「んっ・・・、ここは・・・?」

トトが目を覚ました。
光に包まれた後、衝撃でしばらく気を失っていたようだ。
辺りを見回すと、先程とは全然違う光景が広がっている。
岩でごつごつした洞窟みたいなところだが、異様に明るい。
そして、嫌に蒸し暑く感じた。

「どうなってるんだよ。
まさか・・・、あの世じゃないよな・・・。」

ぞくっと背中に寒いものを感じながら、冗談では済まない想像をしてしまう。
精神状態が不安定のようだ。
まぁ、いきなり景色も変われば、それも頷ける。
そして、トト自体、この景色は一度見ていた。
銀匙の光景である。

「当たらずとも遠からずと言ったところだな。」

「!?
誰だ!!」

どこからもなく声がしたのですっと立ち上がり、剣に手を当てる。
すると、前方から犬の獣人が姿を現した。

「お前は?」

「俺はラルク。
ティアマット様に使えるドラグーンだ。」

ドスの利いた声でそう言う。

「ドラグーン・・・?
竜に使えるという騎士か・・・。
一体何が起こった?
ティアマットとは何者だ?
俺を・・・、どうするつもりだ?」

とりあえずありったけの質問をぶつける。
訳の分からないことだらけで、何も聞かずにはいられない状態だ。

「お前を力ある戦士と見込んで奈落に召喚した。」

「奈落だと?
・・・なるほど、『当たらずとも遠からず』・・・か・・・。」

先程のラルクの言葉を思い出す。
奈落とは、死者の魂が集う場所で、あの世とこの世の境目である。
いわば、精神の世界だ。
物質は肉体以外に存在しない。

「これ以上のことを知りたければ、我が主のところまで来てもらうぞ。」

「断ると言ったら・・・?」

彼は臨戦態勢に入っていた。
ドラグーンは主である竜の命令は絶対。
力ずくでも連れていこうとする可能性があった。
だか、返ってきた答えは・・・。

「お前には断る理由はないぞ。
ここから出る方法を知っているわけではあるまい?
現世に戻りたければ、俺と一緒に来い。」

「否応無しか・・・。
・・・まぁ、奈落で骨を埋めてもしょうがないな・・・。
で、どこに行けばいい?」

「俺が案内する。
着いて来るがいい。」

そういうと、ラルクは奧に向かって歩き出した。
トトは、やれやれと言った溜息を吐くと、彼の後を追った。

(俺・・・、生きて帰れるかな・・・?
・・・その前に生きてるのか?)

初めての世界の間隔に、彼は戸惑っていた。

 

 その頃、ティアラは・・・。

「もう、トトったら・・・、どこに行ったのかな〜?」

ティアラが愚痴をいいなから街道を歩いていた。

「さっきからモンスターも襲ってくるし、何度倒しても生き返るし・・・、
いったいどうなってるのよ・・・。」

ウンザリした様子の彼女。
一向に手掛かりすら見つけられないのだ。
気持ちは分かるが・・・。
いつもだったら、ティアラはほぼ100%の割合でトトを見つける。
幼なじみの勘と言う奴である。
それがトトにとって、一番の悩みでもあるが・・・。

(本当に・・・、あのカッコ付け、どこに行ったんだろ・・・。)

良からぬ考えも浮かぶが、頭を振って強引に吹き飛ばす。
トトを一番信じてるのは他ならぬ彼女なのだ。
でも、心配でもある。

「あいつを早く見つけ無いとね。」

自分にそう言い聞かせて、街道を足早に下った。
だが、ティアラは気付いていなかった。
背後から何者かが彼女を見ていることに・・・。

 

「おい、いつまで歩かせるんだ?」

いい加減、疲れたのか、それとも飽きたのか、トトがムッとした表情で問いかけた。
それに対して、ラルクは無表情でこう言う。

「仕方があるまい。
奈落を自由に歩くためには、洗礼を受けなければならない。
そして、その洗礼を受けるためには、オールボンの許可が必要だ。」

「オールボン?
何者だ?」

「この奈落を監視してる、七賢人の1人だ。
死者が暴れ出さないよう、睨みを利かせてる。
まぁ、少々ズボラだがな。」

(どんな管理人だよ。
まるでこのサイトの管理人だな・・・。)

ほっとけ!
・・・おっと、失礼・・・。
トトはそう思いながら、賢人と聞いてバドのことを思い出していた。

(元に戻ったら、あいつでも連れてくるかな?)

そんなことを考えていると、大きな部屋に着いた。
ラルクによると、ここがオールボンがいる部屋みたいである。

「さあ、中に入るぞ。
これ以上、主を待たせる訳にはいかない。」

「へいへい・・・。」

2人が中に入ると、6本の腕をグルグル回している三つ目のタマネギ人間がいた。
彼がオールボンだそうだ。

「ティアマットのドラグーン、ラルクよ。」

「何だ?」

「やたらに人を連れてこられてもシャドールが増えるばかりで困る。」

「ドラグーンたる者、主の命には逆らえん。」

「忠義なことで・・・。」

トトがやれやれと言った具合で肩をすくめる。
そんな様子を見て、オールボンはニヤリと口で笑う。

「今回は生きのいいのを連れてきたな。
ティアマットの悪巧みもこれで成就しそうか?
美味しい役所があったら、私も手伝わせてもらいたいものだな。」

言葉には皮肉がたっぷり隠っていた。
そして、ラルクの態度も一変する。
先程まで冷静だったのが、見る見るうちに殺気立っていく。

「その言葉、主を愚弄するものでないのなら、この者に洗礼の許可を与えよ。
だが、もしそうだとしたら・・・。」

今にも攻撃しそうなラルク。
だが、トトはジッとしていた。
賢人に勝つほどの力があったら、彼の力など借りないだろうから。
そして、賢人は基本的に争い事を好まない。
大昔の妖精戦争と呼ばれる戦争で争いの醜さを分かっているから。

「許可しよう。
非礼も詫びる。
そのものが案内しよう。」

彼が一本の腕で部屋の隅を指すと、奈落の住人、シャドールが現れた。
ケヒケヒ、と笑い声をあげ、口を開いた。

「おいらが案内するよ。
どこに行く?」

「洗礼の間へ行ってくれ。」

「あいよ。」と返事をすると、シャドールと共に2人の身体はその部屋から消えた。
その数秒後、部屋にまた来客があった。
カラス・・・、じゃなく、九官鳥の鳥人で、頭には鳥の巣がのっている帽子を被ってる。

「ポキールか・・・、何のようだ?」

「なに、彼の後を追ってたら、ここに来たものでね。
顔でも出していこうかと思っただけさ。」

優しく語りかけるような口調の彼、ポキールもマナの七賢人の1人。
“語り部のポキール”との二つ名をもち、真言の使い手と言われている。
真言とは、どんなことでも実現してしまうという、最強の呪文である。

「彼とは・・・、あのトトという青年か?」

「ああ。
ガイアの話だと、彼が“マナに導かれし者”だそうだ。」

「彼がか・・・。
ということは、これも女神が下した“試練”と言うことか・・・。」

ふむ、と言う感じでいろいろと模索する。

「そう。
この試練で彼の眠れる力が目覚めるだろう。
そして、それを見守ることが、我々の使命だ。」

「そうだな。
お手並み拝見といこう。」

 

 洗礼を終えたトトはまっすぐ下層に向かっていく。
ラルクによると、奈落は全部で4層からなっていて、ティアマットはその最下層にいるのだという。
だが、第2層から第3層へと通じる部屋へと辿り着くと、ラルクは足を止めた。

「ここで、お前の力を試させてもらう。」

「やっぱり、試験はあるみたいだな。
で、何をすればいい?」

「この奧にいる魔物を倒せ。
ただし、そいつは強敵だ。
なんせ120年間もの間、召喚した者共はそいつに破れているのだからな。」

彼の説明に少しだけ冷や汗が流れるトト。
だが、

(これをやらなければ、地上には戻れないな・・・。)

と、腹を括った。
ふぅ、と息を吐くと、

「俺はとっとと地上に戻る。
帰るべき場所があるからな。」

そう言って中へと入っていった。

 

 中には、人の顔に角が生えた作り物が部屋の上下4カ所に配置されていた。
思ったよりも広いが、中の空気が嫌に重く感じる。

「キャキャキャキャキャキャーーーー!!!
また1人犠牲者を連れてきたな・・・。
ヒャ、ヒャ、ヒャ、ヒャ・・・。」

笑い声が聞こえたかと思った瞬間、闇の空間と共に首だけの悪魔が姿を現した。

「俺の名はゼーブル・ファー。
シャドールを統べる者なり・・・。
お前もシャドールになるがいい!!
ヒャ、ヒャアーーー!!。」

言うだけ言って、そのままトトに向かってきた。

「下品な笑いは、体に悪いぜ!!」

そのまま向かってくる相手に居合いの要領で斬り付ける。
だが、その攻撃は空を切った。

「ちっ、テレポートかよ・・・。
嫌な相手だぜ。」

愚痴りながら、剣を構え直し、意識を部屋全体に行き渡らせる。
すると、部屋の隅で動く者がある。
それは、なんと人の顔の作り物であった。

「なんだ、一体・・・。」

トトが驚いていると、角から顔のレーザーが放たれた。
多少驚きながらも、横に飛んでなんとか避ける。

「ほう、結構やるようだな・・・。
だが、いつまで持つかな!?」

ゼーブル・ファーがまた現れ、そう言い放つ。
とっさに斬りかかるがまたしてもテレポートで逃げられてしまった。

「ちっ。
この部屋は奴が戦いやすいように作られてるって訳か・・・。」

天上の顔からレーザーが放たれる。
今度は落ち着いて避け、ジッと部屋を見極めた。
そして、相手が現れた瞬間、攻撃を仕掛ける。

「飛竜刹!」

竜の形の衝撃波がゼーブル・ファーを襲った。
溜まらず叫び声を上げる。

「ぐええぇぇ!!」

「思った通りだ。
お前はレーザーを1度に1回しか撃てない。
そして、テレポートの後に隙が出来る。
もうお前の動きは見切ったぜ!」

その言葉を聞き、部屋の外のラルクはえらく感心していた。

(たった2回の攻撃でそれを見切るとは・・・。
これまでに類を見ない逸材だな・・・。)

ラルクの強さも大したものであろう。
そんな彼の眼鏡にトトの強さが適ったのだ。

「くそ・・・。
だったら、俺の必殺技を・・・喰らいやがれ!!!」

その言葉と共に部屋全体が揺れだした。
そして、4つの顔全てが動き出したのだ。

「くっ・・・、今度は何だ?」

「確かに1度に1回しか撃てない・・・。
だが、1回に最大4発までは撃てるんだよ。
肉体もろとも、魂を焼き尽くしてやる!!」

相手は三度姿を消す。
その直後、4本の光の槍が一斉にトトに向かって放たれた。
一瞬にして、部屋に光が満ちあふれる。
これにはラルクも目を細めた。

「くっ・・・。
ここまでやるとは・・・。」

そして、段々と光が落ち着き、元の明るさに戻ろうとしていた。

「やれやれ・・・、まさか俺がこの技を人間相手に使うとはな・・・。
でも、俺の勝ちだ!
ヒャッ、ヒャ、ヒャ、ヒャ・・・。」

「誰が勝ったって?」

ゼーブル・ファーがバカ笑いしていると、突然トトの声が部屋に響きわたった。
これにはラルクもビックリしていた。

「な、バカな・・・。
死んではいないのか?
ど、どこだ!?」

「お前の真上だ!!」

悪魔が上を向いてみる。
すると、目に映ったのはこちらに向かって急降下してくるトトの姿だった。
ビームが放たれた瞬間、光の魔法を目眩ましにし、天上に飛び上がったのだ。

「今度はこっちの必殺技だぜ!
喰らえ、“乱れ雪月花”!!」

必殺技を放ったため疲れ、
なおかつ、突然の襲撃に拍子抜けした相手がその場を動くことはなく、
彼の必殺奥義をまともに受けた。

「キャ、キャアーーーー!!!」

断末魔の雄叫びを上げ、ゼーブル・ファーは消滅した。

「だから言ったろ。
下品な笑いは体に悪いって、な・・・。」

剣をブンと振り、そう言っていつものカッコ付け。
すると、ラルクが部屋に入ってきた。

「試験は合格か?」

「ああ・・・。
実に見事だ・・・。
では、ティアマット様のところに行くぞ。」 

少々拍子抜けしたラルクだが、なんとか平静を保ち、
トトと共にその場を後にした。

 

 しばらく歩くと、突然大きな広間に出た。
奥には大きな城が炎の中にそびえ立っている。

“ラルクよ、ついに見つけたか。
ゼーブル・ファーを倒す者を・・・。”

「はっ。」

空間から声が聞こえ、ラルクはその場にひざまつく。

「控えよ、ティアマット様の御前だ。」

そして、光と共にアラブ系の格好をし、長いひげを生やした赤髪の男が姿を現した。

「あんたがティアマットか・・・。」

「いかにも。
力ある戦士よ、無礼を許していただきたい。
そなたの力を見込んで頼みがあるのだ。」

「・・・とりあえず、話を聞こう。」

嫌に下手に出られたので、トトは拍子抜けする。
どうやったらこんな部下が出来上がるんだ?と疑問に思いながら、
彼の話に耳を傾けた。

「我は昔、地上に君臨したもう竜帝なり・・・。
だが、我の力を妬んだ3匹の竜に奈落に封印され、
このようなか弱き姿にされてしまった・・・。」

「主はお前に3匹の竜を退治することを望んでおられる。」

ラルクが要点を話す。

「なるほどね・・・。」

「先程も言ったが、お前に断る理由はない。
お前の霊体の半分は、今もこの奈落を彷徨ってる。
不完全な霊体のままでいたら、いずれは無になってしまうのだからな。」

「戦士よ。
その力を消し去ってしまうのは誠に忍びない。
我が力を取り戻したら、元の身体に戻してやろう。」

“無”という言葉にトトは少し顔を引きつらせる。

「まぁ、俺も無になるのは嫌だからな。
とりあえず協力させてもらう。」

彼の言葉にティアマットはニンマリと笑った。

「では、早速行ってもらおう。
共にラルクを付ける。
2人で力を合わせ、知恵のドラゴンを狩ってくれ。」

ティアマットがそう言うと、2人の周りにつむじ風が現れ、
一瞬のうちに彼等を包み込んだ。

 

 トトが気が付くと、そこは例の墓の前であった。
隣にはラルクもいた。

「これから俺達は知恵のドラゴン共を狩りに行く。
奴等は世界の秩序を保っているつもりだが、そんな者は必要ない。」

「で、これからどこに行けばいい?」

「まずは山脈に向かう。
そこには風のドラゴンがいる。
これは、主が契約成立の証としてもらったものだ。
受け取るがいい。」

トトが受け取ったのは骸骨で出来たカンテラだった。
先程からアンデット系のモンスターばかりと戦ってたので、もう慣れてしまっている。
それがこれから行くノルン山脈のアーティファクトだと気付くのは、すぐ後のことであった。

「では、行くぞ。」

ラルクに先導され、一路ノルン山脈へと向かった。
先程から彼にリードを取れているので、いささか不機嫌なトトである。
こうして、彼等のドラゴン退治の旅の始まりであった。

 

 その頃、ティアラは・・・。

「誰!?」

凄い勢いで後ろを振り返る。
先程から自分の後を付けている者に気付いたようだ。
槍を構え、ジッと相手を見据える。

「・・・貴方の力を借りたい・・・。」

女性の声でそう言ってきたのは、ラルクとは違う犬型の獣人だった。

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サボテン君日記

ととは“ならく”というところにいったらしい。
なんだかわからないけど、すごいことがおこりそうなよかん・・・。
でも、らるくはやっぱりいぬだー。

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LOMキャラの一言

なんか、久々って感じだな・・・。   by トト

とりあえず、俺達の活躍を見てくれ   by ラルク

なんか、私の出番、少なくない?   by ティアラ


どうも〜、久々の聖剣小説です。
受験やらいろいろとあったもので随分と更新が遅れてしまいました。
今度からはバリバリ書いていきたいと思うのでご期待下さい。
さて、ちょっとストーリーをいじってみました。
せっかくW主人公競演なんだから、と言うことで、次の伏線も入れてみたり・・・。
やっぱり、ゲームと一緒ではつまらないですからね。
「ドラゴンキラー編」は通しでやっていきますので。
掲示板も別にしたから、感想も書きやすいと思います。
では。

 

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