「1年前のZi学園」

 

 ここはZi学園のゾイドバトル部の部室。
学園でやるクリスマスパーティーがあるこの時期、生徒や教師は大忙し。
そんな時にここで昼寝をしている生徒がいた。
名前はビット・クラウド。この部の部長だ。

「ZZZZZZ・・・。」

のんきに机の上で、気持ちよさそうに昼寝をしているビット。
すると、部室の扉が開き誰かが入ってきた。

「こら〜、ビッド!何寝てんのよぉ〜!」

「うわっ!」

突然の大声にビットは飛び起きた。
そして、その拍子に今まで寝ていた机から落ちてしまった。

「いってぇ〜。
何すんだよ、リノン!」

彼は側に立っているピンクの服を着た女の子に話しかけた。
彼女の名前はリノン・トロス。ビットのチームメイトだ。

「パーティーの準備を抜け出してこんな所で昼寝って、いい根性してるわね!」

「うるせ〜な〜。
いいだろ、一人ぐらい居なくたって。」

「あのね〜。
誰よ、ゾイドバトル部員全員で準備をするって言ったのは?
ちょっとは責任持ちなさいよね。」

「俺、その言葉嫌い。」

そう言いながら、ビットはイスに座った。
普段から責任を持ちたがらないビットに、説教は馬の耳に念仏である。
その時、また部室の扉が開いた。
今度は勢いよく。

「先輩、助けて下さい〜!」

「バン、どうしたんだ?」

入ってきたのはバン・フライハイト。
ビッド、トーマと共にこの部を作った1年生だ。

「レイヴンですよ〜。」

「またなの〜。
まったく執念深いわね。」

レイヴンとは、数ヶ月前この学園に転校してきた生徒で、
前の学校では「ゾイドバトルの天才」と言われていた。
だが、この学園に転入してきてバンに負け、プライドが傷付いたため、
それ以来ずっとバンに勝負を挑んでいる。
バンはいい迷惑だが・・・。

「しょうがない。
ロッカーの中にでも隠れてろ。」

そう言ってビットは、部員の使っているロッカーを指さした。
バンはそこに素早く隠れる。

「やれやれ。
元気な奴らだ。」

「まあ、いいじゃないの。
頼り甲斐のある後輩達で。」

「それもそうだな。」

二人が話していると、また扉が勢いよく開いた。
そして黒髪の青年、レイヴンが入ってきた。

「バンを知らないか?」

「相変わらずバンを追いかけ回してるのか、レイヴン。」

からかうビットをよそに、レイヴンはリノンに問い詰めた。
するとリノンは、

「さあ、知らないわ。
ビットは?」

わざとらしくビットに降る。すると、

「ああ、バンなら・・・。」

ロッカーの中のバンは不安を感じていた。
(まさか先輩、言わないよな。)
バンがそんなことを思っているとは露知らず、
ビットは続きを話す。

「バンなら、さっきブレードライガーが走ってるのを見たから、
帰ったんじゃないか。」

バンは胸を撫で下ろした。

「そうか、また逃げられたな。」

レイヴンはそう言って、部室から出ていった。
そのすぐ後、バンがロッカーから出てきた。

「ふぅ〜、助かった。
ありがとうございます。」

「いつものことだろ。
気にすんな。」

「そうですね。
・・・あっ、そうだ。
リノン先輩、バラッドさんがとっとと来いって言ってましたよ。」

バンの一言にリノンは何かを思いだしたようだ。

「あっ、いっけな〜い。
アーバインを呼んでこいって言われてたんだ。
もう、あんたがいなかったから、私があいつを呼びに行く羽目になっちゃったのよ。」

ビットに思いっきり文句を言うリノン。
彼女は人に責任を押しつけるので、ビットはおろか部員全員が迷惑している。
もっとも、今回はビットも悪いのだが。

「分かった、分かった。
俺がアーバインを呼びに行きゃいいんだろ。」

リノンの迫力に圧倒され、ビットは渋々了解した。

「ちゃんと連れてくるのよ。
もし連れてこないと・・・、
『リーゼルユニットフルバーストの刑』だからね!」

リーゼルユニットフルバーストの刑とは、
リノンの乗る武装型ガンスナイパーに搭載している全ての武器を叩き込むという、
リノンのがさつな性格が生んだ、非常に恐ろしい刑なのだ。
これを喰らったら、ゾイドに乗っていても生存確率は0である。
以前、些細なことからリノンの恨みを買ったトーマが喰らい、
レイヴンの荷電粒子砲よりも酷い怪我を負ったことがある。
その時にフィーネに看病されて、トーマはフィーネに惚れたとか。

「わっ、わっかりました〜。」

顔を真っ青にして、ビットは部室から出ていった。
バンもやれやれと言った表情で見送る。

「さあ、戻りましょう。」

優しい顔をしているリノンに、半分恐れをなすバンであった。

 

 リノン達が会場に戻ると、みんながせっせと準備をしている。
バラッドやナオミ、ハリー達3年生はイスのセッティング。
フィーネ、リーゼ、トーマ、ローザ達1年生は飾り付けなどを
ジーク、シャドー、スペキュラー、アンビエント達オーガノイドは
重い照明機材を運んでいた。

「あっ、バン。」

フィーネがバン達が戻ってきたことに気付いた。

「おや、うまくレイヴンから逃げられたようだね。」

リーゼが続けて言う。

「まあな。先輩達のおかげで助かったよ。」

バンがリノンを見ながら二人にそう言う。

「おい、リノン。
アーバインはどうした?」

「ビットに行かせたわ。」

バラッドの質問にリノンは軽い口調で答えた。

「あの無責任部長によく任せられたわね。」

ナオミがリノンの答えに反応していった。
無責任部長とはもちろんビットである。

「大丈夫よ。
もし連れてこなかったら『リーゼルユニットフルバーストの刑』だから。」

「あっ、そうか・・・。」

そこにいたリノン以外の全員はその答えに顔を引きつらせた。
特にこの男は・・・。

「あの時のこと思い出してしまった。」

そうトーマ。
なんせ生死の境を2日間彷徨ったのだから。
リノン達が楽しく(?)話していると、

「おっ、やってるか?」

アーバイン登場。

「で、どうしたんだ?」

「実はまだ機材が届いてないんだ。
それで・・・。」

「俺に取りに行けと言いたいのか?」

トーマが言う前に答えるアーバイン。

「頼むよ。
この中で一番足が速いのは、アーバインのライトニングサイクスなんだから。」

フィーネにも言われ、アーバインは仕方無しに了解した。
するとリノンがあることに気付いた。

「そういえば、ビットは?」

よく見るとビットの姿がない。
するとアーバインが、

「ああ、あいつだったら何かリノンに頼まれた用事があるって言ってたが。」

「ぬぁんですってぇ〜!」

そこにいる全員は凍り付いた。
リノンが鬼よりも怖い形相で怒っているのだ。
リノンはアーバインを睨み付け、ビットの居場所を尋ねた。

「あのバカ、何処に行ったの?」

「ゾ、ゾイド置き場の方に・・・。」

アーバインはリノンの迫力にビビッたのか、怖々と言った。
そして、リノンもゾイド置き場の方へと猛スピードで向かう。

「誰か、救急車呼んでおけ。」

バンはリノンが出ていった後、ポツリと言った。

 

 その頃のビットはというと、ライガーゼロのコックピットで羽を伸ばしていた。

「ん〜っ、やっと心地よく眠れる。」

だがその願いは叶わなかった。

「見つけたわよ〜、ビットぉ〜。」

嫌にドスの利いている声に反応して、ビットが恐る恐るモニターを見ると、

「ギャアアアアアーーー、リノン!」

リノンのガンスナイパーがすぐそこにいた。

「よくも逃げてくれたわねぇ。
しかも、よりにもよって私をサボる口実に使うとは言い度胸してるわねぇ。」

「待て!
俺はちゃんとアーバインを呼びにいったぞ!」

「問答無用!
だいたいねぇ、誰がその後サボっていいって言ったのよ!」

「待て、落ち着け!リノン!」

ビットの悲痛の叫びも聞かず、リノンは標準をライガーゼロに合わせた。

「ひぇぇぇぇーー、逃げるぞ、ライガー!」

分かっていると言っているように一声あげて、ライガーは逃げようとする。

「誰が逃がすものですか!行くわよ〜、リーゼルユニットフルバースト!」

ガンスナイパーの全ての銃口から一斉に弾やミサイルが発射され、
ライガーに向かって飛んでいった。

ドッゴォーーーーーーン!!

煙が立ち上り、激しい爆音が12月の寒空に響いた。
そして学園では、

「救急車はどうした?」

「もうすぐ来るはずだけど。」

「じゃあ、俺は機材を取ってくる。後は頼んだぞ。」

「ああ。」

爆発の方向を見ながら、アーバインとバンはこのような会話をしていた。
ちなみにビットはこの後、救急車に運ばれ病院に行き、
そこのベットでトーマと同じく生死の境を2日間彷徨ったという。
全治20日間の怪我だったが、クリスマスパーティには無事出席できた。
だが、体中に巻いた包帯は、当分取れずにいた。
もっともリノンは罪悪感の欠片もなく、パーティーを楽しんだらしいが。
そして、ビットはもう二度とリノンに逆らうのは止めようと思ったという。


なんかリノンメインじゃ全然ないし。
サム冥府・HAYAさん、1900のキリ番ゲットおめでとうございます。
リクエストと全然違ってしまったようですけど、こんなんでよろしいでしょうか?
後、たぶんZi学園で/0のキャラも出てくると思います。
ていうか、出します。
では、また遊びに来て下さい。

 

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