「了解したわ。」

一通りの通信を終えてミリーは、

(どうしても慣れないのよね〜、お姉さんのあのしゃべり方。)

と思いながら白虎をレッドホーンに向かって走らせた。

 

バトルフィールド内 AM 10:53

エリーはダークホーンと対峙していた。
お互いに動くに動けない微妙な位置だ。

(この勝負先に動いたほうが負けね。
私は大丈夫だけど相手は耐えられるかしら。)

そう思いつつエリーはダークホーンを注意深く見つめ続けた。

対峙する事30秒ダークホーンのビームガトリングガンが僅かではあるが動いた。
そう思うと同時にエリーはライガーを右に水平移動させる。
そしてライガーが今までいた場所をガトリングガンの砲弾がえぐった。

「Aクラスでは操縦技術だけではなく、
忍耐力もないと勝ち残るのは難しいわよ。」

そう言いながらエリーはライガーの着地と同時にビームキャノンを撃ち込んだ。
ダークホーンがその場に倒れこむ。

「チーム・ホーンズ登録番号0431、リタイア!」

ジャッジマンの宣言を聞きつつエリーはミリーのいる方向にライガーを走らせた。

「エリーの方はどうなっているかしら。」

 

バトルフィールド内 AM 11:04

エリーがダークホーンを倒したころ、ミリーは苦戦していた。
機動力の違いから攻撃があたる事は、無い。
しかし、レッドホーンは当てる事が無理であると分かると全武装を闇雲に撃ってきたのだ。
これでは、接近戦を仕掛けても予想外の攻撃でシステムフリーズ、と言う事もありうる。
その為、ミリーはさっきから逃げ続けているのだが。

「何で弾切れにならないの〜!?」

そうなのだ、通常のレッドホーンならばとっくに弾切れを起こしているはずなのだが、
目の前のレッドホーンは依然として弾丸を撃ち続けていた。

(相手を良く見れば何か解決策を思いつくはず。)

そう思いながらミリーは回避行動をとりつつレッドホーンを観察した。
そしてある事に気がついた。

(あいつ、ビーム兵器でしか攻撃してない!!)

そう、レッドホーンは先程からビーム兵器でしか攻撃をしていなかったのだ。
おそらくは、エネルギータンクなどを追加装備したのだろう。

「それならビーム兵器を破壊すればいいだけのこと!」

そう叫ぶとミリーは2連装ビーム砲に対してミサイルを3発発射した。
3発中2発は撃ち落されてしまったが最後の1発がビーム砲を沈黙させる。

「まず、1つ!!」

さらに背後に回りこむと両後ろ足のビームガンにショックキャノンを当て破壊した。

「2つ、3つ!!
これで射撃武器は使えないわ、もう諦めなさ・・・。」

ミリーがそう言い終わる前にレッドホーンが突撃を仕掛けてきた。
クラッシャーホーンで倒すつもりらしい。

「諦めが悪いよっ。」

そう言うと白虎をレッドホーンに向けて走らせる。

「これで終わりよっ、ストライク・・・クロー!!」

ジャンプした白虎のストライククローがレッドホーンの左前足を捉え、弾き飛ばす。
そして、バランスを崩したレッドホーンがその場に倒れた。
それを確認するとバトル終了のブザーと共に宣言をはじめる。

「バトルオールオーバー、バトルオールオーバー、
ウィナー、チーム・ス・・・、うわぁぁ!!」

宣言の途中でジャッジマンが悲鳴をあげた。

「なに!?」

ミリーがそちらに目を向けるとつぶされたジャッジマンの上に黒い筒が出現していた。

「あれは・・・まさか・・・。」

ミリーが信じられないと言うようにつぶやく。
そして、前面ハッチが開くとジャッジマンが現れた。
しかし、普通のジャッジマンとは違いボディが黒い。
しかもカメラアイの形状は凶悪そうだし、肩にはご丁寧にとげまでついている。
ダークジャッジマンが宣言をはじめた。

「このバトルはデッドスコルピオ団がジャックした!!
チーム・スイフトVSチーム・DS、
バトルモード0999、レディー・・・、ファイッ」

宣言終了と同時にミリーを激しい衝撃が襲った。

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」

衝撃が収まりミリーが薄れゆく意識のなかでモニターを見たとき、
そこには少しずつ実体を表していくヘルキャットが映し出されていた。

「光学迷彩・・・。」

そうつぶやくとミリ−は気を失った。

 

バトルフィールド内 AM 11:21

エリーがミリーの戦っていた場所に到着すると、
そこには全身から火花を飛び散らしながら白虎が倒れていた。

「ミリー!!」

エリーがライガーを走らせようとすると、周囲にヘルキャットが姿を現した。

「これは光学迷彩・・・、囲まれたわね」

その言葉と同時に通信が入った。

「我々は、デッドスコルピオ団である。
エリー・スイフト、我々と共に来てもらおう。」

「そんなこと、できるわけが無いわ。」

エリーはそっけなく答える。

「君に選択の余地は無い。」

その言葉にエリーが反応して白虎に目を向けると、
そばにいたヘルキャットがガトリングガンを白虎のコクピットに突きつけていた。

「わかったわ。」

「では、ホエールキングに乗ってもらおう。」

ライガーと白虎を収容すると、漆黒のホエールキングは飛び立っていった。

 

DS団所有ホエールキング内 PM 12:04

「あたしをどうするつもりなの!?」

ホエールキング内にエリーの声が響く。

「君には、我々DS団の為に働いてもらう。」

幹部の抑揚の無い声が響いた。

「お断りだわ!!
・・・と、言ったらミリーを盾にして脅すつもりね。」

「そういうことだ。」

幹部がエリーの答える。

「しかたない、ミリーを盾に取られてるんじゃね。」

エリーの答えに幹部が満足するようにうなずいた。

「それでは、今日から君にはナイトメアと名乗ってもらおうか。」

そう言うと、幹部はニヤリと笑った。

 


吉川さんから頂きました。
エリーとミリーのお話です。
こういった経緯で、エリーはデッドスコルピオ団のウォーリアーになってしまったんですね。
果たして、彼女達に救いはあるのか?
・・・それを考えるのが私なんですけど・・・。
その話は本編の方で。
吉川さん、どうもありがとうございました。

 

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