しばらくして、2人はメキブの洞窟の前に到着した。
「ここに真珠がいるのか?」
「とにかく中に入ってみよう。」
「そうだな。」
トトを先頭に中に入っていく。
メキブの洞窟は昔は小さかったのだが、
ある時大雨が降り近くにあった湖の水が流れ込んで広大に広がったのだという。
「案外中は明るいんだな。
どうしてなんだ?」
瑠璃が不思議そうに聞く。
確かに、ここは洞窟にしては少し明るすぎる。
「ここにはヒカリゴケが生えているからな。
外の明るさとはいかないけど戦闘に支障はないだろう。」
トトの説明に瑠璃は納得そうな顔。
すると、彼の胸にある石が光った。
「煌めきを感じる・・・。
仲間、真珠姫か?急ごう。」
瑠璃が駆け出し、トトもその後を追った。
だが、すぐに足を止めることになった。
「団体さんでお出迎えって訳ね。」
そこにはモンスターの大群がずらっ、といる。
「ざっと20匹って所か。
どうする?」
「そのぐらいなら何とかなるだろ。」
「そうこなくっちゃなぁ。
じゃあ、1人あたり10匹ってとこだな。」
二人はそれぞれの武器の柄に手をかけた。
「いくぜっ!!」
トトのかけ声とともに、一斉にモンスターに斬りかかる。
巨大なキノコやカニ、コウモリ、おまけに変な爬虫類まで出てきたが、
2人は慌てずに1匹ずつ確実にしとめていった。
数分して、2人の動きが止まる。
彼等の周りにはたくさんの死体が散らばっていた。
血がそこら中に飛び散っていて、明らかにグロテスクだ。
「だいたい片付いたな。」
「ああ、先を急ぐぞ。」
「そうだな、こんな所に女の子一人じゃ、危なっかしいったらありゃしない。」
そんな事は気にも留めずに、二人はさらに奥に進んだ。
最初は沈黙が続いた。
すると、トトが口を開いた。
「なぁ、もしかしてお前って、珠魅じゃないか。」
「・・・よく分かったな。」
「分かるよ。
その胸の核でね。」
珠魅というのは、ファ・ディールの中で一番貴重な種族と言われていて、
核という宝石が胸にあって、その核が傷付かない限り、
半永久的に生き続けると伝えられている。
その為、珠魅の核は昔から強大な力を秘めた「魔石」と言われていて、
珠魅が狩られた時代もあったという。
後、珠魅は常に騎士と姫というペアを組んで行動しているという事ぐらいしか、
一般には知られてはいない。
「お前も一つ教えてくれ。
なぜあの卵がアーティファクトだと分かったんだ。」
そんな瑠璃の問いに、彼はあっけらかんと答える。
「さあね、俺のは生まれつきだからな。
でも、アーティファクトを使えるのは俺だけじゃないさ。
他にも・・・」
トトが何か言いかけたが、急に言葉を止めた。
瑠璃も声をかけようとしたが、止めたようだ。
何故なら、彼等の前に1人の女性が立っていたのだから・・。
「あら、遅かったわね。」
二人の目の前にいる女性が話しかけてきた。
その女性は、瑠璃から聞いていた真珠姫とのイメージとは違っていて、
年は見た目で24歳ぐらい。緑色のチャイナ服と、頭の花飾りが特徴的であった。
瑠璃が睨みを利かして、その女性に語りかける。
「お前は誰だ。」
「そんなことはどうでもいいわ。
それより、あなたの姫が危ないわよ。
それとそこの君、あまりそこの人達に関わらない方がいいわよ。
石になりたくなければね。」
トトはビックリした表情で、その女性に問いただす。
「それはどういう・・・。」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー」
急に女の悲鳴が聞こえて来たので、トトは言葉はかき消される。
そして、瑠璃が、
「真珠姫っ!!」
そう叫んで、声のする方に走っていった。
仕方がなく、トトもその後を追う。
女性の言葉を気にしながら。
声をしたと思われる方向に走っていくと、大きな空間に出た。
そしてそこにいたのは、巨大な猿人。
体長は軽く6メーターを越えており、手には斧を持っている。
大変興奮しているらしく、鼻息が荒かった。
「まいったな。
こいつはこの洞窟の主、ドゥ・インクだ。
どうする?」
「決まっている。倒す。」
「そう言うと思ったぜ。」
2人は一斉に飛びかかった。
まず瑠璃が相手の全面を斬りつけて注意をひき、
その隙にトトが背面をぶった切るといった攻撃を繰り返した。
ドゥ・インクも斧を振って応戦するが、的が小さいため、なかなか当てられない。
そして突然、ドゥ・インクは斧を上に放り投げた。
「瑠璃、危ない!!」
トトの声に瑠璃が反応して上を見る。
すると、斧の衝撃で氷柱や鍾乳石が落ちてきた。
だが、トトの声の方が速かったので、
間一髪、瑠璃は避けることが出来た。
「あいつ、結構頭がいいぞ。
どうする?」
「瑠璃、あいつの気を引いてくれ。
俺の必殺技でケリを付ける。」
瑠璃は頷くと、わざと大きい音を出してドゥ・インクの注意を自分に向けた。
そして、トトが、
「シールドブレイク!!」
声と共に高々と飛び上がり、剣をドゥ・インクの脳天めがけて振り落とす。
その技が見事に決まり、倒れたドゥ・インクは天井の下敷きになった。
それはもう動くことはなかった。
「やっ・・・た・・・。」
トトは緊張が解けてその場に座り込む。
一方瑠璃は瑠璃は休む間もなく仲間を捜した。
「真珠姫っ!!
・・・どこだ!?」
すると、瑠璃の声に反応して、岩影から女の子が出てきた。
白のドレスにフワッとして背中まで伸びた髪の毛、
そして胸には珠魅の特徴である真珠の核。
間違いなく、彼女であった。
「真珠姫、核は無事か。」
「うん。」
無邪気に彼女は答える。
だが瑠璃はいきなり大声をあげた。
「あれほど一人でうろつくなと言ったろ!
何だってこんな物騒なところに。」
「いろいろ思いだそうとしてたの。昔のこととか。」
「今は何も思い出さなくていい。
今はただ俺に守られていれば・・・。」
「でも」
「いい加減にしろ!」
さっきの悲鳴と同じぐらいの声で瑠璃は怒鳴った。
真珠姫もただ謝るばかり。
見るに見かねてトトは立ち上がって真珠姫をかばった。
「もういいんじゃないか、こんなに反省してるんだし。」
「あんたは黙っててくれ。」
そう言い返されてしまい、トトもタジタジ。
すると、真珠姫もトトのことに気付いたようだ。
「瑠璃君、この人は?」
「お前を捜すのを手伝ってくれた、変わった奴さ。」
「あのなぁ・・・、俺はトトだって名乗ったろ。」
彼の変わった奴発言に、トトがムッとしてそう言い返す。
「そうだったんの。
ありがとうございます。」
「いろいろと世話になったな、じゃあな。」
素直に礼を言う真珠姫とは対照的に、
瑠璃はスタスタと行ってしまった。
「あっ、瑠璃君ちょっと待って。」
トトの方に向かってきて、
顔を真っ赤にして少しモジモジした後、
「あ、あの、トトお兄さま・・・。
つまらないものですが。」
そう言って、何かを差し出す。
それは石で出来た目玉と蛍袋の形をしたランプだった。
(何かの役に立つかなぁ。)
と思い、それらを受け取る。
すると、何かを感じ取ったようで目を見開いた。
ヒスイの卵を触ったときと同じように。
「ありがたくもらっておくよ。」
ふっ、と笑いながらそう言うと、
洞窟の外まで行き、彼らを見送った。
「何であの娘がアーティファクトを・・・。」
手にしたアーティファクトを見て、そう考える
そして、トトは自分の家に向かって歩き始める。
もう日も傾いていたので、買い物は諦めざるを得なかったのだ。
結局、トトの今夜の晩飯は庭で取れた野菜で作ったスープだけ。
つまんないことに首を突っ込むもんじゃないな、と教訓を悟ったとか。
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サボテン君日記
どうくつでおさるさんをたおしたら、
いわのあいだからおんなのこがでてきて、
もじもじしてて、なにがなんやらさっぱりだったらしい。
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トトの一言
今夜の晩飯は野菜スープとサラダだけだな・・・
結構長くなっちゃったなぁ。
この話は一番大好きな宝石泥棒編のプロローグなので、
気合い入れて書いたら、こんなになっちゃいました。
次は一ページで終わると思います。