「ビット達の初バトル」

 

 Zi学園のゾイドバトル部の部室では、
ビット達がなにやら着々と準備を進めていた。

「いよいよね、バトル部発足後の初バトル。」

「ああ、ワクワクするぜ!」

リノンとビットが意気込みを語りながら、
整備器具を片づけている。

「バラッド、調子はどう?」

「バッチリだ。
いつでもいける。」

バラッドは自分の愛機の駆動チェック。
ナオミはそれを手伝っている。
ちなみに彼らは当時から付き合っていた。

「リノン、何か手伝うことは?」

「じゃあ、あれとそれとこれとあれを運んでおいて。」

「O.K.マイハニ〜!」

お分かりだと思いますが、リノンに声をかけたのはハリー。
ちなみに今リノンが言った物の総重量は100sを超えていたりする。
流石“鋼鉄の女”、やることがえげつない・・・。

 

「ライガーの整備が終わったぜ。」

「こっちも大丈夫よ。」

「俺も大丈夫だ。」

今回のバトルメンバーはこの3人。
相手は、一般参加のチーム・タイガースだ。

「先輩、頑張って下さいね。」

「私たちも応援してますから・・・。」

「自分達の分まで戦ってきて下さい。」

バンとフィーネ、トーマが激励の言葉をかける。
ちなみにレイヴンはまだ転校してきたばかりで、
みんなに馴染んでおらず、そっぽを向いたまま。
リーゼはしっかりと手伝っていた。

「あいつの無愛想をもうちょっと何とかして欲しいな。」

「まぁ、仕方がないさ。
元々ああいう性格みたいだし、まだ学校にも馴染んでないんだろう。」

アーバインがバンの愚痴に応える。
じゃあ、リーゼは?という疑問を抱きつつも、全員は作業を終わらせた。

「準備も出来たことだし、出発しましょう。」

「みんな、ビッといくぜ!」

『オー!』

ビットのかけ声に部員が威勢良く声を上げる。
だが、声を上げたのはリノンとハリー、バン、フィーネ、トーマにリーゼだけ。
しかも、ハリーはバテていたので、実質5人だけである。
そして、全員のゾイドを乗せたホエールキングが出発した。

 

「ねぇ、チーム・タイガースってどんなチームなの?

「ゾイドバトルトーナメントで、ベスト16まで行ったことがあるんだそうだ。」

「けど、最近低迷が続いてて、今では予選落ちが多いんですって。
バトルでも負けてるみたいだし・・・。」

リノンの質問にバラッドとナオミが答える。
すると、その返答にビットは顔で笑った。

「どうしたんです?」

「いや、何でもない・・・。」

バンが不思議そうに聞いてきたが、
ビットがそんな返答をしたので、全員が疑問に思ってしまった。
だが、この疑問の解答はすぐに分かることになる。

 

 ホエールキングが到着した先は荒野と森、いくつかの山が広がっていた。
その真ん中に3体のセイバータイガーが展開している。

「今回のフィールドは荒野が70%、20%が森、残りが山になっている。
我々のゾイドは荒野に適しているので、そこで戦うように。」

トロスがゾイドに搭乗している3人に注意を促す。
ちなみにこの人は今の今までずっと寝ていた。
責任感のない監督である。

「いくぜ、ライガー!」

「リノン、行きま〜す!」

「いくぜ!」

ホエールキングの口が開き、
ライガーゼロ、ガンスナイパー、コマンドウルフACがフィールドに姿を現した。
すると、

「兄貴、あの白いライガーは・・・!」

「あの時のライガーや!
間違いない。」

「そや、あのライガーや!
2年前の落とし前、たっぷり返したる!」

と、タイガースが関西弁で騒ぎ始めた。
聞いている方はうるさくてしょうがない。

「ビット、あんた、何かしたの?」

「実は・・・、一昨年のバトルトーナメントの予選に出たとき、
俺がぶちのめしちゃって・・・。
あいつらの低迷が続いたの、その直後なんだよ。」

「へぇ、やるもんだな、ビット。」

ビットがその時の経緯を説明する。
その言葉に全員が驚きとともに感心していた。

「先輩って・・・、凄いんだな・・・。」

「流石、ゾイドバトルの勘だけは凄まじい物がある・・・。」

「誰も乗れなかったライガーゼロを乗りこなしてるし・・・。」

「ああ、まさに天性の才能だな・・・。」

バン、レイヴン、リーゼ、トーマの順で関心の言葉を述べている。
そうこうしているうちに、ジャッジカプセルが落下してきた。

「この地点より半径10q四方はゾイドバトルのバトルエリアとなります。
競技者、及びその関係者以外は立入禁止区域となります。
危険なので直ちに退去して下さい。
フィールド内、スキャン終了!
バトルフィールド、セットアップ!
チーム・ブリッツVSチーム・タイガース、
バトルモード0982、レディー・・・ファイト!!」

ゴングが鳴り、バトルが始まった。
ちなみにチーム・ブリッツとは、
ビット、リノン、バラッドの3人が揃ったときに使われるチーム名である。

「オマリー、ラインバック、
あの白いライガーとその仲間を倒して、今度こそ低迷脱出や!
気合い入れていくで!!」

『おう!』

タイガーがレーザーを撃ってきた。
狙いは火力の大きいリノンのガンスナイパー。

「うりゃ、うりゃ、うりゃ、うりゃー!」

それに応戦する形でリノンは弾を乱射する。
殆どが外れたものの、彼女の狙い通りに事は運ばれた。

「ま、前が見えへん!!!」

そう、彼女は弾幕を張って、敵の命中率を下げたのだ。
3匹のタイガーはその場に固まって立ち往生。
これ以上の標的は他になかった。

「行くわよ、ウィーゼルユニット・フルバースト!!!」

「喰らえ!」

リノンとバラッドが両サイドから、武器を発射、
2体のタイガーがその場に崩れた。
もう一体は弾を逃れるために前に走る。

「オマリー、ラインバック!!
くそ、こうなったらわい一人で・・・。」

カークランドが仲間を倒されたことに怒りを感じている。
だが、そのまま走り続けて、煙を抜けた先には・・・。

「待ってたぜ!」

ビットとライガーゼロが待ち受けていた。
それに驚き、彼らは立ち止まった。

「へっ、どうやら運に見放されたようだな。」

「うるさい!
元はといえばお前がわいらの運を吸い取ったんやないけ!
こうなったら、お前だけでも倒したる!!」

「往生際が悪いんだよ!」

その言葉をきっかけに2体が同時に走り出す。
片方はビームを乱射しながら、
そしてもう一方は、顔の横のフェアリングを開き、爪を光らせながら。

「喰らえや!!」

「いっけぇー、ストライクレーザークロー!!!」

ライガーが飛び上がり、一気に爪を振り下ろす。
その刹那、セイバーの右側の足と砲塔が吹っ飛ばされた。
流石のセイバーもライガーゼロの格闘性能には敵わない。
当然、セイバーはそのままシステムフリーズを起こした。
ライガーゼロが勝利の雄叫びをあげる。

「バトルオールオーバー、バトルオールオーバー!
ウィナー、チーム・ブリッツ!!」

ジャッジマンが勝ち名乗りを上げ、このバトルは終了した。

「よっしゃー、勝ったぜ!」

「やったわ!」

「まぁ、当然だな。」

バラッドよ、君は弾を乱射しただけだろ・・・。
何はともあれ、Zi学園ゾイドバトル部の初バトルは勝利に終わった。

 

 ホエールキングに戻ると、早速バン達が駆け寄った。

「先輩、凄かったですね。」

「まぁ、タイガースとは一回やってるし、
攻撃がワンパターンだからな。
それほど苦じゃなかったよ。」

「なんか、物足りないのよね。」

「そうだな、もう一戦やってもいいぐらいだ。」

バラッドの発言にこの男が反応した。

「じゃあ、帰ったら俺とやるか?」

そう、レイヴン。
流石にそれは勘弁と3人とも首を横に振って拒否した。

「そうだ、賞金の方はどうなった?」

それを切り出したのはバラッド。
守銭奴ぶりが発揮されている。

「ああ、賞金ね・・・。
ちゃんとあげるから・・・、心配しないで・・・ね。」

なんか顔を引きつらせているトロス。
はっきり言えば凄く怪しい。

「まぁ、俺は少なくてもいいけど。
臨時収入があったし・・・。」

『臨時収入?』

ビットの発言に全員が不思議顔。

 

 その頃、タイガースは、

「カークランド、わいのタイガーのレーザー砲がないで!」

「俺はミサイルポッドや!」

「俺も3連衝撃砲が無くなってる!!」

と、パーツが無くなっていたので大騒ぎしていた。

 

「あんたも悪ね・・・。」

リノンが呆れながらぼやく。
お分かりだとは思いますが、犯人はビット。
彼にはパーツ集めの趣味があるのだ。

 

 そしてその後、学園に戻った部員達を待っていたのは、
レイヴンとバトルという過酷な試練であった。
なぜ手合わせしたかって?
トロスが、

「レイヴンとバトルして勝ったら賞金を渡す。」

と言ったからである。
結果は言うまでもなく、レイヴンの勝ちに終わり、
賞金はトロスに全部持って行かれた。

 


フルアーマーシールドライガーmk-Uカスタムさん、
キリ番ゲットおめでとうございます。
「ビット達のバトル」ということで書かせていただきました。
いかがだったでしょうか?
ちなみにタイガースは、「やっぱり最初だから」という理由で出しました。
結構使いやすいキャラですしね。
本編の方もいよいよゾイドバトル開始です。
こうご期待。

 

短編集TOPに戻る        ZOIDS TOPに戻る        Novel TOPに戻る