「少年の過去」

 

少年がふらりと倒れた。

「グルゥゥ・・・・・・(何をしたんだ。)」

「ガースか・・・・。
心配するな、眠らせただけだ。」

「グォァ・・・・・(クルスを眠らせてどうするつもりだ。)」

「記憶を消すためには眠らせなければ出来ない。
記憶があればこの子が苦しむ。
この子には・・・・・・何の罪も無いだろう。」

青年は倒れた少年の髪を撫でていた手をゆっくりと離した。
離したその手を血がにじむ位強く握っていた。

「アレがこの世界に生まれたのは、確かにこの子とお前の二人の能力だ。
だが、人の欲望さえなければアレは生まれる事は無かった。
行き過ぎた欲望さえなければ・・・・・・」

「グルゥゥ・・・・・・・(人がより強い力を求めるのは当然の心理だ。)
ゴァァァ・・・・・・(だが、その結果は悲劇しかもたらさない。)」

「そうだ。
私達には、最早アレを止める方法はゾイドイヴの停止という最悪の方法しか残ってないだろう。
おそらく、終わりの巫女はゾイドイヴを止める。
人々が死ぬのを耐えられないだろうからな。
そして、何人かが眠る、それ以外の者はこの時代でアレと共に滅びる。
それだけなんだ。」

「グルアァ・・・・・・・?(お前はどうするんだ?)」

「私はアレと戦う。
アレを止めるため・・・・・・いや、時間稼ぎにしかならないだろうが・・・・・・。」

「グォァァ・・・・(死ぬぞ。)」

「だから、私には時間が無い。
これが最後の機会になる。
幸いなのは、アレが生まれる事にこの子が関わっているという事はほとんどの者は知らない事だ。
だから、この子の記憶を消せば知る者はいなくなる筈だ。」

膝を着き背を低くすると、青年は少年の額に手を置いた。
その時、掌が目元に触れ少し湿っているのに気が付いた。

「兄・・・・・さ・・・ん。」

ほとんど聞き取れないほど小さな声で少年が呟いた。
その声を聞いて青年の動きが止まった。
青年は、一瞬驚いた顔をした後、すぐにやさしい顔になり、そして、額に置いた手で優しく頭をなでた。

「ありがとう。
最後まで私を兄と呼んでくれて・・・・・・・。
愛しい弟よ、お前に罪は無い。
これで・・・・・・お前は全てを忘れられる。」

改めて額に手を置く。
そして、目を閉じ意識を集中する。
しばらくして、青年はゆっくりと目を開いた。

「ガース、この子を守ってやってくれ。」

「グォォォ・・・・・(言われるまでも無い。)」

「そうか。」

青年は立ち上がり、そのまま少年とオーガノイドに背を向けてゆっくりと歩いていった。
オーガノイドは離れていく青年の背中を見送っていた。

 

僕は夢を見てた。

泣いていると頭を優しく撫でてくれる僕の兄さん。
僕は兄さんに頭を撫でられるのが大好きだった。
兄さんの顔が急に怖くなった。
兄さんが何処かに行っちゃう。
まって、行かないで。
僕も連れてって。
僕を置いて行かないで。
僕、転んじゃった。
とっても痛くて涙が出てきた。
でも、兄さんは戻って来てくれなかった。
来てくれなくて、痛くて、悲しくて・・・・・・
僕はもっと泣いた。

あれ、僕、何で泣いてるんだろう?
あ、怪我してる。
これが痛くて泣いてたのかな?
兄さん?
誰だろう?
とっても大切な人だったと思う。
でも、誰だろう?
分からない。
あ、何か聞こえる。
忘れられる?
何を?
分からない。
もう何も分からない。
もう何も思い出せない。
あれ、僕、誰だろう?

 

私には、同胞には無い特別な力があった。
私の主であるこの少年にも他の者には無い特別な力があった。
私の力は物質を・・・・・・
私の主であるこの少年は精神を一つにまとめて新しい存在を創り出すという能力が・・・・・
この能力を知っているのは極一部の者だけだった。
この能力を知った者は考えた。
この能力を使って絶対的な力を持った存在を創り出そうと・・・・・・
私は理解したつもりだった。
何を?
決まっている。
人の持つ心理とも呼べるものを・・・・・

そして、数え切れないほどの数のコアを私が一つにまとめ、
その中に眠る精神を主が一つにまとめた。
そして、アレが生まれた。
生まれたばかりのアレに求められたのは、ただ一つ力だけだった。
力しか求められなかったアレは破壊しか学べなかった。
破壊しか学べなかったアレは全てを破壊しようとした。
その結果アレを止めるために多くの者が犠牲になった。
その事に罪という意識を持ったのだろう、主である少年の心にも深い傷が残った。
その傷を消す事は不可能だった。
記憶を消すという事意外に。
主の心の傷を消すには記憶を消す事、
アレを止めるにはゾイドイヴの停止という方法しか残っていなかった。

眠りつくとき私は思った。
主である少年にはアレを創り出す事に関わっていた事は何が起ころうと語るまいと。
知れば、それが引き金となり、
アレをこの世界に創り出したいう罪の意識が押し寄せる事になるかもしれない。
耐えられるならいい。
もし耐えられなかったら・・・・・・・
だが、私はそんな弱いとは思っていない。
祈るという事は私らしくないと、私自身は思う。
だが、今だけは祈ろう。
目覚めた世界で事実を知る事になっても、
耐えられるほど強くなれる事を・・・・・・・・

 

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もう完全に暴走しております、私の頭は。
クルスの旧時代の記憶は無いという設定なんで、考えていたらもう妄想大暴走でしたね。
クルスが知らずガースが旧時代の事を知っているという事を考えていたら、
何か罪みたいな物をクルスが抱えているんじゃないかなぁ、と。
アレというのは作中でこそ名前を出して無かったですけど、もう皆さん何だか分かりますよね。
そして何より書いてる自分自身驚いたのは、クルスお前、兄さんいたんかい!!
クルスが現代世界で目覚めたのは12年前と私は考えてます。
という事は、この時クルスは7才という事になります。
死ぬ覚悟が出来てるって、兄さんあんた何才だ!
いったい、何才離れてるんだ!?
第一、兄さんの設定は何も無いんですよ。
記憶を消す事ができる能力を持っているって事以外。
でも、書いてて思ったのは記憶を消したのは決して他人ではいけないと思いましたね。
だから、兄というのが自然に出てきたんです。
とまあ、色々と暴走しましたが皆さんのどの作品にもアレに関する事って無いですよね。
この作品にはアレの誕生秘話も含まれているというか・・・・・・・・
触れられてないから完全妄想大暴走という感じでしょうか。
まぁ、人の事を考えずに作ってしまったような・・・・・・・。(汗)
では、失礼します。


砂亀さんから頂きました。
アレの関わることは・・・、確かに少ないですね。
桜神さんが巫女のことを書いてたぐらいで・・・。
実は過去の設定は何もできてない・・・。
何か人に任せっぱなしだなぁ・・・。
クルスに兄が・・・。
新事実発覚ですね。
いろいろな展開が面白いですね。
第3部で過去の話が出来ればいいんですけど・・・。
まぁ、何とかします。
砂亀さん、どうもありがとうございました。

 

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