「デートは災難!?」
今日は金曜日。
生徒達は明日からの連休の予定を立てています。
「フィーネ、明日、暇か?」
「ええ、特に用事もないけど。」
バンが辿々しい口調で突然聞いたにも関わらず、
いつもの調子で返すフィーネは流石である。
「あのさぁ、遊園地のチケットがあるんだけど、
一緒に行かないか?」
そう言う彼の手には、最近出来たばかりの遊園地のタダ券が握られていた。
「ええ、いいわよ。」
それを見て嬉しそうに言うフィーネ。
バンも思わずガッツポーズ。
だが、それを影で見ている者が・・・。
「う〜、フィーネさんをデートに・・・。バンの奴〜。」
そうトーマ。
流石に羨ましいらしく、本当に扉の陰に隠れて見ていた。
そう、ここは教室だというのに・・・。
「トーマさん、何しているのですか?」
その声にビックリして、彼が慌てて後ろを振り返ると、
そこにはメリーアンとローザが立っていた。
「こ、これはお2人共、お揃いでどうなさったでこざいますか?」
かなり動揺しているらしく、
トーマ自身、変な敬語を言っていることに気付いていない。
そんな彼に呆れた様子で声を掛けるローザ。
「トーマさん・・・、そんなとこでコソコソしてたら、誰だって怪しむわよ。」
「そんなにフィーネさんを取られたのが悔しいのですか?」
メリーアンの言葉に何かが刺さったトーマ。
「図星ですわね。」
分かりやすい人と2人は心底思ったとか。
すると、トーマはあることに気が付いた。
「あれ、2人が持っているものって。」
そう、2人の手にもあのタダ券が握られていた。
「そうですの。私もルドルフさまと一緒に、明日デートを・・・。
ああ〜、今からもう待ち遠しいですわ。」
完全に妄想モードに入ってしまったメリーアンをよそに、
2人は話を進める。
「トーマさん、もし良かったら一緒に行かない?」
「へっ?」
ローザの急な一言にトーマ絶句。
そりゃそうだ。何たって彼は女性とまともに付き合ったことがないのだから。
「ほ、本当に、わ、わわ、私でいいのですか?」
完全に動揺しまくりのトーマ。
すると、
「あのね、ただ他に行く人がいないだけなんだから、
あんまり変な想像しないでよ。」
「え、そうなんですか。」
それを聞いてトーマはちょっとガックリした。
だが、本当にちょっとだけだったりする。
内心かなり喜んでいた。
しかし、何故こんなにチケットが出回っているのだろうか?
実は仕掛け人がいたりする。
所変わって職員室。
「おい、キース。何持ってんだ?」
アーバインがキースの持っている紙の束に気付き、尋ねた。
「遊園地のタダ券。ほら、最近オープンしたばかりの。」
「あそこね。今話題になってる奴でしょ。」
会話に入ってきたのはムンベイ。
これは面白くなってきたとキースは口元で笑う。
明らかに何かを企んでいる。
「ああ、その通り。
俺の知り合いがそこで働いててな、たっぷり貰ってきたんだ。
そうだ、2人もどうだ?」
キースがそう言ってチケットを差し出すが、
「な、何でこんな奴と!」
「俺もだ!」
そう言って2人共行ってしまった。
「おやおや、絶妙なカップルを逃してしまったな。」
「そう思うだろ。
でも、チケットをアーバインのポケットに入れておいたから大丈夫さ。」
声を掛けてきたのはシュバルツ。
彼も何か企んでそうな感じである。
「他の目立ったカップルにもチケットを渡しておいたし。
面白くなってきたな。」
「そうだな。」
2人の周りに近寄りがたい雰囲気が流れている。
その証拠に職員室に誰もいない。
1人を除いて・・・。
「さてと、俺はもう一カ所寄らないとな。」
「彼らの所か。」
「そういうこと。では、また明日。」
そう言ってキースは颯爽とどこかに行ってしまった。
「さて、私はもう一仕事しないとな。」
シュバルツは1人残っている人物を目指して、どんどんと進んでいった。
そして、もう1人。ここに悩める青年がいた。
「ったく、キースの奴。何だって俺にこんなものを・・・。」
ぶつくさ言いながら、その手に持っているチケットを大事そうに持っているレイヴン。
そう、彼もキースとシュバルツの企みに乗ってしまったのだ。
しかし、当の本人達はまったく気が付いていない。
「どうしろってんだ。ったく。」
そう、彼のお相手といったら、リーゼしかいない。
だが、そんなこと恥ずかしくて言える訳がない。
「覚悟を決めるか・・・。」
さんざん迷った挙げ句、
やっと決意を固め、レイヴンはリーゼのいる屋上に向かった。
案外、彼は「うぶ」なのだ。
この後、オーガノイドが5体もいる中、決死の告白をしたレイヴン。
この話はちょっと省略・・・。(本人の強い希望)
一体キースとシュバルツは何を狙っているのだろうか。
そして、当日。
ブレードライガーを駆って、遊園地前に到着したバンとフィーネ。
流石に話題になっているだけあって、かなり規模がでかい。
例えて言うなら、ホエールキングが20機ぐらい軽く入り、
尚かつウルトラザウルスも余裕で入りそうな広さである。
「着いたな。」
「バン、早く行きましょ。」
バンはいたって普通の格好で、
フィーネはピンクのワンピース。
2人は駆け足で遊園地へと入ろうとしたが、
かなり見慣れたゾイドがたくさん並んでいた事に気付き、
ふと足を止めた。
「なあ、あれって『ライガーゼロ』だよな・・・。」
「うん、『ディバイソン』もあるわ。」
そう、ライガーゼロを始め、やたらと装備を付けたガンスナイパー、
青いコマンドウルフ、赤いガンスナイパー、レドラー、
ディバイソン、ゴドス、ライトニングサイクスにグスタフ。
そして、
「この赤いのって・・・。」
「ああ、・・・『ジェノブレイカー』だ。」
彼のライバルのゾイドまである。
やれやれと思いながら、バン達は遊園地へと入っていった。
しかし、彼らは見落としていた。
シュバルツのガトリング(ビットから取り返した)付セイバーがあることに。
ちなみにオーガノイド達はというと、
「何で私がこいつらのお守りまでしなくてはいかんのだ。」
「ガルルル。(まあまあ。)」
アンビエントに慰められながら世話をしているのは、
そう、ヒルツ。
彼らの主人がデートの間、世話を押しつけられてしまったのだ。
シュバルツに頼まれ、引き受けてしまったのが彼の運の尽きだった。
おかげで彼のマンションはオーガノイドだらけ。
(しかも5色セット!)
「いっそ、デススティンガーで攻め込むか?」
そんな危ない発想まで出てきたが、
そんな事をしたら、全員に潰されるのが目に見えているので止めた。
彼の休日はまだ始まったばかり・・・。(合掌・−人−)
その頃、バン達はジェットコースター目掛けて歩いていた。
「まだ着かないのか?」
「入り口の反対側ですもの。まだまだよ。」
まだピンピンしているフィーネと対照的にバンはヘトヘト。
朝からライガーを飛ばしていたので、疲れていても当然だ。
すると、
「バン、面白い人達見つけたわ!」
フィーネが指さす方向を見ると、
メリーゴーランドに乗っているルドルフとメリーアン、
それと、お化け屋敷に入ろうとしているトーマとローザであった。
「トーマの奴、大丈夫なのか?」
実はトーマは極度の恐がり。
そんな人にとって、お化け屋敷は拷問にしかならない。
「大丈夫でしょう。ローザもいることだし・・・。」
そう言ってひたすらジェットコースターに向かって歩くバンフィーコンビであった。
その後、この世の者とは思えないほどの絶叫が響いたという。
やっとの事でジェットコースターの乗り場に着いた2人。
でも、やはり知り合いにあってしまうのである。
「レイヴン・・・。」
「それにリーゼも・・・。」
そう、彼らの前にはレイリーコンビが。
レイヴンの方は今時の若者という感じの服装。
リーゼもそれなりにお洒落をしている。
一瞬バン達にギョッとしたが、すぐに平常を取り戻した。
「やっぱりお前らも来ていたか。」
「お前らも、っていうことは・・・。」
レイヴンの前を見てみると、ビットとリノン、バラッドにナオミ、
そして、アーバインとムンベイが同じく並んでいた。
「よう、バン!」
ビットがバン達に気付いて声を掛ける。
「ということは、先輩達もキースに・・・。」
『そういうこと。』
全員が声を揃えて言う姿にバンは少しガックリ。
そんな彼らの遙か上空で、
「おっ、揃ってる、揃ってる。」
キースがサイクロンブレイダーのカメラでその光景を見ていた。
その後部座席ではシュバルツが何かを準備している。
「キース、準備が出来たぞ。」
「よし、作戦bS『上空からこんにちは』発動!」
ネーミングがいまいち・・・。
そんなことはお構いなしに2人の珍作戦がスタートした。
第一、1〜3は何処に行ったのだろうか?
「bP〜3は後日発表。」
「こうご期待!」
どうも、フォローありがとうございます。
そうこうしているうちにバン達の番となった。
(シャレではありません)
先頭はアームン組、以下バラッド&ナオミ、
ビット&リノン、レイリー組にバンフィー組である。
この組み合わせは何かを思い出させる。
「一年前のババヌキと同じじゃねーか。」
アーバインがそうぼやいている時に、
とうとうジェットコースターが動き出した。
ここのジェットコースターはスピード、高低差、高さが世界一といわれている。
『って、聞いてねーぞ。』
男性陣が叫んだ頃にはもう遅く、コースターは臨界点に達していた。
『ギャアーーーー!!』
この日一番の絶叫が響きわたった。
こういう人達がゾイドを駆っているのだから、情けない。
「冗談じゃねえぞ!」
アーバインがぼやいている。
全員はもうヘトヘトだった。
フィーネを除いて。
「バン、楽しかったね〜。もう一回乗りましょう。」
「勘弁してくれ〜!」
本当に完全不思議系である。
そしてバンの叫びもむなしく、
フィーネはバンを引っ張って乗り場の方へ向かっていった。
実はこのコースター、時速450kmも出ていたのだ。
これではライトニングサイクスに乗っているアーバインや、
ゼロイエーガーに乗っているビットもきついはずである。
「バン、・・・生きて・・・帰って来いよ・・・。」
「お前は・・・俺が・・・倒すんだ・・・。」
「バン・・・ビッと・・・いけよ・・・。」
『頑張れ〜・・・。』
全員の応援は彼の耳に届いているのだろうか?
そしてその10分後、バンは夜空の星に・・・。
「なるかぁ〜!」
まあ、突っ込む余裕があるのだから、大丈夫だろう。
その後、完全に沈黙したとか。
そのうち、ヘロヘロになっているトーマとローザ、
顔を真っ赤にしているルドルフとメリーアンも合流した。
そして、満場一致で観覧車に乗ることに。
「あ〜、疲れた。」
「バン、大丈夫?」
ああ、という生返事を返して、彼は窓の外の景色を見た。
まだ昼過ぎなので辺りはまだ明るかった。
「フィーネ、覚えてるか?」
「何を?」
フィーネは不思議そうな顔でバンに聞き返す。
「子供の頃さぁ、親に黙って姉ちゃんと3人で遊園地行った時の事。」
「ええ。あの頃、こうやって2人で観覧車に乗ったわね。
よく覚えてるわ。
だから、バンが遊園地に誘ってくれた時、本当に嬉しかったなぁ。」
そういって、バンの隣に移るフィーネ。
「キースに感謝しないとな。」
「そうね。」
その下では、
「レイヴン、懐かしいね。」
レイヴンとリーゼが話をしていた。
「昔3人で遊園地に来たじゃない。僕と君と・・・・」
「ニコルか。」
ハッとした様子でレイヴンを見るリーゼ。
「まだ、あいつのことを引きずっているのか?」
「・・・まあね。忘れられないよ、友達だもん。」
「そうだな。」
暗い顔になったリーゼを気遣って、レイヴンはある提案をした。
「・・・なあ、リーゼ。
明日にでも帰ってみないか。あいつらの所に・・・。」
「そうだね、行ってみようよ。」
彼女の顔が明るくなったのを見て、
レイヴンは優しい笑みを返した。
その更に下。
「アーバイン、ジャックは元気にしてた?」
「ああ、まあな。」
この間のキャロルの墓参りのことを話していた。
「ねえ、困ったことがあったら、遠慮なく行ってよ。
そんなに短い間柄じゃないんだし。」
「わかってるさ。そんなに心配すんな。」
そういってジッと窓を見るアーバイン。
ムンベイもそれに続いた。
その下のルドルフ&メリーアンはぐっすり眠っていた。
ビット&リノンは部活の事、バラッド&ナオミは次の予定を話していた。
この後一行は食事をした後、またそれぞれのペアに別れ、
夕暮れ近くまで、遊園地を楽しんだという。
そして、この2人、
「よし、いい画が撮れたぞ。」
「シュバルツは流石だな。よし、引き上げ。」
サイクロンブレイダーはそのままシュバルツのセイバーを回収し、
明後日の方向に飛び去っていった。
そして、翌日、
「バン、手紙が来てるわよ。」
バンは寝ぼけ眼で、マリアから手紙を受け取って見ると、
「あれ〜、消印がねえぞ。一体誰からだ?」
そう言いながら封を切ってみる。
すると、
『明日の午前10時、Zi学園高等部に集合!
尚、拒否した場合はこの写真を学校にばらまく。
キース・クリエード、カール・リヒテン・シュバルツ』
バンが手紙に添えられていた写真を見た。
その瞬間、バンの目が一気に冴えた。
「なんじゃこりゃ〜〜!」
その写真は食事をした後、バンとフィーネがコーヒーカップに乗り、
いちゃついている様子だった。
そして、この事は他の輩にも起こっていた。
「どういうことだ!」
「兄さん、酷過ぎです!」
「キースの奴、はめやがったな〜!」
それぞれ感想を述べている。
こうしてまんまとキースとシュバルツの企みに乗ってしまった14人。
彼らの明日はどっちだ!
続く
『ふざけんな〜!』
この中で悲惨な人は誰でしょう。
1.休日登校の生徒達 2.休日出勤のアーバインとムンベイ
3.さんざんオーガノイドの世話をさせられたヒルツ
答えは・・・全部です。
どうなるのかは私次第です。(オールウェポン!)
荷電粒子砲だけでいいだろうがーー!
では、これで。