子供の頃の思い出

 

 熱い日差しが照りつけている中、少年と少女は町を歩いていた。
その顔はとても不機嫌である。
そして、体中埃まみれになっている。

「まったく、何だったんだ?あいつら。」

「さあ、ホバーボードとオーガノイドみたいだったけど。」

そう、この2人は幼き頃のレイヴンとリーゼである。
先程ホバーボードと白いオーガノイドに吹っ飛ばされ、
折角学校が休みだというのに不機嫌モード全開になっていた。
(「初めてのゾイド」参照)
ちなみに2人はこの頃、隣街の学校に通っており、
この日は開講記念日で休みだったため、こうして買い物に来ているのだ。
(BD学園ではありません、念のため)

「まあいい、今度会ったら殺す!」

「レイヴン、そんな物騒なこと言わないでよ。
まったく、もう。本当に君って怖いよね。
この間だって、シールドライガーをメッタメタにしちゃったし・・・。」

「ろくに乗れもしないくせに、あんな高等ゾイドに乗るからだ。」

埃を払いながら怖いことを言い出すレイヴン。
この間、どっかの金持ちのシールドライガーをゾイドバトルで潰した。
この頃の彼は今ほどではないが、ゾイドを操れない奴が大嫌いで、
よく草バトルでそんな輩のゾイドをコテンパンにしていた。
彼の愛機、ジェノザウラーと共に。

「さぁてと、さっさと買い物をして帰ろう。
シャドーとスペキュラーをニコルの所に預けて来ちゃったし。」

そう言って商店街に向かって歩き出そうとするリーゼ。
すると、

「ちょっと待て。」

急に彼が呼び止めたので、彼女はキョトンとしながら彼の方に振り向く。

「ほら、髪に埃が乗ってるぞ。」

そう言って彼女の髪の上から埃を払う。
いささか乱暴だったが、リーゼはそんなに気にしなかった。

「もう、もうちょっと丁寧にやってよ。
おかげで髪がくしゃくしゃになっちゃったじゃん。」

頬を真っ赤にしてそう言うリーゼ。
その表情は嬉しそうだ。
時折見せてくれる彼の優しさが、彼女には嬉しいのだ。

 

 しばらく歩くと、2人は大きなデパートに着いた。
彼らの住んでいる町では、こんな大きなデパートはない。
だからこそ、こうしてわざわざ来たのだが。

「そう言えば、ここで何を買うんだ?
聞くのを忘れてたが。」

「ひ・み・つ。さあ、入ろう。」

レイヴンの質問を簡単に受け流して、リーゼは中に入っていった。
彼も訳の分からないまま彼女の後に続く。

 

 彼女が向かったのはアクセサリー売場。
リーゼは何かを探しているようで、ショーウインドウをジッと見ている。
そして、レイヴンは・・・、

「遅い・・・。」

休憩所で缶ジュースを飲みながら彼女の帰りを待っていた。
元々待つのが苦手の彼に、たとえ10分間といえども、とても長く感じるものだ。

(女の買い物って・・・本当に長いんだな。)

そんな事を思いながら一気にジュースを飲み干す。
すると、

「ごめ〜ん、待った?」

「・・・だいぶ・・・。」

またもや不機嫌モードのレイヴンにリーゼはあたふた。
彼の機嫌を損ねるとろくな事がないのは彼女がよく知っている。

「ごめんね。」

「冗談だ、気にするな。
それで、何を買ったんだ?」

落ち込み気味のリーゼを気遣って、優しく宥めながらも、
やはり、彼は彼女の買ったものが気になっているみたいだ。

「だから、ひ・み・つ」

そう言って彼女は彼の唇を人差し指でそっと塞ぐ。
流石に彼もこの行為には顔を赤くして、黙りこんだ。

 

 彼らがジェノザウラーで街に戻った時には、正午を過ぎていた。
昼食も取らずに、彼らのもう1人の幼なじみ・ニコルの家へと向かっている。
オーガノイドを預けっぱなしなのだから当然なのだが。

 ニコルの家の前に着いた頃には、リーゼは眠ってしまっていた。
ちなみにジェノザウラーのコックピットは1人乗り用なので、
彼女は当然、レイヴンの膝の上。
そこで彼の胸に寄っかかって寝ているのだから、
レイヴンの頭に変な考えも浮かんできていたりする。
(おいおい、まだ小5だぞ・・・)
それを何とか押さえ込み、彼女の肩を揺さぶって声を掛ける。

「リーゼ、起きろ。ニコルの所に着いたぞ。」

「う〜ん、もうご飯?」

彼女のボケに少し呆れるレイヴン。
まだ寝ぼけている彼女を引っ張って、ニコルの家に入った。
すると、

パン、パン、パン。

突然のクラッカーの音に驚く2人。
そして、

「レイヴン、誕生日おめでとう〜!!!」

『ゴギャギャン。(おめでとう!!)』

一瞬何のことだか分からずにいた2人だが、

「あっ、・・・誕生日おめでとう!」

今まで寝ぼけていたリーゼが1テンポも2テンポも遅れて言うので、
レイヴンにニコル、シャドーとスペキュラーは呆れていた。
そう、この日はレイヴンの誕生日だったのだ。
リーゼがレイヴンを買い物に連れ出している間に、
ニコルとオーガノイド2体が準備を進める。
そして、家に戻ってきた時に全員で祝うという手筈だったのだが・・・。

「もう、リーゼが考えたんでしょう。しっかりしてよ。」

「ごめん、ごめん。さっきまで寝てたから。」

平謝りする彼女を見て、ハァ、とため息をつくニコル。
一方、レイヴンは、

「そうか、今日は俺の誕生日だったんだな。」

と、やっと自分の誕生日を思い出した様子。
すると、

「はい、これ。僕からのプレゼント。」

そう言ってリーゼが渡したのは、先程のデパートの包み。
中に入っていたのは、黒い水晶が付いているペンダントだった。

「安物だけど、レイヴンは黒が似合うから。」

そう言ってリーゼが彼の首に掛けてあげる。
当の彼は少々照れくさそうにしていた。
その様子をジッと見ているニコル、シャドー、スペキュラー。
こうして、この日は3人の思い出に残る日となった。
ちなみにシャドーの誕生日プレゼントとして、
ジェノザウラーをジェノブレイカーに進化させたという。


HAYAさん、7度目のキリ番おめでとうございます。
随分と待たせてごめんなさい。
いろいろと考えた結果がこうですが、どうだったでしょうか。
結局レイリーベースなってしまいますね、私って。
では。

 

短編集TOPに戻る        ZOIDS TOPに戻る        Novel TOPに戻る