「過去を求めて」

 

「ぐあっ!」

「ハッ、弱いな。」

暗い森の中ブレードに足を切られ崩れるレブラプター。

「敵は一人なんだ。
さっさと仕留めろ!」

「そんな事言っても当たらないんですよ。」

飛び交う声には、焦りが感じられる。
そして、放たれる弾を木々を盾にして、かわしていく黒いゾイド。

「撃てば当たるって訳じゃねぇんだぜ!」

黒いゾイドから聞こえる挑発の声。

「ふざけるな!!」

レッドホーンのパイロットから怒りの声が聞こえ、さらに凄まじい勢いで放たれる砲弾。
だが、あざ笑うかのように様に砲弾は一向に当たらない。
そして撃ち尽くし、砲弾が止まった。
敵に対して円を描くように動き、
砲弾をかわしていた黒いゾイドのパイロットがその瞬間を逃すはずは無く、
方向転換をしてレッドホーンへと向かっていく。

「な?!」

「喰らいな!!」

レッドホーンのパイロットが気付いた時にはすでに遅く、
ブースターで加速しながらボディーにあるブレードを展開して突進。
そして、レッドホーンを切り裂き戦闘不能にした。

「チッ、弱すぎて慣らしにもならねぇ。
次の餌食になりたい奴はどいつだ?」

残りのゾイドのいる方向を向き、ゆっくりと歩いて行く。

「く、来るなぁ!!」

残ったパイロットの中にはそう叫びながら撃ちまくっている者もいた。
だが、多少被弾しながらも突進しブレードで切り裂き瞬く間に数を減らしていった。

「ひっ!」

ほとんどのゾイドを行動不能にした頃、残った幾つかのゾイドが逃げ出した。

「逃がすか!」

そして、黒いゾイドも逃げたゾイドを追い暗闇の中へと消えていった。

 

 翌日、とある宿屋の一室

「グルゥ・・・・・(やっと起きたか。)」

同じ部屋に居るガースが話し掛ける。

「早いな・・・・ガース。」

「グルルゥ・・・・(早いも何ももう昼だ。)
グアァ・・・・(いつまで寝ている気だ。)

抑揚の無い声でガースが答える。

「勘弁してくれよ。
昨夜は遅かったんだ。」

「グルァ・・・・・・(あの程度の相手に時間を掛けるお前が悪い。)」

寝癖のついた頭をかきながら言ったクルスにきた答えはやはり容赦なかった。

「ハイ、ハイ。
分かったよ。」

それだけを言いクルスは出かける準備を始めた。

 

 ファングブレイクを走らせ遺跡へと向かう。
彼、クルスは一応トレジャーハンターが本業と言っているが、
実際のところ、それだけでは食べていく事が出来ないので、
賞金稼ぎの方がむしろ本業に近い状態である。
それと言うのも遺跡で探しているのは、
古代ゾイド人の時代の事が記されている石版を見つける事だからである。
彼は過去の、古代ゾイド人の時代の記憶が無いと言っていい状態である。
自分が何故カプセルの中に入り長い間眠っていたのか、その理由を知るために石版を探している。
己の存在意義を知るために・・・。

「あれか。」

目的の遺跡を見つけ、中へと入っていく。
しばらく中を歩いていても特にこれと言ったものは無かった。
中は入ってすぐ奥へと続く通路のようになっていた。
最深部には中心に柱が在って広場になっていた。

「・・・・・・・・・。」

そこには何も無かった。
本当に何も無かった。
これでもかと言うほどに(くどい)

「何も残ってねぇ。
ハズレかな、ここも。」

「グルルゥ・・・・・・・?(帰るか?)」

「いや、少し調べてみるさ。
何か在るかも知れないからな。」

「グルゥ・・・。(そうか。)」

しばらくして・・・、
中央の柱を調べているうちに一本の亀裂のような物を見つけた。
それはどう観ても自然にできた物ではなく、明らかに人工的に造られた物に見えた。

「何か在るな。」

そう言って、腰にしまっているナイフを取り出し亀裂に突き立てた。
そして、梃と同じ要領で少しずつ押し広げる。

「石版だ。」

ナイフを鞘にしまい、押し広げた柱の中にあった石版を取り出す。

「何が書いてあるか、調べてみるか。」

そして何処からともなく取り出したハンドライトで照らし調べ始めた。

 

数時間後・・・・・・、

「う〜ん。」

クルスは悩んでいた。
ちなみに今の彼の状態はガースの背中に座り腕を組んでいる。
考え事をする時、彼はいつも座って腕を組むという癖がある。
放っておくと何時間もそのままになる事もため、
ガースの背中に座って悩むついでに移動している、という訳である。

「わかんねぇなぁ。」

「グアァ・・・?(何がだ?)」

「損傷が激しくて読める所がほとんど無かったからな。」

先程見つかった石版には損傷が激しくてほとんど読めなかった。
読めたのは、わずか五つの言葉。
『イヴ』・『始まり』・『終わり』・『巫女』・『使命』

「・・・・・使命、か。」

「グルゥ・・・?(どうした?)」

「いや、別に・・・・。」

「グルゥゥゥ・・・・・・・・
(以前お前は自分の存在理由を知るために石版を探している、と言ったが、
知ってどうするつもりだ?)」

「さあな。
ただ知りたいと思っただけさ。」

「グゥゥ・・・・・?(知った結果が世界の破滅を導く事だとしたらどうする?)」

「その時は、お前は俺を止めるか?」

「グゥ・・・・・(いや、私はお前のオーガノイドだ。)
ガァァ・・・・・(それ以上でもそれ以下でもない。)
グルルルル・・・・・(お前の考えに付き従う、ただそれだけだ。)」

「お前らしい答えだな。
お前はもう少し自分のことを考えた方がいいと思うぞ、俺は。」

「ググググ・・・・・・・(機会があればな。)」

「俺は、・・・・・この世界が好きだ。
そこに住む人たちを含めてな。
たとえ、破滅に導く事が俺の使命であり運命なら俺はその運命に抗う。」

「グルゥ・・・・・(そうか)」

 

 外に出てファングブレイクに乗り込み遺跡を離れようとした時、突如砲撃を受けた。

「な、何だ?」

「ついに見つけたぞ!!」

声のした方を見ると一匹のレブラプターがいた。

「グルゥゥ・・・・・?(あれは何だ?)」

「そういえば眠かったから一匹残ってたけど無視したっけな。」

「そんな理由で無視したのか!!」

「雑魚のくせに俺の睡眠欲を邪魔するいわれは無い。
だいたいお前、たった一人でこの俺に勝てると思ってるのか?
昨日だってレッドホーンを含めて十数体いたけど、
俺に数発被弾させただけでほとんどダメージは無かったぞ。」

「フッ、これでも余裕でいられると思っているのか?」

その後、ガイサックやコマンドウルフ、他にもヘルディガンナー等が出て来る出て来る、総勢三十数匹。

「チッ、しょうがねぇなぁ。
本気でやってやるよ。」

目つきが変わり雰囲気も変わる。
クルスが戦闘時に起こる変化、いわゆる戦闘モードである。

「ガース!!」

クルスの呼び声に反応してガースが光となりファングブレイクへ合体する。

ゴアアアアア

ファングブレイクが雄叫びをあげた後、敵陣の真只中へと突進していった。

 

 ブレードで幾つかのレブラプターを切り裂きながら、
敵の中心までくるとファングブレイクから黒い煙が噴出される。
黒いボディーが保護色となり敵がファングブレイクの姿を見失う。
立ち止まった敵をブレードで切り裂き、その直後ボディーのブレードを真下へと向けながら跳躍する。
砂の中に潜ろうとしていたガイサックに飛び掛り串刺しにした。
すぐに飛びのき次の標的へと飛び掛る。
スモークディスチャージャーの煙が晴れる頃にはすでに10体近いゾイドを行動不能にしていた。
コマンドウルフが突進してきたが、その方向を向きシールドを小さく発生させる。
さらに、頭部のブレードを前面に向けコマンドウルフへと走り出す。
コマンドウルフは正面から激突する前に吹飛ばされ、崖へ叩き付けられて動かなくなる。
シールドを前面にピンポイントで発生させ、頭部のブレードによって生じる力場を利用し、
反発力を一点に集中させて相手を弾き飛ばすというこの技は、
「シールド・リフレクト」と名付けられている。
殺傷能力こそ無いが凄まじい勢いで弾き飛ばされるために、
何かに激突した場合はそのままシステムフリーズを起こさせる程の衝撃が伴う。
スモークディスチャージャーで敵の目を晦ましブレードで斬る。
ファングブレイクには中距離用の武器は存在しない。
それを補う為に、ボディーにあるブレードは全方向に向ける事ができる。
突進してきた相手を飛び越える時にブレードを真下に向けて、
すれ違いざまに切り裂くといった方法を使うため、避けるだけで無く攻撃もできる。
接近戦こそクルスがもっとも得意とする間合いであり、ファングブレイクの真価を発揮できる空間である。
あらかた片付けた後、突如感じた気配に後ろへと飛びのいた。
その直後、今までいた地点を攻撃された。
ガンスナイパーによる狙撃を受けたのだ。

「チッ」

また狙撃されれば次は間違いなく喰らうだろうと一瞬で判断したクルスはファングと意識を同調させた。
ゾイドと意識を同調させる、クルスが持つその能力は諸刃の剣ともいえる。
ゾイドの反応速度を限界以上に引き出すがゾイドと共に自らも傷付く。
その副作用が在るためクルス自身滅多に使わない。
それに、ゾイドと意識を同調させるという事は、
自分の命令を直接ゾイドに与える事で操縦するという時間が大幅に短縮されると共に、
ゾイドの闘争本能等に直接さらされるために、
下手をすれば自我を失い全てを破壊するバーサーカーとも成りうる、と言う危険性も存在する。
ファングブレイクと意識を同調させた状態では、異常ともいえる速さで反応する。
高い運動性さえ有していればガンスナイパーの狙撃でさえ確実に回避できるその速さは、
接近戦においてどんなゾイドとも互角以上に戦う事ができる。
クルスにとって最強の姿である。
二度目の狙撃をかわす。

「あそこか。」

ブースターで加速しながら、ガンスナイパーへと向かっていく。
狙撃をかわしながら目前まで接近した。
ガンスナイパーが次の弾丸を撃ち出す前に尾を切り落とした。
そして「シールド・リフレクト」で吹飛ばす。
吹飛ばした後、後ろ足のフットロックで固定し口の中から砲身スライドさせ荷電粒子砲の発射体制をとる。
そして、足の付根にあるジュネレーターを開き荷電粒子砲を発射した。
そして全てのゾイドを行動不能にした。

 

「グルルゥ・・・・・・・?(これからどうする?)」

戦闘が終了し、しばらく移動したあと休憩しながらガースが言った。

「さぁな、風邪の吹くまま、気の向くまま、ってな。
さて、そろそろ行くぞガース。」

「グァァァ・・・・・・(わかった。)」

主を乗せたファングブレイクが走り出した。

 

「さて、これからマジでどうしようか。」

「グルルゥゥ・・・・・(やはり、何も考えてなかったな。)」

「う゛・・・・・・」

妙に痛い一言だった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

どうも、砂亀です。
クルスの事を書いてみました。
とはいっても、やはり不満な点が多い。
戦闘シーンが上手く書けないです。
次こそ上手く書けるように努力しないと。
ちなみに時期設定は第2部の始まる少し前程度ですね。
確かその頃は治安が悪くてGFがつくられた筈ですし・・・・・。
さてオリキャラの二人(?)カモン!ってクルスは?

「寝ていた。」

寝ていたって伝えといたはずだけど・・・・・・
まぁ、いいや。
丁度良いし、ガース、一つ聞きたいんだけど。

「何だ?」

お前クルスの過去を知ってるのか?

「もちろん知っている。」

じゃ、何で言わないんだ?

「言うつもりはない。」

何で?

「それも言うつもりはない。」

あ、そ。
じゃ、良いよ。
書くから。

「書ければな。」

ぐ、相変わらず辛口だな。

「性分だ。」

まったく、次はちゃんとクルスを連れてこいよ。
それでは。


砂亀さんから頂きました。
クルスとガースの小説です。
バトルシーン、上手いですねぇ。
これ、本当に初めてですか、って思ってしまいました。
(何ヶ月、いや何作かかってるんだよ、俺は・・・。)
クルスはお寝坊さんなようで、ガースも大変でしょう。
なんか、気ままなところがキースに似てる。
彼も結構行き当たりばったりなところがありますから。
次回作、期待してます。
砂亀さん、ありがとうございました。

 

プレゼントTOPに戻る         TOPに戻る