「眠りから覚めて」

 

「レイヴン、遅いなぁ〜。」

リーゼは自宅(レイヴンの家)のソファーで本を読みながら、レイヴンの帰りを待っている。
当の本人は数時間前、シャドーと共に買い物に出ていった。

「水や食料が切れたとか言ってたけど・・・。
何を買いに行けば、こんなに時間がかかるんだろうね?」

彼女は隣で寝ているスペキュラーに話しかけたが、

「寝てるし・・・。」

スヤスヤ昼寝をしているスペキュラーを呆れた目で見ると、リーゼは再び本を読み始めた。
この本はこの間、町で偶然出会ったフィーネに勧められて買ったもので、今流行の恋愛小説である。
最初はバカにしていたリーゼだったが、読むにしたがって徐々に興味が湧いてきて、
今では暇を見つけては、ずっと読みふけっている状態だ。

「なかなか面白いんだよね、これ。」

内容は遺跡で出会った少年と少女が、いろいろな冒険や苦難を通じて結ばれるという、
何処かで聞いたような話だが、男女共に楽しめる話となっているので、結構流行っているらしい。
普段から少年みたいな性格のリーゼにも、気に入る内容なのだ。
だいぶ読み進んだ時、

「ふぁ〜あ、何か眠くなっちゃったなぁ。」

そう言うとリーゼは本を閉じて近くにあるテーブルに置くと、そのまま上体を横にして眠りについた。
 しばらくすると外からゾイドの足音がして、扉が開いた。

「ただいま〜。」

「グルルル。(ただいま〜)」

レイヴン達が帰ってきた。
彼がふと目をやると、そこには気持ちよさそうに寝息を立てているリーゼがいた。
スペキュラーは戸を開く音で目を覚ましていて、大きなあくびをしていた。

「やれやれ、世話のかかる奴だな。
こんな所で寝て。」

フッ、と微笑んでレイヴンは二階に上がっていき、自分の部屋に入ると、
押入から毛布を取り出し、また一階に戻っていった。
そして、スヤスヤと寝ているリーゼにその毛布をそっとかけた。
オーガノイド達はそれぞれの主人の部屋に戻っている。
レイヴンはリーゼの隣に腰をかけた。

「ずいぶんと時間がかかったな。
眠ってしまうのも無理はないか。」

彼はチラリとリーゼを見ると、

「こうやって見てみると、可愛い寝顔なんだがな。」

そう呟き、手に持っていた小箱をテーブルに置くと、レイヴンも眠りについた。
だいぶ疲れがたまっていたようだ。

 

 しばらくしてリーゼが目を覚ました。
彼女が辺りを見回すと、もう夕方になっていること、隣でレイヴンが寝ていること、
そしてテーブルの上に小箱が置いてあることに気が付いた。

「何だろう、これ?」

そう言ってその小箱を手に取って、開けてみた。
すると、

「うわぁ〜、綺麗。」

中に入っていたのは、小さなサファイアの付いた指輪だった。
おそらく、リーゼに合わせて青い宝石にしたのだろう。

「んっ、何か掘ってある。どれどれ・・・。」

リーゼはリングに掘ってある文字に気が付いた。

「『ディア リーゼ』・・・。」

リーゼは驚きの余り、声が出なかったが、

「ありがとう、レイヴン。」

そう言ってレイヴンの頬にそっと口づけた。
リーゼは指輪をはめて、夕飯の支度のために台所へ向かった。
リーゼが行った後、

「あ〜あ、自分から渡そうと思ったのにな。」

そう言ってレイヴンはムクッと起き上がった
実はリーゼが箱を開けたときにはすでに起きていて、
今までの事をずっと狸寝入りをして、聞いていたのだ。
もちろんリーゼは気付いていない。

「グルルル、グルル。(格好わるいね、レイヴン)」

二階から降りてきたシャドーにそう言われ、ちょっとムッとしながらも、
リーゼのキスの感触がまだ残っている頬に手をやり、照れが隠せないレイヴンだった。

「しかし、高くついたな、あの指輪。」

彼はそう言って伝票を見つめていた。そして、

「このぶんじゃ、また仕事を探さないとな。」

と呟いた。
レイヴンがそんなことを言っているとも知らずに、
リーゼは左手にはめた指輪を見ながら、微笑んでいた。


ゆきやんさん、リクエストをどうもありがとうございます。
このホームページで初めてのキリリクなので、
とても楽しく書かせていただきました。
さてここで問題です。リーゼは指輪をどの指にはめているのでしょうか?
えっ、聞くまでもない。そりゃ、そうですね。
では。

 

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