「バトルオブキッチン
in バレンタイン(イヴ)!」
〜リノンのお料理頑張るぞ!〜

 

 頃は2月。
風の寒さは厳しけれども、人々の心は熱く燃えるこの季節。
それはなぜか。
2月といえば、このイベントがあるからである!

「あ〜節分か?
確かにあれは燃えるな!」

げしっ!

「ちっがーうっ!!
2月といえばバレンタインでしょっ!!
そして今日はバレンタイン前日よっ!
バレンタイン・イヴなのよっ!」

お約束のボケをかますビットに、渾身の一撃をくらわすリノン。
バラッドとジェミーはやれやれ、といった表情でそんな2人を見ていた。
一応、説明しておくが・・これでもビットとリノンは、恋人同士である。
今日は2月13日。時計は午前10時をさす頃。
本日はバトルもなく、のんびり過ごしていたメンバー達の安息は、
リノンの叫びによってかき消された。

「それでね、ジェミー、お願いがあるんだけど〜・・。」

「駄目ですよ。」

猫なで声を出すリノンにあっさりきっぱり、ジェミーは答えた。
その目は実にひややか〜である。
彼にはリノンのお願いが何なのかわかりきっていた。

「台所は貸しません!
去年、ガス爆発起こして大赤字出したでしょっ?!
普段料理しないくせに、バレンタインだけ手作りのチョコを作ろうとするのはやめてくださいっ!
できたものだって到底チョコ以前に食べ物と認識できない“物体”でしたし!
僕とレオンさんがどれだけ大変な目にあったか、覚えてないとは言わせませんよ!!
ファームの安全と家計の安定の為に、チョコは買ってくださいっ!!」

チーム・ブリッツの“お母さん”役のジェミーは日常の台所を預かる者として断固、
リノンに厳しい言葉をぶつけた。
去年のバレンタイン、
リノンは父と兄、チームメイトのジェミーとバラッドに
「手作りのチョコ作ってあげる〜♪」とはりきっていたのだが、
その直後台所は正に戦場、地獄絵図のような光景とかし、
事を重く見たレオンとジェミーが止めようとした矢先に爆発が起き、消防車を呼ぶ騒ぎとなった。
バラッドは「面倒はごめんだ」といって、どこかに出かけてしまった。
トロス博士は自室でプラモ作りに熱中しており、この騒ぎを後で知った。

「・・そんな事があったのか・・。」

ビットがここに来る前の事なので、当然知ってるはずもない。
リノンの事は、何となく料理は下手かな〜と思ってはいたが、
事実は彼の予想を少〜しばかり、上回っていたようだ。
しかし、ジェミーに反対をくらったリノンが暴れず騒がず「ふっ」と不敵な笑みをもらし、
意外な反応に彼等は「?」と首をかしげた。

「ふっふっふ、ジェミー!今年は大丈夫よっ!
なんたって強力な助っ人を呼んだからっ!」

「助っ人?」

自信満々に叫ぶリノンにバラッドが尋ねた直後、
「ぴんぽ〜ん♪」とインターホンが鳴って、女性の声がした。

「こんにちわ〜!
リノン、いる〜??」

「げ、この声は・・。」

条件反射か、思わず身構えるビット。
ジェミーとバラッドも誰が来たのか即座に理解した。
リノンが上機嫌で来客を迎えに行く。
程なくして彼等の前に姿をあらわしたのは、ビットのいとこの姉ちゃん、ジュジュであった。

「みなさん、こんにちわ。失礼しま〜す。
ビット、元気にしてる〜?」

バラッド達に挨拶をした後、愛しの弟に声をかけるジュジュ。
姉ちゃんが来るまでは元気だった、とは言えず「あはは・・。」と曖昧に笑うビット。

「助っ人って、姉ちゃんだったのか・・。
確かに料理は上手いけど・・。」

一人暮らしの姉は幼い頃から家事一般をこなす、しっかり者であった。
今も時々手作りのお菓子を持ってきてくれたりして、実に好評の腕前である。

「ジュジュさん、仕事の方は大丈夫なんですか?」

彼女は有名なゾイドバトル雑誌のカメラマンをしていて、
試合がある度にあっちこっちへ移動し取材する多忙な生活を送っている。
バレンタインと世は騒げど、ゾイドバトルがお休みになるわけではない。
だが、晴れやかな笑顔で彼女はジェミーに言った。

「大丈夫大丈夫、今日はお休みをとったの。
それに弟の彼女のたっての頼みだもの、断れないわよ〜。」

「ありがとージュジュ。
あ、じゃあ早速だけど取り掛かっていい?」

「おっけー。
じゃあビット、あんたこれ預かってね。
大事なものがたくさん入ってるんだから、傷つけたらぶちのめすからね!
開けても駄目よ!」

そう言って弟にバッグを渡すと、ジュジュはリノンと一緒に台所に向かっていった。
と思ったら、慌てて引き返してきて、ぼーぜんとしているビット達にこう告げた。

「悪いけど、台所に入ってこないでね、男子禁制だから!
お願いねー!」

「あ!台所は駄目です・・!」

ジェミーがはっと慌てるが、すでに時遅し。
リノンとジュジュという最強の女性2人に立ち向かうなど、できるはずがない。
かくして、トロスファームの台所は女性陣の手に渡った。

「・・・ジェミー、あきらめろ。
お昼は出前でもとれ。」

ポン、とバラッドが彼の肩を叩く。
ビットは姉ちゃんのバックを自分の部屋に置いてくる、といってミーティングルームを出て行った。
途中、台所の入り口に来たビットは、聞こえてきた2人の会話に思わず耳をすました。

「・・えーと、じゃあまずはチョコを溶かすのよ。
やってみて。」

「うん。」

しゅぼっ!・・・・じじじじじ。

コンロに火がかかる音がしてしばらくすると、なにやら焦げた匂いが漂ってきた。
途端にジュジュの声が聞こえる。

「・・リノン、何で直火にかけてるの?
チョコは湯せんで溶かすのよ・・?」

「え?だってなかなか溶けないしさ〜。
あと、こうすると苦味が出るかな〜って。」

ビットは思わず冷や汗が出る。
・・・チョコを直火って聞いたことないぞ・・??
・・・・苦味と焦げを勘違いしてないかリノン・・?

「苦味を出すんだったらビターチョコを使うのよ。
あれも溶けにくいけど、そういう時は包丁で細かく刻むとか削るとかするのよ。」

「あーなるほど!
その手があったのね!」

「・・・でも、ビットは甘いチョコの方が好きだけど?」

「うん。
苦いのは父さんと兄さんと、バラッドにあげるのよ。
義理だけど〜。」

「あ、なるほどね。うんうん。
・・じゃあ、チョコを刻んで溶かしやすくしましょっか。」

「うん。」

・・・姉ちゃん、なんでそんな落ち着いてるんだ・・?
行われている事とは裏腹に展開するなごやかな会話に、かえってビットの不安は大きくなる。

トントントントン・・・ズシャッ!バキッ!ガスッ!

包丁の音が軽快なリズムから突如ものすごい破壊音に変わり、
ビットはびくうっ!ととびのいた。

「な・・なんだなんだあ?!」

そろ〜と台所を覗き込むと、そこには扇形になったまな板を持つジュジュと、
包丁を持つリノンの後姿が見えた。

「あ〜リノン、力入れすぎ〜。
これじゃあまな板の欠片がチョコに入っちゃうわ。」

「だって、手元が緊張してさ〜。」

「刻むチョコの大きさは揃えた方がいいわ。
その方が平等に熱がいくから、早く溶けるのよ。」

「う〜ん、チョコ作りって難しいな〜。」

「料理もゾイドも愛情が大事!
心を伝えるのに手間と愛情を惜しんじゃいけないわ!」

姉ちゃんの場合、少しは惜しんでもいいと思うが・・と心の中で思わず突っ込むビット。
そこへ突如ヒュンッ!と空を切る音がする。
次の瞬間、ドスッ!とビットが覗いていた壁のわずか数ミリ近くにフォークが刺さった!

「うわああ!
な、何だあああ?!」

「こら、ビット!
男子禁制だって言ったでしょっ!
言いつけ守れなかったらお仕置きよっ!」

フォークを投げたのは・・・他ならぬ彼の姉、ジュジュであった。
リノンも彼に気付いて「ビット、のぞいたらぶん殴るわよっ!」と叫ぶ。

「楽しみは当日まで取っておきなさいっ!
気になる気持ちはわかるけどっ!」

「い、いや姉ちゃん気になる事は気になるんだけど、気になり所が・・・。」

「「さっさと行けーーーいっ!!!」」

リノンとジュジュの壮絶な二重唱にたたき出され、ビットは慌てて台所を離れた。
バレンタインの恐ろしさをようやく実感しだす彼であった。
・・せめて姉がきちんと料理を指導してくれることを、祈るばかりである・・。

「はあ〜あ・・。
ライガーと散歩にでも行くかなあ・・。」

 

 ビットが格納庫に向かうと、外に魔装竜、ジェノブレイカーの姿が見えた。
そしてその下でなにやら話している、ジェミーとケインがいた。
ケインがビットに気付き、声をかけた。

「よう、ビット、どうした?」

「ケインの方こそ、何の用事で来たんだ?」

答えたのはジェミーであった。
渡された伝票を睨みつつ、サインしている。

「・・・博士がまた勝手にパーツ購入したんですよ・・・。
全く、赤字が続いてるって言うのに・・。」

ケインの方からすれば、博士のような人物がいた方が儲かるので、何とも言えずに黙っていた。
彼は格納庫の近くにヘルキャットがいるのを見て、「ジュジュが来てるんだな。」と言った。

「今、リノンにチョコ作りの指導してる・・。
男は入るなー!って、追い出された・・。」

ビットの説明で、ケインは大体の想像がつくのかしばし黙った後、こう言った。

「・・・まあ、あいつの腕は確かだし、何とかなるんじゃないか・・?」

「あれ、姉ちゃんの料理、食った事あるのかケイン?」

ビットが思わずそう尋ねると、「短いつきあいじゃないからな。」と彼は答えた。

「去年のバレンタインには、俺達一人一人になべのふた程もある大きいクッキーをくれたぞ。
しかもそれぞれのゾイドの形に作ってあってな・・。
ただ、おやつの時間に食ったんだが、夕飯がかなり遅くなったな・・・。
味は問題ないんだが、いつもでかい・・・。」

「姉ちゃん、大食いの大量生産型だからな〜・・。」

「ビットさんだって大食いじゃないですか。
料理はしないけど。」

ジェミーがぽそっと突っ込む。

「あ、そうだジェミー。
お前、明日ここにいるか?」

ケインの質問に、ジェミーが目をぱちくりしつつ答えた。

「ええ。
たまってる洗濯物とかあるから・・・。」

「そうか。
じゃあ、シエラが明日来るから、受け取ってやってくれ。」

「あ・・!は、はい、喜んでっ!」

顔を赤らめて反応するジェミーを見て、ビットが「いいな〜このこの〜。」と突っついてからかう。

「やめてくださいよ〜ビットさん〜。」

ジェミーが力なく反抗する。
ケインの妹のシエラは、ジェミーの事が好きで熱烈アタック中である。
受け取ってやってくれ、という物は当然・・・彼女の手作りチョコの事である。
シエラは昨日の夜、台所で頑張っていた。
今日は「ラッピングを買い忘れたー!」とレイスに店番を頼み、一目散に出かけていった。
ケインが配達に出る少し前の事である。
おせっかいとは思うが、兄として応援してやりたい。
それを聞いて、ビットは姉ちゃんもそんな感じなんだろうか?と思い、妙に照れくさくなった。
話題をそらそうと思った彼は、ケインにこんな事を言った。

「そういやケインって、店やってんだろ?
町の女の子達にもたくさんチョコもらうんじゃねーか?」

「ああ・・・もらうにはもらうが、リッドやレイスの方が多いぞ。
レイスはあがり症だから、受け取るのに苦労するが。」

ケインとリッドとレイスは町の女の子達にもてるので、こういう時期はチョコが殺到する。
ほんの数年前までは3人ともほぼ同数くらいだったのだが、1年くらい前からケインの分が減ったのである。

「俺、何かしたっけ・・?」

と考えるが思い当たらないケインであったが、シエラにはその理由がわかっていた。
1年前といったら・・・店にジュジュが来るようになった頃である。
ジュジュを店の人と間違えて入ってくる男性客とかがたまにいるし(ケインかリッドが追い払うが)
町のおばさん達の間ではすでに通い妻とか言われている事を、当の本人たちは全く!知らない。
・・・難儀な事である。

「へえ〜。ちょっと意外だな。
ケインってもてないんだなー。」

「そういうお前はどうなんだよ?ビット。」

「俺?俺は旅してたからなー。
そういうのはよくわからなかった。」

「ああ、そういえばお前、一時期チームを抜けてたんだっけ。」

「そーそー。」

ビットとケインがなごやかに会話を繰り広げている。
ただ一人、シエラから兄の話を聞いているジェミーはその中で何ともいえず、黙っていた。

“優秀なゾイド乗りの方って・・・鈍い方が多いんでしょうか?”

などと、心のうちで呟きながら。
すると突如、奥の方からものすごい音と叫び声が聞こえてきた。

ドカバシャメキョ!パリ−ン!グワラグワラ〜ン!ズカド〜ン!!

「「男は入ってくるなあああああっ!!」」

バリバリカコーン!!ドッサン!メキメキ!

「な・・・なんだあああ??」

「・・・かなり、すさまじいみたいだな・・。」

かなり色とりどりの音が聞こえてくる惨状に、ビット達は立ち尽くした。
バラッドか博士が台所に入ってしまったんだろうか?と思ったが、
ジェミーが言うには2人ともいつのまにかどこかに出かけてしまったという。
じゃあ誰が?
すると、よろよろ〜と歩く人影が彼等の目の前に現れ、前のめりに倒れた。

どしゃっ。

「あ!ハリー!
お前、いつの間に来たんだ?!」

ビットがズタボロになったハリーに近づき尋ねるが、返事はなかった。
明日のことが気になってファームに忍び込んだハリーは、台所で奮闘するハニー、リノンを発見した。
漂う香りは甘くも苦い恋の味であるチョコ!
「おお!リノ〜ン俺の為に・・!」と喜び一目散で飛び出したが・・・!

ひゅん!どすっ!

ジュジュの放ったフォークが彼の服の装飾のびらびらを数本、壁に縫いとめた。

「ひえええええっ!」

「男は入ってくるんじゃない・・・・っ!」

鋭い睨みとドスの利いた低い声。
女性陣は燃えていた。
ーそして、先程のような事態となったのである。
服を壁から引き剥がすのに時間を食ったハリーに容赦ない攻撃が展開された。
そして命からがら、格納庫まで逃げた彼はビット達の前で倒れたのである。

「リノ〜ン、俺にもチョコをくれええええ〜・・・。」

がくっ。

最後の一言を言って気を失ったハリーを見て、ケインとジェミーははあ〜あ、とため息をつく。
彼の熱愛ぶりはすさまじいが・・・あきれる。
ケインは「しょうがねーな・・。」とハリーをひきずって荷台の端っこにちょこん、と載せる。

「このままビクトリー研究所まで届ける。
・・どーせ通り道だし。」

リノンだったら「適当な所で捨てちゃって」と生ゴミの様に言うだろうな、とジェミーは思った。
・・・ハリー、哀れ・・。

「まあ、明日は頑張れよ。
Sクラスウォリアー。」

「Sクラスでも、耐えられるかどうかわかんねーなあ。
・・じゃあなー。」

「シエラさんによろしく・・。」

ハリーの研究所へと去っていくジェノブレイカーを見送り、ビットとジェミーは中に戻っていった。
そして・・・昼、夕と出前が続き、日も暮れてきた頃、台所ではようやく終盤に差し掛かっていた。

「よーし、よくやったわ!
リノン、よく頑張ったわねっ!」

「うう!できたわー!
すごいっ!ありがとージュジュっ!」

出来上がりの作品達が並べてあるテーブルを見ながら、手と手を取り合い喜ぶリノンとジュジュ。
傍目から見れば、溶かして、型に流して固めているふつーのチョコなのだが・・。
ここにいたるまでに、実に様々な苦労と時間が要された。
・・調理器具の尊い犠牲も多くあった。
ジェミーがまた後で「赤字ですよー!」と叫びそうだが、この場合の彼女達には、問題ではなかった。

「いえいえ、お礼をいうのはこちらのほうよ、リノン。」

「え?どうして?」

ジュジュに迷惑ばかりかけたのはこちらの方だが、彼女はリノンに礼が言いたいという。

「だって、ビットにおいしいチョコ食べさせたくて、ここまで頑張ったんでしょ?」

リノンが作った中でもひときわ大きなハート型のチョコを眺めながら、ジュジュは言った。
自分を助っ人に呼んだのも、弟の好みを一番把握しているから。

「あ〜・・えへへへ。」

視線を泳がせて頬をぽりぽりかくリノンに微笑んで、姉は感謝の言葉を述べた。

「だから・・ありがとう、リノン。」

「あ・・あははははは。
・・・・こちらこそ・・ありがと。」

“これからもよろしくね”と互いにふふふ、と笑いあった。
そうして2人は後片付けを仲良く始めた。

 

「え?!姉ちゃん帰っちまったのか?」

「ああ、もう暗いからってジェミーが送っていった。」

風呂からあがってきたビットは、いつの間にか帰ってきていたバラッドからその事を聞いて愕然とした。
自分の部屋に、姉のバッグが置きっぱなしなのである。

「大事なものが入ってるっていったのに、忘れるんだからな〜・・。」

そそっかしいな〜と思いつつ、今からでも追いつくだろうか、と格納庫に向かう途中、
バッグがぱかん!と開いて中のものが出てきてしまった。

どさどさっ!

「うわ!しまった!
・・・・て、・・・・これ・・?」

中に入っていたのは、チーム・ブリッツのメンバー一人一人宛てに作られた、チョコであった。
姉の手作りである。
博士とバラッドのは緑色の包装紙がされていて、リノンとジェミーは赤い包装紙であった。
おそらくビターとスイートの違いだろう。

「不出来な弟ですが、よろしくお願いします。」と同じメッセージカードが添えられていた。
リノンのだけ「バカな弟だけど、見捨てないでね〜。」と違っていた。

「・・・・いつまでも子ども扱いなんだからな〜。」

そしてビット用のはふたまわり程大きいスペシャルバージョンとなっていた。
メッセージカードにはこう書かれていた。
「テーマは“歯を大切に”。
虫歯のウォリアーなんてしまらないから、これをよ〜く噛み締めてね!
これからも頑張りなさい!」

「・・・歯を大切に・・?
どーいう意味だ・・?」

姉に礼を述べながらも、チョコのテーマに何かひっかかる、弟であった。
・・・白状しよう。
ジュジュが弟に送ったスペシャルバージョンとは、食べると中からキシリトールガムが出てくるチョコであった。
翌日、これを渡された人物はあと2名いる。
日頃何かとお世話になっている友人のケインと、ヘルの整備でお世話になっているリッドである。
ビター味のそれを食べたあと、ケインはジュジュにこう言ったらしい。

「・・・頼むから、チョコとガムは別々にしてくれ・・・。」

味はそうひどくはないが、触感が・・・・かなり微妙だったらしい。
それでも礼は言う彼であった。
シエラとレイスには普通のスイートチョコが贈られた。
なお、シエラは翌日ジェミーに直接会いに行き、手作りのチョコを渡した。

「ありがとうございます、シエラさん。」

顔で受け取ってくれたジェミーに喜び一直線の彼女は、
お礼はデートがいいな〜と夢見心地で一日を過ごした。
リッドは甘いものが好きなので特に拒みはしないが、問題を言うならば・・・彼は毎年お礼をしないのである。
彼に思いを寄せるセナが会いに来てチョコを渡したが、彼女はお返しをもらえるのか、気になるところである。
レイスは・・・・まあ、色々頑張った、と言っておこう。
この時期の女の子は、道端から突進してきそうな感じである。
気迫が違うので、なかなか大変だったらしい・・。

 

さてさて、バレンタイン当日、他の彼等はどうすごしたのであろうか。

バラッドはナオミとデートに行き、そこでチョコをもらった。
レオンはアスカにトリュフをもらい、礼を言った。
妹から送られてきたチョコを見て、去年の惨事を思い出したが、
食べてみたら普通においしかったので、成長ぶりを喜んだらしい。
博士は妻との思い出が蘇って、ちょっと涙ぐんでしまった。
そして、リノンはラオン博士にもチョコレートを贈っていた。
博士もまた、初恋の彼女を思い出し滝のごとく涙を流したのは言うまでもない。
ハリーには・・・麦チョコが一粒贈られた。
だが、彼はそれに感激の涙を流し、喜びの余り手で握りつぶして絶叫したらしい・・。
そしてビットはというとー・・。

「はい!ビット食べて食べてー!」

姉に負けずとも劣らぬ大きさのチョコを満面の笑みで手渡すリノン。
ビットは一口食して、普通のチョコの味がするのに思いのほか感動してしまった。
普通だ・・・普通の味だ・・・普通がこんなにうまいと感じるなんて・・・。

「サンキュー、リノン。
すっげーうまいぜ。」

「やったー!これでもう、チョコ作りは免許皆伝ね私!」

「普通に溶かして型に入れるだけじゃないですか・・・どこがめ・・。」

げしっ!

ジェミーの左頬にストレートなパンチを食らわせつつ、勝利の高笑いをするリノンであった。

「今年は私の勝ちよねー!
アーッハハハハハ!!」

・・一体誰と勝負をしてたんだ、と言うと、彼女いわく“台所”だそうである。
自分が料理を出来ないのは、台所が悪いからだと言っている。
・・・もはや何も言うまい。
とにかく、今年のバレンタインは、こうして過ぎていった。
ウォリアー達と恋する乙女たちに、幸あれv

 

END

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あとがき

こんにちわHAZUKI様!バレンタインデー話贈ります!
リノンの料理の腕前って・・・(汗)ジュジュもどうしてあんなに冷静なのかと言うと
彼女いわく「私も昔、色々苦労したからねーあれくらい序の口。」だそうです。
・・つまり小さい頃、ビットはまな板の欠片入りの料理とか食ってるわけだね(汗)
姉が姉なら、弟も弟ってか。
しかし今は見事なもんだねー。
飴細工でデスザウラー作れるらしいじゃん。
「努力と気力と根性があれば、大抵の事は叶うわー!アーッハハハ!!」(快晴の笑み)
・・・尊敬するよ(汗)あとは量を調節してね(ぽそ)
久々にケイン達を書きましたが、
やっぱお兄ちゃんとお姉ちゃんになってしまいますねーなんでだろ?(わっはっは)
ジュジュは甘いもの・・特にチョコが好きなので、食べきれなかったらあげて下さい、尻尾振って喜びます(おい)
お礼はゾイドにでも乗せてやれば目をキラキラ輝かせて懐きます(おいおい)
むしろそれが目当てでチョコを送ってるんじゃないか?(取材とかのお礼もあるだろうが・・)
ケインとビットは間違いなく「ゾイドにのーせーてー!!」と言いますね。
リッドは・・・「ヘルの整備代、まけて♪(えへ)」と言いそうです(汗)
何はともあれバレンタイン!
皆様に幸アレー!(>▽<)/
HAZUKI様、ケイン達の貸し出しありがとうございますー!
Yuki様、さくら様、キャラ借りてしまいましたー!すみませんー!
ではもらって下さい、失礼しますー!


初心者さんから頂きました。
もう、心がお腹いっぱいです。
リノンの料理奮闘記、ビットのためにとは健気ですね・・・。
ハリーの特別出演には笑いました。
チョコをちょこっと貰った彼でした。(荷電粒子砲)
ケイン達も登場で、面白かったです。
男性陣でジュジュに敵うのって彼とリッドだけなのでは?
そう言えば、リッドはセナにお返しするのかな?
レイスはレイスで一番災難な日・・・。
シエラはジェミーのために一生懸命。
やっぱりいろいろとありますね。
そう言えば、カイルとアリスはどうしたんでしょう?
ちょっと気になりました。
初心者さん、ありがとうございました。

 

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