「チャイルド・パニック」

 

 ドタバタとにぎやかな足音が響く。

「こらー、リノン!
オレのおやつ返せー!!」

「やーよ!」

バタバタと走り回るビットとリノンを尻目に、バラッドはソファでゆっくりコーヒーを飲んでいる。
トロス・ファームでは毎日のように繰り返される風景。
通常ならジェミーも「いつものこと」と割り切るのだが・・・・・・、

「ビットさん!リノンさん!
いいかげんにして下さい!!」

声を張り上げる。
もっとも、こんな程度でおとなしくなってくれるのであればジェミーも苦労はしないが。

「いいじゃん、別に。」

「そーよ、いつものことでしょ。」

 ジェミーに向かって言う二人の声はいつもに比べて少し甲高い。

「やめろっていって、やめる奴等でもないだろう。」

後ろでコーヒーを片手に言うバラッドの声も17歳の青年とは思えないほど甲高くなっていた。
それもそのはず、本来16歳のビットとリノン。
そして17歳のはずのバラッドはそれぞれ10歳前後の子供の姿になっているのだ。

「だから苦労してるんじゃないですか・・・・・・。」

バラッドに対してというよりはその向かい側でゾイドの模型を組み立てているトロス博士に向かって呟く。
博士は気付いているのかいないのか。
組み立て説明書から目を上げようともしない。

「まあ、いいんじゃないの。可愛くて。
大変そうだけど。」

「誰のせいだと思ってるんですか?」

ジェミーの声に怒気が含まれているような気がするのは気のせいではないだろう。多分。

「まあ、そのうち薬の効果も切れるだろうし、それまでの辛抱だよ。ジェミー。」

「いつになったら切れるんでしょうねぇ〜。
薬のキ・キ・メ。」

「さ、さあ・・・・・・・・・。」

さすがの博士も怖くなったらしい。
模型のパーツを箱に入れてそそくさとリビングを出て行く。
ジェミーは黙ってそれを見送った。
扉が閉まると同時に大きく息をついてソファにくずおれる。

「もうヤだ、こんな生活・・・・・・。」

呟くジェミーをよそにビットとリノンの追いかけっこは続く。
バラッドが気の毒そうな視線をジェミーに送っているのにジェミー自身は気付いているのだろうか。
そのとき、通信機が鳴った。
ジェミーは慌てて受話器を取る。

「はい。」

『ジェミーか。
俺だよ。』

「レオンさん。」

通信の相手はリノンの兄のレオンだった。
これから来るということだけを伝えて通信は切れた。
受話器を置いてジェミーははたと我に返る。

「どうしよう、これ・・・・・・。」

相変わらずの三人を振り返ってジェミーは再び大きな溜め息をついたのだった。

 

「やあ、ビッ・・・ト・・・・・・。」

「バラッ・・・ド・・・・・・?」

トロス・ファームに着くなり、出迎えたメンバーを見てレオンとナオミが呆けた声で呟く。

「どーしたんだよ、レオン。」

「大丈夫か、ナオミ。」

あっけらかんとしているビットと、対照的に不安そうなバラッド。
2人の声に我に返ったのか、レオンとナオミは顔を見合わせてからジェミーに向き直った。

「ジェミー、この3人って・・・・・・。」

「ビットとリノンとバラッド、よね・・・・・・?」

ジェミーに問答無用で頷かれた二人は思わずめまいを覚えたという。

「・・・・・・で、どうしてこんなことになったんですか。父さん。」

「え〜とね・・・・・・。」

静かな威圧感をともなうレオンの言葉にトロス博士は冷や汗タラタラで説明をすることになった。
実はこの息子こそがトロス博士が一番苦手とする人物なのだ。
それにしてもすぐに父親の仕業だとわかるあたり、
だてに18年もこの博士の息子をやっていないということか。

「彼らには実験台になってもらっただけなんだけどね。」

「実験台?」

「若返りの薬とかいうものを作ってたらしいんですよ。
ぼくたちに内緒で。」

聞き返したレオンの言葉にコーヒーを持ってきたジェミーが答える。
レオンはコーヒーを受け取って口をつけずにそのままテーブルの上に置いた。

「なんでそんなことしたんです。
父さんはまだ若返りの薬なんて必要な歳じゃないでしょうに。
むしろ体が若返る前にもう少し精神的に大人になって下さい。」

立て板に水。
痛い所を突かれまくってトロス博士はグウの音も出せなくなった。
これだから息子と向き合って話すのは苦手なのだ。

「ジェミー、説明して。」

ジェミーに泣きつくとジェミーは溜め息をついて話しはじめた。

「博士はぼくたちに内緒で薬を完成させたらしいんです。」

「それで実験をしておこうと思ったのか・・・・・・。」

「はい。多分。」

「で、ビットたちを実験台に、ね・・・・・・。」

レオンは呆れて呟いた。向かいの椅子では父親がしゅんとして頷いている。

「どうして自分が実験台になろうとしなかったんです?」

「だって・・・、失敗してたら嫌だもん・・・・・・。」

『あんたは子供ですか!』

レオンとジェミーに同時に言われ、博士はますます小さくなった。

「それにしても、よくジェミーは無事だったな。」

「あ、はい。
薬をコーヒーに混ぜてたらしくて。
それで昨日の夕食後にみなさんは飲んだらしいんですけど、
ぼくは後片付けで手をつけてなかったんです。」

「なるほどね。」

「薬は全てぼくが責任を持って処分することにしました。
博士に任せておいたらとんでもないことになっちゃいますから。」

「そうだな。」

2人だけで話を進める息子とジェミーを見て博士はそっと部屋から・・・・・・、

「逃がすわけないでしょうが。」

「どちらにいらっしゃるんです、父さん?」

トロス博士が凍りついたのは言うまでもない。

 

 その頃、小さくなったビット、リノン、バラッドの三人はナオミと一緒にリビングにいた。
ナオミはちゃっかりバラッドの隣を占領している。

「小さくなってもやること変わらないわね、あなたたち。」

「他にすることがあるわけじゃないしな。」

お互いコーヒー片手に言う。
バラッド、あんた何杯目だ、それ。

「七杯目。」

答えないで下さい・・・・・・。

「ところで、元に戻る方法ってないの?」

「おれが聞きたい」

溜め息をついてコーヒーをすする。

「博士の話だと、効果が切れるのを待つしかないらしい。
解毒薬を作るにしても材料がないらしいし、副作用も考えられる。
気長に待っていろと言われた。」

まるっきり他人事のような口調で説明するバラッド。
聞いているのかいないのか、ビットとリノンはまたもやケンカを始めている。
ナオミもそれを見て溜め息をついた。

「相変わらずなのね、あの人は。」

「だからレオンやジェミーが苦労するんだろ。」

こう言ったとほとんど同時に、
別室にいたレオンとジェミーがくしゃみをしたことをバラッドたちは知らない。(知っててたまるか)

「で、どのくらいで効き目が切れるかとかもわからないわけ?」

「ああ、おれたちが初めての実験台らしいからな。」

「そう・・・・・・。」

バラッドの返事に呟いてナオミはバラッドを見つめる。

「なんだよ」

「バラッドってさ・・・・・・、女の子みたいで可愛い。」

言ったかと思うとコーヒーをテーブルに置いてバラッドに抱きつく。
逃げ損ねたバラッドは慌ててもがいた。

「ちっ…ちょっと待て、ナオミ!」

「イヤ。」

一言で否定されてバラッドは悲鳴じみた声をあげる。

「放せ、ナオミ!!」

「いいじゃん、おまえ実際可愛いし。」

ビットがソファの背もたれから乗り出しておもしろそうに言う。
リノンも隣でにこにこしながらそれを見ている。

「他人事だと思って!
お前もされてみろ!
かなり嫌だぞ!」

もがきながらもビットに叫ぶ。

「へっへーんだ。
オレにこんなことするやつなんていないもんねー。」

「それはどうかな」

「へっ?」

突然振ってきた声にビットは間の抜けた声をあげる。
それとほとんど同時に後ろから抱きかかえられていた。

「どわっ!?」

慌てて足をバタバタさせるがむなしく宙を蹴るだけでなんの効果もなさない。
肩越しに振り向くとレオンが楽しそうに笑っている。

「せっかくだからね。
弟ができたと思って楽しませてもらうよ。」

「嫌だーっ!」

今度はビットがもがく番になった。
「それみろ」と呟いたバラッドは、あきらめたのかナオミの腕の中でおとなしくしている。
ちなみにリノンはシャワーでも浴びてくるといってリビングを出て行った。
残ったのはバラッドを抱いているナオミとその腕の中でおとなしくしているバラッド、
楽しそうにしているレオンとその腕の中で暴れ続けるビットというかなり楽しい構図になった。

「楽しくねえっ!」

暴れるビットはまだまだ解放してもらえない。

 

「ほどほどにしておいてくださいね。二人とも」

ずっと暴れ続けて疲れたのか、ビットがやっとこさおとなしくなった頃に
ジェミーがリビングに入ってきた。
呆れ気味に言いながらバラッドとビットに紙を渡す。

「なんだ?」

ビットが受け取った紙をレオンがのぞき込む。

「バトルの通達みたいね。」

バラッドが受け取った紙をのぞき込みながらナオミが言う。
ナオミの息がバラッドの頬に当たる。

「おいナオミ、あまり顔を近付けるな。」

「あら、どうして?」

バラッドに言われたナオミは不思議そうだ。
バラッドの顔が微かに赤くなっているのに気付いていないらしい。

「バラッドって不器用なんだよな。
こうやって見てっとさ。」

「人のこと言えるか、おまえ?」

独り言にレオンのツッコミをもらってビットは沈黙した。
どーいう意味だろう・・・、などと考えてみる。

「で、受けたのか?
このバトル。」

バラッドに聞かれ、ジェミーが答える。

「ええ。日時も決まっちゃってますし。
それに『ウォリアーが子供になっちゃったからバトルできません』なんて言えませんしね。」

「確かに言いにくいな。」

レオンが苦笑まじりに呟く。

「大丈夫だって。
たとえ身体は小さくなっても中身は同じなんだからさ。」

ビットが自信満々に言う。レオンに抱かれているせいでどうにも情けないが。

「そういえばビット、おまえ大丈夫か。」

なにかに気付いたのかバラッドがビットに声をかける。

「なにが?」

「ライガーゼロのコクピットに乗れるか、って聞いてるんだ。」

「どーいう意味だよ」

バカにされていると思ったのか声にわずかながら怒気が混じる。

「ゼロはフォックスやガンスナイパーと違ってベルトじゃなくてストッパーだろ?
身体が小さくなったせいで首にかからないかと思ってな。」

『あ!』

リビングにいるバラッド以外の全員の声がハモる。
バラッド以外、誰も気が付いていなかったらしい。

「気付いてなかったのか・・・?」

「あはははは・・・・・・。」

バラッドに冷たく言われ、ビットは乾いた笑いを立てた。

「調節、できましたっけ?」

「よし、確かめに行こう、ビット。」

「それはいいけど降ろせえ〜!」

レオンが自分を抱えたまま立ち上がってリビングを出て行こうとするので
ビットは慌ててもがいた。

「運んであげるよ、ビット。」

「いらねえよっ!」

笑顔のレオンを肩越しに見上げて(小脇に抱えられている状態なのだ)ビットはわめく。

「遠慮しなくてもいいって。」

「遠慮なんてしてねえっ!」

ビットがどんなにわめこうが暴れようがレオンは一切お構いなしでリビングを出て行く。
それを見送ってバラッドはナオミを振り返った。

「・・・おまえはあそこまでしないだろうな、ナオミ?」

「さすがにあれは・・・ねえ・・・・・・。」

さすがのナオミも苦笑する。
レオンがビットを気に入っているのは周知の事実だが、あそこまでとは思っていなかった。
もとい、ホントにやるとは思っていなかった。

「レオンさんてば・・・。」

「ジェミー、追わなくていいのか?
レオン、一応部外者だろ?」

「あっ!そうだった!!」

バラッドに言われたジェミーは我に返って慌ててリビングを出て行く。

「部外者なの?」

「一応違うチームのメンバーだしな。」

「あ、そ。」

バラッドが溜め息混じりに答える。ナオミはとりあえず納得してからふと口を開いた。

「でも、結構ブリッツの機密事項知ってるみたいよ、レオン。」

「博士やジェミーがしゃべっちまうからな。
元々同じチームだっただけに警戒心があまりないんだろ。」

「なるほどね。
特に博士にとっては実の息子だしね。」

「それ、関係あるのか?
あの博士に・・・。」

「ないかも・・・。」

二人は同時に溜め息をついた。
ブリッツと関わってから苦労が絶えない、などと同時に思ったことをお互いは知らない。
(だから、知っててたまるかって)

 

リノンがシャワーを浴びて戻ってきてから、バラッドとナオミも格納庫に移動した。
ちなみに、リビングを出るとき、
ナオミがバラッドに「手をつないであげる」と言ったのをバラッドが丁重にお断りしたのは言うまでもない。(笑)

「あ、リノンさん、バラッドさん、ナオミさん。
どうしたんですか?」

「いや、どうなってるかと思ってな」

声は甲高いが、いつもと口調が同じなのでどうも違和感がある。

「ねえ、バラッド」

「ん?」

「なにか、違和感あるんだけど・・・。…」

「ンなこと言ってもなあ・・・、昔からこういう口調だったし。」

「え!そうなの!?」

ナオミに見下ろされているのは妙な感じだ、とバラッドは胸中で呟いた。

「いーかげんに放せって!レオン!!」

ビットの声が降ってきた。
見上げるとライガーゼロのコクピットから降りるときに
逃げ損ねてレオンに捕まりました。という感じの構図が見えた。

「なにをやってるんだ、あいつらは。」

「ああ、ビットさんがレオンさんから逃げようとして逃げ損ねたんですよ。
さっきから何回もやってますよ。」

「すっかり楽しんでるわね、レオン。」

「兄さん、小さい頃から『弟が欲しい』って言ってたから。」

「レオンさん、ビットさんに甘いですもんね。」

「しかもビットはそれに気付いてないしな。」

「すごい関係・・・。」

「気付きなさいよね、ビットってば。」

などと四人が話しているのに気付いているのかいないのか。
ライガーゼロのコクピット近くでは二人が飽きもせずにわめいている。
・・・・・・正確にはわめくビットをレオンがあしらっているのだが。
頭の上で二人に騒がれているライガーゼロが「いいかげんにしてくれ」といったふうに唸った。

 

「ちくしょー、レオンのやつー。」

夜になってなんとかレオンから解放されたビットがライガーゼロの足元で毒づく。

「レオンなんて嫌いだ。
あいつの笑顔は悪魔の笑顔なんだ。
元の姿に戻るまで顔も見たくねえ。」

悪魔の笑顔って・・・どこぞの帝国軍大佐じゃあるまいし。

「なぜ私を引き合いに出す」

いや、なんとなく・・・、って出て来ちゃだめでしょーがっ!

「そうか。失礼した」

ったく・・・。
ええと、話を元に戻しましょう。
ビットのぼやきを聞いてライガーゼロが唸った。

グオウゥ

「だってさあ」

ちょっと待て、ビットはいいがオレらはわからん。
というわけでここから先は日本語翻訳バージョンでどうぞ。(オイコラ)

『そんなに嫌か?』

「だってさあ。」

『レオンはおまえのことが好きなんだろう?
だから構っているだけではないのか?』

「でもあれはねえだろ?
いくら体が小さくなっちまったっていってもさ、中身は変わってねえんだぜ。
子供(ガキ)扱いはひでえよ。」

『ようするに、ビットは対等の立場で扱って欲しいということか?』

「ん…まあ、そういうことになるのかな。」

『むずかしいな、ニンゲンは。』

「うっせい。」

『まあ、今日はもう寝たほうがいい。
早く元に戻れるように私も願っているからな。』

「サンキュー、ライガー」

格納庫を出る直前にライガーゼロがビットを呼びとめる。

『ビット』

「なんだ、ライガー?」

『なかなか可愛いぞ、その姿。
私がニンゲンだったら頭を撫でてやりたいところだ。』

「……っ!
ライガーのバカ!!」

顔を真っ赤にして怒鳴り、身を翻して逃げるように格納庫を出て行く。
それを見送ったライガーゼロは面白くて仕方ないといったように唸った。

『可愛いですね、あなたのマスターは。』

『ああ、私の自慢の相棒だからな。』

『バラッドもあのくらい可愛げがあればなあ。』

『やめときなさいよ、フォックス。
想像しただけで怖いわよ、それ。』

『ジェミーは小さくなってもあまり変わらないんじゃないかなあ。』

『今でも小さいしね。』

『本人の前でそれ言っちゃだめだよ。
気にしてるみたいだから、あれで。』

『マスターの小さくなった姿は想像できないし、したくないですね。』

『それは言えてるな。』

それぞれの相棒談義に花を咲かせるゾイドたちであった。
誰が誰だかわからない人は後書き参照。(爆)
さあ、明日はバトルだ。(「早っ!」←出演者一同)

 

 バトルフィールドに向かってホバーカーゴを走らせる。
ビットたちはそれぞれのゾイドに乗って待機している。

「みんなしてゾイドに乗ってなくてもいいじゃない。」

「自業自得でしょ。
博士の顔も見たくないそうですよ。」

「くすん・・・。」

いじけるトロス博士を振り返りながらジェミーは溜め息を漏らす。
実際にバラッドがホバーカーゴに乗り込むときに言っていたのだ。
「顔も見たくない」と。

(まあ、気分的にってことだろうし。
元の姿に戻ればそんなことも言わなくなるんだろうけど。
今の状況じゃなあ。)

どう考えても三人が被害者でトロス博士は加害者なのだ。
同情の余地はない。

(で、そのとばっちりがぼくに来る、と。)

リノンやビットが暴れた後の後片付けなどがそのとばっちりに入る。
バラッドに関しては不機嫌になるだけで、それほど実害らしい実害はないのだが。
あえて実害があるとすれば、
コーヒーと紅茶の消費量がいつもの1.5倍くらいになっているという点ぐらいだ。
飲みすぎだぞ、バラッド。

「はぁ・・・。」

盛大に溜め息が漏れる。
それを見てトロス博士が口を開いた。

「大変だねえ、ジェミー。」

「誰のせいだと思ってんですかっ!」

思わずコンソールを叩いて怒鳴った。

 

「バトルフィールドに到着しました。
各機発進してください。」

ジェミーの声がデッキに響く。
各々好き勝手な格好をしていた三人はシートに座り直す。
ちなみにライガーゼロのストッパーは無事に調節できた。

「よっしゃ!
ビット、ライガーゼロ、発進!!」

「バラッド、シャドーフォックス、発進する!」

「リノン、ガンスナイパー、行っきまーす!!」

着地してそれぞれ大きく咆哮する。

「相手はチーム・ウルフ。
コマンドウルフ三体のチームです。
気をつけてくださいね。」

「平気平気。
あたしたちの敵じゃないわよ。」

「頼むぜ、フォックス!」

「暴れるぜ、ライガー!」

ガンスナイパー、シャドーフォックス、ライガーゼロが吠える。

「バトルフィールド・セットアップ!
チーム・ブリッツVSチーム・ウルフズ!
バトルモード、0982、レディー…ファイッ!!」

ジャッジマンの宣言とともにコマンドウルフが散開する。

「マンツーマンで対処してください。
ただし、リノンさんは格闘戦にならないように。」

「オッケー!
でも余計なお世話よ。」

「バラッドさん、前に出過ぎないで下さい。
リノンさんの攻撃が当たります」

「了解した。
リノンに『当てるな』って言ってやれ。」

「ムチャな動きは控えてください、ビットさん。
いつもと違って体の耐久力自体が低下してるんですから。」

「わかってるって。
大丈夫だよ。」

相変わらず指示に従ってくれそうで従ってくれない。
それでもちゃんとバトルになっているからすごいのだが。

「そろそろ決めるぜ、ライガー!」

「おれたちも決めるぞ、フォックス!」

ビットとバラッドの声に応えてライガーゼロとフォックスが走り出し、前足の爪が輝き始めた。

「ストライク!」

ビットが叫び、

「レーザー!」

バラッドが吠える。

『クローッ!』

最後は二人の声が重なり、二体のコマンドウルフがシステムフリーズを起こして崩れ落ちた。

「あたしたちも終わらせるわよ、ガンスナイパー!」

ガンスナイパーが発射の体制に入る。

「ウィーゼルユニット、フルバースト!」

リノンの声に応えて武器が一斉に発射される。
最後の一体もシステムフリーズを起こした。

「バトル、オールオーバー。
ウイナー、チーム・ブリッツ!」

「よっしゃあ!」

「フッ・・・。」

「リノンちゃんの勝っちー!」

ジャッジマンの宣言にそれぞれ反応を示すが、バラッドだけはいまいち格好がついていない。
ビットやリノンのように素直に喜んだようがまだましだ。

「やかましい」

文句を言われてもいまいち凄みもないし。

「あはは・・・、ご苦労様でした。
皆さん。帰って食事にしましょう」

ジェミーの言葉にそれぞれゾイドをホバーカーゴに戻した。

 

翌朝、目覚めたビットはベッドの上に置き上がるなり叫んでいた。

「も、戻ったあああっ!」

慌てて着替えをしてリビングに行くといつもの姿のバラッドが新聞片手にコーヒーを飲んでいる。

「お、おまえも元に戻ったようだな。」

「バラッドも戻ってたんだ。
よかったな。」

「よかったなって・・・、そりゃこっちのセリフだ。」

呆れ気味に言って隣に座ったビットの額を軽くこづく。

「これで二人とも兄さんとナオミに遊ばれないですむじゃない。
よかったわねえ〜。」

リノンの言葉に刺がありまくるような気がする。
まあ、気のせいだろう、ということに二人はしておいた。
ヘタに理由を聞いたりしたら後が怖い。

「よかったですね。
3人とも、元に戻って。
食事の準備は出来てますからダイニングにどうぞ。」

「おっし、食うぞ。
腹へってたんだ。」

「今日はサラダあるか?」

「はい、今日は生野菜とワカメのサラダにしたんです。」

「生野菜はいいけどワカメは嫌いなのよね、あたし。」

「ワカメは酢の物が好きだな、オレ。」

「あ、作りましょうか。
ワカメの酢の物。」

「え、いいの!?。」

「ええ。」

にぎやかに話しながらダイニングに向かう。
ちなみに博士はいまだにいじけて朝食は自分の部屋で一人淋しくとっていた。
そして、朝食の席がビットとリノンのおかずの取り合いになったことは言うまでもない。
その後、ジェミーからの連絡でビットたちが元の姿に戻ったことを知ったレオンとナオミが、
そろって残念がったのは余談である。

END

****************************************************************************************

あとがき

こんなんでいいんでしょうか?
なんか文才のなさを暴露してるだけのような気がしないでもないですが。
チーム・ブリッツというよりはビットとバラッドの受難話みたいになってしまいました。
とりあえずブリッツだけじゃ書けなかったんでフリューゲルにでしゃばってもらいました。
ゾイドたちの会話シーンですけど、上から順に
ブレード、ゼロ、フォックス、ガンスナ(赤)、レイノス、ガンスナ、レイノス、ブレード、ゼロ
ということになってます。
ガンスナイパーは(赤)と付いているのがナオミので、付いてないのがリノンのです。
見りゃ分かると思いますが。
何とか完成はしましたけど、皆さんと比べるとなんかへぼいような気がします。
次の話は……構想すらできてませんが頑張ります。
なんとか拒絶せんといてください、葉月サマ。
お願いします。

ライガーゼロの一人称が「私」だったり、
ブレードライガーがレオンのことを「マスター」と呼んでいたりするのは単なるオレの趣味です。
気に入らなかったらすみません。
ゼロの一人称は変えてもいいです。
ゼロは普段は「私」で、バトルの間は「俺」になるというふうに使い分けてるんです。
ゼロのセリフで『ニンゲン』とカタカナ表記にしてましたが、
あれはゾイドのセリフのみに使う表現ですので誤植ではないです。
服はどうしたのか、と思われるかもしれませんが、バラッドはジェミーの服を借りてます。
十歳児といってもジェミーより少し小さいくらいじゃないかなーと思ったので。
ビットはジェミーが実家に帰って小さい時の服を持ってきて貸してます。
リノンの服はさすがに博士が買ってますが。
ところで、ナオミがバラッドを抱いているシーンで、ナオミの息が……て書きましたけど、
息の前に胸がバラッドの背中に当たってますね。
書き終わってから気付いた……あはは………(荷電粒子砲!) 
誰だよ、撃ってんのは。
書くの自体は楽しかったです。
いきあたりばったりなもんで苦労はしましたけど。
それでは。


JUNさんから頂きました。
ブリッツのメンバー、子供になっちゃいました。(笑)
でも、いつもと変わらないってどう言うことだろ・・・。
ジェミーの気苦労が倍加したぐらいですかね。
それにしても・・・、ナオミとレオンは遊んでましたね。
これにはビットとバラッドもタジタジみたいですが。
まぁ、元に戻れたからいっか。
元に戻っても全然変わらない人々でした。
JUNさん、ありがとうございました。

 

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