「争いの結末」

 

 僕の悪夢は、一通の手紙で幕を開けた。

「レイヴン、君宛に手紙が来てたよ。」

「誰からだ、いったい。」

日が沈みかけた頃、僕は手紙を持って家に入った。
レイヴンは不思議そうに手紙を受け取った。
まあ、無理もないか。
手紙なんて受け取ったことなさそうだし。

「バンからか。」

レイヴンは封を切り、手紙を読み始めた。

『拝啓・・・、な〜んて回りくどい挨拶は止めて・・・。
よう、レイヴン、元気にしてるか?
俺もフィーネもジークもみんな絶好調だ。
俺がお前に手紙を出したのは、今度パーティーを開くことになってな。
それでお前達を招待したい。
場所と日時はもう一枚の紙に書いてあるから。
後、服は普段着で良いからな。
じゃ、絶対来てくれよな。
お前のライバル バン・フライハイトより』

「ふん、くだらん。」

手紙を投げ出すと、レイヴンはソファーに寝転んでしまった。
とりあえず僕は手紙に目を通し、もう一枚の紙も見た。
そして、あることに気が付き、笑いをこらえながら言った。

「クハハ・・・レイヴン、・・・行った方がいいかも。」

「急にどうしたんだ?
・・・んっ、何でお前らも笑ってる。」

僕が見ると、シャドーもスペキュラーも笑いをこらえていた。
僕は、笑いの原因となっているもう一枚の上を差し出した。
そこには・・・、

『P.S.来ないとお前の子供頃の写真を会場にばらまく。
証拠にその中の一枚を送る。
元お前の上司 カール・リヒテン・シュバルツより』

そして、僕たちはレイヴンがそれを読んでいるうちに、
封筒に入っていた写真を見た。
そこにはプロイツェンに連れてこられたばっかりの、
可愛い服を着たレイヴンがカールと一緒に映っていた。

「くははははは・・・・!!」

ついに笑いをこらえられなくなり、僕とスペキュラーは大声で笑ってしまった。
流石に主人に悪いのか、シャドーはまだこらえている。
レイヴンは僕の手から写真を奪い取って見ると、石化した。

「でも、その中の一枚ってことは・・・もっとあるってことだよね。」

僕の一言にレイヴンはダイヤモンドと化した。
そして、シャドーもとうとう笑い始めてしまった。

「シャドー、お前まで笑うか。」

レイヴンはシャドーを睨み付けてそう言うと、僕に向かって、

「おい、リーゼ。
日時と場所は?」

「えっと、明日の12:00、ガイガロスのだけど。」

僕がそう言うと、レイヴンはツカツカと二階に上がっていってしまった。

「明日は早く出る。
さっさと飯を食って寝るぞ!」

不機嫌な声でそう言うと、自分の部屋に入っていった。

「グルルル。(やれやれ。)」

シャドーが呆れた声で言った。

「まっ、パーティーに行けるんだし、いっか。」

「グルル。(そうだね。)」

こうして、僕たちは夕食を済まし、明日に備えて寝ることにした。

 

 翌日、僕たちはジェノブレイカーでガイガロスに向かうと、
バンやフィーネといった、いつものメンバーが出迎えていた。

「よく来たわね。」

「まあな、あんな写真をばらまかれちゃかなわん。」

フィーネの挨拶を軽く交わし、レイヴンは会場に入っていった。

「何か不機嫌じゃないか、あいつ。」

アーバインがバンに言った。

「流石に脅しみたいなもんだからな。」

「兄さんもやることが酷いなぁ。」

トーマが苦笑いを浮かべてそう言うと、みんな揃って会場に入っていった。
中に入ると、ハーマンやシュバルツ、ルドルフにルイーズ、
Dr.ディと言ったお偉いさんが席に座っているのが見えるし、両国の兵士もたくさんいる。

「結構広いね。」

僕は感心していた。

「で、いったい何のパーティなんだ?」

レイヴンがバンに聞いた。
流石にあの手紙じゃ、どんなパーティーなのかは分からない。

「ああ、デスザウラーを倒して、平和になったってことで開いたんだと。
ニューヘリックシティや色々な町やコロニーの復興でなかなか暇が無くて、やっと開けたんだ。」

「なるほど。」

そしてハーマンの挨拶でパーティは始まった。
しかし、いざ始まってみるとただの飲み会である。
兵士はどんどん酔いつぶれていき、
無事なのは未成年の輩だけで、アーバインやハーマン達も限界みたいだ。
Dr.ディだけは平気でいたが・・・。

「何かつまんないね。
レイ・・・。」

レイヴンに話しかけようとしたが、当の本人はどこかに行ってしまっていた。

「ねぇ、シャドー。
レイヴンは?」

僕は他のオーガノイド達と楽しそうに話しているシャドーに聞いた。

「グルル、グルルル。(誰かを探しに行ったみたいだけど。)」

その答えにガックリした僕は、

(酒でも飲んでやろうか。)

と、ちょっと思ったがレイヴンに怒られるので止めた。
僕は覚えてないけど、
この間酒を飲んだら、レイヴンにすごく迷惑をかけてしまったらしい。
そんなことを思い出していた時、突然右腕が強く引っぱられるのを感じた。
僕はレイヴンかと思って振り向くと、
そこにはレイヴンよりも背が高く、金髪の頭に帽子をかぶっている男が立っていた。

「確か・・・シュバルツ大佐だよね。
あの要塞以来だね。」

シュバルツとは以前、ヒルツの命令で武器解体中の要塞を爆破させに行った時、
精神を操って弟のトーマと戦わせたことがある。
まさか、まだ根に持ってるんじゃ・・・。
そう思った時、突然彼の口から思いもよらない言葉が出てきた。

「一目見たときから、君が好きだ。」

「はぁ?」

僕は思わずそんな声を上げてしまった。
そりゃそうだ。数回しか会ってないのに、いきなり「好きだ」はないでしょ。
だが、そんなシュバルツの左手はまだ僕の腕をしっかり握っている。

「私と付き合ってくれ。」

「・・・・・・。」

僕はもう何も言えなかった。
驚きと困惑、それだけが僕の頭の中をいっぱいにしていた。
でも、こうして見るといい男だなぁ。
・・・って、ちょっと待って。僕にはレイヴンっていう人が・・・。
そんな心の叫びもむなしく、シュバルツは決定的な一言を言った。

「結婚してくれ。」

何が決定的かって。
僕の中にあったシュバルツのイメージが、その一言で完全に崩れ去ったのさ。
それでもなお迫ってくるので、こいつの弟に助けてもらおうと思ったけど、

「フィーネさ〜ん。
待って下さいよ〜。」

と、寝言を言っていた。
おそらく邪魔をしないように、こいつが酒を飲ましたのだろう。

「そうだ、スペキュ・・・ラー?」

肝心のスペキュラーはと言うと、

「グルル、グルグル、グルルル。
(だいたいねぇ、あんたの管理が悪いから、レイヴンもひねくれちゃうのよ。)」

「グルルル、グルル。(お前だってもうちょっとリーゼの世話をしろ!)」

「キュイ、キュ、キュイ。
(バンもさぁ、フィーネばっかりじゃなくて、もうちょっと俺に優しくしてくれたって・・・)」

オーガノイド達と愚痴の言い合いをしていた。
あいつらも酒を飲んだらしい。
あ〜ん、誰でも良いから助けてよ〜。
そう思った時だった。
突然シュバルツが倒れ、僕から手を離した。

「リーゼから離れろーーー!!!」

その声は・・・レイヴン!!
良かった、助けに来てくれたんだ。
レイヴンの跳び蹴りを喰らい、シュバルツは倒れ込んだ。
が、すぐに起き上がった。

「何をする、レイヴン。」

「お前、そんな奴だったのか?
知らなかったよ。」

「うるさい。
俺は彼女が好きなんだ〜!」

その一言にレイヴンも流石に引いた。
彼の中にある今まで積み上げた、シュバルツのイメージも完全に崩壊したらしい。

「じゃあ、勝負だ!
表に出ろ!」

「望むところだ!」

レイヴンとシュバルツが私を取り合って・・・って、違う、違う。
何でこんなことになっちゃったんだろう。
その時、僕はあることに気付き、レイヴンに伝えた。

「レイヴン・・・あいつ、酔っ払ってるよ。」

「えっ・・・。」

よく見ると足下こそふらついてはいないが、呂律は回ってないし、目も座ってる。
僕とレイブンは呆れた。

「勝負らぞ、レイヴン。」

レイヴンは肩を震わせながら、

「・・・酔っぱらいは寝てろ!」

と言って、素早くシュバルツの背後に回り、後頭部に一撃をかました。
酔っているシュバルツはまともに喰らって倒れ込み、そのまま眠り込んだ。
こうして僕の悪夢の日は終わった。

 

 だが、トーマから聞くと、彼は酔ってもそんなに人は変わらないと言う。
じゃあ何で・・・、と思っていたとき、フィーネから興味深いことを聞き、
翌日レイヴンと共にあるところを訪れた。

「おお、珍しいな。
何の用じゃ?。」

ここはDr.ディの家。
僕たちはジェノブレイカーに乗りながら、庭で日光浴をしているディに尋ねた。

「ねぇ、フィーネから聞いたんだけど、『惚れ薬』を作ったんだって。」

「ああ、昨日実験も終了してな。
これから特許を取ろうとしているところだ。」

実験という言葉に僕はピンときた。

「もしかして、その実験って・・・シュバルツで試した?」

「よく分かったな。
どんな人間にも効くかどうか分からなかったから、
昨日のパーティーの時に酒に混ぜてのぅ。
そして見事、実験は成功したわい。
わっははははは!」

ディはお気楽に笑った。
僕たちは怒りで肩を震わしている。

「お前が元凶か〜。」

レイヴンの言葉にディは「えっ」と言う表情をした。

「レイヴン・・・やっちゃって。」

僕がレイヴンに言うと、
彼は迷わず荷電粒子砲を、ディの家に向けて撃った。

「うわぁ、何するんじゃあ!
わしの研究の成果がぁ〜!」

どうやら僕の予想通り、惚れ薬の在庫と作り方が家の中にあったようだ。

『もうそんなもん作るな〜!』

僕らはそう言ってその場を後にした。

「それにしてもレイヴン、よく助けに来てくれたね。」

「んっ?
ああ、あれはシュバルツを探しててな。
それでだ。」

「何で探してたの?」

「写真だよ。
俺の子供の時の。」

「それで、それどうしたの?」

「全部処分した。
あんなもん、人目に触れてたまるか。」

僕はがっかりした。ちょっと見てみたかった気もしたから。
でも、レイヴン。
あの時の君の言葉、嬉しかったよ。

「リーゼから離れろーーー!!!」

でも結局僕を助けに来てくれたんだよね、レイヴン。
こうして、この事件は全て解決した。
ちなみにシュバルツはパーティーのことは覚えていなかった。
そして、レイヴンの写真のネガがあると聞き、僕はこっそり焼き増ししたのをもらった。
それは今でも大切にしている。
だって僕の宝物だもん。


になさん、1200のキリ番ゲットおめでとうございます。
ちょっと今回は構想に手間取りました。
私のイメージは、シュバルツは硬派というものなので、
こんな展開になってしまいました。
何か全然タイトルとは違ってしまいました。
こんなんでよろしいでしょうか。
また遊びに来て下さい。
では。

 

短編集TOPに戻る        ZOIDS TOPに戻る        Novel TOPに戻る