トト達はひとまず寺院に戻ることに。
バド達を待たせている事もあったが、それよりも草人が気がかりだったのだ。
それに瑠璃も休ませたかった。

「瑠璃、元気出しなよ。」

ティアラが優しく声をかける。
瑠璃はさっきからずっと落ち込んでいる。

「まっ、次があるさ。そんなに落ち込むな。」

「すまない。
迷惑かけちまって。」

そんなことを話しているうちに、3人は寺院に着いた。
だが、トト達が寺院に入ると、
先程瞑想をしていた修道女が入り口近くで倒れている。

「どうしたんだ!しっかりしろ!」

トトが彼女に駆け寄る。
すると突然、寺院に小柄な人が入ってきた。

「やや、事件ですな。」

その人物こそ、ボイド警部である。
警部は修道女に近寄ると、早速何かを調べ始めた。
だが、トトが邪魔だったらしく、

「こらこら、どきなさい。
死体に触っちゃいかん。」

そう怒鳴り散らす。
すると、修道女が声を出した。

「まだ生きてます。」

当然のツッコミだった。

「おお、これは失礼。
どうしました?」

「草人に体当たりされて、足をひねってしまいました。
うっ・・・。」

あまりの痛さに悲痛の声を上げる。
ボイド警部は頭から煙を出しながら大声で叫んだ。

「草人だと・・・。
草人に化けて潜入したな〜!」

そして、そのまま出口へと駆け出す。
ある人物の名を言いながら・・・。

「サンドラめ〜!」

サンドラはトトもティアラも知っていた。
サンドラとは今話題になっている女宝石泥棒の名前だ。
以前まではファ・ディール中の宝石を盗んでいて、
その華麗さ、美しさからファンが現れるくらいだ。
だが、最近は珠魅を殺し、その胸の核を盗んでいると言う。
現在はボイド警部がその捜査にあたっている。
殺人犯として・・・。

「やれやれ、いったい何だったんだ?」

瑠璃がしかめっ面でそう言う。
どうやらいつもの調子が出てきたようだ。
そんな時、ダナエ達も奥から出てきた。
どうやらボイド警部の大声で騒ぎに気付いたらしい。

「どうしたの?」

「この人が足をひねったみたいなの。
すぐ手当てをして。」

「分かったわ。」

ダナエが頷きながらそう言うと、修道女を背負って医療室らしきところに運びこむ。

「俺は草人の後を追う。」

トトがそう言うと、瑠璃もついていくと言い出した。

「ルーベンスのことはいいのか?」

「構わないさ。」

そして、ティアラも行くと言おうとした時、入り口の方から声がした。

「瑠璃く〜ん!」

「真珠・・・。
今まで何処に行ってたんだ?」

声の主は瑠璃のパートナー、真珠姫だった。
どうやら瑠璃とまたはぐれていたらしい。
真珠姫は顔を赤くしながら、ここまでの経緯を説明した。

「ごめんなさい。
また考え事をしてたら、道に迷っちゃって。
それで町の入り口をうろついてたら、お兄さま達が町に入るのを見たの。
それで町に入ったら、また見失っちゃって。
町の人が親切でここの道を教えてもらったの。」

トトは相変わらずだなぁと思いながら聞いている。

「とにかく、宝石泥棒に見つからずによかったわね。」

その言葉にトトははっとした。

「なあ、瑠璃。
確か珠魅の核にはそれぞれ呼び名があったな。」

「ああ、そうだが。」

「やっぱり。
そうすると予告にあった『希望の炎』ってもしかして・・・。」

どうやら瑠璃とティアラも気付いたようだ。

「ルーベンスの核か?」

「だとしたら、ルーベンスが危ないわ。」

「やばい、急ぐぜ。
ティアラ達はここで真珠を守っていろ。」

ティアラが頷くのを見て、トトと瑠璃はテラスに急行した。

 

 トト達がテラスに着くと、ルーベンスは修道女と話をしていた。

「やっぱり、私はブブを手に入れますわ。」

「そうしてくれ。
俺はもう関わりたくない。」

「冷たいのね。
魔法都市にいる恋人がどうなってもいいのかしら?」

ルーベンスは彼女の言葉に驚く。

「何故、彼女の居場所を?」

「さあ、何でかしらね。ふふふ・・・。
で、答えは?」

「俺は誰にも関わりたくないし、誰からも関われたくない。
もうほっといてくれ。」

「そうはいかないわ。」

修道女は素早い身のこなしでルーベンスに近付くと、
服に覆われていたルーベンスの、ルビーで出来た胸の核をさらし出した。

「汚れた石に制裁を。」

そう言って、鋭い刃物をルーベンスの胸に刺した。
ルーベンスはその場に倒れ込む。

「まだ核は傷つけてないわ。」

「貴様〜!」

トトの後ろにいた瑠璃が、修道女に向かって飛び出そうとした。
だが、

「近付かないで。
殺しちゃうわよ。」

その一言にその場に踏み止まるを得ない。

「さてとルーベンス、別に助けてあげてもいいわよ。
そのかわり、泣いて命乞いをしなさい。」

「何だと・・・。」

瑠璃が修道女の言葉に驚いた。

「どういうことなんだ、瑠璃。」

「俺達は・・・、珠魅は・・・、泣くことが出来ない。
涙を流せないんだ。」

瑠璃はその他に珠魅の涙は命の欠片だということも説明した。

「く・・・、俺は・・・。」

ルーベンスが必死に話そうとしている。
まるで断末魔の叫びのようだ。
だが、修道女は冷たく言い放った。

「そう、泣けないのね。
・・・残念だわ。」

そう言うと、ルーベンスの核をもぎ取った。

「ぐ・・・は・・・。」

「まだ生きてるなんて、さすが輝石の座の珠魅。
大したものね。」

瑠璃とトトが修道女に駆け寄ったが、煙幕をはられ逃げられてしまう。
2人はすぐにルーベンスに駆け寄る。

「おい、しっかりしろ!」

瑠璃がルーベンスの頭を自分の膝にのせた。

「瑠・・・璃、・・・魔法・・・市のディ・・・ナに・・・すまな・・・と・・・。」

ルーベンスが必死に喋ろうとしているが、力が無くうまく聞き取れない。

「おい、魔法都市の誰だ?
しっかりしろ!」

「も・・・一度、・・・みん・・・で・・・一緒に・・・。」

そこまで言うと、ルーベンスの体は瑠璃の腕の中で赤い光となり、崩れ去った。

「ちくしょう!!」

瑠璃は悔しさをぶつけるように地団駄を踏み、そう吐き捨てた。
トトも怒りで握り拳を震わせている。

 

 トト達が寺院に戻ると、ボイド警部、ティアラ、バド、コロナ、ダナエ、真珠姫が出迎えた。
トトはみんなにルーベンスのこと、修道女のことを説明する。

「わしがルーベンスさんが珠魅だと気付いていれば・・・、こんな事には。」

警部も悔しそうだ。
そして、トト達の方を向いて静かに話し始めた。

「君達も協力してくれ。
おそらくサンドラは祭りの騒ぎに乗じて逃げるつもりだ。
だからまだこのガトのどこかにいるはずだ。
昼になる前になんとしても見つけだしたい。」

警部が話し終わったとき、トトが語り始める。

「一つだけ、心当たりがある。
その修道女、つまりサンドラは草人の体の中のブブも手に入れようとしている。
だから、草人の行方を追えば・・・。」

「なるほど。」

ボイド警部を始め、みんなが納得していた。

「師匠って、結構頭いいんだね。」

「普段はただの面倒くさがりにしか見えないけど。」

「聞こえてんだよ!お前ら〜!」

トトがひそひそ話をしているバドとコロナを怒鳴りつける。

「とにかく、手分けして探しましょう。
私とボイド警部は町を、トト、ティアラ、瑠璃は町の外を探して。」

ダナエが的確に指示を出す。
すると、

「ねぇ〜、僕たちは?」

バドがダナエに聞いてきた。
自分たちだけ役割がないので、すがっているのだ。

「君達はここで真珠姫を守ってて。
私たちがいない隙に狙われたら大変でしょ。」

『は〜い。』

バドとコロナが返事をした。どうも、やる気がなさそうだ。
だが、そんなことはお構いなしに、みんなは外に出ていってしまい、
後にはポツンと3人だけが残っていた。

 

 トト達は町外れの洞窟に来ている。
ダナエによると、ここは入り組んでいて隠れるにはもってこいだが、モンスターも出てくるという。

「こんな所にいるの?」

「さあ。」

ティアラと瑠璃が考えていると、トトが何かを見つけた。

「おい、見ろよ。
草人の葉っぱだ。奥に続いている。」

「こいつをたどっていけば、サンドラがいるかもな。」

「よし、行ってみましょう。」

ティアラがそう言うと、3人は中に入っていく。
だが、トトを誉めるものは誰もいなかった。

 

 洞窟の中には、ヘビや巨木、鳥のモンスターがいたが、
戦闘経験豊富の3人は難なく進めた。

「おっ、光が見えるぜ。
出口みたいだ。」

「葉っぱがまだ続いているよ。
まだ先みたい。」

「とにかく、行くしかない。」

瑠璃の言葉に二人は頷き、光の方へ走った。

 

 外へ出るとそこには立派な滝があった。
葉は川を挟んだ向こう側の岸に続いている。
トト達が巨木の根で出来た橋を渡ると、また洞窟があるのが見えた。

「また、洞窟ね。」

「今度は何が出るんだか。」

洞窟は上へ上へと続いているようだ。
そこにはモンスターはいなかったが、トト達が登り詰めるとそこには巨大な鳥の巣があった。

「何なの、この大きな巣は?」

ティアラと瑠璃が不思議そうに眺めている。

「たぶん、大カンクン鳥の巣だ。」

「何だ、それ?」

瑠璃が聞いてきた。

「とてつもないでかさの鳥さ。
ガトに生息しているって聞いてたけど、ここまででかいとはね。」

トトが巣の根本に目をやると、

「いたぞ。
修道女と草人だ。」

そこには修道女が草人の体をあさっている光景が。
トトが彼女に近付こうとしたとき、後ろの方から大声が聞こえた。

「そこまでだ、サンドラ!」

ボイド警部とダナエが駆けつけてきたのだ。
警部の声に気付き、修道女は立ち上がった。

「私は誰にも捕まらないわ。」

サンドラは修道女の変装をといた。
その瞬間、トトと瑠璃は驚いた。

「お前、あの時の・・・。」

その姿はトト達がメキブの洞窟で会った女性そのものだったのだから。

「久しぶり、とでも行っておこうかしら。
皆さん、核とブブはいただいて行くわね。
では、グッバイ。」

サンドラはロープを真上に投げる。
するとロープは、上空を飛んでいた大カンクン鳥の足に巻き付いた。
そして、サンドラはそのままその場を後にした。
ボイド警部は慌てて後を追おうとしたが、倒れていた草人に足を取られ、取り逃がしてしまう。

「あれっ・・・痛くない。
わ〜い、治った、治った。」

草人は起きあがると、腹痛が収まっていたので喜んでいたが、
それとは正反対にボイド警部の怒りが頂点に達していた。

「はしゃぐな、バカたれ〜!」

リュオン街道の端まで聞こえそうな大声で、警部は草人に怒鳴りつける。
流石の草人も黙り込んでしまった。

「珠魅がまた1人殺されたんじゃぞ。」

トトも瑠璃もティアラも黙り込んでしまう。
そして、警部はトトに向かって袋を差し出した。

「捜査に協力してくれてありがとう。
これはお礼だ。」

中には3000ルクほどのお金が入っていた。

「では、これで。」

警部は3人に敬礼すると、そのまま帰路についた。
トトは瑠璃達と一緒に祭りを楽しむこととなった。
ダナエの案内で色々なところを回り、色々なものを買って回った。
そこにはまるで悲しみを隠そうとしているかのような7人がいた。

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サボテン君日記

そうじんがおなかをいためてたいへんだったらしい。
いったいどうしていたくなったんだろう?
ぶぶちゃん、ともだちだから。

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LOMキャラの一言

サンドラ、絶対許さない。   by瑠璃

熱くなるな、みんな悔しいんだ。   byトト


やっと終わった〜。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
こんなに長くなるとは思いもよりませんでした。
次も楽しみに待っていて下さい。

 

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