「ライガーVSライガー」
出来事はいつも些細なことから始まるものである。
特にここZi学園の事件に至っては。
これはあるバカ教師の企みから生まれた、本当にはた迷惑な話である。
「なあ・・・。」
職員室でコーヒーを飲みながら、アーバインがキースに問いかける。
「ビットとバン、どっちが部長なんだ?」
「何言い出すんだよ、いきなり。」
アーバインがそんな事を言うので、キースは呆気にとられる。
「いや、この間のBD学園の試合の時に、
あいつら両方とも部長だって言ってただろ。
それで何となく引っかかってたんだ。」
「それは、バンは中等部の部長だし、ビットは高等部の部長だからだろ。
そんなに深く考える事じゃないし、無理に決める必要もないさ。」
そういって、キースはコーヒーを飲み干す。
「何か面白そうな話をしてるじゃない。」
彼らの背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。
おおよその見当を付けて、振り向いてみると、
「やっぱりお前か、ムンベイ。」
「それに何でディのじいさんまでいるんだよ。」
そこにはムンベイとディがいた。
しかも今まで2人の話を聞いていたみたいである。
「でも、そういう事はハッキリしておいた方がいいんじゃない?」
「そうそう、部長が2人だといろいろと面倒じゃしな。」
「まあ、そうだな。
バトルを申し込む時にも、2人の名前を書かなきゃいけないし。」
「書類は代表者の名前の欄が一つしかないもんな。」
ムンベイ達の言葉に納得するアーバインとキース。
「じゃあ、今日の部活で決めるか。」
「そうだな。じゃあ、俺は次の時間、授業だから。」
そう言ってアーバインは部屋から出ていった。
「俺も次は授業だったな。
じゃあ、お2人さん、俺はこれで。」
キースも教科書を持って、出ていった。
その瞬間、2人共にんまり。
「じいさん、準備の方、お願いね。」
「任せておけ。こんな機会、滅多にないからのう。」
と言いつつも、ちゃっかり彼女のお尻を触り、
彼はいつものように、夜空の星になったとさ。
いったい、何を企んでるんでしょうかね、この2人は・・・。
そして放課後、部室にて、
『部長を決めるーーー?』
またまた部員達の大声が響きわたり、アーバインとキースは耳を塞いでいた。
「いちいち大声出すなよ。こっちの鼓膜が破ける。」
「ワンパターンな奴らだな。」
いつもいつも叫ばれては、流石にたまらない。
そう言いたげな表情で部員を見ている。
「何でまた・・・。」
「いろいろと面倒だからだよ。」
ビットの質問に極めて簡単に答えるキース。
今度はバンの質問。
「で、どうやって?」
「バトルモード0992、武装制限無しの個人戦で決めるんだと。
毎度おなじみのゾイドバトルだよ。」
「何か、ディじいさんとムンベイがえらい張りきっちまってな。
断りきれなくなっちまって。」
2人の教師の言葉にバンはため息をつきながら、
「やれやれ。何かとんでもないことになったな。」
と、ぼやく。
ビットも仕方なさそうに了承した。
「じゃあ、早速準備をしてくれ。」
『了解・・・』
そう言って自分のゾイドのところに向かうバン、ジーク、ビット。
実はこの2人、戦うのは今回が初めて。
だから、他の部員達は結構楽しみにしているところもある。
ナオミ「バラッドはどっちが勝つと思う?」
バラッド「とりあえずビットだな。リノンは?」
リノン「私もビットかな。」
フィーネ「私はバン!」
リーゼ「ねぇ、レイヴンは?」
レイヴン「バンに決まっているだろ。
じゃないとライバルとして認めない。」
部員達がそんなことを話しながらスタンドに歩く。
すると、何と職員全員がそこに座っていた。
「何でお前達までいる訳?」
キースが不思議そうに尋ねると、
「ムンベイが『面白いことがあるから来なさいよ。』とか言ってたから。」
とシュバルツの返答。
彼も、確かに面白そうだな、と思って、笑いを隠せないでいた。
ちなみにライガーが換装できるように、
ホバーカーゴもちゃんと用意されている。
「この地点より半径30キロメートル以内は、
ゾイドバトルのバトルエリアとなります。
危険なので直ちに退去して下さい。
フィールド内、スキャン終了!
バトルフィールド、セットアップ!
バン・フライハイトVSビット・クラウド、
バトルモード0992、レディー・・・ファイト!」
カーン
ゴングが鳴り2体のライガーが走り出す。
バンのブレードライガーには、
この間ビットとハリーからもらったアタックブースターが装備されている。
ビットはライガーゼロをイエーガーに換装していた。
「いきなりのスピード対決か。面白れぇ!
ビッと行くぜ、ライガー!」
ビットはかけ声と共にイオンブースターを点火、
一気に最高速度330km/hまでスピードを上げる。
「行くぜ、ジーク!アタックブースター、オン!」
バンも負けじとアタックブースターを点火させる。
2体の距離が次第に縮まる。
先に仕掛けたのはビットの方であった。
「いっけぇ、ストライクレーザークロー!!」
ライガーゼロの光る爪がブレードライガーに襲いかかる。
すると、バンは元々装備してある背中のブースターを横に噴射して、
レーザークローを避けた。
「ジーク、ブレードアタックだ!!」
すかさずブレードで反撃するが、
残像を残しての高速平行移動で見事に避ける。
「なかなかやるな、バン。」
「先輩こそ、息がピッタリですね。」
「当然だろ。
だけど、このままじゃ勝負かつきそうにないな。
だったら次に換装させてもらうぜ!」
ライガーゼロがホバーカーゴへと走っていった。
ブレードライガーはその場でアタックブースターを強制排除。
ゼロの次の換装に備える。
「先輩の性格からすると、次は絶対・・・。」
バンが予想を立てている頃、ビットはホバーカーゴ内にゼロを入れる。
「ライガー、インストレーション・システム・コール、シュナイダー!」
ロボットアームがイエーガーの青いアーマーを外し、
7本のブレードがついた橙色のアーマーを取り付け始める。
アーマーを付け終わり、ホバーカーゴのカタパルトに運ばれる。
「ゴー、シュナイダー!!」
ビットのかけ声と共に、シュナイダーが発進する。
「やっぱり、シュナイダーか。そう来ると思ったぜ。」
バンが唇を軽くなめる。
この状況をかなり楽しんでいるようだ。
すると、ゼロはまず両脇腹についている2本の長いブレードを展開した。
「勝負だ、バン!」
「望むところだ!」
2体のライガーが激しく斬り付けあう。
だが、双方とも互いのブレードで受け流しているので、
機体にはまったくダメージがない。
そのかわり、操縦者の体力がどんどん削られていた。
「ライガー、バスタースラッシュ!」
痺れを切らしたビットは、
シュナイダーの顔についている5本のブレードを前に展開し、必殺技を繰り出した。
「まずい!」
バンはとっさにE.シールドを展開。
体制を防御に切り替えた。
その瞬間、シールドとブレードが激突、激しい火花が飛び散った。
そして、エネルギーが発散し、2体とも激しく後方に追いやられる。
今、2体のコックピットを満たしているのは、2人の荒い息遣いだけ。
次で勝負が決まる、誰もがそう思った瞬間だった。
「バトル中止、バトル中止!
フィールド内に侵入者、フィールド内に侵入者!」
ジャッジマンが腕で上空を指す。
すると、黒いホエールキングが姿を現した。
『はっはっははは、久しいな、トロス!』
「その声は・・・ラオン!何故ここに!」
スピーカーから流れる声に反応したのは、ホバーカーゴにいるトロス校長。
どうやら知っている人物らしい。
『俺はお前に復讐するためにB.D.学園に化学教師として入ったのだ。
まずはお前の学校のチームを潰してやる。
ザバット部隊、投下!』
ラオンの声と共にホエールキングの腹部が開き、
無人タイプのザバットが投下された。
その数は軽く数えても30機はいる。
「ふざけんな!そう簡単に潰されてたまるか!!」
「あ〜、何か急に元気が湧いてきたぜ!
ライガー、奥の手使うぞ!」
ゼロが一声挙げると、ホバーカーゴ内に入った。
バンはパルスレーザーでザバットをどんどん落としていく。
「ライガー、インストレーション・システム・コール、パンツァー!」
ロボットアームがシュナイダーのパーツを外し、
今度はハイブリットキャノンがついた緑色のパーツを取り付け始めた。
「ライガーゼロパンツァー、C.A.S.コンブリーテッド!
サイドパネルオープン!」
ホバーカーゴの横の丸いパネルが開き、
そこから重武装仕様のライガーゼロパンツァーが現れた。
パンツァーは重量がかなりあるので、
この方法でないと出撃できないのだ。
「一気に決めるぜ!」
パンツァーパーツのミサイルポッドが開き、
標準をザバットに合わせる。
「バーニング・ビッグバン!!」
ミサイルを一斉に発射し、全てのザバットを撃墜。
パンツァーの威力はリノンのガンスナイパーよりも強烈だという。
だがその分、弱点もあったりする。
「あっちーーーーーー!早く、強制排除しないと・・・。」
ビットがレバーを操作し、パンツァーパーツを外す。
必殺技「バーニング・ビッグバン」は、
ライガーの内部温度が一気に上がってしまい、
機能が停止してしまう可能性があるのだ。
だから、こうしてパーツを外して、熱を逃がしてやる必要がある。
「ザバット部隊が全滅・・・。」
この結果に唖然としたのはラオン博士。
そして、追い打ちとばかりに、
「喰らえ、最大級の荷電粒子砲だ!!」
いつの間にかジェノブレイカーに乗ったレイヴンが、
荷電粒子砲をホエールキングにぶっ放した。
その結果、腹部に大ダメージ!
「だーーーーー!
・・・トロス、覚えてろよ〜〜〜!」
情けない声を出しながら、
腹部から煙の出ているホエールキングを反転させる。
そして、
「また来るぞーーーーー!」
と、言って去っていった。
「何なんだ、あの元気なおっさんは?」
「さあ?」
ビットとバンがそう漏らしていた。
結局バトルは無効となり、
2人の決着はつかないまま。
だが、物語はまだまだ続いたりする。
「うっしっしっし、儲かったわねぇ、ディじいさん。」
「ああ、あのラオンとか言う奴がバトルを妨害したおかげで結果は引き分け。
配当金を払わずに済んで良かったわい。」
実はこの2人、
職員相手に、「バンとビット、どっちが勝つか?」という賭を持ちかけていたのだ。
そして、誰も引き分けに賭ける者がいなかったので、
賭け金は全部この2人のものとなった訳だ。
だが、幸せはそう長くは続かなかったりする。
「ほう、人の試合で賭とは。いい度胸してるな、お二人さん!」
殺気全開の声が2人の後ろから響き、恐る恐る振り向くと、
「だーーー!バンにビット、それにキースにアーバインまで。」
「どうしてここが?!」
彼らが最も会いたくない方々がそこにいた。
「あんなにでかい声で喋ってりゃあ、誰だって気付くわ!」
「それで、覚悟は出来てんだろうな。」
顔面蒼白の2人にどんどんと迫る4人。
そして、
『勘弁してーーー!!』
2人の絶叫が響いた後、きっついお仕置きがその場で始まった。
内容は・・・悲惨すぎてとてもじゃないけど言えません。
なお、賭け金は全て没収、ライガーの修理費に使われたとさ。
実はこれ、16話よりも前に制作したのですが、
流石にゾイドバトル連チャンはきついなと思い、17話にしました。
ビットとバンが戦ったらどんな感じかな、と思って作ったのですが、
実際はどっちが勝つんでしょうね。
次回はいよいよあのゾイドが登場。
いつになるかは分かりませんけど。(荷電粒子砲)
では。