「ビット帰還」
〜ライガー伝説再び〜

 

 ロイヤルカップでビット・クラウドが所属するチーム・ブリッツが優勝してから2ヶ月が経ち、
バックドラフト団は壊滅し、団員も殆どが逮捕された。
しかし、一足速くメンバーから外れていたストラ、サンダース、ピアス、
まだ子供という理由とビットの強い要望により、ゾイドバトルの部隊に返り咲いたベガ、
入院をしていて、捜査線上から外れていたラオン博士にも操作の手は伸びなかった。
そして、

『博士、みんな。
俺、冒険に出ることにした。
なに、しばらくしたらちゃんと戻ってきてやるからよ。
それまで、ちゃんとSクラスにいてくれよな。
じゃあ、またな。』

そんな置き手紙を残して、ビットは愛機・ライガーゼロと共に旅立っていた。
当初は困惑したチーム・ブリッツのメンバーだったが、
ビットらしいと言う理由で快く見送った。
その後、バラッド、リノン、ジェミーの三人でバトルを次々こなし、
トロスファームの借金がなくなるのも時間の問題となった。
そして、

「チーム・ブリッツ、連勝記録更新を祝って・・・。」

『乾杯!!』

それから10ヶ月、つまりロイヤルカップから1年が経ち、
ブリッツはゾイドバトルの連勝記録を見事更新。
本日はトロスファームで朝からパーティーが行われていた。
参加しているのは現メンバーの4人と、チーム・フリューゲルのナオミとレオン、
チーム・チャンプのハリー、セバスチャン、ベンジャミンといったいつものメンバー。
それぞれがジュースを片手に記録を祝っている。
ちなみにチーム・チャンプは誰も呼んでない・・・。

「しかし、あの二流チームがよくここまできたもんだな。」

「ほんと、負け続きだっもんね。あの頃は・・・。」

バラッドとリノンが昔を思い出しながらそう言った。
ビットが入る前のブリッツは負けが続いていて、
二流チームとも三流チームとも言われていた。

「そうだな・・・。
ビットが入ってから、そんな事はなくなったな。」

「最初は誰かさんが疫病神呼ばわりして、
さんざん嫌がってたがな。」

レオンとバラッドの目線の先にはリノンの姿が。
すると、

「ビット、今頃どうしてるかな・・・。」

ふと、リノンがグラスの中のジュースをのぞき込んで、そんな事を言う。
すると、

「リノン、あなた、ビットのこと、好きなの?」

ナオミがそんな事を言うものだから、リノンはジュースを吹きそうになる。
ハリーもジュースで噎せていた。

「ゲホッ、ゴホッ、ガハッ、ゴホッ・・・!」

「うわっ、こっに向かって咳をするな!」

ハリーがバラッドに向かって咳を発射。
これほど嫌なものはない。
その横では・・・、

「い、いきなり何言い出すのよ、ナオミ!
だ、誰があんな覗き魔で疫病神な奴が好きですって!」

「あら、あなたを見てそんな風に思ったから尋ねてみただけだけど。」

と、リノンとナオミがそんなことを話していた。
リノンの方は顔を真っ赤にして怒っている。

「ロイヤルカップの優勝者を・・・、」

「そこまで言う人も凄いですよね・・・。」

トロスとジェミーが一言。
そして、女性2人のケンカはヒートアップ・・・、
とは行かなかった。

「リノン、落ち付けって。」

「ナオミもだ。」

レオンがリノンを、バラッドがナオミを押さえつけたのだから。
それぞれがしっかり体を押さえつけ、口も塞いでいる。

「まあまあ、2人共。
折角のパーティーなんだから、ケンカは止め止め。」

トロスの言葉で何とかケンカは収まった。

 

 やがて、昼過ぎとなり、パーティーも終盤に差し掛かる。
テーブルの上の料理も殆ど無くなり、招待客が帰ろうとしていた。

「さて、俺達は明日もバトルだ。
そろそろ引き上げないとな。」

「そうね。」

レオンがそう言うと、ナオミはちょっと寂しそうにバラッドを見る。
彼も名残惜しそう。
すると、

「博士、レオンさんを送るついでに買い物に行きませんか?
そろそろ、弾薬やら食材やら、いろいろ補給しないと・・・。」

ジェミーがそんな事を言いだした。
表向きはパーティで食材を使い切ったと言ってはいるが、
本当は彼なりにバラッド達を気遣ったみたいである。

「そうだな。
我々も明後日にバトルがあることだし。
じゃあ、ホバーカーゴの準備をしてくれないか。」

「分かりました。」

返事をすると、ジェミーは倉庫へと向かった。
ホバーカーゴの移動中に何があるか分からないので、
彼等のゾイドを積んでおかなければいけない。

「リノン、俺も・・・。」

「ハリー、あなたはホエールキングで来たんでしょ。
邪魔だからダメ。」

ハリーが「一緒に行く」と言う前に、リノンが拒否。

「そんな〜。リノン、俺も連れてってくれ〜。」

「見苦しいぞ、ハリー。」

「ホント、未練がましいわよ。」

ベンジャミンとセバスチャンも呆れ顔。
もっとも、彼等の表情は分からないが。
結局、ハリーはさんざん交渉した結果、自分たちのゾイドで行くことに。
(殆ど無理矢理だが・・・)

 

ホバーカーゴは荒野を進む。
その横には赤いブレードライガーとガンスナイパーを積んだグスタフ、
さらにはかなりの武装をしたダークホーン、ヘルディガンナー、ステルスバイパーが後を追っている。
端から見れば凄い集団だ。
こんな奴等を誰が襲うんだと思わせるほどに。
だが、

ヒュー、ドゴン、ドゴン、ドゴン

突然、それらの近くで爆発が起きた。
それのせいで止まってしまう。

「な、何だ!?」

それは明らかに奇襲だった。
全員に動揺と緊張が走る。
そして、

「博士、10時方向にゾイドの反応が多数あります!
これは・・・シンカーです!」

モニターを見ていたジェミーが全員に状況を伝える。
それと同時にシンカーが数十機、崖から飛び出してきた。

「何なの?あいつら・・・。」

リノンが思わず前に乗り出す。

「やっと見つけたぞ、ウォーリアー!
このサンドスティングレのマクレガー様を忘れたとは言わせないぞ!」

そう、彼等はシンカーを使った暴走族、「サンドスティングレ」だった。
以前、ブリッツのメンバーとナオミの活躍で組織は壊滅、
メンバーも全員が逮捕されたのだが。

「サンドスティングレ・・・。
何であいつらがここに・・・。」

バラッドが疑問に思い、そんな事を口走る。
すると、

「そういえば・・・、
半年ほど前に誰かが脱獄したって言うニュースを聞いたような・・・。」

トロスがあっけらかんと答えた。

「どうやら、その半年間で組織を立て直したようね。」

「ナオミ、俺達が奴等を引きつける。
その間にゾイドに乗り込め!」

「分かったわ!」/「分かった!」

バラッドの声にナオミとレオンが同時に返事をする。

「俺も手伝うぜ。
いくぞ、ベンジャミン、セバスチャン!」

「任せておけ。」

「腕が鳴るわ。」

チーム・チャンプの3人も意気込んでいる。
なんだかんだ言っても、彼等もゾイドウォーリアーなのだ。
そして、ブリッツのガンスナイパー、シャドーフォックス、レイノスも発進する。
こうして、荒野で大規模な戦闘が始まった。

「ウリャ、ウリャ、ウリャ、ウリャー!」

まずリノンのガンスナイパーが弾を撃ちまくって弾幕を張る。
それに乗じて、バラッドのシャドーフォックスが格闘戦に持ち込む。
ジェミーのレイノスは空中から援護。
ハリー達はナオミ達の護衛。

「レオン、行くわよ!」

「ああ。」

ハリー達のおかげで無事にゾイドに乗り込むフリューゲルの2人。
そして、ブレードライガーも格闘戦に参加。
ナオミも狙撃で援護をする。

 

 戦い続けて5分が経過していた。
だが、

「もう、何体いるのよ〜!」

文句を言いながら弾をうち続けるリノン。

「くそ、物量攻めか。
倒しても倒してもきりがない。」

レーザーバルカンで打ち抜くが敵は一向に減らず、舌打ちするバラッド。
さっきからこの調子なのだ。
そう言っている間にも崖の上からシンカーが次々と出現する。
そして、ジェミーはシンカーに追い回される始末。
だが、

「この荒鷲相手にシンカーとは笑わせてくれる。」

いつの間にか音速が出ていて、「荒鷲」モードになっていた。

「あっちは放って置いて大丈夫ね・・・。」

「ああ・・・。」

「ジェミーにああいう特製があるなんて・・・知らなかったな。」

リノン、バラッド、レオンが話していた。
レオンはジェミーの荒鷲モードを初めて知ったらしく、興味ありげだが。
すると、

「リノン、後ろだ!」

「えっ!!!」

なんとシンカーの一体がリノンのガンスナイパーに向かって来た。
トロスの声で慌てて方向転換するも、相手はすでにガンスナイパーをロックオンしている。
もうダメかと思い、彼女が目を瞑った瞬間だった。

「ストライクレーザークロー!」

「えっ?」

聞き慣れた声がして、彼女は一瞬耳を疑った。
“彼”がこの場にいるはずがないのだから。
だが、彼女の目に映ったのは傷を負って倒れているシンカーと、

グオォン

荒々しく雄叫びを上げる白いライガーの姿だった。
思わず全員が“彼”の名を呼ぶ。

『ビット!』

そう、“彼”は帰ってきた。
1年前、バーサークフューラーを倒し、ロイヤルカップに優勝したウォーリアー、
ビット・クラウドとその相棒・ライガーゼロが。

「みんな、久しぶりだな!」

「もう、今まで何処に行ってたのよ!
突然出ていっちゃうんだから!」

「話は後。
まずはこいつらを片付けようぜ!」

そう言って、ビットはライガーを走らせる。
リノンは「もう」と頬を膨らませながらも、標準を合わせる。
だけど、どこか嬉しそうだ。

「行くわよ〜、ウィーゼルユニット・フルバースト!」

一斉に弾を放つガンスナイパー。
一気に20体ほどをやっつけた。

 

「行くぜ、フォックス!」

バラッドが声をかけると、フォックスは甲高い声をあげ、爪を光らせた。

「ストライクレーザークロー!」

さっきのビットと同じようにシンカーを1体撃破。
そして、続けざまに後ろを追ってきた機体を電磁ネット砲で絡め取る。
今までの疲れは何処へやら。
彼はふっ、と笑うと、またフォックスを走らせた。

 

「これで最後だ。」

空中を飛んでいるシンカーを相手にジェミーはそう呟くと、
それらの背後に回ると、レーザーで一掃した。

 

ハリー達も猛烈な勢いで撃破していく。
ナオミも、レオンも、全員がビットの登場で活気付いていた。
そして、ついにシンカーの出現が止まった。

「よし、一気に畳みかけるぞ、ライガー!
博士、換装準備、頼むぜ!」

「よし、分かった。
ライガーの換装とは久しぶりだな。」

トロスもなんだか上機嫌だ。
そして、ライガーはホバーカーゴの中に入った。
ロボットアームが白いゼロのパーツを取り外していく。

「ライガー、インストレーション・システム・コール、パンツァー!」

ドラムが回転し、緑色のパーツを付け始めた。

「ライガーゼロ・パンツァー、C.A.S.コンブリーテッド!
サイドパネル、オープン。」

ホバーカーゴの再度が開き、緑のライガーが発進した。

「みんな、そいつらから離れてろ!
一気に決める!」

ビットの声で全員がシンカーから離れる。
そして、パンツァーパーツのすべてのミサイルポッドが開き、
シンカーをすべてロックオンした。

「久々にビッと行くぜ!
バーニング・ビックバン!!」

搭載されているすべてのマイクロミサイルを発射し、
シンカーを全て撃破した。
その後、お決まりのようにアーマーを強制排除、
熱を全て逃がした。

「まったく、美味しいところを全部持って行っちゃうんだから。」

リノンがライガーの素体姿を見ながら呟く。

「まぁ、いいじゃないですか。
こうして戻ってきてくれたんだし。」

「そうね。」

こうして、昼間の大規模な戦いは幕を閉じた。
その後、サンドスティングレは全員再逮捕され、
もっと厳重な警備体制の下で刑期を過ごすこととなった。

 

「しかし、よく駆けつけてくれたな、ビット。」

バラッドがビットの肩をポンと叩く。

「ああ、1回トロスファームに行ったんだけど、
留守だったから、そのまま街に行こうとしたんだよ。
そうしたら、あんな事になってたから。」

そう言いながら、ジェミーの作った料理に舌鼓を打っている。
どうやら、朝から何も食べてないらしく、
今、彼はホバーカーゴ内でお食事中。

「で、何処に行ってたのよ?」

「いろいろさ。
遺跡を廻ったり、いろんな街にも行った。
前にレオンが言ってた、『英雄の旅した谷』っていうところにも行ったぜ。」

「そうか。」

リノンの質問に答える彼はどこか楽しそう。
そして、

「ふぅ〜、ごちそうさま。
久々に旨かったぜ、ジェミー。」

食事が終わり、ふぅ、と一息。

「それで、ゾイドバトルにはもう出場しないのか?」

レオンがみんなが聞きたがっていた質問を投げかける。
全員が見つめる中、ビットが口を開いた。

「それなんだけど、なんかやることがなくなっちまってな。
ライガーも暴れたがってるしよ。
それに・・・、」

「それに?」

「やっぱり頂点を目指さないとな。」

ビットの言葉にみんなの顔から笑みが漏れる。

「じゃあ、早速だけど、明後日のバトルに出てもらうよ、ビット君。」

「ああ、任せておけ。」

こうしてめでたくビットはチーム・ブリッツに戻ってきた。
すると、

「ねぇ、ビット。
何か言い忘れてない。」

リノンにそんな事を言われ、少し考え込む。
そして、彼が口から言葉を発した。

「ただいま!」

『お帰りなさい。』

ブリッツのメンバーが異口同音に返事を返した。

続く


ついに書いてしまった、/0小説。
本当に土曜日になると、虚しくなっちゃうんですよね。
と言うわけで書いてみました。
これからもうちの第3部同様、/0第2部をよろしくお願いします。

 

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