「部活の始まり」

 

 学校が始まって3日目、バンはもうへばっていた。
始業式からずっとレイヴンに追いかけ回されているからだ。
そして今日も、

「バン、今日こそ勝負だ!」

「ったく、しつけーなー。
しつこい男は嫌われるぞ!」

校舎中を逃げ回っているバンと、それを追いかけるレイヴンの姿があった。

「このまま逃げ切れると思うなよ!シャドー!」

レイヴンがそう叫ぶと、突然彼のオーガノイド・シャドーが飛び出してきた。
バンはそれに驚いて失速してしまう。
そして、その隙にレイヴンはバンの腕をつかんだ。

「やっと捕まえたぞ。」

「くそっ、離せ!ジーク!」

しかし、ジークは現れない。
レイヴンが微笑みながらその訳を言った。

「ふふん、無駄だぞ、バン。
リーゼに頼んでスペキュラーにジークを押さえてもらってるんだ。
さあ、観念して俺と勝負しろ。」

バンは抵抗をしていたが、諦めたらしく急におとなしくなる。

「わかった、わかった。どうせ今日の授業は昼までだし、
しかもその後は部活だから、じっくり勝負してやるよ。」

レイヴンはそれを聞くと、バンをつかんでいる手を離した。
彼はため息をつきながら愚痴をこぼす。

「はぁ、何でこうなるんだか。
レイヴンと勝負すると、ライガーがボロボロになるから嫌なんだよな。」

バンはがっくり肩を落としながら教室に戻った。

 

 そして放課後、ジークとフィーネとともに部室へ向かうバンの姿があった。
フィーネの作ってくれた昼食を食べ終えた後らしく、満足そうな顔である。

「ちょっと塩辛かったけど、うまかったぜ。
サンキューな、フィーネ。」

「これでも足りないぐらいだったんだけどな。」

「キュウ〜。(塩分とりすぎだって、フィーネ)」

そんな会話をしているうちにバン達は部室に着いた。
バンの部活とはその名も「ゾイドバトル部」といって、
生徒や教師がゾイドバトルの腕を磨いて、ゾイドバトルトーナメントに出場するための部だ。
部長はバン、マネージャーはフィーネとリーゼ、部員はトーマとレイヴン、
参加している教師はアーバイン、顧問はムンベイとハーマン、シュバルツといった具合だ。
バンは部室の扉を開けると、そこにはもうメンバーが集まっていた。

「やっと来たな、バン。
さあ、早速勝負だ。」

「はいはい。」

やる気のなさそうな声でバンが返事をすると、
レイヴンが闘技場に続いている扉のノブに手を伸ばそうとする。
その瞬間、突然入り口のドアをノックする音が響いた。

「どうぞ。」

フィーネが答えると、扉が開いた。
すると、男の子と女の子が立っていた。

「失礼します。
あの〜、ゾイドバトル部というのはここですか?」

「ああ、そうだけど・・・君達は?」

バンが答える。

「はい、1年のルドルフといいます。
この部に入部しようと思って。」

「私は彼の幼なじみで、同じく1年のメリーアンともうします。
マネージャーになろうと思って来ました。
以後お見知り置きを。」

「ああ、入部希望者か。
俺は2年のトーマだ。
この部の部長を・・・。」

「部長は俺だっつうの!」

バンが思わずつっこむ。

「うるさい!
お前を部長と認めた覚えはない!」

「なんだと!」

「まあまあ、二人とも。
お客さんの前でケンカしないの。」

フィーネが落ち着いた調子で二人をなだめる。

「すみません、フィーネさん・・・。」

トーマが顔を真っ赤にして謝った。
実は、トーマはフィーネのことが好きなのだ。
その頃、バンはルドルフの相手をしていた。

「そうか、入部にはテストをクリアしないといけないけど・・・。」

ルドルフは驚いた表情で聞く。

「えっ、テストってどんなものなんですか?」

「部員とゾイドバトルをして1勝でもすればいいんだけど。」

ルドルフはしばらく考え込んだが、

「やります。」

「そうこなくっちゃ。
じゃあゾイドと一緒に裏の場に行ってくれ。」

「はい。」

メリーアンが心配そうな顔でルドルフに言った。

「ルドルフ様〜、怪我に気を付けて下さいね。
私はここで見ております。」

ルドルフは頷くとゾイドを移動しに裏庭に向かう。
その後、レイヴンが怒った口調でバンに言った。

「おいバン、俺達の勝負はどうした。」

「テストの後でいいじゃねえかよ。
さあてと俺はハーマン達を呼んで、審判をしてもらわないとな。
アーバイン、最初に相手をしてくれないか。」

「別に構わないぜ。
相棒もたまには暴れさせないとな。」

「サンキュー、頼むぜ。」

そう言ってバンとフィーネも職員室に向かう。

「・・・見事に逃げられたね。
レイヴン、元気だしなよ。」

「・・・・・・。」

リーゼの慰めにも言葉がでないレイヴンであった。

 

 そして数十分後、すべての準備が整いハーマンがゴジュラスに乗って現れた。

「ではこれよりゾイドバトル部入部試験を行う。」

観客席にはマネージャーの3人に加え、
スペキュラー、ローザ、ルイーズ理事長、オコーネル、ムンベイが座っている。
上空にはストームソーダーに乗った警備主任のロッソと警備員のヴィオーラが高見の見物。
他の部員はそれぞれのゾイドに乗り込んで観戦している。

「ルドルフのゾイドはセイバータイガーか。
結構いい機体だな。
アーバイン、油断するなよ。」

「わかってるって。
よしっ、行くぜ相棒!」

ライトニングサイクスが颯爽とフィールドに登場した。

「それでは第1試合、始め!」

まず先手をとったのはルドルフ。
セイバーのストライククローをお見舞いしようとしたのだが、
機動力ではサイクスの方が勝っていたので避けられてしまう。
すかさず背中のビームガンで攻撃したが、これも避けられる。

「結構いい腕してるじゃないか。
でもまだまだだな。」

今度はサイクスが背中のパルスレーザーライフルで応戦してきた。
セイバーは何とか避けたものの、後右足に被弾してしまい体勢を崩してしまう。

「後の試合に響いちゃいけないからな。
これで終わりにするか。」

サイクスはセイバーに向かって最高速で突っ込む。
セイバーはなす術もなくサイクスの体当たりに突き飛ばされてしまった。

「あちゃ〜、コンバットシステムフリーズか。」

「試合終了、アーバインの勝ちだ。」

サイクスは高々と勝利の雄叫びを上げる。

「20分間休憩。
ルドルフはその間にゾイドを修理するように。」

ルドルフはトボトボとセイバーを修理ブースに運ぶ。
その頃、バンは次の相手を選んでいた。

「次は・・・トーマ、お前がいってくれ。」

「まったく、しょうがないな。」

 

 その頃、ルドルフはディに修理を頼んでいた。

「このぐらいならすぐに直るじゃろう。」

「よろしくお願いします。」

隅で落ち込んでいるルドルフに近付いてくる人影があった。
ストームソーダーに乗っていた警備員の二人である。
ルドルフの家は有名な金持ちの家で、彼らはそこの警備もやっている。
そしてルドルフのゾイドの師匠でもあるのだ。

「どうしたんだ、いつもの元気は。」

「あっ、ロッソにヴィオーラ。」

「アーバインは結構凄腕のゾイド乗りだから。
そんなに気を落とさないで。」

「でも、なんだか自信をなくしてしまって。」

そういってがっくり肩を落としたルドルフ。
それを見かねたロッソは、

「ルドルフ、お前はゾイドの操縦に何が必要だと思う?」

「えっ・・・。」

「確かに操縦技術も必要だが、それ以上に必要なことがある。
それは心だ。」

「・・・こころ?」

「そうさ、ゾイドは心で動かすものさ。それを忘れるな。」

その言葉を聞いた途端、ルドルフは笑顔になった。

「ありがとうございます。」

「私たちも応援しているから、頑張ってね。」

「はい!」

セイバーの修理も終わり、ルドルフは颯爽と闘技場にセイバーを走らせる。
審判もシュバルツに変わり、アイアンコングが出てきた。

「それでは第2試合、始め。」

「フィーネさん、見ていて下さい。
私の勇姿を。」

そんなことをいっている間にセイバーはディバイソンの目の前まで来ていた。
そしてストライククローが見事にディバイソンの前右足に決まる。
その速さにみんなが目を見張った。

「おいおい、さっきとは別人みたいだぜ。」

「あれじゃあトーマも負けるかもな。」

バンとアーバインがそんな会話をしているとも知らずに、
トーマはディバイソンに付けているA.Iのピークに命令していた。

「少し遊びすぎた。
ビーク、メガロマックスだ。」

「ピッ、ピルル。(了解)」

ディバイソンの背中に付いている17連突撃砲の銃口が光り、
一斉に弾が発射され、セイバーが爆煙に包まれる。

「やったか。」

だが、煙の中からセイバーの無事な姿が現れた。
当たる直前に後ろに飛んで避けたようだ。

「行きますよ。」

セイバーがジャンプしてディバイソンに近付くと、
とっさにディバイソンの喉を鋭い牙で噛み切った。

「うわぁ〜!
・・・えっ、コンバットシステムフリーズ?そんな〜。」

「やった〜!」

「試合終了、ルドルフの勝ちだ。
ルドルフ君、入部おめでとう。」

観客席からも拍手が飛び交う。

 

 その頃、レイヴンは、バンとの戦いに意気込んでいた。
ジェノブレイカーもうなり声を上げている。

「やっと終わったか。行くぞシャドー!」

「グルルル。(O.K.レイヴン)」

シャドーもやる気十分だ。

「よし、いくぞバン。
・・・って、バンが・・・いない?」

レイヴンは驚いていた。
さっきまでいたバンとブレードライガーがいないのだ。

「おい、リーゼ。バンを知らないか。」

観客席にいたリーゼに聞いた。

「いいや、知らないけど。
そういえばフィーネもいないね。
スペキュラーは知らない?」

「グルル。グルッ、グル。(知らない。そういやジークもいないね)」

観客席にいたフィーネまでいないのだ。
そして、アーバインから真実を聞かされた。

「ああ、バンだったら、さっきフィーネと一緒に帰ったぞ。」

「なんだってーーー!」

レイヴンは絶叫した。
そして、

「レイヴン、元気出してよ。ねぇ。」

「・・・リーゼ、頼むからほっといてくれ・・・。」

帰り道、リーゼにまた慰められながら帰ったレイヴンであった。


なんだかトーマとレイブンが哀れ・・・。
でもバンとレイヴンの戦闘を書くと軽く1ページを越えるんで勘弁して下さい。
第三話もこうご期待。

 

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