「この想いに気付くまで」
初めて会ったときの第１印象は『こいつ、ホントに軍人か？』だった。
帝国の人間だとは思ったが、軍人にはとても見えなかったからだ。
だって、背は高いけど、肌白ぇし身体細ぇし。
まあ、その時は外見で判断しない方がいいと思ったが、中身もあまり（つか全然）軍人らしくなかった。
頭はいいがアドリブは利かないし、ビークに頼りすぎだし、
やたらメガロマックス撃つし、ブラコンだし、女相手にデレデレしすぎだし、
性格ガキで裏表激しいし、さり気に彼女持ちだし・・・。
言ったらきりがない。
しかも、あの『カール・リヒテン・シュバルツ』の弟だし。
あの悪魔級通り越して魔王級の強さを誇るヤツの弟？
神は二物を与えぬってヤツだと思った。
・・・・アイツがシュバルツという名に押し潰されそうになったことがあるなんて知らなかったけど。
あいつ等と一緒にいるようになってから思ったが、やっぱ頭良いと再確認した。
ビークはアイツが作った人工知能。
データ処理から照準設定まで色々こなせるうえ、『感情』も持っているという。
これにはホントに驚いた。
マジ驚いた。
だって、『機械』に『感情』を与えることは、はっきり言ってものすっっっっっごくむずかしい。
精密な自己学習プログラムが必要だし、感情パターンをかなりの数を入力しなければならない。
メモリーだってかなりの量を保存・処理できなければならない。
別のメモリーを使っているにしても、タダでさえ感情プログラムでメモリーを食う。
メンテだって他人任せにはできないだろう。
並の整備士では、壊しかねないから。
でも、ビークのこと話してるときのトーマは、そんな苦労は感じさせず、親友のとこを話してるくらい自然で。
ビークは口は悪いし、自分勝手だし、そのくせ案外冷静で知恵が回るから質が悪いそうだ。
ケンカもするらしい。
実際ビークと話したとき、口は悪くアイツより一枚上手だが、すごく大事にしてるようだった。
俺にもそう言う存在がいるから、こいつ等の気持ちが案外分かる。
これは持論だけど、機械を機械としか見れないヤツが機械に感情を与える資格なんか無いと思っているから。
感情を持ったら、機械だって傷つくから。
ゾイドだって痛いのヤダし、傷つくってデスが言ってたし。
だから、機械（ビーク）に感情を与えることができて、
ケンカだってできるアイツは実はスゴイいいヤツ？とか思ってた。
前言撤回、アイツは単純だから、ガキっぽく見えるだけ。
ガキじゃなくて純粋すぎるだけだ。
機会を対等な瞳で見ることができる、優しいヤツ。
だから気付いた。
できれば気付きたくなかったけど。
『こんな優しいヤツがなんで戦場で生き残れるんだ？』
気付きたく・・・・なかった。
戦場は、命を奪うためだけにある、死神と天使の踊り場だということに。
そこに立つ以上、人の命を奪わなければ、生きてはいけないだということに。
屍の上に立つ、自分の命。
人の命だけでなく、ゾイドの命だって、アイツには重いはずなのに・・・。
なんで軍人なんだ。
技術者だって良いじゃないか。
初めてに屍の上を立ったときのアイツを考えると、痛かった、ものすごく。
他人のことなのに、自分の事みたいに、血を吐くみたいに痛かった。
その時はまだ、自分のこの痛みの意味なんて知るはずもなかった。
この想いに気付いたのは、多分あのときだと思う。
荒野を走っていたとき、アイツのディバイソンを見つけた。
アイツもこっちに気付いたみたいで、ちょっと何気なく話していた。（からかってたとも言うが）
どうやら特訓していたらしい。
もっと強くなって、兄に認められるような軍人になるんだって。
守りたい者を守れるようになるんだって。
そう簡単に誘導尋問されてしまって、照れて視線を逸らした。
『可愛いヤツ。
照れてやんの』
そう言ってやったら耳まで真っ赤になって、すっごい面白かった。
そんな感じでしばらくからかって、落ち着いたときに見てしまった。
荒野を見つめるアイツの瞳に映ったのは、荒野じゃなくて、緑息吹く草原。
その時は脳味噌腐ったかと思った。
一瞬でも、『格好いい』なんて思ってしまったから。
そして、気付いた。
俺・・・・、トーマが好きだわ。
ＥＮＤ
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アトガキ
アレスがトーマが好きって気持ちに気付くまで。
ぶっちゃけた話、俺のトーマに対するイメージ１００％です。
俺はトーマにこういうイメージ持ってます。
ついでに、トーマにはアレスを女扱いして欲しくないです。
同い年の人間な扱いが良いです。
あと、最後のトーマの瞳に映ったのが荒野じゃなくて草原だったって言うのは、
トーマの瞳の色がペリドットグリーンだったからです。
あと、すいません。
中間暗くなっちゃいました。
ビークのキャラ勝手に作ったこともすいませんでした。
あ、ちなみにビークの１人称は『ビーク』希望です。
ここまで呼んで下さってありがとうございました。
千夏さんから頂きました。
アレス、トーマのこんな所に惚れてるんですね・・・。
まぁ、純朴なところもありますし。（ガキっぽいとも言う・・・。）
ビークとトーマの仲はいろいろと考えられますよね。
主従関係もあれば、ケンカ友達とか、いろいろと話せる親友とか・・・。
それ自体はオーガノイドやゾイドとの関係と同じなのかも知れません。
千夏さん、どうもありがとうございました。