「強さの理由」
気付いたときには、一人で、木の根に座って泣いていた。
「・・・・ねみぃ」
『って、さっき昼寝しただろお前』
うとうとしているアレスにツッコミを入れるデスウルフ。
「うっさい、昨日寝てないの知ってんだろ？」
『つーか、何してたんだ？
徹夜はしない主義だろ？』
「んー？ちょっと面白いもん作ってたんだよ。
どーせだから取り付けるわ」
そういってどこからか工具箱にフロッピー、 人の頭より少し大きいくらいの機械を取り出した。
『変なもんつけるなよ』
「大丈夫。別に怪しいもんじゃないから。
ヒマなら俺の昔話してやろうか？」
喋りながらも、作業の手は休めない。
『昔話？』
「ああ、俺、実は孤児なんだよ」
アレスは静かに語り始めた。
気付いたときには、一人で、木の根に座って泣いていたんだ。
なんでそこにいるのかすらわからなくて誰もいなくて、ただ、泣いていた。
そこを通りかかった人がいて、俺を拾ってくれた。
しかもその人は俺を実の子どものように育ててくれたんだ。
それから４，５年くらい、ふつーのゾイド好きの子供だった。
あの賞金稼ぎの姉ちゃんに会うまでは。
その姉ちゃんは女がてらにメッチャ強くて、村の近くにいる盗賊団を一人でのしちまったんだ。
村の酒場でその姉ちゃんにあって、一つ聞いたんだ。
『どうしたらそんなに強くなれるの？』
って。
そしたら、こういったんだ、
『守りたい奴がいるんでね、そいつのために強くなった』
って。
だから俺は、
『じゃあ僕は強くなれないね』
って。
そのときの俺は守られてばかりで、守る物なんて無かったからな。
そしたらぴきゃん！って、どっからか出したピコハンで頭を叩いて、
『バーカ、何言ってんだよ。
今は守りたいものが無くても、いつか出会う守りたい奴のために強くなればいいだろ？』
って言ったんだ。
それからだな、強くなりたいって思ったのは。
案外地道にトレーニングしてたんだぜ？
そんなこんなで俺が１４の時、俺を育ててくれた人が病気になってな、教えてくれたんだ、
『俺はお前の本当の父親じゃない』
って。
あのときほどショック受けたこと無かったなぁ。
１２年間父親として慕ってきた人が、本当の父親じゃないなんて。
そして、最後の時に、こういってくれた。
『強くなりなさい、自分の好きなように生きなさい』
ってさ。
それがその人の最後の言葉、つまり遺言。
だから、俺は強く、自分の好きなように生きてきた。
「・・・・そして、今に至る」
『大切なもののために強く・・・・か、お前らしいな』
「まぁな。
よし、これで終わりって」
アレスは見つめるサキには、 操縦席の後ろに取り付けられた、さっきの機械。
『なんなんだ？これ』
「それはな、ポチッとな」
アレスがその機械のスイッチを入れると、目の前に黒髪の２０ほどの青年の画像が映し出された。
『ホログラムか！？』
デスウルフの声がスピーカーから流れ、青年の画像が驚いたような顔をする。
「ビンゴ。
声だけってのもなんかヤダからさ、
大変だったぜー、お前の感情や意志で動くプログラム作るの」
アレスが青年に向かって言った。
『へー、スゲェ・・・・』
画像の青年（デスウルフ）は、しげしげと手などを見つめた。
「さーて、そろそろ行くか？
守りたいもの探しにな」
『ＯＫ』
ポログラムが消え、デスウルフが走り出した。
もうすぐだ、もうすぐ、彼女の本当に守りたい、大切な人が見つかるのは・・・・・。
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アトガキ
この話はアレスとデスウルフが出会って２，３ヶ月した頃の話です。
誰にでも今の自分がいるのには誰かの存在があるように、
アレスにも賞金稼ぎの姉ちゃんや、今はいない育ての父親の存在があるんです。
そして、デスウルフの存在が、またアレスを少し変えるんです。
あんまり変わりませんが。
ちょっとまじめに語ってみました。（笑）
あと、一応言っておきますが、アレスは頭良いです。（爆）
だてに趣味が工作じゃありません。
何でも作ります。
ここらへんトーマに合わせてみました。
違いというとアレスは基本的におもちゃ系でトーマは本格的と言うところですかね。
でも、本格的なのも作れますよ？設備さえあれば。
ちなみに、このホログラムは本格的です。
デスウルフの意志で表情も変わるし、指先までちゃんと動きます。
長くなりましたが、読んで下さってありがとうございました。
千夏さんから頂きました。
デスウルフ、ついに擬人化・・・。
ゾイド史上初ではないでしょうか？
アレスも暗い過去を経験してる。
でも、守るための力は他のどんな力よりも強いと思います。
バンやレイヴン、キースもその力を持ってるから強いんです。
彼女が守りたいものはいったい何なのでしょうか？
千夏さん、どうもありがとうございます。