夜は案外すぐに来た。
全員はゾイドに乗り込み、森に隠れて、出撃の時を待っている。
約1名を除いて・・・。
「ねえ、レイヴン!何で僕だけ外にいるの?」
「しょうがないだろ!ジェノブレイカーは一人乗りなんだから。」
スペキュラーに乗って、リーゼが抗議をしている。
それもそのはず、自分だけゾイドに乗っていないのだから。
「だったら、今度絶対二人乗りに改装してよ。」
「それはいいが、スペキュラーはどうするつもりだ?」
「あっ・・・。」
「グル、グルル。(もしかして、忘れてた?)」
レイヴンとスペキュラーに指摘され、リーゼは顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。
「グルルル。(大変なご主人だな。)」
「キュイ。(まあ、頑張って。)
「キュイ。(やれやれ。)」
スペキュラーはシャドーとジーク、サンダーに慰められていたが、
リーゼには誰もフォローがなかった。
「何話してるんだか。」
キースがポツリとサイクロンブレイダーのコックピット内で呟いた。
そして、彼はトレードマークのサングラスを頭に上げると、
通信機越しにバン達に話しかけた。
「なあバン、そういやハーマンは元気にしているのか?大佐になったって聞いたけど。」
「ああ、まあな。」
「知り合いなんですか?」
フィーネの質問にキースは、楽天的に答えた。
「まあな。入隊したのが1年の違いだけど、よく2人でバカやったもんさ。
あいつが演習用のプテラスを落としたりしたら、
今度は俺がコマンドウルフを扱いきれなくて、岩山に突っ込ましたりして、
よくクルーガーのおやっさんにどやされたっけ。」
「おいおい、ゾイドの操縦は大丈夫なんだろうな。」
そう言ってきたのはアーバイン。通信機で3人の話を聞いていたようだ。
「心配するな、俺が苦手なのは陸戦ゾイドだけだ。
じゃないと、中佐になんかなれねーよ。
それにサンダーもいる。」
「キュイ。(その通り。)」
「ならいいけど。」
キースの問いに安心したのか、アーバインは胸を撫で下ろした。
一方ムンベイはというと、テントの中で寝ていた。
実は「絡ませろ」としつこかったので、キースが持っていた睡眠薬で眠らせたのだ。
「うるさいのはいないし、これで準備万端だな。」
アーバインがあっけらかんと言ったら、バンは呆れていた。
「やれやれ。
・・・そういや、トーマは?」
「寝てるわ。
来たら起こしてって。」
「どいつもこいつも〜。」
バンは頭を抱えた。
ここの連中は、どうやら緊張感が無いらしい。
その時、
「おい、来たぞ!奴らだ!」
キースが叫んだ。フィーネがレーダーで確認する。
「ゾイド反応確認。
数、陸戦型が25、レドラーも10体確認。」
「よし行くぜ、ジーク!!」
「シャドー!!」
「サンダー!!」
オーガノイドのマスターが一斉に叫んだ。
オーガノイド達はそれぞれの主人のゾイドに合体する。
「トーマ、起きろ!出動だ!」
「へっ・・・。」
アーバインが大声でトーマを起こす。
トーマは半分寝ぼけていたが、すぐに戦闘態勢に入った。
「出るぞ。」
バンのかけ声と共に、キース以外はゾイドを走らせた。
「よしっ、行ったな。サンダー、飛ぶぞ。」
「キュイ。(O.K.)」
キースはサイクロンブレイダーを上昇させて、バン達が向かった方向に飛んだ。
「トーマ、後方支援を頼むぞ。」
「任せろ!ビーク、標準。」
トーマはディバイソンを止め、17連突撃砲を敵に向けた。
「メガロマックス、ファイヤー!!」
「いきなりそれか〜!」
バンの叫びも聞かず、トーマはメガロマックスをぶっ放した。
途中で17に別れて敵のゾイドに命中すると、敵の足が止まった。
「命中したのは、10体か。」
「俺達の仕事を減らす気かよ、あいつは。」
アーバインは愚痴をこぼしながらも、
パルスレーザーで走りながら、敵のガイサックを的確にしとめている。
レイヴンもジェノブレイカーを突っ込ませ、格闘戦に持ち込んでいた。
すると、敵のヘルキャットが光学迷彩をかけながら撃ってきた。
「ちっ、光学迷彩か。トーマ、ヘルキャットの足音のデータを送ってくれ。」
「分かった。」
トーマは3人にヘルキャットの足音のデータを送った。
「データ受信。スキャン完了。」
フィーネがデータを確認する。
「よし、隠れん坊はもうおしまいだ。」
そして、バンも格闘戦に望んだ。
その頃、キースは、
「いたいた、とっとと片付けるか。」
そう言って翼にについているブレードを展開させ、敵の編隊に突っ込んだ。
まず最初の一撃で3機が落ちた。
敵も負けじと撃ってきたが、シールドを展開して弾をはじいた。
「こっちも商売だから、手加減は無しだ。」
今度はパルスレーザーで2機落とすと、アクロバット飛行で敵機の後ろをとる。
「だてに中佐だったわけじゃないさ。」
そう言うと、尻尾に付いているブレードを出して、すれ違いざまに斬りつけ、
1機、また1機とすごい速さで落としていった。
「うおりゃあ〜!」
バン達も負けずにどんどんゾイドを倒していく。
とそんな時、レドラーの残骸がどんどん落ちてきた。
「バン、上に気を付けて!」
フィーネのかけ声で上を見上げると、レドラーの残骸がどんどん落ちてきた。
「うわっ、アブねぇ!」
同じ事がレイヴン達にも起こっていた。
「こらっ、キース!もうちょっと場所を選べ。こっちまで被害が・・・。」
アーバインがキースに文句を言ったが、
「そんな余裕ねえよ。そっちで何とかしろ!」
と逆に言い換えされてしまった。
「こっちで何とかしろって、そりゃ無いでしょ。」
トーマも悲痛の叫びを上げている。
と、その時、ディバイソンの近くに大砲の弾が飛んできた。
「何だ。ビーク、何処から撃ってきた。」
「ピ、ピュルルル。(場所の特定が出来ません)」
「何だと。」
そう言っている間にも、
ブレードライガー・ジェノブレイカー・ライトニングサイクスの周りに、
弾がどんどん飛んできている。
「お前ら、大丈夫か?」
最後の一体をつぶしたキースが話しかけてきた。
「レーダーじゃ位置が特定できない。そっちで見つけられないか?」
バンがキースに聞くが、
「こう暗くちゃ無理だな。そうだ、トーマ!弾の飛んできた方向が分かるか?」
「ちょっと待ってろ。・・・そっちから見て東の方角だ。」
「東だな。こっちで何とか見つけてみる。お前らはそれまで残っている雑魚を片付けろ。」
そう言ってキースはサイクロンブレイダーを東に向けた。
「行くぜ、サンダー!イオンブースター、オン!」
キースはサイクロンブレイダーの背中にあるイオンブースターを点火させた。
すると、とてつもないスピードで東に飛んでいった。
数十秒飛ぶと、
「バン、見つけたぞ。長距離砲をつけたゴルドス3体だ。」
「分かった。」
(あいつらが来るまで注意を引き付けないとな。)
キースはそう思うと、上空からパルスレーザーをゴルドスに撃った。
正確にはゴルドスの足下を狙って撃ったのだ。
威嚇射撃なので当てる必要がなかったからだ。
案の定、ゴルドスはサイクロンブレイダー目がけて撃ってきたが、
キースはシールドと自分の操縦を駆使して軽々と避けていった。
すると、最初にジェノブレイカーが来た。
「喰らえ!」
レイヴンがそう叫び、ジェノブレイカーは足をフットロックで固定した。
口から砲身を出して、チャージが完了すると、荷電粒子砲を使った。
見事に足に当たったので、ゴルドスは動かなくなった。
続いてトーマが、
「メガロマックス、ファイヤー!!」
とまたメガロマックスをぶっ放した。
今度は1体に全標準を合わせたので、17発全部がゴルドスに直撃した。
そして、
「次は俺だぜ。、相棒!」
ライトニングサイクスが雄叫びを上げ、
メガロマックスを喰らったゴルドスに向かって走った。
ゴルドスはダメージが大きく反撃できずに、
ライトニングサイクスのストライククローを喰らった。
「最後は俺達だ。いくぞ、ジーク!ブレードアタックだ!」
「キュイ。(O.K.)」
ブレードライガーも鳴き声を上げてブレードを展開し、背中のブースターを点火させた。
敵も撃ってきたが、弾は当たらなかった。
「いっけぇ!」
と、バンはコックピットのレバーを思いっきり前方に押した。
ライガーが加速し、ブレードで斬りつけた。
ゴルドスは背中を切り裂かれ、そのまま崩れた。
「おっしゃ!」
「やったぁ!」
「ふっ。」
「ふぅ〜、疲れた。」
「やれやれ。」
バン・フィーネ・レイヴン・キース・アーバインが、それぞれ言った。
一方トーマはというと本部に連絡を取っていた。
「こちら、トーマ・リヒャルト・シュバルツ。盗賊のゾイドは全部つぶしました。
回収班をこちらに回して下さい。」
「こちら、オコーネル。了解した。」
「なあ、ゾイドを回収してどうするんだ?」
キースが聞くと、
「今度はちゃんと契約を交わして、所有者を決めるの。
そうやってゾイドを使った犯罪を無くすのよ。」
フィーネが答えた。
「だから、サイクロンブレイダーの事を探していたのか。なるほどね。」
と、キースは理解したみたいだった。
全員がムンベイとリーゼのいるテントに戻ると、二人とも寝ていた。
もちろんスペキュラーも。
「のんきなものだな。」
とアーバインの嫌みの入った言葉に、みんな笑っていた。
やがて、二人とも目を覚ましキースを見送ることとなった。
「いろいろと世話になったな。」
「キュイ。(どうもありがとう。)
礼を言うキースとサンダー。
「そんなことないさ。」
「そうよ。あなたがいなかったら、勝てなかったかも。」
「キュイ。(そうそう。)」
バン・フィーネ・ジークが言う。
「これからどうするつもりだ?」
「ねぇねぇ、もし良かったらあたしと組まない。」
「遠慮しておくよ。これからゾイドの登録に行かなきゃ。
そのついでにハーマンに顔を見せに行くつもりだし。」
キースはムンベイの誘いを断り、アーバインと握手をした。
「じゃあな。」
「またね〜。」
「グルルル。(サンダー、また会おうね。)」
「グルル。(お元気で。)
レイヴン・リーゼ・シャドー・スペキュラーが別れの挨拶をした。
「じゃあな、みんな。縁があったらまたな。」
「キュイ。(またね。)」
キースはそう言ってサイクロンブレイダーに乗り込んだ。
サンダーも合体すると、朝日に向かって飛び立った。
バン達は姿が見えなくなるまで見送っていた。
しかしこの時、遠く離れたがけの上から、この光景を見ているものがいた。
「4体のオーガノイドか。」
「楽しくなりそうね。」
その側で2体のオーガノイドがうなり声を上げている。
そして、そのまま砂嵐の中へと消えていった。
とうとう出ました、オリジナルキャラのキースとサンダー。
それにオリジナルゾイドのサイクロンブレイダーも。
このキースは物語の鍵を握る人物なので要チェックです。
あと、キースはちょくちょく顔を出すと思います。
そして謎の二人組の登場。
これから目が離せませんよ。
おっと師匠が呼んでいるので、これで。
「早く来い!」(ドキューン)
はいっ、ただいま。