「あの頃の教師達」

 

「アーバイン、おっはよ〜!」

朝から元気な声で後ろから挨拶されたアーバイン。
あくびをこらえて声の方向を向いてみる。
まぁ、こんな大声で挨拶をするのは、大抵・・・。

「やっぱりお前か、ムンベイ。」

呆れた様子で声をかける。
おそらく「なんでこんなに元気なんだ」とでも思っているのだろう。

「な〜に、情けない顔してんのよ。」

「眠いんだよ。
昨日はゾイドバトルで相当疲れたからな。」

ちなみにアーバインのゾイドは黒いコマンドウルフ。
そしてアーバイン達の時代では、ゾイドバトルはスポーツという意識はなく、あくまで趣味の一環だった。

「バトル、バトルって、本当に男って奴は・・・。」

「『バカ』とでも言いたいようだな。」

後ろからそんな風に言われたので、2人が振り返ると、

「あっ、おはよ〜、ジャック。」

彼女がさっきと同じく挨拶をしたのは、アーバインの親友、ジャック・シスコだった。
彼のゾイドはライトニングサイクス。
だが、彼の目は他の人物を追っていた。

「あっ、キャロル!」

「はあい、アーバイン!」

ジャックの遙か後方で手を振っている人物に声をかけるアーバイン。
キャロルとはアーバインの恋人である。
ちなみに彼女のゾイドは赤いストームソーダー。

「親友の俺は無視かよ・・・。」

そんなジャックのぼやきは彼の耳には届いていなかった。
ちなみにアーバインは、早速キャロルに駆け寄って何やら話している。

「まあまあ、恋人同士はそっとしておいてやりましょうよ。」

そう言ってジャックを宥めるムンベイ。

「ほう、珍しいな。
お前が人の心配をするなんて。」

「悪かったわね。
どうせ私は意地悪ですよ。」

そう言ってムンベイは顔で怒っていても、心の中では暖かく2人を見守りたいという気持ちでいっぱいだった。
何故こんな気持ちになるのかは自分でも分からないでいたが。
そして、

「おい、いつまでもいちゃついてないで行くぞ!」

ジャックの声で2人はやっと我に返り、やっと4人揃って教室へと向かうことができた。

 

 彼らが教室に入ると、

「『お騒がせ4人組』がやっと来たな。」

「そうみたいだな。」

と、そんな会話が聞こえてきたものだから、
戸を開けるなり、

「誰が『お騒がせ』だ、キースにオコーネル!」

と怒るアーバイン。
流石にキースも宥める。
「お騒がせ4人組」とはもちろん、アーバイン、ムンベイ、キャロル、ジャックの4人の事である。
命名者はキース。
その理由は、大抵学園を騒がせているのは彼らだからである。

「そういえばキース。
あなた昨日の個人戦に出てたわね。」

キャロルがキースに聞くと、

「まあな、バッチリ優勝したぜ。」

と自慢げに話すキース。
キースはゾイドの中で一番速いサイクロンブレイダーに乗っている。
そして、飛行ゾイドの腕は確かなのと、
オーガノイド・サンダーを連れているので向かうところ敵無しなのである。
けれど、何故か彼は陸戦ゾイドの操縦が苦手。

「オコーネル、何やってんの?」

「シュバルツ先生に出す英語のプリントだ。
今日提出だからな。」

ムンベイの質問にあっさり答えるオコーネル。
ちなみにこの頃のシュバルツは非常勤講師である。
そして、それを聞いた4人の表情が凍った。

「そんなの・・・有ったっけ?」

アーバインの問いにコクリと頷くキース。

「今日・・・提出だっけ?」

ジャックの問いに今度はオコーネルが頷く。
だんだん顔が青ざめていく4人。
そして、

「ここは何処、私は・・・。」

「って、記憶喪失になるなーー!」

ハリセンで思いっきりムンベイの頭を叩くキース。
本当にどっから出てくるのだろうか。

『お願い、写させて〜!』

手を合わせて頼む4人に見かねて、しょうがなく了承する2人であった。
彼らがここまでするのには訳がある。
シュバルツは度々プリントを宿題に出すのだが、提出しないとその日居残りが決定。
しかも、課題を全問正解しないと帰れないという。
実際、アーバイン達がプリントをうっかり忘れてしまい、
現在の最長記録である夜中の8時まで残ったという。

「おはよう、皆さん。」

いきなり背後から声がしたのでビックリするアーバインとジャック。

「・・・よう。」

「・・・おはよう、ヒルツ。」

かなり引きつった顔で挨拶する2人。
ヒルツは2人の挨拶を確認すると、満足そうに席に着いた。
ちなみに彼、結構隠れファンがいるようである。
だが、彼の話し相手はオーガノイド・アンビエントだけだという。

「あったく、なんで朝からこんな事に。」

「毎度のことだろう。
気にすんな。」

そう言いながらも何処か疲れている感じのジャック。
これは明らかにゾイドバトルの疲れではない。

『はあ〜・・・。』

2人のため息がこの空間を満たした。
そして、彼らを哀れみの目で見ているムンベイとキャロル。
そして、彼らの担任・ハーマンが来た。
こうして今日も彼らの長い一日が始まった。
ちなみにこの日の1時間目の授業が英語だったので、プリントを写させてもらえず、
夜中の10時まで残り、見事に最長記録を更新した4人であった。


サム冥府・HAYAさん、5回目のキリ番おめでとうございます。
ちなみに生徒はアーバインの年齢に近い人達にしてみました。
(ちゃんとした教師はハーマンだけだけど)
あと、この物語は高等部なんです。
(バン達の方は中等部)
ビット達は今高等部の方に通ってます。
実は高等部と中等部は校舎が別なんですね。
(強引な設定・・・)
これで満足していただければ幸いです。
では。
(あっ、マリアを出すの忘れた・・・。)

 

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