「森の狼」
「どこだよ、ここは・・・・?」
俺はアレス・チェイサー、ただいま迷子中。
「くそう・・・・あのオンボロジープめ、こんな樹海チックなことろでお陀仏とは・・・。
いや、こんなところ通った俺も俺だが・・・・。」
一人愚痴りながら俺は歩き続けた。
が、出口は見えなかった。
「あ゛ー!なんで人っ子一人通らねぇんだよ!」
このとき、俺は知らなかった。
ここがレアヘルツほどではないが、特殊な磁場が発生していることに。
俺はとにかく歩いた。
歩いて歩いて、時に転けて。
そんなこんなで日が暮れてしまった。
昼でも暗いこの森は、夜にもなれば暗闇に視界を奪われる。
何時間も歩き続けたせい出、足は限界に近く、その場に座り込んだ。
「こんなとこで死ぬんかな、俺。」
少し、弱気になっていた。
「せめて自分のゾイドが欲しかったな・・・。」
俺は自分のゾイドを持っていなかった。
金がなかったわけじゃないが、しっくりくるのがなかっただけだ。
「やっぱ自分の手足みたいなゾイドなんていねぇのかな・・・。」
そう呟くと、俺の意識は飛んだ。
「・・・ん・・・・・・」
眠っていたようだった。
暗いことからして、まだ夜らしい。
起きあがり、辺りを見回すと、遠くで小さな明かりがふわふわ浮いていた。
−蛍?−
俺はその明かりに向かい走った。
走る必要はなかったが、足が自然と動いた。
急に、視界が開けた。
そこには石造りの古い建物、遺跡のような物があった。
その遺跡を二つの月が照らし、周りを無数の蛍が飛ぶ。
−綺麗・・・・−
素直にそう思った。
しばらくぼおっと見ていると、遺跡の入り口らしきものが見えた。
なんとなく、足を踏み入れてみた。
−カイホウシテクレ−
声が、聞こえた気がした。
が、悪い物ではない。
苦しそうな、壊れそうな感じの声だった。
まあ、何とかなんだろと考えて、俺は奥へ進んだ。
しばらく歩くと、ホールのような場所に出た。
−なにか・・・いる?−
ふと、二つの月を隠していた雲が晴れ、そこにいる物が姿を現した。
ゾイドだった。
暗黒の色をその身に宿し、双月を仰ぐその姿は狼。
その目には光はなく、眠っているようだった。
俺はその漆黒のゾイドに触れた。
−俺を解放してくれ!−
さっきよりはっきりした声だった。
俺は迷わず、そのゾイドのコックピットに乗り込んだ。
そして、主電源を入れた。
だが、動かなかった。
「なんでだよ・・・?」
俺はコックピットから飛び降り、漆黒のゾイドをくまなく調べた。
破損はない。
「なんでだよ・・・。」
主電源を入れ直しても、そのゾイドは動かなかった
「なんで動かねぇんだよ!!」
だんっ!途画面を乱暴に叩く。
−俺を死の眠りから解放してくれ!−
それは、むしろ叫びだった。
大地をまた駆けたいという、強い願い。
「るせぇ!答えろ!
なんで動かねぇんだ!!」
それがわかっているのに、声をあらげてしまう。
−走りたい・・・・主と共に・・・・・−
その言葉を聞いて、俺は出来る限り穏やかな声で言った。
「走らせてやるよ・・・・。
俺がなってやる、お前の主に、いや『相棒』にな。」
そして、叫んだ。
「だからおきやがれ!
『デスウルフ』!!」
なぜ、このゾイドの名がわかったのかは知らない。
だが、当たりだったようだ・・・・。
グオオオオオオオォォォォォォォォォォォ!!!!!
その目に紅い光が宿り、気高い咆吼が響く。
−感謝する、俺を目覚めさせてくれて−
はっきりとした声が俺に響く。
「気にすんな相棒。
自己紹介が遅れたな、俺はアレス・チェイサー。」
ぶっきらぼうな口調で言う。
−頼みがあるんだが・・・−
遠慮がちな声が響く
「なんだよ?」
−走りたいんだ−
強い願い。
断る理由は・・・・ない。
「OK、遠慮せずに思い切り走れ。」
−ああ、ゾイドイブが停止して以来だ。
思い切り走らせてもらう!−
心底楽しそうな声で身を揺すり、走り出した。
「おっしゃ!
行けええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
遺跡を飛び出し、森を抜け、大地を駆けた。
その、死より目覚めし狼の姿を、二つの月が、優しく照らしていた。
幾万の時を取り戻すように走る狼を、優しく・・・・・。
END
千夏さんから頂きました。
アレスとデスウルフの出会いです。
なんかデスウルフの姿が想像できない・・・。
私の想像力が欠如してるんでしょうか?
まぁ、感想に戻りましょう。
アレス、いつになったら出てくるかな・・・。
いろいろと考えてはいるんですが・・・。
まぁ、気長にお待ち下さい。
うわ、感想になってねぇ・・・。(荷電粒子砲)
千夏さん、どうもありがとうございました。