「初めてのゾイド」
今日、Zi学園は休み。
バンとジークはマリアの提案で、朝から家の大掃除。
すると、そこにフィーネが訪ねてきた。
「バン、おはよう。何やってるの?」
「見て分かるだろ。掃除だよ、掃除。」
頭に三角巾、手にははたきという、
お決まりの格好で現れた彼に、
フィーネはちょっと笑う。
「バン、こっちを手伝ってくれない?」
「キュイイ〜。(手伝って〜。)」
「ああ、今行くよ!」
奥からマリアとジークがの呼ぶ声がしたので、そちらの方に向かうバン。
そして、彼女も結局手伝うことに。
今の方に2人が行くと、
マリアの指示であれこれ移動させているジークの姿が。
「あら、フィーネちゃん。いらっしゃい。」
「キュイ。(いらっしゃい。)」
「お邪魔しま〜す。」
彼女たちが軽く挨拶を交わすと、掃除はすぐに再開した。
フィーネが手伝ったので、かなり速いペースで掃除が進んでいく。
すると、バンが自分の部屋を整理している時に、ある物を見つけた。
「フィーネ、こっち来て見ろよ!」
一緒に部屋を片付けているフィーネを呼ぶバン。
彼女がバンの近くに行くと、彼は何かの本をその手に持っていた。
「どうしたの?バン。それ、何なの?」
「アルバムだよ、俺達が小学校だった頃の。」
彼女がアルバムを見ると、
「本当だ。懐かしいわ。」
そう言って、ページをどんどんめくる。
そこにはバンとフィーネの幼い頃が写っていた。
掃除をほったらかしで思い出話に花を咲かせていると、
「バン、覚えてる。この写真。」
「これは、・・・俺が初めてゾイドに乗った頃の写真だ!」
フィーネが指す写真を見て、バンは懐かしそうにそれを見ていた。
では、ここでその話を・・・。
夏の太陽が降り注ぐ中、
2人の幼い少年と少女が銀色のオーガノイドと共に走っていた。
少年の腕には当時流行のホバーボードがある。
「バン、待ってよ〜!」
「フィーネ、早く、早く!学校に遅れちゃうぞ!」
「キュイイ。(早く〜。)」
フィーネが幼なじみに必死になって付いていこうとするが、
女の子の体力じゃ追いつけず、
途中で息を切らして止まってしまった。
すぐにバンとジークが駆け寄る。
「おいおい、大丈夫か?」
「はぁ、はぁ・・・。もう・・・だめ・・・。」
「しょうがないなぁ。ジークに乗せてもらいな。」
彼の言葉に反応して、ジークが「乗って」と言わんばかりに背を向ける。
フィーネははぁはぁ言いながらも、何とかその背に乗ることが出来た。
バンは持っていたホバーボードに乗る。
オーガノイドの走るスピードは人間などが到底追いつけるものではない。
「時間がないから、とばして行くぞ。」
「は〜い。」/「キュイ〜。(は〜い。)」
そう言って走り出すバンとジーク。
彼らの通う小学校まではもうすぐだ。
その行く途中、黒い髪の男の子と青い髪の女の子を、
勢いで吹っ飛ばしてしまった事にバン達は気付いてはいなかった。
「大丈夫?レイヴン。」
「何だったんだ、あいつらは・・・。」
完全に不機嫌モードの2人をよそに話は進んでいく。
『ちょっと待てーーー!出番はこれだけか!』
その通り。はいはい、とっとと帰った、帰った。
バンが小学校に着くと、
「バン、フィーネ、遅刻ギリギリだな。」
『おはようございます。クルーガー先生。』
「はい、おはよう。」
2人は校門に立っていた人物に挨拶をすると、
颯爽と教室に向かった。
ちなみにバンの父親とクルーガーはZi学園時代の旧友である。
なんとか5年生の教室に間に合った2人。
彼らが教室に入ったすぐ後に彼らの担任が来た。
「起立、きょうつけ、礼。」
『おはようございます。』
本日日直のトーマの号令で生徒が一斉に挨拶。
担任は何故かアーバインだったりする。
「おはよう、みんな。今日は言いニュースがあるぞ。」
先生の言葉で生徒がざわめく。
「今日はこれからゾイド博物館に見学に行くこととなった。
だから、すぐに準備をして校庭に集合。以上だ。」
そう、ここはZi学園小学校。
だから決定事項もいい加減だし、
今は中等部で教鞭を震っているアーバインも、
小学校の担任をしているのである。
ちなみに彼はこの当時働きだしたばっかり。
先生の事はお構いなしにはしゃぐ一同。
特にこの人は、
「ゾイド博物館か〜。一度行ってみたかったんだ。」
「バンはゾイドが好きだもんね。」
ゾイド乗りはバンの夢。
将来は父親のような立派なゾイド乗りになりたいといつも願っていた。
その心からバンはかなりのゾイド好きに。
いまではゾイドの種類を全部言える程になっていた。
「バン、フィーネ、先に行くわよ。」
「あっ、待ってよ、ローザ。」
2人は慌てて彼女の後を追った。
走ること1時間、彼らの乗っているバスはゾイド博物館に到着した。
流石にあのゾイドを展示しているだけあって、規模はかなりの物。
ちなみにここに展示してあるゾイドは、みんなレプリカや石化した物ばかり。
流石に生きているゾイドをいつまでも飾って行く訳にもいかないのだ。
「では、ここで解散するから、午後の1時になったら戻って来るんだぞ。」
『は〜い。』
アーバインの言葉を合図にして、一斉に駆け出す生徒達。
バンはフィーネ、ローザと共に行動することに。
ジークはバスの所でお留守番。
トーマは・・・ここで出番終了。
「マジですか〜〜〜!」
「ご愁傷様・・・。」
アーバインもです。
「何だって〜〜〜!」
今日はバンがメインなんだから。
とっとと帰った、帰った。
バン達3人は原寸大のゾイドのレプリカに興味津々。
「うわぁ〜、これ、ゴジュラスだぜ。でかいなぁ〜。」
「これは、セイバータイガーね。格好いいなぁ。」
「こっちは・・・レイノスだ。」
それぞれが感想を漏らしていると、フィーネが何かを発見した。
「ねぇねぇ、こっち来て。」
バンとローザが彼女に駆け寄る。
「どうしたんだ?」
「何か見つけたの?」
「うん。」
かなり嬉しそうにフィーネが指す物を見ると・・・、
2人は絶句した。
「これ、・・・デスザウラーよね。」
「ああ、・・・一番危なっかしい・・・。」
いつまでも見上げていると、
首を痛めそうな石化した巨体がそこに置いてあった。
その大きさはゴジュラスの3倍は確実にある。
こんなのに襲われたら一溜まりもない。
実際に大昔、このデスザウラーが国を一夜で滅ぼしたという。
「デスザウラーって一回見てみたかったんだ〜。」
『へ、へぇ〜、そうなんだ〜・・・。』
さすが完全不思議系と心から思った2人であった。
学校から出された弁当を、まだ11時だというのに食べ終わり、
バン達は博物館の中庭に来ていた。
「確かここに体験コーナーがあったはずだけど・・・。」
地図を見ながらうろうろしている3人。
どうやら迷ってしまったようだ。
バン達が探しているのは、ゾイドに乗れるという体験コーナー。
以前からゾイドに乗りたいと思っていたバンが、これを見逃すはずがない。
「あっ、あった、あった。」
「あそこがそうなんだ。すごい広〜い。」
「行ってみようぜ。」
バンが走り出し、彼女らも慌てて後を追いかけた。
広場の広さは建物の数倍は裕にあり、
様々な種類のゾイドが走り回っている。
「すっげぇーーー!」
はしゃぎまくっているバンに少々苦笑いのフィーネとローザ。
早速乗ってみることにしたが、
「どうしたんだ?フィーネ。」
「またデスザウラーでも見つけたの?」
フィーネがある方向を見つめていた。
仕方なしにバン達も見てみると、
「あれは、・・・シールドライガーじゃん。」
「しかも、・・・すごく傷付いてる。」
そこにはシールドライガーが置いてあった。
遠目に見ただけでも、その機体はボロボロだということはすぐ分かる。
もう死んでいるのではと思うほど、生命力が感じられない。
「どうしたんですか、このシールドライガー。」
3人が近寄って、その側にいる係員の人に聞いてみた。
「ああ、こいつはゾイドバトルでかなり非道くやられちゃってね。
ゾイドコアに傷を受けてしまったんだ。
助かる見込みがほとんど無いって、専門家も言ってる。」
悲しそうにその男の人が言った。
彼の話によると、黒く赤い目をしたゾイドにやられたという。
それを聞いて、バン達もやりきれない気持ちでいっぱいだった。
こうしている間にも、ライガーの石化はどんどん進んでいる。
そして、苦しそうに鳴き声を漏らしていた。
「何とか助からないのかな〜。」
悲しげに見つめるローザ。
すると、フィーネが突然声を上げた。
「そうだ、ジークに頼んでみましょう。」
「そうだな、オーガノイドだったら、こんな傷すぐに直せる。」
早速バスまでジークを呼びに行った。
「グキュ〜、キュイ、ゴキュ。
(何とかやってみるけど・・・、ちょっと時間がかかるなぁ。)」
「どのくらいかかるんだ?」
「キュイ〜。(3日ぐらい・・・かな。)」
「そんなにかかるの?」
ローザが驚いて声を上げる。
本当にすぐ治ると思っていたらしい。
「キュイ、ゴキュ。
(ゾイドコアごと直すから、少し形を変える必要があるんだよ。)」
「そういえば、このライガーの持ち主は何て言ってるの?」
フィーネが係員に聞くと、
「もう、別のゾイドを買ったから、いらないんだとよ。
まったく、ゾイドをなんだと思ってるんだか。」
「なぁ、もし治ったら、このライガー、俺にくれない?」
バンが瞳を輝かせながら、係員にせがむ。
すると、「バンがゾイド好きみたいだから」という理由で、
快くO.K.を出してくれた。
実際、バンの年でゾイドを持っている事は、そんなに不思議ではない。
「ありがとう、おじさん!」
「お兄さん!」
「あ、ありがとう、お兄さん。」
「じゃあ、ジーク。お願い。」
バンと係員がそんな事を話しているうちに、
フィーネがジークに指示を出す。
ジークは光となってライガーと合体すると、
光の繭がライガーを包んだ。
「こいつは俺が責任を持って預かるよ。
今度の日曜日にでも来なさい。
その時に引き渡して上げるよ。」
『ありがとう、おじ・・・お兄さん!』
そう言ってバン達は帰っていった。
もう1時10分前だった為、ゾイドの試乗は諦めたようだ。
そして、約束の日曜日、バンとフィーネは、
ヴィオーラに送ってもらい、博物館に訪れた。
「お兄さん!」
バンが例の係員に呼びかける。
「おっ、来たな。結構格好良くなってるぜ、あのライガー。」
そう言ってバン達を倉庫に案内する。
そして、そこにはジークと、
今までバンが見たこともないゾイドがあった。
「繭がとけたら、こうなってたよ。」
「すっげぇー!」
「で、こいつの名前はどうするんだ?」
バンがしばらく考える。
「そうだ、『ブレードライガー』って言うのはどうだ。
こいつ、何でも切り裂くように突っ込んでいきそうだからさ。」
「ブレードライガーか。良い名前だな。」
「うん、すごく良い。」
「よぉし、よろしく頼むぜ、ブレードライガー!」
ブレードライガーが雄叫びを上げる。
それには獣王特有の荒々しい生命力が感じられた。
バンが一枚の写真を取り上げる。
それにはバン、フィーネ、ジークがブレードライガーを背にして写っていた。
「思ってみたら、ブレードライガーが俺の初めて乗ったゾイドだったな。」
「あれから4年か。バンもずいぶんライガーと仲良くなったわねぇ。」
「ああ、今じゃ、最高の相棒だ。」
窓からブレードライガーを見るバン。
すると、
「なあ、あの係員の人、どうしてるのかなぁ?
あの後、すぐに辞めたって聞いたけど・・・。」
「案外近くにいるんじゃない?」
「そうかな?
もしどっかで会ったら、バトルトーナメントを見てもらいたいな。
俺とライガーのコンビネーションを。」
そして、アルバムを閉じて、また掃除を始めるバンとフィーネであった。
その頃、バン達と同じ写真を見ている人物がいた。
「あれから4年か。まさか、あいつが学園にいたとはなぁ。」
「キュイ〜。(何見てんの?)」
「昔の写真だよ。」
そう言って黄色のオーガノイドに写真を見せる。
実はあの係員は、昔、博物館でバイトしていたキースだったりする。
そのすぐ後、旅に出てサンダーに出会ったのだ。
「偶然ていうのは、怖いねぇ。」
そんな事を言いながらも、
トーナメントでのバンの活躍を期待するキースであった。
HAYAさん、6度目のキリ番おめでとうございます。
こんなになりましたが、どうだったでしょうか?
試行錯誤した結果です。
では、これからもどんどん遊びに来て下さい。
そろそろ行かないと・・・、
『見つけたぞ、バカ作者!』
やばい、レイリーにアーさんにトーマだ!
では、これで!
(急いで逃げる)
『待てーーー!』