「ある恋の話」

   ○月×日

 ある場所の森にシャドーとスペキュラーがいた。

「グルル、ゴキュ〜。(で、何だよ、相談ていうのは?)」

本日シャドーを呼び出したスペキュラー。
実はレイヴンとリーゼはただいま別居中。
と言っても、リーゼはフィーネの所で世話になっているだけだが。
そう言う訳でシャドーとスペキュラーも当然別々に暮らしている。
そんな状態で呼び出すのだから、
何を企んでいるのかと半分呆れながら来ていたりするシャドーであった。

「グルル、ゴキュ〜。(最近、リーゼの様子がおかしくてね。)」

「グルルル。(どういう風に?)」

「グルル、ゴキュ、グルルル〜。
(何か最近ため息付いたり、物思いに耽ったり・・・。
それで、寝言でこんな言葉を聞いたの。)」

「グルル。(どんな寝言?)」

シャドーもだんだんと興味をそそられてきたみたいだ。

「グルル、グルル、ゴキュ。(「レイヴン、レイヴン」ってね。)」

「グルル〜、グルグル。
(なるほどねぇ〜。そういえばレイヴンも最近物思いに耽ってるなぁ〜。)」

「グルル、グキュ〜、グルルル。
(そこで相談、ちょっと協力してもらいたいんだけど・・・。)」

「グルル、グル。(まぁ、いいか。)」

そういって、スペキュラーに耳を貸すシャドー。
こうしてシャドーを巻き込んだスペキュラーの
「レイリーカップル作戦」がスタートした。

 

「グルルル。(ただいま〜。)」

「グルル〜。(おじゃましま〜す。)」

レイヴンの自宅にスペキュラー同伴でシャドーが帰ってきた。

「どうしたんだ、スペキュラーも一緒で・・・。」

「グル、グルル。(これ、リーゼから。)」

そう言ってスペキュラーが差し出したのは、一通の手紙。
何だと思ってレイヴンが中を見ると、

『レイヴン、ちょっと大事な話があるからそっちに行っていいかな。
本当に大事だから、2人ッキリで話したいんだ。
じゃ、明日行くから。リーゼ。』

「大事な話・・・か。」

(何なんだ、一体。改まって俺にこんなのを渡すなんて。
そんなに大事な話なのか?
もしかして・・・、いやいやそんな事は、でも、ひょっとして・・・。)

何かを散々考えているレイヴン。
今まで1人の女性のことでこんなに考える彼がいたであろうか。
彼を見つめているシャドーがそう思ったという。
そして、考えるのをやめるとスペキュラーに

「明日の午後にでも来い。」

と言って、自分の部屋に入っていった。

「グルル〜、ゴキュ〜、キュ〜。(第一段階成功!それじゃあ、後よろしく。)」

スペキュラーはシャドーにそう言うと、
次の準備のためリーゼの所に向かう。
シャドーはただ、「これでうまくいくのだろうか」と言う表情で
それを見つめていた。

 

所変わってDr.ディの研究所。
ここでリーゼとフィーネがディの助手をしている。
丁度バン、アーバイン、ムンベイもそこに来ていた。
実は今回の作戦はフィーネのアイデア。
最近、リーゼが悩んでいるのを心配して、
彼女がこの計画を立案したのだ。
バン達にはスペキュラーが戻ってくる前に、
彼女が事情と作戦を説明していた。
この輩がこんな面白い作戦に食いついてこないはずがなく、

「面白そうだな。」

「良いじゃない、面白そう。」

「しょうがないな、一肌脱ぐか。」

と言って、すぐに仕掛け人として加わった。

 

 そして、その日の夜、

「な、何言い出すんだよ、いきなり!」

「だって、リーゼが最近悩んでるみたいだから。」

「だからって、何で僕がレイヴンに告白っていう結論に行き着くんだよ!」

完全に顔が真っ赤になっているリーゼ。
すると、バンがメモ用紙を取り出して、その内容を読み出した。

「ええと、最近寝言で『レイヴン』と言った。」

リーゼ、その言葉にドキッ。
そう、このメモはスペキュラーが付けたもの。
続いてアーバイン。

「枕元にレイヴン人形が置いてある。」

またまた、ドキッとする彼女。
そして、ムンベイ。

「んと・・・、クワガタをとばして、レイヴンの行動を観・・・。」

「わあぁぁー!何でそんなことまで・・・!」

その言葉を聞いて、
「本当にやっていたのか」
と、にわかには信じられない一同であった。

「リーゼ、今のうちに言っておかないと、後々後悔するよ。」

「経験豊富だもんな、ムンベイ。」

そう言ったアーバインの腹に、ムンベイの蹴りが飛んだ。
アーさん、溜まらずにノックアウト。

「それに、明日行かないと、レイヴンに『嘘つき』と思われて、
嫌われても知らないわよ。」

「な、何で・・・。」

「だって、彼にはあなたが話があるって伝えてあるから。」

「グォン、グォン(うん、うん。)」

スペキュラーが頷くのを見て、味方がいないことを悟ったリーゼ。
そればかりか、
「明日行かないと、レイヴンに嫌われてしまう」
ということを聞かされ、二者択一の問答を迫られていた。

(レイヴンに嫌われたくもない、かといって告白だなんて〜。
あ〜、どうすれば良いんだ〜!)

心の中で絶叫しまくる彼女。
精神的誘導をされていることに気付いておらず、
ただ、悩み続けていた。
そして、

「わかったよ、行けば良いんだろ、行けば。」

何分、いや何十分悩んだのだろう、
やっと素直になった彼女にみんな一安心。

「じゃあ、明日はあたしが送っていってあげるよ。」

ムンベイがそう言うと、
作戦終了とばかりに全員それぞれの部屋へと戻っていった。
約一名を覗いて・・・。

「誰か・・・俺に気付いてくれ・・・。」

倒れているアーバインに気付く者はいなかった。

 

   ○月△日

 いよいよ、リーゼ告白の日がやってきた。
家ではレイヴンが首を長くして待っている。

「話って何なんだろうな、シャドー。」

「グルル、(さ、さあ・・・。)」

何度この質問を誤魔化したであろう。
実のところ、自分に振られる度に、
ビクビクしながら答えているシャドーが一番苦労しているのだ。

「グォン、ゴキュ〜、グルルル。
(ところで・・・レイヴン。リーゼのこと、どう思ってるの?)」

「な、何聞くんだ、いきなり!」

顔が真っ赤になっている主人を見て、
「本当に素直じゃないんだから。」
と、つくづく思ったシャドーであった。

 

 そんな事をしているうちにリーゼが到着。
シャドーは散歩を理由にして外に出ていった。

「ひ、久しぶりだね、レイヴン。」

「そうだな、とりあえず中に入れ。」

「う、うん。」

リーゼはすごくドギマギしている。
レイヴンも平静は装っているが、内心ドキドキしていたりする。
そして、その様子を遠くから見ている4人と3匹。

「おっ、中に入った。」

アーバインが眼帯で、他の輩は双眼鏡で彼らの様子を見ていた。

「うまくいくかなぁ。」

「まあ、何とかなるっしょ。」

ムンベイがお気楽発言に、バンとアーバインはただ呆れるばかりである。

 

「で、話ってなんだ?」

「えっと、・・・あの・・・その・・・。
その前に、何か飲まない?」

「しょうがないな。今持ってくる。」

レイヴンが台所に向かうのを確認すると、
リーゼはホッとため息をついた。

(だいたい、告白って無茶に決まってるじゃないか。)

そう思っているうちに彼がティーカップを二つ持って、戻ってきた。

「ほら、熱いから気を付けろよ。」

「うん。」

改めて彼が横に座ったので、完全上がってしまう。
そして、慌てて紅茶を飲もうとしてしまい、

「熱っ!」

口を火傷してしまった。

「おいおい、大丈夫か?」

レイヴンが心配そうに彼女を見ると、
ふと、目があってしまった。
そのまま見つめ合う形になる2人。
そして、

「り、リーゼ、俺も話があるんだ。」

「えっ。」

顔を真っ赤にしながら、レイヴンが口を開いた。

「よ、良かったら、い、一緒に住まないか?」

「えっ、えっ?」

レイヴンの突然の発言にリーゼの頭の中はパニック状態。

「いや、あの、その・・・。」

「嫌なら・・・いいんだが。」

「別に嫌じゃないよ!
ただ、ちょっと驚いちゃって・・・。ありがとう。」

リーゼの笑顔にドキッとする彼。
そして、

「なぁ、そういえばお前の話って何だ?」

「えっと・・・、もう言われちゃったから、いいや。」

もう一回見つめ合っていい雰囲気の2人。

 その頃、傍観者達は、

「あれでいいのか?」

「まあいいんじゃないの。結果オーライだし。」

「俺達の作戦とは逆になっちまったけどな。」

「リーゼも幸せそうだし、そろそろ退散しよっか?」

シャドーとスペキュラーと別れ、
4人はグスタフで一路、ディの研究所に帰っていく。
こうして、フィーネ達の作戦は幕を閉じた。
この後、レイヴンとリーゼは同棲を始め、幸せな日々を送っているという。


牙暁さん、キリ番ゲットおめでとうございます。
リンクも結構時間がかかってしまって、どうもすみません。
「レイリーをくっつけるためにスペキュラーが頑張る」というリクでしたが、
これでどうだったでしょうか?
では、感想を待ってます。

 

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