「センチメンタル・ジュジュ」
〜風の吹く丘で〜

 

”命なんて、なくなってしまうときはあっという間なんじゃな・・・。
あっけないもんじゃ”

ーそれは、ジョージお爺ちゃんが娘夫婦を亡くした日の、夜だった。
私は、小さな小さなビットを抱きかかえながら、
お爺ちゃんの背中をただ、見つめているだけだった。
ジョージお爺ちゃんの名前は、ジョージ・クラウド。
お婆ちゃんはエルザ・クラウド。
二人の子供のうち、お兄ちゃんは私のパパで、妹さんはビットのママだった。
今、腕の中ですやすや寝てるこの子と私は、いとこ同士になる。
・・・でも、ビットのパパとママは、もういない。
その事を、きっとビットは、知らない。
もう帰ってこない。
あんなに元気だったのに。
あんなに・・・笑ってたのに。
いないなんて、信じられない。
でも、お爺ちゃんの背中が、真実だと、語っていた。

”ジュジュちゃんは、もうすぐお姉ちゃんになるんだぞ。”

”わ〜い!!男の子かな〜?女の子かな〜?
・・どっちでもいいや!
早く一緒に遊ぼうね!”

”この子を、よろしくね。仲良くしてあげてね。”

”うん!!
私、お姉さんだもん!!”

 

・・・あの人達の好きな花は、チューリップだった。

”だって、可愛らしくていいじゃない?”

”シンプルで、何か好きだ。”

だから毎年、この日は色とりどりのチューリップを抱えて、あの丘に行く。
・・・一人で。
あたりを緑に囲まれた、見晴らしのいい丘を、ゆっくりと昇る。
心地よい風が吹く。
・・・いつも、毎年この日は晴れている。
前日にどんなにひどい雨が降っても。
必ず。
・・・喜んでいてくれてるのかも、しれない。
目的の場所が見えてくると、そこには先客がいた。
・・・再会するのは、本当に何年ぶりだろう。
だが背中は、変わっていない。
だから、私にはすぐに誰かわかった。
向こうもこっちに気づいたようだった。

「ジョージお爺ちゃん・・・。」

「久しぶりじゃな・・・ジュジュ。」

叔父さんの大好物のドーナッツがいつもお供えされてたから、
毎年来ているのはわかっていたが、直に対面するのは本当に久しぶりだ。
昔は一緒に暮らしてたのに、なんだか今は・・照れくさい。
だから、背を向け、花を生けながら話をした。

「・・・大きくなったな。元気か?
仕事は、順調か?」

「大順調よ。
ご心配なく。
・・・ビットにね、再会したわ。大
きくなって、一人前のウォリアーになって、彼女もできたわ。」

「ほ〜う、そうか、そうか。
・・・で、連れてこなかったのか?
TVで活躍を知ってはいるが、会ってみたいのう・・・。」

「あの子は、知らないわ。
覚えてないもの・・・。
それに、元気のない顔なんて、似合わないわよ。」

「・・・まあ、そうかもしれんなあ・・・。
で、お前のほうはどうなんじゃ?
いい人とか、できたのか?」

「何言ってるのよ。
私はゾイドが恋人よ。
それに今の生活が十分、楽しいしね。」

「・・・じゃが、お前には昔から色々苦労させてしもうたし・・・、
そろそろ自由にさせんと、わしも心が痛いわい。」

「まあねー。
お爺ちゃんの女好きが直らなくてとうとうぶっちん!と切れたお婆ちゃんが家出して、
おかげで家事できる人がいなくなって、
その頃うちは異大陸に企業進出でお父さんが責任者になって、
家族で引越しの準備してたけど私だけ残ったのよねー!
まあお爺ちゃんとビットだけじゃ心配だったし、
お母さんは”本当にこっちに残るの?!”ってさんざん泣かれたけど、
お父さんが説得してくれたし、何とかなったけどねー。」

「うう!
だからすまんと言っておるじゃろが!
何もそんな言い方せんでも・・・。」

「ほらほら、いじけないいじけない。
・・・でも楽しかったし、苦労なんて全く思ってないわ。
後悔もしてない・・・。
だから気にしないで。
昔も今も、私はしたい事をしてるだけよ。
自由にね。」

「・・・そうか・・・・。
ああ、そうそう。
ヘルをさっきちらっと見たが、仲良くやってるようじゃのう。」

「当たり前じゃない!
・・・あ、お爺ちゃんのゾイドって・・・、
あれってもしかして、クライマーウルフ?」

「ほう、知っておったか。
とある山の中で出会ってな、意気投合してしもうた。
気難しいが、なかなかいい奴じゃよ。
ほっほっほ。」

「本物を見たのは初めてだわ。
驚いた。
・・・ねえ、後で写真撮っていい?」

「ああ、よいぞ。
じゃがあんまり騒がしくすると怒るからな、気をつけるんじゃぞ。」

「わかってますって。
ありがと。
・・・で、話は変わるけど、お婆ちゃんには会えたの?
探し出せたの?」

「あ〜、空が青いのう〜・・。」

「・・・会ってないのね・・。
はあ〜あ・・。
私、3年前くらいに会ったわよ、偶然。」

「何?!本当か?!」

「”おしゃれしなくちゃ駄目ジャー!”とか言って引っ張られて、このメッシュ入れられたの・・・。
お婆ちゃんは赤いメッシュを2本入れてったわ。」

「ああ、ますますイマドキになってゆく・・・。」

「お爺ちゃんがいけないのよ!
若い女の子ばっかりナンパするから!
だからお婆ちゃんだって負けたくないって思ってるのよ!」

「わしが本当に好きなのは、一生涯バーさんだけじゃ!」

「だったら本人とっとと探し出して、そう言ってあげなさいよ!
旅慣れてるのにどうしてまだ探し出せないのよー!?」

「だって、ばー様はわしの事よーく知っておるし・・・。
どうも裏をかかれてるのかもなあ・・。」

「はあ〜あ・・・。
全くもう、さっさと仲直りしてよ・・・。
わかったわ。
何か手がかり見つかったら、連絡するから。」

「おお!そうしてくれるか!
すまんのう・・・。
ところでビットの奴、彼女ができたとか言っておったな。
どんな子じゃ?」

「えっとね、同じチームのオーナーの娘でウォリアーで、名前はリノンっていうの。
可愛くて元気良くて、パワフルで明るい子よ。
私、仲いいのよ。」

「ああ、とても豪快な戦い方をするあの子か、TVで見たわい。
あのガンスナイパーも個性的で、今までの常識を打ち破る感じでいいのう。」

「ビットともすごく仲いいのよ。
相棒のライガーゼロと同じくらい、大事だってさ。」

「そうかそうか・・・。
ならひ孫がもうすぐ見れるかのう??」

「いや・・・多分、そこまでは。
・・・あのね、お爺ちゃん、
そういうのは当人同士の、気持ち、とか、タイミング、とかある、と思うんだけど・・・・。」

「ひ孫が生まれたと聞いたら、絶対どこにいようとばー様も帰ってくるに違いない!!
いや、絶対来る!!来るのじゃ!」

「そーいう理由かー!!!
自業自得なんだから、自分できっちり探せーー!!!!」

「何じゃ?何でそんなに怒るんじゃ?!
早くばー様見つけろと言ったのはジュジュじゃろが!?
この考えはいかんか?!」

「子供を自分の都合で振り回すんじゃない!
そんな事、私が断じて許さないわ!」

「・・・やっぱおぬし、昔のこと恨んでおるじゃろー!
嘘をついたんじゃなー!!
うう、ひどいぞ・・・よよよ。」

「生まれた時から苦労しょいこませる方がよっぽどひどいわよ!!
泣きまねやめなさーい!
恨んでないって言ってるでしょー?!」

「嘘じゃー!嘘じゃー!
いたいけな年寄りの心を傷つけおってー!
泣いてやるー!
そうされたくなかったらひ孫生んどくれー!」

「・・・・・いい加減に、しろおおおおおおお!!
いくつだあんたはっっ!!」

「60じゃーーい!!
えっへん!!」

「何を威張ってるのよー!!?!
あーもう!
ちっとも変わってないんだからああああ!!!」

 

・・・心地よい風吹く丘で、久方ぶりに再会した祖父と孫が元気に会話?などをしている頃。
遠く離れた、空の下で相棒と共に空を眺める青年が一人。

「・・・今日の風は、気持ちいいなあ・・・なあ、ライガー?」

”グオン”

平和で静かなひと時を、過ごしていた。

”・・・全く、何をしているのかねえ・・。
相変わらずだねえ・・。”

”いいじゃないの、辛気臭いのは似合わないわ。
楽しくて騒がしい方が、嬉しいわ。”

”それも、そうだねえ・・・はは。”

・・・優しい、風が吹く。
風の行方を知るのは、無限に広がる、青空だけ。
人の命も、時の流れも、とどまることはなく、いつかは消えてしまうもの。
それは誰にも変えられないもの。
・・・ならばせめて、その時がくるまで、心のままに、鮮やかに光り輝いて。
この空のように、風のように、自由に生きてゆきなさい。
命を輝かせなさい。
私達はいつでも、この風の中にいる。
いきなさい、子供たち・・・思うがままに、自由に駆けてゆきなさい。
見守っているからね。
私達の可愛い・・・子供たちへ。

END

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あとがき

お爺ちゃんやっと出せたー!!(>▽<)
こんにちわHAZUKI様。またまたやってしまった家族話。
ビットの両親を、ジュジュとジョージお爺ちゃんが墓参りするという話です。
うーわ、辛気くさい!!(><)
タイトルも”センチメンタル”って入ってるし。
でも途中から全全センチメンタルじゃない(笑)
やっぱ、辛気臭いのはこの家族には合わないなーと思うんでしょうね(笑)
ビットの両親についてはほんとーになーんにも考えてません。
というか浮かばないんです全く。
やっぱり彼の両親て雲と風とか青空なんじゃないかなーとか思ってしまうんですよね・・・。(−−)
別にクラウドだからってわけではないんですが(寒!!)
反対にジュジュは地面にしっかり足つけてるというか(フォレストだからってわけじゃ・・殴!!)、
両親の設定はあるんですが(母親は)
父親が浮かばない・・・じゃ、海って事で(おいこら!!)生きてはおるんですがね。
バリバリ元気ですが。
ジュジュがなーんで幼い頃両親についていかなかったのか、というのはこういう理由だった(汗)
ちなみに当時6歳。ビットは3歳。
6歳児に家事やらせていーんか?!てつっこみはしないで・・(涙)
しっかりしまくったお子様だったという事で勘弁してください・・(−−|||)
子供時代こーだったから、ひとり立ちしてからはもーあっち行ったりこっち行ったりしてるんでしょうねー
好き勝手してるというか、反動?(笑)
チューリップについては、花言葉は「博愛、魅惑」色ごとにもあって、
赤「愛の告白」、黄「叶わぬ恋」、紫「永遠の愛」、白「失恋」、絞り「美しい姿」。
薔薇なみです!
それと、私が持ってる花言葉の本で、
チューリップの場所に書かれてるイメージポエムみたいなのが何となくあってる気がして。

「うしろ姿に手をふる 明日へと駆けてゆく少年がにじんで見えなくなるまで
あなたの心に勇気を 同じ空の下のどこかでその夢を信じてるから
冷たくかざした手のひらに もうすぐの春が通りかかる」

ジョージお爺ちゃんがやっと出せてホッとしてます。
しかしお婆ちゃんはいつ出せるんだ・・(汗)
ふ、新たなる課題か。
HAZUKI様、もうどんどこ暗い話になってる私ですが、
頑張って盛り上げますのでどーか!もらって下さい!
失礼します!


初心者さんから頂きました。
ジュジュとお爺さんのジョージの話です。
以前から名前は出てましたが、ここで初登場!
最初はセンチメンタルでしたが、最後はいつもの彼等でしたね。
まぁ、人間、いつも通りが一番ですよ。
やれやれ、ジョージ爺さんの本当の旅はいつ終わるんだか・・・。
ジュジュもビットも大変ですね・・・。
なんか、リノンやケインも巻き込まれそう・・・。
曾孫欲しいって言ってたけど、こういう理由ですか・・・。
もう巻き込まれてるか?もしかして・・・。
初心者さん、どうもありがとうございました。

 

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