「侵入者」

 

共和国領にあるとある孤島。
周りに島などはほとんど無く、青い海が広がっている。
ここには共和国の軍事施設があり、
また最近近くの海底で古代遺跡が発見され、考古学者などが熱心に研究をしていた。
ちなみにそこから本土までは距離がけっこうあり、
また周りに陸地も無く地上部隊では効果が薄いため、共和国空軍第3編隊が増援として派遣されていた。

 

「いいかげんにしろ!」

基地中に聞こえるような大声でハーマンが叫んでも、2人の口ゲンカは止まらなかった。

「大体貴様という奴は、命令違反もいいところだ!!
今月で何回目だと思ってるんだ!!!」

ハルフォードが言うと、今度はキースがさらりと十倍にして返す。

「何言ってんだよ。
あのときに訓練を中止したのは、俺のレイノスの調子が悪かったからだ。」

「何を言っているんだ、そんな報告はひと言も・・・・。」

「だからお前はダメなんだ。報告ばかり鵜呑みにして。
それにあの後、お前さんの大好きなデータを取ってみたところ、部品に破損箇所が見つかった。
後で整備兵に聞いてみな。」

「ぐぐぐぐぐ……。」

ハルフォードが歯軋りしながらキースを睨む。
その表情はいかにも悔しそうだ。
二人の周りではたくさんのギャラリーが取り巻いている。
その大勢がキース派なのは言うまでも無い(おいおい)
ちなみに基地内でもハルフォードは人気が全く無く、
その人気のなさといったら、もうそれはそれは。(オイオイ)
ハーマンは口でいっても無駄と悟ったのか、今度は実力行使に出る事にした。

「・・・・・毎度毎度いいかげんにしろ・・・・・・。」

「やめろ〜。
放せ、剣山頭〜〜。」

「誰が剣山頭だ!!!」

ハーマンがキースの首根っこをつかんで無理やり引きずって行くと、
2人を囲んでいた人垣も上司に仕事をサボってると思われたら嫌なので(実際そうなのだが)、
ちらほらと自分の持ち場へ帰っていった。
一方ハルフォードの方も、もうその場にはいなかった。

「全くあいつめ・・・・・。
この前にもコマンドウルフに乗った輩を取り逃がしてるくせに・・・・・・・。」

そう言いながらハルフォードは不機嫌そうに歩いて行き、自分の部屋に戻っていった。

「レイナのダークネスが取り付いたぐらいで・・・・・。」

そう言うと彼は無線機のスイッチを入れた。

 

「・・・・・で、どうだったんだ、分析の結果は。」

コーヒーを口に運びながら唐突にキースが話を切り出した。

「この前、海軍が海の底から持って帰ったコンテナの中身だ。」

ちなみに昼飯をおごってもらう事で機嫌は落ち着いたようである。
(何で俺が・・・・とハーマンはぼやいていたようだが)

「あの海底遺跡から見つかった石版のことか。」

「ああ、科学者達が興奮してたみたいだったから、ちょっと気になってな。」

「確か・・・・」

「ハーマン中尉」

ハーマンが言いかけたところを、一人の声がさえぎった。

「なんだ、リーベル軍曹」

ハーマンが言いかけた科白をさえぎったのは、
リーベルと呼ばれた金髪の、眼鏡をかけたショートヘアの女性だった。

(またえらく若いな・・・・まだガキじゃないか)

ちなみにキースは振り返って顔を見るとそう思ったそうな。

「その情報は極秘事項ですよ。
他言はしないようにと言われていたはずです。」

「そう言えばそうだったな。まあ、いいじゃないか。
あ、彼は空軍第3編隊の・・・・・・」

「関係者といえども、極秘は極秘です。
気をつけてください!
では、私は急いでますので、失礼します。」

そう言うと彼は書類の山を持ちながら奥の方へと走っていった。

「・・・・ハーマン、さっきの奴は?
またえらく忙しそうだったが。」

「リーベルと言って、陸軍第7機甲部隊に所属している。
彼女の部隊は今この基地の警備をしているんだが、
彼女はへリックアカデミーの古生物学を専攻していたと言う事で、遺跡の調査を手伝ってるらしい。」

「そう言えば、たしか第3機甲師団にも同じ名前のがいなかったか?」

そのひと言でハーマンの顔が曇った。

「・・・どうしたんだ?」

「・・・・・・・・・そうだ。
彼の兄も軍人だった。」

「だった?」

「お前、ホワイトバレ―が壊滅したのを知ってるか?」

キースが驚いて身を乗り出す。

「どう言う事だ!?
あそこは難攻不落の・・・・
あそこが落ちたなんて聞いてないぞ。」

「・・・・・・・・・これは政府でも最高極秘事項で一部の政治家と軍の幹部しか知らないんだ。
俺もお袋から聞いた時は信じられなかったが、情報部によると相手はたった2機だったらしい。」

「・・・・・・・2機!?んな馬鹿な・・・・・。
そうだ!あそこの航空部隊はどうなったんだ?
あそこの実力と規模なら並大抵じゃあ・・・・・」

首を横に振りながらハーマンは言った。

「いや、残念だが・・・・」

「全滅か・・・・・」

「死傷者は規模の割に少なかったらしいがな・・・・・」

「・・・・・・・・ってことはあいつの兄も」

「乗ってたゴジュラスは消滅した。
基地のオペレーターが確認していたそうだ。」

「そうか、その事は彼女は?」

「知っているはずだ。
一応は連絡があったらしい。」

「つらそうだな・・・だからさっきあんなに仕事を・・・」

「軍人はいつ死ぬかわからないからな。
お前もそれを肝に銘じておいたほうがいい。
死ぬときになって悔いが残らないようにな。」

「そうだな。
さて、そろそろ行こうぜ」

キースが少し冷めたコーヒーを飲み干すと椅子から立ち上がりながら言った。

「キース中尉」

リーベルが背後から呼んだ。
ちなみにリーベルが大声でキースのすぐ近くから呼んだ為、
キースは驚いてそのときカップを落としそうになったとか

「な、なんだ。」

「先程言い忘れましたが、ベックウィズ大佐より伝言がありました。
『あんな大声で嫌味を言うぐらいの元気があるなら、書類の整理ぐらいなんでもないよな』
だ、そうです。第2会議室に17時に集合せよとの事ですので。
では、伝えましたよ。」

彼女はそう言い、敬礼するとさっきとは逆の方向へかけていった。

 

その日の深夜・・・・・・キースは部屋へと文句をいいながら廊下を歩いていた。

「ベックの奴・・・・・あんなに仕事を押し付けやがって・・・・・。」

彼が歩いている足を止めた。

あれ?ハルフォード?こんな時間に何してんだ?
あそこは・・・たしかこの基地がこれまでに調査した遺跡の報告書とか、
ここの機密書類が保管してあったとこだよな・・・
あいつがそんなのに興味を示すわけないし・・・。

これが調査報告書か・・・・・・・・・・・誰かいるな。

「やあキース・クリエード。
何か用か?」

ちっ見つかったか。

「おまえ、それはこの基地の・・・・・。
おまえ、ハルフォードじゃねぇな。」

・・・・・・やはり。
けっこう鋭いな、このキースって奴は。

「・・・・・・・なぜフェイクだとわかった?」

「この俺に見破れないものなんて無いぜ。」

最近何か様子がおかしいと思ったら・・・・・・
こういうことだったのか・・・・・

この状況でも冗談がいえるなんて、面白い奴。

「・・・・・・・・・そうか。
ならこれは無駄のようだな」

そう言って俺は顔の皮膚・・・もとい、特殊メイクを取り、
ついでに共和国軍の制服を脱ぎ捨てた。
あんまり着慣れてないから着心地が悪かったんだよな。
ちなみにもちろん下にはいつもの戦闘服。
コートは邪魔だから今日は無い。

「わざわざ変装してこの基地に進入するなんて、何が狙いだ?」

「さあな」

そう言って俺は腰から愛銃・“HC808 T”を取り出し、その狙いを定めた。
後は引き金を引くだけだ。
サイレンサーもつけてあるし、今は夜中だ。
気づくものはいないだろう、少なくとも明日の朝までは。
あまり人殺しはしたくないが、仕方ない。
この銃と俺の腕、そしてこの距離なら外す事はまず無い。
悪く思うな。

「させるかっ!!」

キースの投げた2枚のトランプがゲイルに向かって正確に飛んでくる。

何!?トランプ?
マジシャンかこいつは!

「ちっ」

俺は急遽狙いを変更してトランプを撃ち落とすことにした。
乾いた発射音と共にトランプの中央に一つずつ穴があき、勢いを失った。
トランプが撃ち落され床に落ちるより早く動き出していたキースが
ゲイルの脇腹を狙って回し蹴りを繰り出す。
ゲイルは床を蹴って後ろに下がり、紙一重で避けた。

「くっ」

こいつ本当に空軍か?
まるで特殊部隊並の格闘術だな。
向こうは避けられた事でけっこう動揺してるしてるみたいだが。

「なにっ」

俺の蹴りを避けるなんて、こいつ何者だ?

俺は銃を構え直しながら言った。

「そう驚くな。
確かにいい蹴りだったが、俺は一応特殊部隊員なんでな」

それに格闘技なら5歳の頃からやってる。
不意打ちされたりしない限り大抵の奴にはやられはしない。
キースの胴体に狙いを定める。

「ところで、本物は何処へやったんだ?」

さすがに銃突きつけられたらまずいな。

キースの顎から汗が一滴床に流れ落ちた。

「ああ、あいつなら・・」

ふいにドアが開き、そこには、おそらく書類をしまいに来たのだろう、リーベルが立っていた。

「キース中尉?
こんな時間にこんなとこで何をしているんですか?」

始めはきょとんとした顔をしていたリーベルだが異変に気づくのにあまり時間はかからなかった。

「侵入者!確保します!」

しかしリーベルが腰から銃を抜くよりもゲイルが
特殊閃光音響弾−スタン・グレネード−の安全ピンを抜くほうが早かった。

「じゃあな、“空の覇者”」

そして部屋がロウソク5万本に相当する閃光に包まれ二人の視覚を奪った。

 

ゲイルは素早く部屋から出ると天井の通気ダクトの中に入った。

「さて、後は・・・・・」

俺はダクトを進みながら腕の通信機のスイッチを入れ、
近海のにいるドラグーンネストに待機している俺の仲間達に連絡を入れた。

「クロウか。
ちょっと面倒な事になってな。
そこは問題ない。任務は完了した。
脱出するからちょっと空爆してくれ。
それに紛れて脱出する。
ああ、黒猫達も一緒にだ。
もうあいつら爪は研ぎ終わってるんだろ?
それじゃあよろしく頼む」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

どうも。エスケーパーです。
今回初めてゲイルとキースのカラミ(?)を入れました。
なんかキースを上手い具合に表現できたかちょっと不安です。
ちなみに今回の駄文ですが、
長くなりそう予感がしたので前・後編位に分ける事にしました。
これで後編が短くなったらどうしよう(汗)
まあそんときゃそん時で(笑)
あ、クロウ。

クロウ「今回は俺の出番は無しか?」

いや、後編に用意してあるぞ。

ゲイル「俺は?」

お前はどうなるかな。

ゲイル「おいおい・・・・。(なんならまた眠らせようか?)」

クロウ「聞こえてたぞ・・・・ブレッディ・レイン!」

・・・・・よしときなさい。
それでは後編もなるべく早く書きますので、長い目で待っててくださいm(_ _)m。
それでは。


エスケーパーさんから頂きました。
うわぁ、キースが出てるよ、キースが!!
なんか感激しますね、自分のキャラが出てると。
しかも主演だし。
リーベル達はたぶん出さないと思います。
まぁ、空きがあったら、というか、何かしらあったら出すかも・・・。
でも、確率低いです。
後半、どんな展開になるか、楽しみです。
ところで・・・、ハルフォードの心配は・・・、してるわけないっか。(爆)
エスケーパーさん、どうもありがとうございました。

 

プレゼントTOPに戻る         TOPに戻る