「迷走の果て」

 

「ふぇっくしょん!」

レイヴンは何の音だと思い、シャドーと共に自宅の二階から降りてきた。
そして、一階にあるリーゼの部屋に入った。

「どうしたんだ?リーゼ。」

「あっ、・・・レイヴン。」

そこには真っ赤な顔をしてベットに横になっているリーゼが目に入る。
横には心配そうな顔をしてリーゼを見ているスペキュラーがいる。

「どうかしたのか?顔が真っ赤だぞ。」

「なんか、風邪ひいちゃったみたいなんだ。朝から頭痛がするし、喉は痛いし。」

弱々しい声でリーゼが答える。
レイヴンは彼女の額に手を当てた。

「かなり熱があるな。クスリは?」

すると、スペキュラーが首を横に振る。

「もう無いみたいなんだ。」

「弱ったな。しょうがない、クスリを調達してくるか。」

ここから近い町に行けばクスリぐらいは手にはいるだろう、
レイヴンはそう考えたのだ。

「リーゼ、おとなしく寝てるんだ。スペキュラーは看病を頼む。シャドー、行くぞ。」

「待ってよ、レイブン。町はまだ復興中だよ。クスリ屋なんてやってる訳ないよ。」

リーゼの声があまりにも弱々しかったので、
走ってジェノブレイカーの所まで行ったレイヴンの耳には届かなかった。

 

 数分して町に着いたレイヴンは我が目を疑った。
町はデスザウラーの攻撃で全壊していて、丁度復興中だった。

「まいったな、この近くに町はあったかな。」

レイヴンは地図を広げた。
そして、ある地名に目を止めた。

「ガイガロスか・・・、仕方がない。」

そう言って、ガイガロスへと進路を向けた。

 

 そして数十分後、彼はガイガロスへと到着した。

「さてと、急がないとな。もし兵隊に俺やジェノブレイカーが見つかったら面倒だからな。」

シャドーにジェノブレイカーを任せて、足早に町へと入っていった。

「クスリ屋は確かこの先だったな。」

レイヴンは長い間プロイツェンと共に、この都市で過ごしたので土地勘はあった。
だが、

「休みだとーー!」

レイヴンは思わず叫んでしまった。そう、クスリ屋は丁度定休日だった。
幸い周りには人がいなかったので、騒ぎにはならずに済んだが。

「くそ、他の町や村はまだ復興中だろうし、どうしたら・・・。」

仕方がなくジェノブレイカーに戻って対策を練ることに。
兵隊には発見されておらず、とりあえず安心したレイヴンはまた地図を見直した。

「ったく、ついているんだか、いないんだか・・・。」

ブツブツ言いながらクスリのありそうな場所を検索する。
すると、またある地名に目を止めた。

「ウインドコロニーか・・・確かバンの住む村だったな。」

レイヴンは悩んだ。
現在、彼は指名手配中だったので、
ガーディアンフォースであるバン・フライハイトに会うのは訳にはいかず、
しかも、彼を頼るなんてもってのほかだった。

「しかし・・・。」

家にはリーゼが熱で苦しんでいる。

「背に腹は代えられないか。
もしかしたら、あいつはお人好しだから素直にクスリを分けてくれるかも。」

そこまで考えると、発進準備を整え終えた。

「行くぞ、シャドー!」

シャドーが合体し、ジェノブレイカーの頭の角が降りる。

「時間がないから、最高速で行くぞ。」

「グルルル。(O.K.)」

レイヴンはウインドコロニーに向かって発進した。
そして心の中で今は亡きヒルツを心底憎んだという。

 

 その頃、バン達はというと、

「ふわ〜あ、暇だなぁ。」

「キュイ。(ホントにねぇ)」

バンはあくびをしながらそう言った。
隣にはジークと、塩入コーヒーを飲んでいるフィーネがいる。
久々の休暇に暇を持て余していたのだ。

「あれからもう一週間も経ったんだな。」

バンはデスザウラーを倒した、あの日のことを思い出していた。

「レイヴン、何やってるんだろうな。」

フィーネもコーヒーを飲みながら、

「きっとリーゼとうまくやってるわよ。私たちみたいに。」

彼女の言葉にバンは少々顔を赤くした。

「そうだな。じゃあ、ライガーの整備に行くか。」

「私も行くわ!」

そう言って、二人とジークは彼の愛機ブレードライガーに向かった。
ライガーの足下に来たバン達は、早速工具を取り出し調整を始めようとしていた。
その時フィーネが遠くに何かを見つけた。

「バン!2時方向から何か来るわ。」

バンは双眼鏡を出して、フィーネの言う方向を見た。

「あの赤い機体・・・まさか!」

そう、フィーネが見つけた何かとは、レイヴンのジェノブレイカーだった。

「噂をすれば何とやらね。」

「おいおい、休暇なんだから勘弁してくれよ。」

そう言っているうちにジェノブレイカーは、バン達の目の前まで来て止まった。
そして、胸のコックピットが開き、レイヴンが降りてきた。

「レイヴン、何しに来たんだ?」

バンはレイヴンを睨んでそう言った。それとは正反対にレイヴンは冷静に言った。

「そんな怖い顔をするな。
別にお前を倒しに来た訳じゃない。」

「へっ。」

バンの表情がゆるんだ。レイヴンはそのまま続けた。

「実は、クスリをくれないか。」

バンは呆気にとられていた。
まさかレイヴンに物を頼まれるとは思っても見なかったからだ。
レイヴンはこれまでのいきさつを話す。
すると、

「なるほど、リーゼがねぇ。」

「なっ、頼むよ。」

「しょうがないな、ちょっと待ってろ。」

そう言ってバンは自分の家へと戻っていった。

 

 そして、数分後。

「ほらよ。」

そう言ってクスリが入っている箱をレイヴンに向かって放り投げた。
レイヴンは箱を受け取って、

「すまなかったな。」

「何、困ったときはお互い様だろ。
それに借りも返してなかったしな。」

「借り?」

レイヴンは不思議そうな顔をして訪ねた。

「ほら、デスザウラーのE.シールドを破ってくれたじゃないか。」

「ふっ、そうだったな。
だが、こんなもんじゃ足りないぞ。」

そう言ってとっととジェノブレイカーのコックピットに乗り込んだ。

「お大事に。」

「キュ、キュイ。(お大事に)」

フィーネとジークに見送られて、レイヴンは帰っていった。

「やれやれ。」

バンもそう言いながらレイヴンを見送った。

 

 レイヴンが家に帰って来たのは、もう夕方だった。

「ただいま。」

「グルルル。(ただいま)」

レイヴンとシャドーはすぐにリーゼの部屋へと向かった。

「ほらっ、リーゼ。クスリだ。」

「ありがとう、レイヴン。」

そう言って差し出されたクスリを飲んだ。

「ねえ、このクスリ、何処から手に入れてきたの?」

リーゼのこの質問にレイヴンは戸惑ったが、

「秘密さ。」

と笑顔で答えた。
滅多にレイヴンの笑顔を見ないのでリーゼは驚いた。
そして、

「おかしなの。」

と、笑い返した。
二匹のオーガノイドは夕飯の支度をするため台所に向かった。

(ずっと一緒だからな。)

そうレイヴンは心の中で呟いていた。


ふう〜。もう夜中の0時だよ。
初めて短編書いたから張り切っちゃった。
この小説はさゆき様のHP「ローレライの海」に遅らせていただいた物です。
これに懲りずにまた書きたいと思います。

 

短編集TOPに戻る        ZOIDS TOPに戻る        Novel TOPに戻る