「恋する姉妹のお茶会」
「最近、可愛くなりましたね」
「は?」
セリエルはレミエルのいきなりの言葉に言葉をなくした。
今日は暇だったので、レミエルのところへ遊びに来ていたセルだったが、しかし・・・・。
「かわいい?」
「はいvやっぱり恋をしてるからでしょうかね。
『恋は女を綺麗にする』って言いますし」
いつもの笑顔でこう言うことをサラッと言えるあたり、レミエルはすごいと思われる。
「じゃあ、レミが最近綺麗になったのも、私の勘違いじゃないんだな」
「はい?」
今度はレミエルが言葉を失った。
「だって、前は『可愛い』感じだったけど、
最近は、なんつうの?『大人っぽくなった』かなぁ?
そんな感じ」
「ありがとうございます」
さっきはいきなりのことで驚いたが、すぐにいつもの笑顔で答えた。
「やっぱり好きなんだな、ハリーのこと。
最初は親が決めた婚約だとか、財閥のためだから仕方ないと言ってたくせに。」
レミエルはセリエルの言葉に少し顔を赤くして笑って言った。
「そう、ですね。
最初は本当に財閥の為っていうのが本当でしたけど、
今は、好きなんだって思えるんですよ。
それにハリーさんが笑うと、お日様みたいで大好きです。」
「お日様?」
「はい、お日様です。
お日様みたいに暖かくて、真っ直ぐですから」
いつもは見せないような照れた笑顔は、いつもの笑顔より綺麗に見える。
「でも、ハリーさんは私のこと、ただの婚約者としか見てないでしょうね。
やさしくしては下さいますし、嫌いではないと思うんですけど・・・・」
滅多に陰ることのないレミエルの笑顔に影が差した。
「『愛してはくれない』?」
「はい。
ハリーさんはリノンさんが好きですから。
わたしもリノンさんのようにした方がいいのでしょうか」
『そんなことしない方がいい』と言いたかったが、セリエルは少し戸惑った。
リノンとレミエルではタイプが違いすぎるからだ。
リノンはバトルを何回か見たくらいだが、
よく言えばおおらかで明るくパワフル、悪く言えばガサツで自己中で乱暴。
レミエルはよく言えば強気だが大人しく献身的、悪く言えば、相手に一線引いていて自己犠牲が強い。
はっきり言って違いすぎる。
下手なことを言えばレミエルを傷つけかねない、セリエルにとってそれだけは絶対に嫌だった。
「じゃあ、笑えるようになればいいじゃん」
少しの沈黙の後、セリエルはよくわからない言葉を言った。
「無理してリノンとか言うヤツのマネしないで、レミらしくしてた方がずっといいって」
レミエルはじっとセリエルを見つめている。
どこか困ったような感じがするが、セリエルは続けた。
「でも、せめて声を上げて笑えるようになった方がいいって。
レミの笑顔って、どこか一線引いてる感じがするから、
声を上げて笑った方がハリーの好みなんじゃないの?」
少し混乱している頭で、必死に言葉を探す。
「無理して声を上げなくてもいいけどさ、『元気な笑顔』もたまにはいいんじゃん?」
セリエルに出来る精一杯のフォローだった。
リノンのマネして、自分らしくないレミエルを見るのが嫌なのだろう。
「声出して笑った方が楽しいって事、私も最近思い出したし」
そこまで言うと、レミエルはいつもの笑顔に戻っていた。
「そうですね。
誰かのマネをしている自分らしくない自分を愛されるのは、嫌ですよね」
セリエルはほっと息をついた。
レミエルも自分の相談に乗っているとき、こんな気分だったのだろうか?
「ところで、髪が伸びたみたいですけど、切らないんですか?」
肩についているセリエルのショートカットを見て言う。
「あ、うん。
ちょっと伸ばしてみようかなぁって。
でも、この長さだと少し邪魔だから、バトルの時には黒いバンダナしてる」
そう少し他愛のない話をしていると、レミエルはふと気付いたように聞いてきた。
「そう言えば、気になっていたんですけど、
セルちゃんの思い人には会えました?」
う゛っとセリエルは声を詰まらせた。
「・・・・会えてないんですね?」
『まずかったでしょうか』とレミエルは思ったが、とりあえず聞いてみる。
「・・・・・・・」
セリエルは無言で頷いた。
「そりゃ、バトルジャックなんてそうそうあるもんじゃないし、
あったらあったで一度に2,3バトルって事が多いから何処に回されるかわからないし、
向こうが出てないことだってあるし、私に出動命令来ないことだってもちろんあるし・・・・・」
セリエルは小声で愚痴っていた。
セリエルの思い人(シュダ)は、
セリエルの所属するダークバスターとは敵対しているDS団のメンバーのため、
会える可能性があるのはバトルジャックがあったときぐらいである。
それに、上でセリエルが言っている通り、
何処のバトルジャックにまわされるか判らない&向こうが出てないこともあるので、
会える可能性はものすごく低い。
「あ、でも、会えないと決まったわけではないですし。
ね?元気を出して下さい」
必死でセリエルを慰めていると、もう一つ疑問が浮かんだ。
「でも、会えたらどうするんですか?」
セリエルは『なにが?』と言いたそうにレミエルを見る。
「セルちゃんはシュダという方に会えたらどうするんですか?
会ってすぐ告白するわけにもいかないでしょうし、相手もすごく困ると思いますよ?」
確かに、レミエルの言っていることは正しい。
初対面で、しかも敵対している組織の人間から『好きだ』と言われても困るだけである。
「・・・・・・・・一言だけ、言っておく」
「なにをですか?」
言いたくなさそうなセリエルは気にせずに問いかける。
少しして、セリエルは観念したように口を開いた。
「まず『やっと会えた』って言って、
『初めまして、シュダ・ウィンディッツ。私はセリエル・クワイエット』って自己紹介して、
どっちかの去り際に『あんたは私が捕まえるから、他のヤツに捕まんなよ』って」
淡々と細部まで説明したセリエルに、レミエルは少し冷や汗のようなものを感じつつて言った。
「それってどう考えても、『宣戦布告』じゃないですか・・・・」
「うん」
判っていてそう言っていることに、レミエルは少し呆れた。
「だって、それなら私のこと見てくれるじゃん。
少なくとも気にしてはくれるだろうし」
まあ、敵対する間柄で相手も気を引くには同等の力を持っているか、
宣戦布告するかくらいな事には違いない。
だからといって・・・・。
「まあ、セルちゃんらしくて良いとは思いますけどね・・・・」
レミは小声で呟いた。
こうして、久しぶりの姉妹のお茶会は終了した。
END
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アトガキ
久しぶりにのほほんとしたの書いてみました。
のほほんとしているかは謎ですが、とりあえず普通(?)の『女の子の恋話』はやってみたかったので。
難しかったです。
俺は恋って程のものをしてないから。
むしろ、友達が彼氏とキスしたことで浮かれてバシバシ叩かれたので、
『キスくらいで騒ぐなよ』とか言っちゃうタイプです。
しかし、この姉妹の恋愛事情は大変すぎです。
セルは告白じゃなくて宣戦布告する気だし。
レミは、頼むからリノンのマネはするな・・・・。
ここまで読んで下さってありがとうございました。
千夏さんから頂きました。
なんか、とんでもないことになってます・・・。
まぁ、その前に浮かぶのが、シュダに勝てるかと言うことですね。
彼は一度勝った相手は気にも留めませんから。
まぁ、セリエル、ファイトと言うことで・・・。
あとは・・・、レミエルのリノン化・・・、想像したくないですね・・・。
本当、どうしたらあんながさつな女に惚れるんだか・・・。
まぁ、どちらともファイトと言うことで。
千夏さん、どうもありがとうございました。