「彼女が持ってきた桃」
〜お兄ちゃんの決断〜

 

私、シエラ=へメロスはただいま20歳。
夫の(えへv)ジェミーとは出会いから5年の月日を経て結婚しました。
ただいま半年目の新妻ですv
大好きな人とゴールインできて、私はとっても幸せですv

私には、お兄ちゃんが二人います。
2つ年上のリッドお兄ちゃんと、4つ年上のケインお兄ちゃんです。
そしてリッドお兄ちゃんの親友で、ケインお兄ちゃんの弟分で、
私のもう一人のお兄ちゃんみたいなレイスがいます。
私とお兄ちゃんたちは、レリードタウンで一緒に暮らし、
アーサーディーリングショップというゾイドのお店を営んでいました。
でも、私がお嫁に行っちゃったので現在男3人しかいませんが、元気にやってるみたいです。
受付係だった私の代わりに今ではレイスが否応なく、接客に回ってるみたいです。
・・・女性を見ると凍ってしまう体質が、その荒療治のおかげ(?)で少しずづ、
治ってるみたいだってリッドお兄ちゃんが嬉しそうに言ってました。
ゾイドバトルでも私はチーム・バスターズからブリッツに移ってしまったから、バトルでもう一緒に闘えません。
それが・・・ちょっと、寂しいです。
でも、ケインお兄ちゃんが、言いました。

「バトルフィールドで会った時はウォリアーとして全身全力で勝負だ!
手加減はしないからな!」

・・・面倒見のいいお兄ちゃんらしいな、て思いました。
私が迷わないように、そう言ってくれたんだなって。

「うん。負けないから!
私とゾイドの絆の強さ、見せてあげる!」

お兄ちゃん・・・ありがとう。
今まで、たくさん・・・ありがとう。
大好きだよ。どこにいても。
お兄ちゃん達も、どうか幸せになってね。
大好きな人と。

この間、町で偶然会ったレイスから聞いた話ですが、
リッドお兄ちゃんに『恋人・・らしい人』ができたみたいです。
・・・と言っても、特にお兄ちゃん自身は変わってないみたいですが、
その人はたまに、お店のカウンターに立ってるらしいです。
その人はリッドお兄ちゃんをずっと気にして見ていました。
長い長い想いが、やっと叶ったみたいです。
根気勝ち?
パーツと改造しか興味なさそうで、いつもクールなリッドお兄ちゃんが、
その人に時々、少しだけど笑うみたいです。
将来は、リッドお兄ちゃんと一緒に店の改造を手伝ったりするのかな?

「メンテナンスの腕、まだまだだね。」

とか言いながら、通りすがりにアドバイスしてるみたいです。
・・・リッドお兄ちゃんのクールさはきっと一生変わらないだろうけど、
その人はそんなお兄ちゃんと一緒にいてとても、幸せみたいです。

そして、あんなに女性の前であがりっぱなしだったレイスにも、
最近会ってる人がいるみたいです。
びっくり!

「恋人と呼べるもんかどうかってのはあいまいなんだが、
シエラちゃん以外でまともに話せるんだよ。
何とか。」

私はその人に最初会った時、
「リッドお兄ちゃんが女だったら、こんな感じだろうな」と思ったのを覚えています。
現実的で冷めた性格で、仕事はしっかりしていてお金の管理にもうるさい所とか。
レイスとリッドお兄ちゃんは親友だから、
よく似た感じのその人とも、気が合うのかもしれません。

「普段はあっちの方が忙しくて、あんまり会えないんだけどな。」

そう言いながらも笑ってる彼を見て、
私を最初見て固まってた頃とは随分変わったなあ、と思いました。
人間、変われば変わるものなんだな・・・。
嬉しいような、物足りないような・・・そんな感じです。
ただ、具体的な進行状況は・・・どうなのかさっぱり謎です。
相手の人は、そんな彼の状態を察してくれてるみたいです。

「洞察力が鋭いんだ。
全部見透かされてる気がする。
かなわないな。」

・・・きっとすごく持久戦になると思うけど、そういう駆け引きも楽しんでるみたいです。

 

「後は・・・ケインお兄ちゃんかア。
いい加減、ハッキリして欲しいなあ・・・。」

“シエラやリッドがしっかりするまで、俺が保護者になってやらないとな。
何にもできないんだし。”

いつもそう言って、自分自身の事は後回しにしてきた、
面倒見が良くて、優しくて、時々おせっかいで、世話焼きなケインお兄ちゃん。

“子供扱いしないでよ!
もう立派な大人だしウォリアーよ!”

そう反発しながらも、どこかでケインお兄ちゃんを頼ってた所があったと思う。
未だにウォリアーとしての腕もお兄ちゃんの方が上のまま。
・・・でも、ケインお兄ちゃん?
もうそろそろいいんじゃないのかな?
私もリッドお兄ちゃんも、しっかりしてるでしょ?
ケインお兄ちゃんは自分自身の幸せを、もう、探してもいいんじゃないのかな?
・・・私は、そう思うんだ。
そして、ケインお兄ちゃんの幸せの鍵を握ってるのは、きっと・・・・あの人。
あの人は・・・どう思ってるんだろう?
随分親しいつもりでいたけど、そういう方面はさっぱりわからない。
最初は鈍い人だって思った。
その人にも弟がいるから、ケインお兄ちゃんと同じ様な考えを進んで優先してきたのかもしれない。
それとも、自分のやりたい事や夢中な事に未だに集中しっぱなしなんだろうか。
・・・でも、もう5年も、経つんだよ?
幾らなんでも、わかると思うんだよなあ。
お互いの気持ちというか・・・何というか。
その人の弟のビットさんも、1年前にチームのメンバーのリノンさんと結婚したし、
一安心できたと思うんだけど。

「妹ができて嬉しいわ♪
ずっと女のきょうだいが欲しかったし。」

ビットさんの式の時、義妹になるリノンさんにそう言ってたよね。
あの時のブーケトス、わざと私にブーケが来るように、合わせてくれたでしょ?
ばればれだよ?

「次は、シエラちゃんね。頑張ってね。」
・・・今現在、ブーケのジンクスは、こうして叶いました。だから私の式で、お返しのブーケトス。
・・・狙い通り。
最初はびっくりして、それから困ったように、笑って。
・・・私のメッセージ、伝わりましたか?
もう一人、妹はいりませんか?
欲しいと思いませんか?
ジュジュさん?

 

「ねえ・・・ケインお兄ちゃん?」

「何だ?」

「お兄ちゃんは結婚しないの?」

ちょっとした里帰り。そんな遠くでもないし。
久々にお店の受付に立って、手伝いをしながら、
私はお兄ちゃんに思い切って、聞いてみた。

「・・・・・・はあ?」

しばらくの間の後に見えたのは、ぽかん、としたお兄ちゃんの表情。

「私もリッドお兄ちゃんも、もう本当に、子供じゃないよ。」

もう、保護者じゃなくて、いいんだよ?

「私達を、安心させてよ。
このままじゃ心配だよ。
お兄ちゃんに何もかも背負わせてるみたいで。」

今度は・・最後は。
お兄ちゃんが幸せになる、番だよ?
欠けちゃいけないの、誰も。
・・・ずっと一緒だったんだから。
皆で幸せに、ならなくちゃ。

「・・・・・シエラ・・・。」

ケインお兄ちゃんが何かを言いかけた、その時。

「こんにちわ〜。ケイン、いる?」

あの人が、来た。
いつもと変わらない、明るい笑顔と気さくな声で。
いつもの様にカウンターの隅に椅子を持ってきて、座る。
もうだいぶ前からの指定席。
予約のスペース。

「あら、シエラ、久しぶりね〜!
里帰りしたの?」

私に気付いて、話し掛ける・・・タイミングいいのか悪いのか。
・・・複雑。
お兄ちゃんは黙ってしまった。
続きは聞けなかった。
私はジュジュさんを、ちょっと睨んだ。
もう少し遅く来てくれればよかったのに。

「今日は何の用ですか?」

投げかける言葉に、棘が混じってしまう。
・・・ジュジュさんが悪いんじゃないのに。
ジュジュさんは、そんな私の様子に気付いたようで、すまなそうに謝った。

「・・・ごめん、もしかして大事な話の最中だったかしら?
・・・私、最悪に邪魔だった・・・?」

「・・・いや、気にするな。
大した事じゃない。」

大したことじゃない?
重大だよ!
何よ、ケインお兄ちゃんのバカ!

「二週間ぶりだな・・・。
ずっと仕事だったのか?」

「そうね・・・大体は。
・・・でも、それ以上に色々、あってさ。」

ジュジュさんは笑顔だったけど、
それからふいに思い切ったようにきっぱりとした表情になり、こう言った。

「・・・大事な、話があるんだけど。」

「大事な話?」

ケインお兄ちゃんが聞き返す。
・・・何だろう?私も気になった。
ジュジュさんは、“その前に”と、持ってきた紙袋から桃をいくつか取り出した。
甘い香りが広がる。

「来る途中通りかかったお店で、おいしそうだったから買ってきたの。」

何か食べながらの方がいいと思って、選んだらしい。
・・・どんな話だと、いうのだろう?
それはそうとして、桃はおいしそうに実っていた。

「シエラ。
悪いがキッチンで皮、むいてきてくれないか?」

倉庫にいるリッド達の分も切ってやれ、とケインお兄ちゃんは言った。
これは・・・遠まわしに私に、引っ込むように言ってるんだとわかった。
私は頷いて、紙袋を受け取って奥に向かった。

「シエラちゃん、ごめんね。
頼むわ。」

ジュジュさんは、一見いつもとかわらない様子だったけど、
・・・少し、声に緊張があるような気がする。
よっぽど大事な話なんだ。
・・・でも、一体何なんだろう?
気になったけれど、私は素早く奥に引っ込んだ。
桃を潰さないように、紙袋を丁寧に持ちながら。

「・・・それで、大事な話ってのは、何なんだ?
言えよ。」

「え〜とね・・・。
上手く伝わるかどうかわからないけど・・・、落ち着いて聞いてね。」

 

「ジュジュさんが来てるって?」

「うん、何か大事な話があるんだって。
今、ケインお兄ちゃんと話してる。」

「そういえば最近、姿を見なかったっけ・・・。
結構、久しぶりだね。」

2階のキッチンで皮をむき、食べやすい大きさに切った桃を盛った皿を手に、
私はリッドお兄ちゃんとがいるゾイドの倉庫に向かった。
作業を中断して休憩にして、桃をフォークに刺し食べながらリッドお兄ちゃんと私は話をしていた。
レイスの姿は見当たらなかった。
買い物に行ってるらしい。
ジュジュさんは二日に一度は店に来て、
ケインお兄ちゃんと色々談笑してたまにおみやげを持ってきたり、
お客さんを連れてきたりしながら、とにかく常連だった。
いつだったか、毎日何を目的で来るのかと聞いたら、ジュジュさんはこう言った。

「そうねえ・・好きだから来る、じゃ理由にならないかな?」

ジュジュさんはゾイドが大好きで、
ケインお兄ちゃんの相棒のジェノブレイカーともちょっとした縁があるから、
ゾイドのディーリングショップをしてるうちの店は心地いいのかな、と思った。
ケインお兄ちゃんとの会話もすごく楽しそうだったし。

「俺は普段、店先に出る事は少ないからよくはわからないが・・・、
二週間くらい、全く姿を見なかった。」

あのジュジュさんがそんなに長い間店に来ないなんて、
にわかには信じられない話だった。

「喧嘩でも、したのかな?」

「だったら兄さんがもう少し荒れてもいいんじゃないか?
むしろ逆に無口だったぞ。
・・・俺以上に。」

「うそ・・・。
何か想像できないかも。」

それも、ジュジュさんが店に来なかった事と何か関係があるんだろうか?
何があったの、ケインお兄ちゃん?
その時だった。

ガッターン!!!

店のほうから、何かが豪快に倒れる音が、聞こえた。

「ケインお兄ちゃん?!
どうしたの?」

慌てて店先に戻ろうとした私を後ろから引き止めたのは・・リッドお兄ちゃん?!

「し〜っ。」

素早く口元に人差し指を立てて、カウンターの真裏になる壁に腰をおろした。
ここからなら、お互いの姿は見えない。
カウンターの会話も聞こえる。
さっきの音は、ケインお兄ちゃんが座ってた椅子から思い切り立ち上がったとき、
椅子が床に倒れた音だった。
壁の向こうから、お兄ちゃんとジュジュさんの声が、聞こえてきた。
私は耳を澄ました。

「・・・それで、お前、今までずっと仕事してたのか?」

「うん。時々調子悪かったけどさー。
今は全全平気!」

「あほ!
何でもっと早くに連絡しないんだよ?!」

「あほとは何よあほとは。
時間なかったの、忙しくて。
それに直接会ってからでいいかーと思ったし。」

「・・・・だからって・・・。
何かあったらどうするんだよ?!」

「大丈夫、健康には自信あるわ!」

「お前、やっぱあほだ。」

「あほとは何よ、失礼ね。」

ケインお兄ちゃんは、かなり慌ててるみたい・・・。
あんなに慌ててる感じのお兄ちゃんは、
昔私がひどい高熱を出して何日も寝込んだとき、枕もとで一生懸命看病してくれた時、以来かも。
対するジュジュさんは比較的落ち着いてるみたいだけど・・・。

「・・・とにかく、本当、なんだな。」

「うん。私、嘘は苦手だし嫌いだもん。
・・・それでさ・・・どうしようかと思って。」

「どうしようかって・・・。
・・・そりゃ・・・。」

「迷惑とか不満とか嫌だったら、はっきり言って。
別に責任とか義務とか、強要しないから。」

「そういうレベルじゃないだろ、一生の問題だぞ。」

「だからお互い、はっきりしておいた方がいいじゃない。
後戻りとかリセットとか、できないのよ?」

「そんなのは言われなくてもわかる。
当然だろ。」

「別に何とも思ってないのに、世話焼きなところ、無理に発揮しなくて、いいのよ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ?」

ケインお兄ちゃんの間は・・・長かった。
ジュジュさんが何を言ってるのか、わからなかったんだろう。
私も、わからなかった。
ジュジュさんが、お兄ちゃんを困らせたくない、というのは何となくわかるけど・・・。

「・・・何だ、やっぱりそういう事か・・・ふーん・・・。
まだまだだね。兄さん。」

「リッドお兄ちゃん、わかったの?」

「そうだね・・例えるなら、「雨ふって地固まる」って事かな。」

「???何、それ??」

 

「お前、何言ってる・・・?」

「だから、都合悪かったら、私一人でも大丈夫だから、
気にしないでやりたい事をしてねって・・。」

「・・・本気でそう、言ってるのか・・・?
それでいいのか?」

「ケイン・・・?」

「俺がそういう男だと、お前はそう思ってるわけだ・・・、
ふーん・・・。」

「あ、あの・・・?」

「マイペースもいい加減にしろ。
ジュジュ。」

ケインお兄ちゃん・・・怒って・・・る?
声だけでも充分、私は怖い。
目の前にしてるジュジュさんはきっともっと、怖いだろう・・・。
本気で怒ったお兄ちゃん、見たことあるだろうか。

「俺はどんな天変地異だろうと一人だけ逃げたり、
誰かを見捨てるってのが一番、嫌いなんだよ。
見くびるな。」

「でも、実際予定外というか、予想外というか・・・、
全く考えなしの不測の事態だったわけでしょ?」

「確かに・・・突然の事で大いに驚いたが・・・、
全く、考えてなかったわけじゃない。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」

ジュジュさんの間も、長かった。
ケインお兄ちゃんが何を言ってるか、わからなかったんだろう。
だけど・・・私は、ケインお兄ちゃんが何を言いたいのか、段々わかってきた。
何が起きたのか、も。
ああ・・・そういう、ことか。
へえー・・・。
お兄ちゃん、やるじゃん♪
くすくすと笑いがこみ上げる。
なあんだ、そういう事か。
くすくす。

 

はあ〜と、ひとつ、深く大きなため息の後。

「お前さ・・・・。俺が好き嫌いなく誰とでも歩調を合わせられる、
そんなに器用な奴だと、思ってるのか?」

「・・・でも・・。」

「本気で迷惑だったら、一緒にいるわけないだろ!
ここまで言ったら、とっととわかれ!!
皆まで言わすな!!」

そんなに声大きいと、奥の倉庫だけじゃなくて、店の外まで聞こえるよ?
ついつい、そんな事思っちゃ、いけないかしら?なんて。

「・・・やれやれ。」

そう言って、リッドお兄ちゃんは立ち上がって作業に戻った。
聞いてるのが恥ずかしくなったのかな?
・・・私は、なんだかくすぐったかった。

「ジェノの時もそうだったけど・・・。
兄さんは相棒を決めるのが一番遅いんだな。」

「ホントね。
・・・決めた後は、早いのにね。」

「仕方ないか。
周りの事を考えずにはいられない性分だし。
・・・でも、何事も複雑に考えそうだけど。」

「勿体ぶってるだけだったりしてね。
かっこつけたがりだし。」

「もっとシンプルに考えればいいのに。
・・・だいぶ前から、答えは出てる問題なんだから。」

「あまり近くにあるから、かえって見えないんじゃないの?
答えと思ってないとか。」

「それもあるかもね。
・・・でも、もういい加減、見えるだろ。」

「私達は、と〜っくに、わかってたけどね。」

またまた・・・・長い、沈黙の後。
今度はジュジュさんが叫ぶ声が、聞こえた。

「・・な、何よ!はっきり言ってくれなきゃ、わからないわよ!
鈍くて未熟な子供なんだから!」

「ああ、全くその通りだな。
あきれる。」

「悪かったわね。
無茶して困らせる、ホトホト手がかかるって思われてる自覚、あるわよ。
でも、どうにもならないんだもの!」

「あ、開き直ったな。」

「でも、ケインだってわかってない!
・・・私だって、何も思ってない人とこんなに長くいようとしないわよ!!
・・・ばかああ!」

・ ・・きっと・・・ジュジュさんの顔は真っ赤に違いない。
私はそう、直感した。
聴いてるこっちも、赤くなっちゃうよ。
やっと、はっきりしたかあ〜。
やれやれ。
ひたすら長い長い、長―い沈黙の後。
ふ〜と長い息を吐き、再び聞こえた声は・・・ジュジュさんだった。

「・・だから・・例え拒絶されたって後悔しないし、その覚悟もできてるから。
心配しないで。」

「いや、だから何でそう暗いほうに考えるんだよお前は。
少しは明るく見ないのか?!
いつもみたいに。」

「・・・・・・・・できない。
だって何も、言ってくれないから。・・わからないわよ。
不安にもなるわよ、ばか。」

「ばかはどっちだ、お前もはっきりしないくせに。
・・・もしかしたらと考えて外れてたら、これほどかっこ悪いのはないぜ。」

「でも、言わなさ過ぎよ。」

「お前が変わらなさ過ぎなんだ。」

・・・ああもう、じれったいなあ!
その時、倉庫の方から、買い物をレイスが「ただいま〜。」と帰ってきた。

「あれ、シエラ、そんな所でどうしたんだ?」

ちょうどいい所に帰ってきてくれたわ。
桃の盛られた皿を手に、私はづかづかと店に出てきた。

ダン!!

お兄ちゃんとジュジュさんの間、カウンターの上に乱暴に皿を置く。
二人とも、私に気付いてあっけに取られた顔をしてた。
私はお兄ちゃんにいきおいよく言った。
反論する間なんて、与えてあげない。

「桃は柔らかくて痛みやすいし、
普段は高い木の上にあるからいつでも食べられるとは思わない方がいいわよ。
お兄ちゃん?
・・・やっと手が届く高さまでになったんだから、食べなきゃ、駄目だからね!」

それからジュジュさんに向かって、同じ様に言った。
満面の笑みをたたえて。

「とっても甘くておいしい桃をありがとうございます、ジュジュさん。
私もリッドお兄ちゃんも嬉しいです。
まだお話がお済みでなかったら、続きは奥のほうでいかがですか?
ケインお兄ちゃんも休憩時間に入りますし。」

「おい、シエラ・・・。」

ケインお兄ちゃんが大いに何かを言いたそうだったけど、
私はわざと無視をして、背中を押しながら言った。

「ケインお兄ちゃん、ど―ぞ休憩を取ってください。
レイスが交代するから、大丈夫よ。」

・・・数分後、皿を持ったケインお兄ちゃんが奥に向かった。
2階の階段にケインお兄ちゃんが登った時、下から通りすがりにリッドお兄ちゃんが言った。

「嫌いじゃないんだから、遠慮しなくていいんじゃないの?
ここまできたら。」

「・・・何の事だよ。リッド。」

「桃のおかわりの話。
まだまだたくさんあるってさ。
・・・ま、ゆっくり味わっても構わないけど。」

「あのなあ・・。」

「せっかくの実りを無駄にしないように。
・・・じゃ。」

「おい、リッド!」

リッドお兄ちゃんは言うだけ言って、さっさとパーツ置場の方に行ってしまった。
ナイスな後押し!
そこに入れ違いに、店のほうから遅れてやってきたジュジュさんがひょこ、と顔を出した。

「何?何の話?」

「何でもねーよ。
・・・とにかく、上で話すぞ。」

「そうね、桃でも食べながら。」

ケインお兄ちゃんはむす、としてたけど、機嫌が悪いわけじゃないのはありありとわかった。
ジュジュさんはにっこりと、じつに嬉しそうに笑ってた。
ただ一人、いまいち状況を把握してないレイスには、後でリッドお兄ちゃんが説明するだろう。
あ、レイスの分、桃、むいてなかった・・・。
まあ、後であげるから、我慢してね。
・・・それから上でどんな風に話をしたのかは、わからないけど。
とりあえず、「雨ふって地固まる」事になりました、とだけ、伝えておきますね。

え?
・・・ジュジュさんに何があったか、って?
それは・・・そうね、ビットお兄ちゃんの言葉を借りるなら・・・。
「順番が逆になった」という事、です。
やっぱり、ケインお兄ちゃんて・・・一枚上手かも。

ーほんとは、ずっと待ってたんだ、その言葉を。

END

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あとがき

荷電粒子砲ものですね、私(汗)
ついにここまでやったか・・。私。フフフ。
この作品について、特にいう事は何もございません。
もう、妄想たっぷり練りこんでますから。
HAZUKI様に封印される可能性も大いにあるし。
ただ、書いてみたくなったんですよね。
5年の中で一応、恋人としては成り立ってると思うんですが、見た目かわらなさそうな二人の決定打。
私はこんな感じだと思うんですがいかがでしょうか?
・・・天変地異でしょう。
イメージソングはマッキーの「桃」の歌詞からです。

「一人では感じられなかった気持ちが僕の中で実る 君の言葉で実る」

「高い場所に実をつけた桃に手が届くように 君を抱き上げる事が幸せだと僕は気付く
今までどんなに知りたくても知る事の出来なかった事を 一つ一つあきらめずに 僕は君を知っていく」

「高い場所に実をつけた桃に手が届くように 君を抱き上げる事が幸せだと僕は気付く
独り占めすればいいのに地面に手をつけた君は 一緒に食べようと笑うから 桃はもっともっと甘く香る」

この作品の桃がそれぞれどんな意味を成すかは、お考え下さい。(逃げます)
どうしてもお兄ちゃんお姉ちゃんの二人は下がまとまらないと進まないと思ったので、
シエラは嫁入り(ジェミーの婿入りとどっちにしようかけっこう悩みました)、
リッド、レイスには親しい人をつけました。
え?誰かは・・・ヒント、二人ともジュジュに関係ある人物。
リッドはともかく、レイスは(シエラ以外に)まともに話せるようになった女性、
くらいですが、彼にとっては大進歩だと思います。
では、失礼します。


初心者さんから頂きました。
ひえーーー!!ジュジュ、××××ですか!!?(あえて伏せ字)
うちのケインも・・・、やっぱり上手ですね。
まぁ、何はともあれ、ケインとジュジュ、おめでとうございます。
なんか、どんどん私の手から離れていきますね。
親の気持ちが良く分かります。
(おいおい、まだ18だろ・・・。)
シエラも結婚したし、リッドもレイスも幸せそうで・・・。
レイスは思いっきりの進歩ですね。
チーム・バスターズ、永遠に幸せに・・・。
初心者さん、ありがとうございました。

 

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