「受難〜Child Panic〜

 

 山小屋で野宿することとなった、
玄奘三蔵、孫悟空、沙悟浄、猪八戒の四人。
街まではかなり距離があり、しかも日が暮れてきたというのがその理由だ。

「あ〜、腹減った〜。」

こんな科白を言うのはこの中で1人しかいない。
そう、悟空である。

「お前はそれしかセリフが無ぇのか?このバカ猿!」

その科白にいつも通りツッコミを入れるのが悟浄。

「なんだと!バカって言うな、このエロ河童!」

「何だと!やるか、この野郎!」

「望むところだ!」

いつも通りケンカを始めようとしてしまうこの2人。
そして、このケンカを止めるのもやっぱり、

「うるせー!そんなに死にてぇか、てめぇら!!」

ガキューン、ガキューン、ガキューン、ガキューン

そう、超鬼畜系生臭坊・・・(カチリ)、
もとい、我らが師匠、三蔵である。
昇霊銃を乱射してケンカを止めさせる。

「だって悟浄が・・・。」

「うるせぇ、とっとと寝ろ。
さもねぇと、永遠に起きねぇようにするからな。」

銃を向けて、しっかり睨みを利かせながら、
物騒極まりない科白で悟空に追い打ちをかける。
流石に彼もそれには逆らえず、とっとと寝床に向かった。

「まったく、ワンパターンな奴らだ。」

「はははは、にぎやかでいいじゃないですか。」

そういってお茶をすすっている八戒。
その膝の上では白竜が丸くなって寝ている。

「ところで、最近刺客がめっきり減ったみたいですけど・・・。」

「そういえば三蔵様の可愛いお友達も・・・。」

悟浄がその言葉の先を言うことはなかった。

カチリ

「そういえば・・・あんだって?」

「いえ、別に・・・何も・・・。」

銃をこめかみに当てられて、声を上擦らせながら答える。
皆さんはお分かりだと思いますが、悟浄の言う『お友達』とは、
牛魔王の娘、李厘の事である。
とりあえず話を元に戻す。

「僕たちが天竺に近付けば近付くほど、敵もそれだけ必死になるはずですが。」

「何か作戦でも考えてるのかもな。」

そう言って、煙草に火を付ける悟浄。

「いずれにせよ、そのうち嫌って程湧いてくるさ。」

三蔵の言葉に八戒はにっこり笑いながら、

「そうですね。それじゃあ、僕たちも休むとしますか。」

彼の一言で全員寝床に向かった。

 

 翌日、

「うわぁぁぁぁぁぁーーー!!!」

突如、山小屋に悟浄の絶叫が響きわたった。

「どうしたんだ?一体・・・。」

「一体、何の騒ぎだ?
下らないことだったら、殺すぞ。」

悟空と三蔵が眠い目を擦りながら、悟浄と八戒の寝ている部屋に入る。
三蔵は目を覚ますために一服している。
すると、そこには何かを指さしながら腰を抜かしている悟浄の姿が。

「どうしたんだ?」

「あ・・・あ、あ、あれ・・・。」

悟浄が完全にパニクっているので、
2人が仕方無しに彼の指さす方向を見る。
その瞬間、三蔵はくわえていた煙草を床に落とした。
悟空に至っては完全に石化した。

「あれ・・・、八戒だよな・・・。」

「一体どういうことだ?」

「そんな事、俺が聞きてぇよ。
目が覚めたら、こんなになってたんだからよ。」

彼らの視線の先には、何と八戒が子供の姿になっているではないか。
服はダボダボだし、カフスもサイズがあっていない。
辛うじて残っているのは耳に付けている妖力制御装置だけ。

「はははは・・・、みなさん、おはようございます。
なんか、こんなことになっちゃって・・・。」

『ああ、・・・おはよう・・・。』

渇いた笑いを浮かべながら、笑顔で挨拶する八戒に、
呆れながら挨拶をを返す悟空と悟浄。
声も完全に子供になっている。
ただ、性格は変わっていないようだが。

「やれやれ、俺はまだ夢を見ているようだな。」

そういって三蔵は部屋を出ていこうとするが、
そうは問屋がおろさず、

「現実逃避するなーーー!!」

と、悟浄に肩を掴まれて引き戻されてしまった。

 

「で、これからどうするんだ?」

悟浄が頬杖をつきながら皆にそう尋ねる。
全員がテーブルを囲んで、話し合いの最中。

「八戒がこんなんじゃここを動けないな。」

「え〜、それじゃあ、飯は?」

スパーン

「お前はそれしか考えることはないのか、このバカ猿!」

三蔵のハリセンが悟空の頭に炸裂。
彼自身、かなり苛ついているので、些細なことでもこんなになってしまう。

「だって〜。」

「だってもヘチマもねぇ!」

「まぁまぁ、とりあえず買い出しには行かないと・・・、
このままじゃ全員が餓死しますよ。」

悟空に怒鳴り声を上げる三蔵をなだめる八戒。
けど、なんだか頼りない感じが漂っている。

「まぁ、ここを動けないってのは確かだしなぁ。
悟空、買い出しに行くぞ。」

悟浄がやれやれといった具合に席を立つ。
誘われた悟空は嬉しそうである。

「やったぁ、飯、飯〜!」

「言っておくが、いくら三仏神の金だからって、
悟空に無駄な物を買い与えるなよ。」

そう言って三蔵がキャッシュカードを差し出す。
悟浄はそれを受け取ると、悟空と共に白竜で街へと出かけていった。

 

 やがて、昼すぎになり・・・、
悟空は昼飯を食べて満腹になったのでお昼寝中。
八戒も子供の体になってからすっかり体力が無くなったらしく、
悟空の隣で寝ていた。
三蔵は眼鏡を掛けて新聞を読んでいる。
そして、悟浄は・・・、

「なんか面白いことねぇかな〜。」

と、タバコを吸いながら森を散歩していた。
すると、

「ん、何だありゃ?」

何かを見つけたようだ。
興味が湧いたみたいで、それに向かって一直線。

「これは・・・、もしかして龍か?
白いし・・・白竜の親戚か何かか?」

彼の言うとおり、そこには白竜をでかくしたような白い龍がのんびりと眠っている。
彼があれこれ考えていると、

「・・・ちゃん、こっち、こっち!」

「・・・様、待ってください。」

森の奥から声が聞こえてきた。

(あれっ、この声はどこかで・・・。)

悟浄が森の声について記憶の糸をたどっていると、
突然、森の奥から何かが飛び出してきた。
それだけならまだ良かったのだが・・・、

「あー!赤ゴキブリ河童!!」

「誰が赤ゴキブリ河童だ、誰が!
まったく、どいつもこいつも同じこと言いやがって。
・・・って、李厘、お前こんなところで何やってるんだよ。」

そう、飛び出してきたのはさっき話題に出ていた李厘。
そして、

「李厘様、待ってください。
・・・あら、悟浄さん。」

李厘の後を追いかけて紅孩児お付きの薬剤師、八百鼡までもが姿を現した。
この展開に流石の悟浄もただ呆れるばかりであった。

 

「で、何でこいつらをここに連れてきた?」

小屋に戻ると早速三蔵の文句。

「八百鼡だったら八戒がああなった理由、
もしくは元に戻す方法を知ってるかもしれないからな。」

とりあえず理由を話すが、三蔵のイライラは収まりそうにもない。
なぜなら、李厘が彼の肩に乗っているのだから。

「あれあれ、三蔵様〜。もしかして怒ってるの?
せっかく彼女が遊びに・・・。」

ガキューン、ガキューン、ガキューン

悟浄が皆まで言う前に、昇霊銃を悟浄に向けて数発発射。
それには悟浄も黙り込んだ。
そして、三蔵は肩を震わせながらこう続けた。

「ああ、八百鼡がいれば八戒を何とかしてくれるだろう。
このガキも八百鼡に着いてきたって事ぐらいは分かる。
だがなぁ・・・。」

ビシッとある方向に向けて指を指した。

「なんで紅孩児や独角児までいやがる。
いいから説明しろ!」

なんと彼の指さす方向には宿敵、紅孩児とその腹心、独角児がいた。
(すみません、字が出ないのでこれで勘弁してください・・・)↑
ちゃっかりお茶まで飲んでいるのだから不思議である。

「八百鼡から面白いことがあるときいてな。」

「興味本位で見に来たんだ。
そしたら、あんな事になってたからな。」

三蔵のイライラレベル、さらにup。
そりゃ彼らにとっては他人事だが、三蔵達にとってはかなり迷惑な話である。
もう、いつ紅孩児達に銃をぶっ放してもおかしくない雰囲気になっている。
すると、八百鼡が部屋から出てきた。

「八戒さんの状態ですが、あんな症状は初めてです。
おそらく薬物系統ではないと思いますよ。」

「薬物ではない・・・か。と、なると残る可能性は一つだな。」

彼女の言葉を聞いて三蔵はある考えに行き着いた。

「『呪い』・・・か。」

悟浄がポツリと言う。

「ああ、それしか考えられない。
おそらく誰かが遊び半分で、もしくは俺達を狙って呪いをかけたんだ。」

三蔵が自分の推測を話した。
すると、独角児が、

「おそらく前者の方だろうな。
俺達はそんな命令を出してない。」

「そうだろうな。
じゃなきゃ、お前達がここに来る理由がない。」

「いったい何処のどいつだ、こんな真似しやがったのは?
見つけたらただじゃおかねぇ。」

悟浄がパンと手のひらと拳を合わせる。
彼も明らかに苛立っていた。
すると、三蔵が手のひらを振って見せた。

「無駄だな。そいつはもう死んでいる。」

「えっ?」

「どういうことだ?」

思わず紅孩児が聞き返すと、一冊の本を出した。
相当痛んでいる様子である。

「小屋の地下倉庫にあった呪いに関する本だ。
ここの主と思われる者の死体と一緒に見つけた。
時々いるんだよ、呪いマニアっていって、そこら中の物や人に呪いをかけて喜ぶ奴がな。
そいつは呪いをかけた後、餓死かなんかで死んだみたいだ。
相当年月が経っているらしく、白骨化してた。」

「うわ〜、グロ〜い。
李倫ちゃん、見たくな〜い。」

李厘の言葉を無視して三蔵達は話を続ける。

「て、いうことはこれを読めば解く方法が・・・。」

「いや、痛みが激しくてな。
とてもじゃないが、読める代物ではない。
あきらめろ。」

悟浄にそう言うと、三蔵はタバコを取り出し一服。
李厘はいい加減降ろされた。
というより落っことされた。

 

 やがて夕方になり、

「みなさ〜ん、ご飯が出来ましたよ〜。」

『わ〜い、飯、飯〜!』

八百鼡の呼びかけにはしゃぎまくる悟空と李厘。
誰だろうか、この2人を本当の兄弟みたいと言ったのは・・・。

「・・・って、ちょっと待て。
お前ら、まだいるつもりか?」

すでに食卓に座っている紅孩児達に、当然ともいえる疑問を投げかける三蔵。

「八百鼡がどうしても、と言い出したからな。」

「ごめんなさい、どうしても八戒さんが気になった物ですから・・・。」

「全く、紅の過保護には困ったもんだぜ。」

「相変わらずだね、お兄ちゃん。」

のほほんと言う雰囲気で談話している紅孩児メンバー。
すると、

「冗談じゃない、お前らなんぞと飯を食う筋合いはない。」

といって、彼は席を立ち、部屋へと戻ろうとするが、

「じゃあ、三蔵の分は俺が食う!」

「ずるいぞ、おいらにも半分よこせ!」

お猿さん2人組が勝手に三蔵の分のサラダを取り合っていた。
流石に取られてはたまらないと振り返り、
ハリセンで悟空達の頭をたたこうとした瞬間、悲劇は起きた。

スコーン

なんと、悟空と李厘が手を滑らせ、サラダが三蔵の顔にヒット。
彼の顔は野菜とドレッシングまみれになった。
そしてその瞬間、彼の頭の中の何かが吹っ切れた。

「いや・・・、あの・・・、三蔵・・・。」

必死で弁明を試みる悟空だが言葉が出てこない。
李厘に至っては完全に石化していた。
すると、三蔵は俯いたままクスクスと笑いだした。

「さ、三蔵?」

「打ち所が悪かったんですかね?」

「さあな。おい、三蔵、大丈夫か?」

悟空、八戒、悟浄がそんな事を言っていた。
おのれら、付き合い長いんだから気付け!
そして、

「お前ら、いい度胸だな。
この俺をサラダまみれにするとは・・・。」

かなり押し殺した声でしゃべり出した。
その声はさっきに満ちあふれいる。
すると次の瞬間、

「魔戒天・・・!」

「ちょっと待てーーー!落ち着け、三蔵!」

なんと三蔵が必殺技、魔戒天上を使おうとしてきたではないか。
慌てて止めに入る悟浄、紅孩児、独角児。

「放せ、愚民共!あいつらだけは絶対殺す!!」

三蔵様、ついに壊れる。
今日はずっとイライラしっぱなしだったので、
仕方ないと言えば仕方ないが。
そこには昇霊銃をぶっ放し暴れる三蔵と、
それを必死に止めている悟空、八戒を覗く男性メンバー、
散らかった食事を片付けている八百鼡と八戒、
そして、申し訳なさそうにそれらを見ている悟空と李厘という、
普段では絶対に見られない光景が広がっていた。

 

 そして翌朝、八百鼡が朝食の準備をしている。
悟浄、紅孩児、独角児はテーブルでコーヒーをすすっている。
悟空と李厘、八戒に三蔵はまだ寝ていた。
結局、あの後たっぷり3時間は暴れ続けた三蔵は、
八百鼡お手製の眠り薬で大人しくさせた。
居間のあちこちには昇霊銃の弾痕がそこら中に残っている。
それをまじまじ見ながら悟浄がポツリと呟いた。

「昨日は大変だったなぁ。」

「ああ。」

返事をしたのは独角児。
ただ、相当脱力している。
すると、

「皆さん、おはようございます。」

声をかけてきた人物にみんなビックリ。

「八戒、元に戻ったのか?」

八戒が大人の姿に戻ったのだ。

「ええ、すっかり。
皆さん、ご迷惑をかけてしまって済みません。」

八戒が頭を掻きながらみんなにペコペコ謝る。
別に彼は何も悪くはないのだが。
だが、それも束の間、今後もっと大変な事態が起ころうとは誰が想像しただろう。

 

「うわぁぁぁぁぁぁーーー!!!」

突然、悟空の絶叫が家に響き渡った。

「なあ、俺、凄く嫌〜な予感がするんだけど・・・。」

「とりあえず・・・、行ってみます?」

「そうだな・・・、とりあえず・・・な。」

悟浄と八戒を先頭に全員が彼らの寝ている部屋に行ってみることに。
ちなみに昨日は悟空と李厘、三蔵が一緒に寝ていた。
彼らが部屋に着くと、その部屋に広がっている光景に一同絶句。

「三蔵・・・、お前・・・。」

そこには腰を抜かしている悟空と、大笑いしている李厘、
そして、目つきの悪い金髪の子供がいた。
ご想像の通り、三蔵である。

「わーい、わーい、ハゲ三蔵が子供になった〜。」

「李厘様、そんなに笑っては失礼ですよ。」

そう言う八百鼡も笑いを堪えきれないでいた。

「お前、昨日の罰が当たったんじゃねえのか。」

「それは言えてますね。」

悟浄、八戒も大笑い。
紅孩児と独角児は嫌な予感がしたのか、逃げる準備。

「お前らなぁ、いい加減にしろーーー!!!」

子供の声で絶叫する三蔵。
その数秒後、経文が家の中を暴れ回ったという。


あ〜あ、三蔵様も子供になっちゃった。(笑)
文月さん、キリ番ゲットおめでとうございます。
どうもすみませんね、だいぶ遅れてしまって。
しかも長くなってしまって。
こんなのでよろしいでしょうか?
初めて書いたのでコツを掴めず、四苦八苦してしまいました。
では、感想、待ってます。

 

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