「勝利への誓い」
〜シュダの過去〜

 

 僕、ミレス・エージェント、14歳。
4年前、DS団のシュダさんに拾われました。
シュダさんは僕を弟のように可愛がってくれ、
そのお兄さんのシドさんも僕にとっては、お兄さんであり、お父さんのような存在。
でも、この2人、仲が悪いみたいなんです・・・。
シドさんは普通に接しているつもりなんですが・・・、シュダさんは一方的に関係を絶っている・・・。
シュダさんと会話するのは、僕と猫のリネアと蛇のバイプぐらい。
(動物と会話する時点でかなり怪しい・・・。)
シドさんは「自分と比べられたことが原因だ」と言って、自分を責めてばかり・・・。
でも、僕、知ってるんです。
シュダさんが人を信用しなくなった訳を・・・。

 

 あれは、僕がシュダさんに拾われてDS団に入った、4年前にさかのぼります。
当時、バックドラフト団もチラホラと活動していた程度で、
デッドスコルピオ団はあまり目立たない存在でした。
そのせいか、シュダさんはただ誘われるがままに入ったそうなんです。
シュダさんは入団の挨拶のエピソードは有名だそうです。

「この度、我がデッドスコルピオ団に入団してくれた、シュダ・ウィンディッツ君だ。
諸君等も知っての通り、あの『天才』、シド・ウィンディッツの実の弟だ。」

当時の幹部(今のシドさんの立場の人)がそう言うと、
シュダさんはこう言ったそうです。

「俺は“シュダ・ウィンディッツ”だ。
“天才シドの弟”なんて扱いはするな。
あくまで、俺は俺だからな。」

この時から、シュダさんはシドさんをライバル視していたようです。
そして、“天才シドの弟”と呼んだ人は、練習試合でボロボロにされたそうです。
僕はその半年後ぐらいに拾われました。

 

 僕は物心ついたときにはもう孤児院に入ってました。
両親は事故で亡くなったそうです。
そして、ゾイドバトルを1人で見に行った時でした。
当時、目立った友達もおらず、1人で遊ぶことが多かったです。
崖の上で観戦している僕にシュダさんが声を掛けてきました。
・・・最初、僕は「恐い顔の人だなぁ・・・。」と思ってしまいました・・・。
だって、その当時から蛇顔だったんです〜!
ちなみに僕も、この当時からこんな喋り方でした。

「おい、こんなところで何やってる?
危ないぞ。
親はどうした?」

「・・・いません・・・。
幼い頃に死んだです・・・。」

「孤児か・・・。
なぁ、俺の弟にならないか?」

こう言われた時、凄く嬉しかったです。
後でシュダさんは「俺に似ている気がした」と言いました。
シュダさんも目立った友達があまりいなく、いつも1人で行動していたみたいです。
そして、僕はシュダさんに引き取られました。

 

 会った当時のシュダさんは優しかったです。
他の団員ともよく話はしていたし、練習試合の時も楽しそうでした。(上記の例は除く)
僕が付けているヘアバンドもシュダさんが買ってくれたです。
そして、シュダさんにも1人友達がいました。
名前はロイドさんといいました。
フルネームは忘れましたが、シュダさんがDS団員になる前から2人は親友だったようです。
銀髪で格好いい人と覚えています。
彼にも弟がいたようです。
名前は聞きませんでしたが・・・。
ライトニングサイクスを駆り、チーム・レイの立派なウォーリアーでした。
シュダさんもDS団に入ってからウォーリアーになりましたが、ゾイドにはその前から乗っていたそうです。
それは、黒いガンスナイパー。
今も時々、それには乗ってます。

「お前はまだバトルはしないのか?」

「さぁな。
たぶん、そのうちやると思う。」

「もし、俺と当たったら、手加減は無しだぜ。」

「ふっ、望むところだ。」

2人は親友であり、ライバルでした。
ロイドさんにはDS団と言うことは内緒でした。
組織の上の方からそう言われていたからです。
その理由は当時のシュダさんも知りませんでした。
あの時までは・・・、

 

 シュダさんがバトルデビューした試合、僕もそれを観戦してました。
その相手はなんと、ロイドさんのいるチーム・レイだったんです。
シュダさんも驚いたんですが、「自分の力を試すいい機会だ」と言ってました。
以前から、戦ってみたかったみたいですし・・・。
そして、運命のゴングは鳴ったんです。

「チーム・レイVSチーム・クリムゾン、
バトルモード0999、レディー・・・FIGHT!!」

そう、ジャッジはダークジャッジマン。
これはダークバトルだったんです。
チーム・レイの方は「個人の持ち物で、これもどこかの金持ちの個人的なバトル」、
そのぐらいにしか考えてなかったみたいです。
実際、ダークバトルは一部しか広まっていなかったし、
ダークジャッジマンがどういうものか、全く情報がなかったんです。

 

 最初、試合の方は普通のゾイドバトルみたいにフェアプレイが続いてました。
シュダさんもロイドさんも楽しそうでした。
それもそうです。
ダークバトルの恐ろしさなんて、2人は知る由もなかったんですから。
試合が動いたのは、チーム・クリムゾンのリーダーの乗るアイアンコングが、
チーム・レイのコマンドウルフとシールドライガーを蹴散らしたときです。
アイアンコングは相手がフリーズしたのにも関わらず、攻撃を止めなかったのです。

「リーダー、何してるんだ!?
もうフリーズしたんだろ?
それ以上やったら、死んじまうぞ!!」

シュダさんはそれに気付き、すぐさま止めにかかりました。
けど、あろう事かそのリーダーはシュダさんにまで攻撃したんです。

「ぐわぁ!!」

「シュダ、お前にはまだ話してなかったな。
DS団はBD団と裏で繋がってるのだ。
そして、これはダークバトル。
何でもありの極悪非道のバトルなのだ。」

その時、僕達は初めて自分たちの誤解に気付いたんです。
そして、アイアンコングはサイクスに向かってミサイルを乱射しました。
ロイドさんのサイクスはシュダさんとのバトルで足を損傷してました。
だから、避けようがなかったんです。

「ぐわぁ!!」

サイクスは崩れ落ちました。
そして、アイアンコングはハンマーナックルを大きく振り上げました。

「止めろ・・・。
止めろーーー!!!」

シュダさんは叫びました。
血や魂をも吐き出しそうな勢いで。
ですが・・・、無情にも腕は振り下ろされました。
サイクスの頭に向かって・・・。

 

 それから、シュダさんは人が変わりました。
毎日、トレーニングルームに隠り、
自分が怪我しても、特訓を止めることはありませんでした。
そして、その時のリーダーは1ヶ月後に病院送りとなりました。
シュダさんは特訓を重ね、譲り受けたジェノザウラーを乗りこなし、
練習試合の時、ボロボロになるまで相手をいたぶり続け、トドメに荷電粒子砲をお見舞いしました。

「ロイドやミレスに免じて命だけは助けてやる。
その代わり、俺の前に二度と姿を見せるな!」

シュダさんの言葉は憎しみに満ちてました。
僕はもちろん、団員は全員、恐怖を感じたそうです。
ここに「毒蛇のシュダ」が誕生しました・・・。

 

 ロイドさんは両足を複雑骨折、左肩を脱臼、右腕を骨折という大怪我を負いましたが、
命に別状はなく、9ヶ月後に無事退院しました。
ですが、もうゾイドには乗れなくなってしまったようです。
確かではないのですが、彼の意思は弟さんに受け継がれたと聞きます。
ハッキリしないのは・・・、シュダさんはロイドさんに会ってないからなんです。

「合わす顔がない。
俺は・・・、あいつを救えなかった・・・。」

そして、シュダさんはDS団に居続けました。
性格も大きく変わり、僕以外の人は一切寄り付かなくなりました。
その後、彼のお兄さんであるシドさんも入団。
シュダさんの変貌ぶりに驚いたそうです。
シュダさんはDS団にいる理由を語ってくれました。

「俺はもっと強くなる。
ロイドを救えなかったのは、俺が無力だったからだ。
他人がどうなろうと知ったこっちゃねぇ。
俺は、絶対に強くなる!!」

そして、勝利への執念が芽生えたのです。
でも、本来優しい人が他人を傷付けるのに耐えられるものでしょうか?
それを晴らすかのように、毎日特訓の日々・・・。
耐えられるはずがないんです。
あの人の心には大きな氷山が浮かんでるんです。
それが自分の行きたい場所も遮ってる・・・。
シュダさんの氷山は溶かすことが出来るのでしょうか?
その鍵はロイドさんが握っている、そう思えるんです。
僕は・・・、どうしたらいいのでしょうか?
ただ、シュダさんを信じて、ついていくだけしかできないのでしょうか?

 


シュダの過去、お伝えしました。
私も久々に暗いのを書いてしまいました・・・。
シドも知らないシュダの過去。
ロイドはどっかで出てきます。
自分で書いててなんですが、かなり深くなってしまった・・・。
ミレスの独白でお伝えしましたけど、彼も辛い過去を背負ってるんですね・・・。

 

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