昼過ぎ、
レイヴンは今、ガーディアンフォースの本部にいた。
とはいっても、牢屋で拘留されている訳でもなければ、
取調室で尋問されているということでもない。
レイヴン達がいるのは待合室である。
隣ではリーゼがレイヴンの肩に寄り掛かって、スヤスヤと寝息をたてている。
朝早くに出発したため、眠かったみたいだ。
2体のオーガノイドも二人の両脇に立っている。

「はぁ〜、何でこんな事になったんだ。」

「グルル。(さあ。)」

ため息混じりでシャドーに話しかけるレイヴン。

 

 実は数時間前、ウインドコロニーで・・・。

「着いたな。バンを探すぞ。」

「ウン。」

『グルル〜。(は〜い。)』

レイヴンのかけ声に返事をするリーゼ、シャドー、スペキュラー。
二手に分かれてバンを探すこととなった。
もちろん、レイヴンはシャドーと、リーゼはスペキュラーと一緒に。

(なるべくならあいつらと会いたくないんだけどなぁ。)

リーゼが心の中でそう呟いているとは知らずに、
スペキュラーの方は一生懸命バン達を探している。
一方、レイヴン達は二人(?)で協力してバン達を探していた。
すると、シャドーが何かを見つけたようだ。

「どうした、シャドー。何か見つけたか?」

「グルルルル。(たぶん、ジークだと思う。)」

レイヴンが見ると、そこには銀色のオーガノイドの後ろ姿があった。
どこかに向かっているらしい。

「たぶんって、他のオーガノイドなんて1体しかいないだろ。
まあいい、あいつの行き先にはバンはいるはずだ。
とにかく、後をつけよう。」

そう言って、レイヴン達は気付かれないようにジークの後をつけた。

 

 その頃、リーゼは、

「隠れて、スペキュラー。」

「グルル、グルル。(何で、何で?)」

「いいから。」

そう言ってリーゼは、スペキュラーと共に草むらに隠れた。
リーゼの視線の先には、食料らしき物を持ったフィーネがいた。
どうやらこちらもどこかに向かうようだ。
その時、リーゼが何かを思いついたようだ。

「バンの所に案内してもらおうか。」

「グルル。(後をつけるの?)」

「ピンポン。
僕たちはバンを見つければいいんだから。」

そう言うと、リーゼ達はフィーネを尾行し始めた。

 

 しばらく後をつけていると、

「スペキュラー、隠れて。」

「グルルル!(今度は何?!)

「いいから、早くして。」

今度は建物の陰に隠れた。
リーゼ達が見ると、フィーネがジークと合流したようだ。
するとすぐにフィーネ達は、またどこかに向かって歩き始めた。
後をつけようとした時、二つの黒い影が見えた。

「あっ、レイヴン。」

そう言うとリーゼ達はレイヴン達と合流した。

「何やってんだ、お前ら。」

「フィーネをつけていたら、君達とジークを見つけたから。」

リーゼの後ろでスペキュラーも頷いている。

「あの二人の行くところにバンはいるはずだ。
つけるぞ。」

「ウン。」

『グルル〜。(は〜い。)』

とフィーネ達の後をつけようとした時、

「お前ら、何やってんだ?
こんな所で。」

突然後ろから声をかけられたので2人と2体は固まった。
そしてゆっくりと後ろを振り返ると、
そこにはバンとアーバインが立っていた。

「・・・バン・・・。」

引きつった声でレイヴンはそう言った。
いや驚きの余り、それしか言えなかった。
リーゼ、シャドー、スペキュラーは唖然としている。

「こんな所でデートかよ。
もうちょっと場所を選んだらどうだ?」

アーバインの冷やかしに、

『違う!』

と二人して否定。

「じゃあ、何やってんだ。」

そのバンの質問に二人は黙ったまま。
するとしびれを切らしたのか、バンの方が口を開いた。

「まぁ、いいや。
丁度お前達を探してたんだ。」

その言葉にレイヴン達は我に返り、とっさに身構えた。
2体のオーガノイドも低いうなり声を上げて、二人を睨んだ。

「まあまあ、そんなに興奮するな。
別にお前らを捕まえる訳じゃないから。」

バンはレイヴン達を落ち着けさせると話し始めた。

「実はなぁ、お前達をスカウトしたいんだ。」

『スカウト〜?』

2人は思わず間の抜けた声を上げる。
バンが話を続けた。

「そう、ヒルツを倒してから平和になったと思ったんだけど、
まだゾイドを悪用している連中がたくさんいてさぁ〜。」

レイヴンはいつもの冷静な口調で、リーゼは嫌みったらしい口調で話した。

「それで俺達にガーディアンフォースになれと。」

「嫌だといったら?」

「断れないと思うぜ。
お前ら、どうせ金が無えんだろ?」

アーバインの言葉が当たっているだけに、レイヴン達は何も言えなかった。

「図星みたいだな。
で、どうする?」

重大な選択を迫られた2人。
とりあえず小声で相談することに・・・。

「どうすんのよ?」

「どうって、これで断ったら牢屋行きだ。
素直に引き受けた方が・・・。」

「逃げ出す方法だったら、いくらでもあるでしょ。」

「無理だな。
たとえ逃げ切れても、このままじゃ飢え死にだぞ。」

「・・・それもそっか。」

リーゼが仕方なしに了解。
そしてバンたちに、

「いいぞ。
このままじゃ俺達は飢え死にしてしまう。」

「グルルルル。(ホントにいいの?)」

「しょうがないだろ。」

レイヴンがしかめっ面をしながらシャドーに言う。
それとは対照的に、バンは喜んだ顔をして言った。

「よっしゃ、決まりだな。
じゃあ、ハーマンとシュバルツに報告しなきゃいけないから、
一緒に本部まで来てくれ。」

「飯も食わすからよ。」

アーバインの一言に二人は思わず反応した。
朝から何も食べておらず、コーヒーを飲んだだけなのでひどい空腹状態だったのだ。
さすがに食の誘惑には勝てず、
バン達と共にガーディアンフォース本部へと向かう羽目となった。

 

 突然、待合室の扉が開き、
バン、フィーネ、アーバイン、トーマ、オコーネル大尉にハーマン大佐、
そしてシュバルツ大佐が入ってきた。
それと同時にリーゼが目を覚ます。

「お待たせ。
手続きが完了したわよ。」

フィーネがそう言って、
ガーディアンフォースのマークが入ったペンダントをレイヴンに渡した。
バンと同じ物である。
彼はそれを早速首に掛けた。

「それとレイヴン、君の階級はデスザウラーを倒すのを手伝ったという功績を含めて、
バン・フライハイトと同じ少佐になった。
もちろん帝国での階級だが。」

シュバルツがそう言い、レイヴンも頷いた。

「後、リーゼはレイヴンと共に行動をしてもらう。
いいね。」

リーゼも頷く。
オーガノイド達も何となく嬉しそうだ。

「ところでアーバイン、お前はガーディアンフォースにならないのかよ。」

バンの問いに、アーバインは呆れながら、

「またその話かよ、勘弁してくれ。
俺は賞金稼ぎの方が性に合ってる。
それよりトーマよ。
いいのか、上司が増えて。」

「うるさい。俺だって大尉まで上がったんだ。」

二人が言い合っている
すると、突然ハーマンが口を開いた。

「盛り上がっているところすまんが、早速仕事を頼みたい。
とにかく司令室まで来てくれ。」

彼の声で一同は司令室へと移動。

 

司令室では盛んに情報のやりとりがされている。
そして、早速用件に入った。

「オコーネル大尉、説明してくれ。」

ハーマンがそう言うと、オコーネルが説明を始めた。
全員が話しに聞き入る。

「二日前、ジェノームタウン付近で謎の飛行ゾイドが目撃された。
情報によるとそのゾイドは、
そこから西に向かってかなりのスピードで飛んでいったそうだ。」

「そのゾイドは、現在確認されているゾイドとはまったく別な物なんですか?」

「それがそうとも言い切れないんだ。」

フィーネの問いにそう答え、ハーマンはさらに話を続けた。

「その飛行ゾイドは、我が軍の所有している最高速飛行ゾイド、
ストームソーダーとよく似ていたそうだ。」

「ストームソーダーじゃないのか?
たとえば改良しているとか・・・。」

バンの質問にはオコーネルが答える。

「情報では確認している暇など無かったと言うことだ。」

「確かなのはそのゾイドの飛行速度は、
ストームソーダーを遙かに上回っていた。
確認の出来ないほどのスピードで飛んでいたのだ。」

オコーネルの後にシュバルツが続けて言う。

「とにかく調べる必要があるな。」

「初仕事が単純な仕事とは、ついてないな。」

「グルルル。(ゾイド戦はなさそうだね。)」

トーマ、レイヴン、シャドーが順に言う。
その時、共和国の兵士が部屋に入ってきた。

「ハーマン大佐、例の飛行ゾイドがイセリナ山付近で目撃されました。
そして、その近くの基地で映像を納めたと言うことです。」

「よし、メインモニターに出してくれっ!」

「はっ!」

そして、中央の大きなモニターに写真が映し出される。
そこにはぼんやりだがストームソーダーらしき機影が移っていた。

「確かに似ているなぁ。」

アーバインが呟くように言う。

「映像がぼやけてるけど・・・。」

「速すぎて完全にとらえられなかったみたいだな。」

リーゼの問いにレイヴンが答える。
実際、映像には残像も映し出されている。

「映像を解析した結果、速度はマッハ3.6と判った。」

オコーネルの言葉にトーマは、

「マッハ3.6?
ストームソーダーステルスタイプでさえマッハ3.4がやっとだというのに。」

と驚きの声。

「それで行き先は判ったか?」

ハーマンが兵士に尋ねる。

「はっ、サンドシティに向かったと言うことです。」

「バン、早速向かいましょ。」

フィーネがバンに向かってそう言った。

「そうだな、サンドシティに行って調査しないと。」

「あ〜あ、面倒なことに巻き込まれそうだぜ。」

アーバインがそう言う
すると、バンは、

「アーバインも行くのか?」

「まあな、たしか最近サンドシティには、ゾイドを使った盗賊が出るっていうしな。
ついでにそいつらの賞金をいただこうって思ってな。」

ハーマンが咳払いのあと、再び言葉を発した。

「とにかくだ。
今回の任務は2つ、一つはその未確認ゾイドの調査、
もう一つはアーバインが言っていた盗賊を捕まえ、ゾイドを回収すること、
以上だ。」

『了解!』

アーバイン以外の全員がそう返事をして出ていった。
そして、その彼は、

「なあ、ハーマン。
ちゃんと賞金を出してくれるんだろうな。」

ちゃっかり賞金の相談。
これにはハーマンも呆れ顔。

「心配するな。
ちゃんと定額通り出す。」

「それを聞いて安心したぜ。」

アーバインは胸をなで下ろし、バン達の後を追う。
こうしてレイヴン達の初任務は始まった。

 


お待たせしました。
ゾイド第三部、いよいよ本編スタート。
こっちも学校の休みを利用して何とか書き上げるつもりです。
それでは、続きをこうご期待。

 

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