「BD団の若き科学者」

 

そこは薄暗い部屋だった。
真ん中だけがライトで照らされていた。
そこにはある一つの影がある。
アルタイルである。
そしてその正面には七人会のメンバーである。
中央の方には伯爵が彼に向かって話し掛ける。

「アルタイル君。
数日前発見されたゾイド。
あれはアルティメットXと認識されたよ。」

その言葉にアルタイルと他の七人会の者たちが様々な表情を見せる。
アルタイルは驚きと歓喜の表情に満ちている。

「あのゾイドは私の知っている優秀な研究者が調べあげたよ。」

その言葉が紡がれた時、アルタイルの後ろの方から声が聞こえる。

「伯爵、「優秀な科学者」ではなく、
「天才科学者」と呼んで頂きたいのですが。」

その言葉を聞き、アルタイルはすぐさま後ろを振り返る。
そこにいたのは白衣の女性。
蒼い髪でその長さは以上ではないかと思うくらい長い。
ポニーテールでかなり高い位置で結んでいる。
しかし、膝までとは言わずすぐにでも地面すれすれである。
そこまで彼女の髪の量は多い。
目は丸いサングラスによって見えない。
が、かなりの美人である。
両手を白衣のかなりぶかぶかのポケットに突っ込んで礼儀と言うものが欠片も見えない。

「貴様、何者だ!」

アルタイルの声がその空間に響く。

「ガードマン!この女をただちに・・・!」

「いや、すまなかった。
「天才科学者」フローズン・ブルー・マルガリータ博士。
こちらに少々無礼があったようだ。」

「は、伯爵・・・?」

あるタイルは唖然として伯爵に顔を向ける。
バックドラフト七人会。
BD団の最高権力者として君臨する7人。
その中である意味特別的存在である「伯爵」が、謝る。
口だけだとしても、アルタイルはそのような行動など見た事が無い。

「いえいえ、こちらこそ無礼だったでしょう。」

手をポケットに突っ込んでいながら謝罪の言葉を出す。
全然謝罪になっていない。

「数日前発見されたゾイド。
この私がありとあらゆる部分を検索し、調査した結果。
伝説のゾイド、アルティメットXとしての確率は99,98%とでました。
あれはほぼ間違いなくオーガノイドシステムを搭載された幻のゾイド。
伝説の「アルティメットX」であることを私に認識させました。」

ぶかぶかのポケットの中から十数枚ほどの書類とファイルが出て来た。
そしてそれを七人会の机の上。
伯爵の前にばらまく。

「き、貴様!」

アルタイルから驚きの声があがる。
そんななか伯爵は差ほど変わらない笑みで書類の一枚を手にとる。

「ほほう・・・。ずいぶんと調べあげたようだね。」

「助手のルシアン君たちが『徹夜』で手伝ってくれたおかげで、
色々とデータや、サンプルが良く取れました。
あと、発見されたアルティメットX、「バーサークフューラー」。
そのシンクロ率などと色々と調べあげておいたメモリーがこれです。」

彼女がポケットから出した小さなマイクロチップ。
それは二つあり、一つは伯爵に。
そしてもう一つがアルタイルへと渡された。

「パイロットのシンクロさせる確率がかなり早くできると思います。
それを参考にしてくださいな。
では、私はそろそろ助手のルシアン君たちが泣くといけないのでこれで。」

そのまま彼女は薄暗い通路に戻る。
それを見送る七人会とアルタイル。

「は、伯爵、彼女は一体・・・?」

「彼女は私の信頼できる幹部の一人であり、科学者。
たぶんあのラオン博士より上じゃないかな?」

そう言ったからかうような口調で伯爵の声がその空間に響いた。

 

 彼女は自分専用のホエールキングの研究室で書類を持ちながら何かを作っていた。
様々な彩りを持つ液体は少しずつ、ゆっくりとコップグラスに注がれる。
グラスの中はその液体の色が綺麗に重なり合いまるで虹のようだ。

「やっぱ仕事にはこの「プース・カフェ」だよねぇ。」

ストローを差し込み、その虹が乱れないようにと緩やかにそのブランデーを飲む。

「は・・・、博士〜・・・。」

彼女の研究室に入ってきたのはこげ茶色で長髪の少女だった。
彼女の服装も同じような白衣である。
彼女の名はブラック・ルシアン。
このホエールキングの主、
フローズン・ブルー・マルガリータに唯一ついて行けるある希少な人物たちの一人だ。

「おや君は。
5年前の雨の中、犬のように親に捨てられ私と伯爵に偶然拾われ、
今や私専属の助手にして数日前からアルティメットX「バーサークフューラ」のサンプル、
及び実験を「徹夜」で頑張ってくれた為、いまやボロ雑巾のようにずたボロの状態で、
ラオン博士の所までダッシュでバーサークフューラのシンクロ率のサンプルメモリーを届けてきてくれた、
私専用の助手、今年たぶん12歳にして通常の研究員、約3倍の仕事をこなしている、
ブラック・ルシアン君じゃないか。」

と長々と彼女の生い立ちなどをも説明するフローズン。

「そんな事言わないで下さいよ〜。」

泣き顔でフローズンにすがるルシアン。

「人の心に残る嫌な人生をどうして抉り出そうとするんですか〜。」

その言葉にフローズンは動きを止める。
そのまま硬直状態が続く。

「は、博士〜・・・?」

ルシアンは少し真剣なフローズンを小声で声をかける。
そしてフローズンが急にルシアンにサングラスをした顔を向け、声を出す。

「からかうと面白いからだ。」

ガクッ・・・。

ルシアンはその場で両手両膝を床に落とす。

「酷い・・・酷すぎます〜・・・。」

「だって本当に面白いんだもん。君をからかうの。
あ、あと、ラオン博士やルーにレイル達をからかうのも。」

「いつか復讐されますよ〜。
ラオン博士なんか凄くこだわるんじゃありませんか〜?」

「うん、今日仕返しされる予定だよ。」

「そうでしょう、そうで・・・、ってええ!?」

上司のあっさりとした反応に驚く。

「だ、大丈夫ですか!
と言うか仕返しされる「予定」って!?」

「七人会に行く途中にラオン博士に会ってね、「この前の仕返しだ〜!」といって、
今日のPM14:30にA―34ポイントに来いってさ。」

「あ、あの大丈夫なんですか!?」

「どうだろね〜。」

「は、博士〜。」

滝涙でルシアンはフローズンのことを気遣うのだが・・・。
当の本人はまったく関係無い様にカクテルのストローで「プースカフェ」を飲んでいた。

 

『ふはははは!よく来たな!フローズン!
この前の仕返し!特と思い知るが良い!』

ラオンのホエールキングからは多くの無人ゾイドが次々と現れる。
フローズンのホエールキングはそのまま空にいるだけだ。

『行け行け!こっぱミジンコだ!!』

フローズンはモニターのラオンを見る。

『どうしたのだフローズン。
どうやら手も足も出ないようだな!』

フローズンが動いた。
コントロールパネルのボタンを二つだけ押し、そして・・・!

「じゃ、さよなら。
いい歳扱いて昔の彼女をとられた為にしつこく追い掛け回す、ラオン博士。」

そのまま後退するフローズンのホエールキング。

『だー!!!
なんじゃそりゃ―――!!!!
そんな事言って返すわけ無いだろうが〜〜!!!』

「と言ってもすでに勝負はついていますよ。」

『な、何!?』

最後のプテラスが落とされた。
プテラスを撃墜したのは紫色のストームソーダー。
そのストームソーダーはそのままラオンのホエールキングの横をソードで切り裂く。

『ななな・・・!!ま、まさかあれはお前の作り上げたあの「ハイエストパープル」(至高なる紫)の・・・!』

「そう、私が設計し、作り上げたストームソーダー、『ブラド』。
そしてまたの名を「ハイスピードフリークス」(高速狂)。
そのパイロットは蒼き空、私のチームのチーム・ブラウ(蒼)の一人。
伯爵直属に選ばれた4人の従者の一人。
空中、高速戦闘などでその威力を発揮する者です。
ま、無人機など彼の敵ではないでしょう。
では、ラ『ド』ン博士、ごきげんよう。」

サングラスをしたフローズンの顔を映すモニターが切れる。
そのままフローズンはBD団本部へと帰還する。

『誰が!ラ『ド』ンだ!私はラ『オ』ンだ〜〜〜!!!』

その声が後ろの荒野に響く。
その後には大きな爆発音が響いたのだった。

「まあ、ラ『オ』ン博士なら死にはしないでしょう。」

哀れ。ラ『ド』ン。
(だからラ『オ』ンだってばさ・・・)

紫のストームソーダーはフローズンのホエールキングの口に近づき、収容される。
そのまま専用のゾイド格納庫に移動される。
コクピットから出てくる人物は鳥をモデルとした紫のヘルメットを被っている。
スーツでは黒のスーツに銀の鳥が刺繍されている。
ヘルメットを取ると長い茶髪が落ちてくる。

「あ、レイルさん、お帰りなさ〜い。」

5人の女性メカニックが彼の前に集まってくる。

「ちょっと無理したから駆動系を治しておいて。」

『は〜い、了解しました〜。』

ストームソーダーに女性メカニック5人が色々な機材を持って調整などする。
手取り足取り、手馴れた風にストームソーダーの各機関、駆動系などを整備する。
レイルはそのまま司令室に向かう。
司令室には25人の女性オペレーターはレイルが司令室のドアを開けた瞬間。

『レイルさん、お帰りなさーい。』

と声を合わせて言う。

「お帰り、どうだった?」

「上々だと思う、ブラドの駆動系の一部がちょっとオーバーヒートしたけど。
戦闘には充分扱えるよ。」

「レイルさんの操縦が無茶なんですよ〜。」

フローズンの横にいるルシアンが文句を言う。

「駆動系全部調整されているのに、それをオーバーヒートさせるなんてレイルさん達だけですよ。」

「仕方ないだろう、僕達だって気をつけているんだよ。」

このフローズン・ブルー・マルガリータの専用に作られたホエールキング『リキュール』。
このゾイドは搭乗員などが150人いる。
フローズン直属の研究員、及びまわりの世話を主にする専属チーム14人「テキーラ」。
フローズンの特別ゾイドのメカニックを主に活動するメカニックチーム25人「ウィスキー」。
『リキュール』の掃除、炊事、洗濯などの家事を仕事とするメイドチーム25人「ブランデー」。
司令室などで敵戦力、及び味方のサポートをするオペレーターチーム25人「ジン」。
救護、補助などのゾイド、人間などの傷の手当てや補給をする医療機関であるナースチーム25人「ウォッカ」。
その他色々、数が足りなくなったチーム補助を生業とするサブチーム30人「ラム」。
そして、フローズンがお守りをしている伯爵の孫娘、ルイネ・ファースト。
ルイネ直属のメイド2名、執事2名の4人。
そして、艦長とも言うのかもしれないフローズン・ブルー・マルガリータを入れ、
このホエールキング『リキュール』はある。
ここにいるクルー全体はほとんどがルシアンの様な捨て子である。
その他にも町を犯罪者などもいる。
生い立ちなど様々だが、ここにいるクルーのほとんど、フローズンに助けられた人たちである。
ここで言っておくがこの『リキュール』艦内では男性が二人『だけ』しかいない。
ルイネ専属の執事、レイルとクラインである。
そのために色々と問題がある。
が、今は関係ないのでおいておく。

「これより、BD団本部へと帰還する。
全員持ち場に着き、本部帰還の準備。」

『ラジャー!』

フローズンの掛け声と共に、
モニターなどにも様々な服装をした女性たちが威勢の良い声を出し持ち場などに行く。

「色々と威勢の良い子達だよね。」

レイルがフローズンに呟く。

「みんな貴女の声で元気が出てくる。」

「魔法みたいだ。」とレイルは言う。

「そうだね〜。」

フローズンがサングラスを取る。
その瞳は珍しい緑と紺のオッドアイ。

「ホエールキング「リキュール」。
本部へ向け、帰還!」

彼女たちはロイヤルカップジャッジのとき。
全員休暇をとり、南にバカンスを楽しんでいた為に捕まりはしなかった。
その後DS団にスカウトされる。
この後々チーム・ブリッツなどに密かにファンがいるなどと噂などが出て、
色々と楽しくダークバトルなどを参加する。

 

墜落したラオンのホエールキング。

「おーい、大丈夫か。」

「ほっとけ。
どーせ、そいつはBD団のメンバーだ。」

白いブレードライガーと灰色のジャッジマンを連れた謎の侍の男が、
ラオンの事を「イオン」などと間違えながらからかう話は、また、別のお話で・・・。

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フローズン・ブルー・マルガリータのお話です。
長くなってしまいましたが一応書いてみました。
長々と人の嫌なことや恥ずかしい事などを口で長々と説明する事ですが、
あれは彼女のクセでもあり、好きなことでもあります。
後、彼女はかなりの快楽主義でもあります。
この話の最後に出ていた人物。
真皇とノーラです。
もっと長く出す気だったのですが、ちょっと断念して最後辺りにしました。
こんなもんですがどうかお受け取りください。
あと、ルシアンはやっぱりお酒の名前です。
それでは〜。


桜神さんから頂きました。
いい性格してますね・・・、彼女は。
私もこういうキャラは好きです。
でも、DS団は結構やばい輩が多いからな・・・。
彼等は「BD団は何もかもが甘い」と考えてます。
かなり冷酷な輩です。
まぁ、彼女の性格からして、決して流されないでしょうけど・・・。
ブラックは怖がりそうですけど。
桜神さん、どうもありがとうございました。

 

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