「海の思い出」

 

 Zi学園のゾイドバトル部の連中は今、バスでどこかに向かっている途中。
バスの中はにぎわっており、レイヴンとリーゼ以外はトランプで盛り上がっていた。
ちなみにこの二人は、互いに肩を寄せ合って寝ている。

「よっしゃ、一抜けた!」

そう叫んだのはビット。
どうやらババヌキで上がったようだ。

「先輩、早いですね。」

「まあな、俺は勘が鋭いから。」

自慢げにバンに話す。彼の勘の鋭さは自他共に認める程。
特にゾイドバトルの勘は天性と言ってもいい。

「あっ、あがった〜!」

フィーネ、バラッド、ナオミ、アーバイン、リノンと続いてあがっていった。
そして、残ったのはこの3人。

「いよいよ勝負だな。」

「負けてたまるか。」

「チャンピオンは俺だ!」

そう、バンに、トーマそしてハリーだ。
手札はハリーとトーマが2枚、バンが1枚である。

「まずは俺だ。」

そう言って、バンがトーマのカードを引く。
すると、

「よっしゃー、あがった。」

さっきのビットと同じぐらい喜ぶバン。
次はトーマの番。

「勝負!」

そう言って引くと、

「ジョ、ジョーカー・・・、くそっ。」

トーマは悔しそうにカードをシャッフルする。
そして、ハリーの番。

「ハート以外に考えられないな。
・・・ほら、当たったぜ。
リノン、見てくれた?」

「はいはい、見たわよ。」

リノンは呆れながら返事をする。
カードの絵柄まで当てたハリー。
この男、運だけはある。

「くそ〜、またか!」

これまでバン達が行ったトランプ勝負は3回。
その内2回ビリになったのはトーマ。
ちなみに最初にビリになったのは、レイヴンである。
実はレイヴン、単にふて寝しているだけだったりする。
その時、バスが止まった。

「お待たせ〜、着いたよ。」

運転していたムンベイが到着をみんなに知らせる。
みんなが外に出ると、

「海だ〜!」

「いやっほ〜!」

はしゃぎまくっているバンとビット。
どうやらこの二人、性格的にそっくりなようだ。

「太陽がまぶしい。」

「潮風も気持ちいいわ。」

さっきの二人ほどではないが、はしゃぐリノンとナオミ。

「よし、みんな降りて・・・無いな。」

さっきから仲良く気持ちよさそうに寝ているレイヴンとリーゼを見て、
アーバインとムンベイは呆れていた。
とりあえず起こすことに。

「おいレイヴン、起きろ。着いたぞ。」

肩を揺さぶって、レイヴンを起こす。

「ん〜〜〜っ、もう飯か?」

「そういうボケはバンとビットだけで十分だ。」

レイヴンに対して初めてツッコミを入れるなぁ、とアーバインは思った。

「ほら、さっさと彼女を起こして外に出る。」

「彼女」というムンベイの言葉にレイヴンは反応した。

「ちっが〜〜〜う!そんなんじゃないって、いつも言ってるだろうが!」

「だったらお前の肩に乗ってるのは誰だ?」

アーバインがそう言うと、レイヴンは自分の隣を見る。
隣には当然リーゼが寝ている。
その寝顔を見て顔を真っ赤にするレイヴン。
だが、教師二人が見ているので見とれている訳にもいかず、

「おいリーゼ、起きろ!」

とリーゼを起こす。

「ん〜〜〜っ、もうご飯?」

「お前らやっぱり似てるよ・・・。」

目を擦りながらレイヴンと同じボケをかますリーゼに、
もう突っ込む気にもならなかった二人であった。

 

 レイヴン達がバスを降りて宿舎に向かう途中、
ホエールキングがあるのが見えた。
どうやらそれで彼らのゾイドを運んできたらしい。

 

 二人が宿舎に着くと、そこには待ちくたびれたみんなと
ホエールキングに乗ってきたシャドーとスペキュラーがいた。

「よし、みんないるな。
ここでゾイドバトル部の合宿をする。
今日は自由にしていいから、海で泳いでこい。」

アーバインの説明を聞くと、とりあえずそれぞれの部屋に向かう部員達。
もちろん、男子と女子は別々だが。

 

 水着に着替え終わり、先に男子が出てきた。

「あっ、忘れ物した。ちょっと取ってくる。」

ビットがそう言って、部屋に戻った。
が、次の瞬間、

「どわあぁぁぁーー!」

「エッチ、バカ、変態!」

というビットの叫び声と、リノンの怒りの声が聞こえてきた。

「どうしたんだ!リノン!」

ハリーが階段を上っていった後、

「あんたまで何やってんのよ!」

「うわぁ〜、誤解だ〜!」

と先程のハリーバージョンが聞こえてきた。

「何が起きたか容易に想像できるな。」

「ああ、そうだな。」

アーバインとバンがこんな会話をしている。
つまり、ビットが部屋を間違えてしまい、リノン達の着替えを見てしまった。
その後、ハリーも見てしまったというありがちな話だ。

『はぁ〜。』

他の5人のため息がその場を満たした。

 

 数分後、全員海岸へとくりだした。
もっとも、ビットとハリーは別だったが。

「バン、こっちこっち。」

「待てよ、フィーネ。」

バン達は海で楽しくおいかけっこ。
バラッドとナオミは二人でどこかに行ってしまった。
アーバインも遊泳を楽しんでいる。
一方、レイヴンはというと、

「レイヴン、泳がないの?」

「まだ眠いから、ちょっと寝させてくれ。」

「ちぇ、つれないの。まあいいや。
僕も寝ようっと。」

リーゼはそう言って、レジャーシートの上で寝ているレイヴンの隣に寝っ転がった。
レイヴンはすでに寝ている。
リーゼもすぐに眠りに落ちた。
その頃、トーマは、

「先輩、しっかりして下さい。」

とビット達の怪我の手当て。
相当こっぴどくやられたので、二人ともダウンしたままである。

 

 やがて夕方になって、

「おい、そろそろ上がるぞ。」

と言って生徒達を宿舎に戻した。

「さてと、全員戻って・・・無いな。」

まだ眠っているレイヴンとリーゼ。
実はさっき起きて、バン達と一緒になって遊んでいたのだが、
疲れてまた寝てしまったようだ。

「おい二人とも、起きろ。」

『ん〜〜〜っ、もうご飯?』

「さっきと同じボケをするな〜〜!」

バスの中と同じ会話をするアーバイン達だった。
この続きはまたの機会に。


サム冥府・HAYAさん、3度目のキリ番ゲットおめでとうごさいます。
何か海の話を書きたいな〜って思って書きました。
近々、本編でも現代版の海の話をやりたいと思います。
今度はキースが絡むと思うので、楽しくなりますよ。
では。

 

短編集TOPに戻る        ZOIDS TOPに戻る        Novel TOPに戻る