「心の中の光」
俺はいつものように自宅の屋上で星を見ている。
ただ、今日は隣にシャドーはいない。
大方、スペキュラーと一緒に寝ているのだろう。
バンと共にデスザウラーを倒してから半年が経ち、俺はリーゼ達と共に、元の自宅に帰ってきた。
彼女には感謝している。俺の記憶を呼び起こしてくれた。
それに・・・
「レイヴン、また考え事?」
丁度そこまで考えていたら、その彼女が来た。
「まあな。」
「いつも、いつも、何考えてるの。
私に言えないこと?」
そう言うと、リーゼは俺の隣に座った。
いつからだろう、リーゼの一人称が「僕」から「私」になったのは。
それにだんだんと、仕草も言葉遣いも女らしくなってきた。
そんな彼女に俺は最近、色気を感じている。
「そう言う訳じゃないが・・・。」
「じゃあ、何なの?」
しつこく問い詰めてくる。
このしつこさは前のままだ。
俺はリーゼの方を向いて答えた。
「最近変わったなぁってな。」
「何が?」
「いろいろだ。」
そう言って、俺はまた星を見上げた。
彼女も星を見上げる。
「綺麗だねぇ。」
「リーゼ、知っているか?
この銀河の彼方に俺達の故郷の青い星があるって。」
「どうしたの?急に。」
リーゼが俺の顔を覗き込んで、そう言った。
「昔、父さんがそんなことを言っていた。
毎日、こんな風に星を見ながら。」
「ふぅ〜ん。
でも、僕達の故郷はこの星だから。」
「そうだったな。」
リーゼの表情が曇ったので、少し申し訳ない気持ちがした。
彼女は古代ゾイド人の生き残り。
他にも後一人、古代ゾイド人がいる。
そいつは俺が唯一ライバルと認めたゾイド乗りの恋人だ。
「そろそろ寒くなってきたな。
戻ろう。」
「ウン。」
リーゼは少し微笑んで頷いた。
そして、俺の腕に抱き付いてきた。
急に抱き付かれたのでバランスを崩しそうになった。
「レイヴン、君って暖かいね。」
その言葉に少々照れを感じた。
そして、そのままの状態で家の中に入った。
リーゼには本当に感謝している。俺の記憶を呼び起こしてくれた。
そして、闇に閉ざされた俺の心の中で光となって、俺を照らしてくれている。
今も、そして、これからも。
fin
この小説もさゆきさんに送らせていただいたものです。
こういうシリアスなものもたまには良いなぁ、と思って書いてみました。
また機会があったら書いてみたいです。